0136:さまよう影 ◆XksB4AwhxU
突如として音もなく鳥の影のように視界に滑り込んだ黒衣の塊は、
月、イヴ、ゆきめら目の前の進行方向に立っていた。
その時、何が起きたのか受け止められず月の思考は数秒飛んだ。
余所見をしていたわけでもなくお喋りに興じて油断を欠いたわけでもない。
この場にいる誰もが予期せぬ訪問客に言葉を失っていた。
(な、何・・・!?)
(馬鹿な!?こいつ、どこから現れたんだ!?)
(すごいスピード・・・この人・・・気配すら感じられなかった)
太陽の光が強く差し込み始めた林道に突如現れた存在。
背丈や顔立ちから一見して歳若い少年。子供、といってもいい体格である。
しかし黒いマントで包まれた小柄な身体は薄汚れ、
およそ清涼な朝の空間には似つかわしくない、濃厚な血と泥と煤の混ざった独特の臭気を放っていた。
(コイツ、ゲームに乗った殺人者か・・・!
気配を殺し、僕らに近づいたのは見事だが何が目的だ・・・攻撃してこないのは何故だ。敵意がないのか)
漆黒のマントから覗く少年の右腕にはいつ抜かれたのかナイフが握られている。
月の背に汗から噴きだす。こいつも得体の知れない化物なのか。
ゆきめとイヴが月を庇うように前に出たが、月は2人を手で制し小声で囁く。
――ここは僕が交渉しますから下がっていてください。
有無を言わせず女性2人を下がらせると月は少年と向き合った。下手な交渉をされて戦闘に巻き込まれてはたまらない。
「でもっ・・・この人危険です。危ない感じがする」
食い下がるゆきめに月は内心舌打ちをしながら優しく――特に女性が安心するような――笑みを浮かべた。
――大丈夫です。僕を信用してください。貴女達を危険にさらすようなことになどさせません。
せっかく見つけた貴重な手駒だ。こんなに早く消耗させるには惜しい。
月は少年の目に一歩歩み出た。
少年の眼光は鋭く、感情の起伏を読み取れない禽獣の目を連想させ、月の神経を圧迫する。
空気に飲まれてはいけない。月は――普段の彼なら絶対にしないが――ゴクリと喉を鳴らし唾を飲み込んだ。
空気に飲まれるな。攻撃しないのは理由があるはず。それはなんだ。
少年が言葉を発するより数秒早く月が口を開く。
かすれた低い声が囁く。幽鬼のような死神のような暗く形容し難い声。
「奴の居場所を知っているか?」
出鼻を挫かれまたも一瞬言葉を失う月だが、すぐに気を取り直し会話と思考を続ける。
(何かと思えば仲間探しか。元いた世界の仲間なら信じられると本気で思っているのか?
この状況下でご苦労な事だ)
月は恐怖が薄れていくのを感じる。化物でも人間レベルの思考能力はあるらしい。
多少血の気の多い殺人鬼でも言葉さえ通じるのなら操る自信がある。
「貴方も人探しを・・・?この時間まで1人きりで?」
返答は丁寧に。少し驚きも含ませて。
月は心細かったでしょう・・・といかにも共感しているといった部分を短い返答の中に押し出した。
異様な風体と臭いに対し月は少年に生理的な嫌悪と恐怖を感じていたが、表情には出さず同情を装った。
その際、少年の表情を一瞥するが微動だにしていない。
静かに自分の質問に対しての答えを待っている感じである。
(奴が欲しがってるのは情報だ。引き出し終わるまで攻撃される危険はないが・・・)
その後、彼が自分達を見逃す保証はない。
相手の望む情報を与えつつ自分を頼らせるように誘導しなくては。
「浦飯、幽助さんですか。僕と同じ日本人のよ」
「あなた、血のにおいがするわ」
今度はイヴが月の言葉を遮った。
「誰かと戦ったのね。事故?それとも貴男はこのゲームに賛同してるの?」
(こ、このガキ・・・!いきなりなんてことをッ!)
月はイヴの肩を引き寄せ少年には聞こえないよう耳元で囁く。
――危険なことをするな。
相手が逆上したらどんなことになるかわからないんだぞ!?
「安心して。もし戦闘になったら私が戦うから。月さんは安全な所に下がってて」
イヴは先程からの回りくどい月の交渉に危険を感じていた。
一般人の月よりも、防御には自信のある自分が前に出るべきだと考えていたのだ。
そんなイヴの強引な行動に月は怒りで卒倒しそうになった(表情には出さずに)。
――ゆきめさん。彼女をお願いします。 (このクソガキをなんとかしろ!)
月はゆきめにイヴを預けようと振り向いたが彼女はいない。
ゆきめは少年の目の前に立っていた。
怒りと悲しみの入り混じる瞳で少年に問いかける。
「あなたは・・・会いたい人がいるのに、なぜ、戦うの」
【山形県/午前】
【夜神月@DEATHNOTE】
[状態]健康
[装備]真空の斧@ダイの大冒険
[道具]荷物一式 (一食分を消費)
[思考]目の前の少年と交渉
使えそうな人物との接触
竜崎(L)を始末し、ゲームから生き残る
【ゆきめ@地獄先生ぬ~べ~】
[状態]健康
[道具]荷物一式 (一食分を少し消費)
[思考]鵺野鳴介との合流
ゲームから脱出する
【イヴ@BLACK CAT】
[状態]やや疲労、風邪気味
[装備]いちご柄のパンツ@いちご100%
[道具]荷物一式 (一食分を少し消費)
無限刃@るろうに剣心
[思考]トレイン・スヴェンとの合流
ゲームの破壊
【飛影@幽遊白書】
[状態]少し疲労(眠気は収まった)
[装備]マルス@BLACK CAT
[道具]荷物一式
燐火円礫刀@幽遊白書
[思考]幽助と決着を付ける、強いやつと戦う
※イヴ、ゆきめの服は乾きました。
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最終更新:2024年01月14日 19:11