0137:麗しき貴族”C" ◆Wv7hRKzBHM





「助けてください。お願いします。私、ただの学生なのにいきなりこんな所に連れてこられて…」
必死にそう言う目の前のまもりに、趙公明は如意棒を突きつけた。
「ふふふ…君はまずまずの演技力だけど、後ろのオトモダチが一目で分かるほどの殺気を放っていてね…」
それを聞いたまもりは、一瞬だけ後ろを振り返る。
まもりの後ろにじっと佇んでいる冴子は、確かに暗い表情でこちらを見ている。
自分が敵の油断を誘うと言って出てきたのは良かったが、まさか冴子がここまで非協力的だとは思わなかった。
(まさか、いきなり私を見捨てるつもりかしら…いえ、さすがにそこまでは……っ!!)
まもりが我に帰ると、如意棒が首筋まで伸ばされていた。
「君からも…そう、何か決意を秘めた様子が見て取れるね。決して追われるウサギのそれではない目をしているよ」
(このままでは冴子に捨て駒にされてしまうわ…なんとか彼女を利用しないと……!)
だが、趙公明は不意に如意棒を縮めて手元に戻した。
そして懐から菓子パンを取り出した。
「君たち、お腹は空いていないかな?」
「…え?」
「僕の食料は中々美味なものが多くてね。この餡子が詰まったパンなど最高だよ。上に散りばめられたゴマがなんとも言えない」
「……」
「………」
まもりと冴子は、なんとなく言われるままに趙公明の後について行ってしまった。
目の前の相手を殺さなくてはならないという決意と、しかし隙が無くて手を出せない状態ゆえだ。
誰もいない茶店の席に着くと、それぞれジャムパンとクリームパンを手渡されるが、二人とも手に持つだけで口にしようとしない。
「おや、どうして食べないのかな?毒など入っていないよ。さぁ、食べたまえ」
「……どうかしらね。ニンゲンは人を騙すためなら何でもするわ…」
冴子はクリームパンの袋を破ると、趙公明の口元に突き返した。
「あなた…これを食べられる?」
「いらないのかい?じゃあ遠慮なく」
「…!?」
ムシャムシャとクリームパンを食べる趙公明に、冴子は当てが外れたような顔をする。
見るからに美味しそうな表情でクリームパンを食べ尽くすと、手についたクリームをハンカチで拭き取る。
「まだ、わからないかな。君たちを殺すつもりならいつでもできるんだ。でも敢えてそうしない。わかるかな?」
二人とも黙っている。
他の参加者を全員殺すことを目的としている二人には見当もつかないようだ。
「僕の目的は、ゴージャスでエレガントな戦いを楽しむことだ。君たちがそれにふさわしい実力の持ち主なら、喜んでその殺気に応えよう。
だが、残念ながら君たちの実力は僕に遠く及ばない…相手をするまでもないということさ。
実はさっき城之内くんという少年と戦ったんだが…彼は少々物足りなくてね。次の相手は、もっとふさわしい相手と決めているんだよ。
だから君たちは殺さない」
残念ながら、この派手な男の言うとおりだとまもりは思った。
仮に自分ひとりだったとしても、この男の隙を突いて殺すことは不可能だっただろう。
…実力が違いすぎる。
「……わかりました。行きましょう、冴子さん」
「…………そうね、少なくとも今の私たちでは勝てない」
冴子も納得したのか、椅子から立ち上がる……と見せかけて、毒牙の鎖を振るう。いや、性格には振るおうとした。
その瞬間、腕を掴まれてひねり倒されてしまう。
「君がどうしても戦いたいと言うなら、僕としても応えてあげるつもりだがね…どうする?」
「…わ、わかったわ。私の負けよ…」
全てのニンゲンを消すためには、ここで死ぬわけにはいかない。
この男は、誰か他の強敵と潰し合ってくれることを願うしかない。
冴子はそう結論づけ、趙公明のことは諦めることにした。
「ところで、どうしてパンなんてくれるんですか?」
ジャムパンを見つめながらのまもりの問いかけに、趙公明はにこりと笑う。
「僕は貴族でね。見たところ君は荷物を失っているようだ。そんな君に施しをするのも勤めというわけさ。
もっと欲しければ差し上げるが、どうかね?」
「…い、いえ結構です。(変な人…こんなゲームに参加させられてるっていうのに…)」
さすがに少し呆れるまもりであった。
その後二人が茶店の前から離れかけたところで、まもりはジャムパンのお礼を言っていなかったことに気づいた。
趙公明の方を振り返り、声をかけようとするが、既に彼の姿はなかった。
「ではさようなら、レディたち。次に会う時までにせいぜい強くなってくれたまえ!」
頭上から声が響く。
見上げると、如意棒にまたがった趙公明が、棒を伸ばしながら彼方へと飛んで行くところだった。
それを見送りながらまもりは思う。
今回は運良く見逃してもらえた。
でも次もそうとは限らない。
ひょっとしたら、自分の作戦が通用する相手なんてほとんどいないのかもしれない。
「だとしたら……」
「何か言った?」
「ううん…こっちのことよ、こっちの」
やっぱり、この人を囮にするしかない。確実に。




【京都府市街地/午前】

【姉崎まもり@アイシールド21】
 [状態]:腹部に打撲、若干の疲労
 [装備]:中期型ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER
     魔弾銃@ダイの大冒険:空の魔弾×2 メラミ×1 ヒャダルコ×2 イオラ×1 キアリー×2 ベホイミ×2
 [道具]:ジャムパン(毒は入ってないとほぼ確信している)
 [思考]:1セナ以外の全員を殺害し、最後に自害
     2取り敢えず目の前の女を利用できるまで利用する(以前より強く決意)

【野上冴子@CITY HUNTER】
 [状態]:人間に絶望(難しいが説得は一応可能?)
 [装備]:毒牙の鎖@ダイの大冒険(一かすりしただけでも死に至る猛毒が回るアクセサリー型武器)
 [道具]:荷物一式、食料二人分
 [思考]:1人間を全て殺す。
     2取り敢えず目の前の女を利用できるまで利用する

【趙公明@封神演義】
 [状態]:左足に軽傷
 [装備]:如意棒@DRAGON BALL
 [道具]:荷物一式×2(一食分消費)、神楽の仕込み傘@銀魂
 [思考]:1.しばらく京都観光をしながら、戦うに足る相手を探す。
     2.エレガントな戦いを楽しむ。太公望、カズキを優先。


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133:黒き盟約 姉崎まもり 177:ミーティング
133:黒き盟約 野上冴子 177:ミーティング
101:京都観光しようかな 趙公明 142:起と承と

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最終更新:2023年12月16日 04:30