0130:天才の知略 ◆SD0DoPVSTQ





「ちっ」
逃げようとしたその先を『仲間』とやらに立ち塞がれてアミバは舌を打った。
このタイミングで立ち塞がれているということは今の行為が見られたと考えても良いだろう。
「おぃ、真中に今何をした?」
目の前の少年、一護はアミバから一定の距離を保ちつつ逃げられないように退路を塞いだ。
背面には川、目の前には実力未知数の少年。
「――この天才が筋力と敏捷性を上げる秘孔を突いてあげたのだ、今は……その時のちょっとした副作用だ」
「なら、何で荷物を拾って逃げたんだ?」
今度は心の中で舌を打った。
逃げられない上にはったりも効かない。
開始早々の出来事もある。
餓鬼だからと嘗めていたらこの天才でも足元を掬われるらしい。
だが自分なら、この天才アミバ様なら解決方法は幾らでも思い浮かぶ筈。
空気が張りつめる中ひたすらに頭を回転し続ける。

――そうか。

相手がじりじりと距離を詰めながら此方の様子を窺っているのを察すると、直ぐさまその行動を取ることにした。

「この餓鬼を殺されたくなければ動くなよ」
その行動とは一旦後退し、苦しみもがいている真中を人質に取ることだった。
「糞っ!汚ねぇ……」
「口では抵抗できても、仲間を人質に取れたら反抗はできないのはお見通しだ!!」
「くっ!」
「動けまい!!此奴が死んでも良いなら動いてみろぉ!!フハハハ!!」
アミバは勝利を確信し高笑いを上げる。
脅迫の言葉で目の前の男の顔色が悔しさと怒りとで変貌していく。
「おぉーっと助けは呼ばさせない。幾ら天才といえども多勢に無勢はかなわんからな」
片方の手で真中の動きを封じ込めながら、空いた方の手で一護に向かってニューナンブを構える。
「貴様が武器を使ってこなかった次点で、何も持っていないってのはこの天才にはお見通しだ!!」
口の端と端が上がっていくのが自分でも良く解る。
そうさこの瞬間、この相手が何も出来ず自分だけが優位に立てるときほど気持ちがいい瞬間はないのだから。

一護は焦っていた。
相手の言うとおり武器を何も持ってはいない。
盾みたいな物が支給されたが拳銃を防げたとしても防具としては小さく心許ない。
それに相手は素手でも秘孔とやらを突くことで人の動きを奪う事が出来るらしい。
斬魂刀は疎か何も武器が無い状態では隙を突くことすら容易ではないのだ。
そうやって思考を巡らせている間にも刻は過ぎていく。
あぁそうか。
時間が過ぎるなら過ぎさせれば良いのだ。
その内江田島のオジサンが察して探しに来てくれるはず。
つまりは自分の唯一出来ること、そしてしなければならないことは時間稼ぎなのだ。

「――一つ質問して良いか?天才さんよ」
「あぁん?まぁ特別に気分も良いし許してやろう」
相手は此方が何も出来ないということを知って余裕に浸っているらしい。
「拳銃もあるし、首も絞められるのに何故真中にトドメを刺さなかったんだ?
 荷物が欲しいなら俺の分も渡す、だから真中を解放してくれないか?」
正直この時期に二人分の荷物が無くなるのは痛い。
だが命が失われるよりは圧倒的にましな選択肢だ。
少しは時間稼ぎになる上に、生き残るための方法を探れる。
それが最善に思えた選択肢だった。

「フ……フハハハハハ。この状態で命乞いだと笑わせてくれるっ!!
 この天才だからこそ今この時も見過ごしてやっていると言うことに気がつかないとはな!!」
笑い声と共に森の中に乾いた銃声が木霊する。
「ぐあっ!」
右膝の皿の部分を銃弾で破壊された一護は片膝をついてしまう。
「あぁん?最初に動くなと言った筈だが……」
再び銃声が響き、今度は左膝が破壊されて俯せに一護は倒れ込んだ。
「ん?あぁ足を破壊されちゃ立っていられないか。フフフフ……」
痙攣を起こしている真中をぽいっと興味なさそうに脇に投げ捨てるとアミバは一護に歩み寄った。
「この慈悲深い俺様が、最後に貴様を北斗神拳を極める為の実験台としてやろう。なに、痛くはしないから安心したまえ……」
俯せに倒れ何も出来ない一護に近寄るとニューナンブを腰に仕舞い、一護の秘孔に狙いを定めた。

「待てぃ!!」
一護を手にかけようとしていたアミバが森中に響き渡ったその怒声に驚き振り向いた。
アミバの笑い声より高らかに、銃声よりも木霊するその声。

「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!!」

最初の銃声を聞いて駆けつけてきた江田島平八その人であった。





【埼玉県(森)/朝】
【アミバ@北斗の拳】
 [状態]:やや疲労
 [装備]:ニューナンブ@こち亀
 [道具]:支給品一式(食料1日分消費)
 [思考]:1.目の前の敵と戦う 
     2.皆殺し

【真中淳平@いちご100%】
 [状態]手首捻挫、痙攣中(1時間ほどで治まる)
 [装備]無し
 [道具]無し
 [思考]1.知り合いとの合流
    2.東京を目指す

【江田島平八@魁!!男塾】
 [状態]健康
 [装備]無し
 [道具]支給品一式、不明
 [思考]1.「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!」
    2.「日本男児の生き様は色無し恋無し情けあり」

【黒崎一護@BLEACH】
 [状態]両膝破壊 (名簿に写真がないため、メガネ藍染かオールバック藍染かは知らない)
 [装備]シャハルの鏡@ダイの大冒険
 [道具]支給品一式
 [思考]1.目の前で襲われている奴らがいたら助ける
    2.朽木ルキアとの合流
    3.東京を目指す


時系列順で読む


投下順で読む

Back:帝王雌伏 Next:孵化

119:ん?間違ったかな アミバ 165:魁!一護100%~戦う壮年~
119:ん?間違ったかな 真中淳平 165:魁!一護100%~戦う壮年~
072:魁!!一護100%~血を吐くような思いと共に~ 江田島平八 165:魁!一護100%~戦う壮年~
072:魁!!一護100%~血を吐くような思いと共に~ 黒崎一護 165:魁!一護100%~戦う壮年~

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2023年12月09日 21:38