0155:変相・変奏◆HKNE1iTG9I



「ボクたちに戦う気はないよ、一つ譲ってもらいたいものがあってね」

 突如現れた二人組。その片方、奇術師のような男は、唐突にそんな言葉を発した。

「譲ってもらいたいもの?なんだそりゃ?」
「うーん、説明し辛いな。強いて言うなら、キミたちの命かな?」

 主催者が盗聴している限り、首輪を欲していることを言葉にすることは出来ない。
故に、ここまでの説明しか出来ない。いや、するつもりはないと言ったほうが正確か。
首輪は、単に殺して奪えばいい。ただそれだけのコト。

「別にあっちの狙撃手のでもいいんだけどね。とりあえず、キミたちの方が先に見つかったから」
「まぁ、運が悪かったということか。所詮、命なんてこんなもの」

 蝶々覆面のイカれた格好をした男が言葉を継ぐ。空気は既に重い。
が、その言葉は空気に更なる鋭さを加えていくようで。

跡部は再三、舌打ちをする。

(ツイてねぇな…こっちは手負いが一人、誰かから狙撃されていて、さらに新手に変態が二人)
「チッ、どうする、ナルト!」
「跡部はここに隠れていてくれ。こういうことは忍者の仕事だってばよ!」

 ナルトは、未だに血が滴る右腕を持ち上げると、印を結んだ。

「行くってばよ!!」




「まったく、何なんだ、あの変質者共は?風紀を乱すにも程がある…あの少年たちに悪影響を与えてしまうじゃないか」

 戦場の傍ら。廃ビルの一室。警察官、中川圭一は形のいい眉を顰める。

「でも良かった。幸いなことに、僕は警察官だからね。市民を危険から守る義務があるんだ」

 構えているのは狙撃銃。肩には黒い血のカタマリ。流れ出す気配は、無機質なようで、底冷えがするようで、熱に浮かされているようで。

「公然猥纐の現行犯…迷惑防止条例への抵触…でも、状況が状況だし、情状酌量の余地はある。それを考慮して…」

 そこまで考えて、ほんの少しの間、宙をにらむ。そして、何かを思いついたのか、陽が差し込むような笑顔を見せた。
そして、再度、狙撃銃のスコープを覗き込む。その顔に笑顔は張り付いたままで。

「さて。不肖、中川圭一が判決を下そう。まぁ、被告の精神状態を考慮して、刑一等減刑してあげようかな?判決は…」


「…死刑」
よーく狙いを定めよう。
「死刑」「死刑」
今度は決して外さないように。
「死刑」「死刑」「死刑」
一瞬で苦痛を断ち切ってあげるために。
「死刑」「死刑」「死刑」「死刑」
淋しくないよ、そこの子供たちも送ってあげるから。
「死刑」「死刑」「死刑」「死刑」「死刑」
さぁ、よーく、よーく、よーく、よーく、よーく、狙いを定めよう。




「影分身の術!!」

 ナルトが吼える。刹那の間もおかず、その場に七つの人影が現れる。
五体がヒソカとパピヨンに躍りかかり、二体は怪我を負ったナルトを護るかのように後ろへと下がった。
何故か、ナルト本体の左掌に両手を合わせて。

「へぇ、これはこれは」
「なかなか芸達者だね」

 対する二人は余裕を崩さず。

「ウオオオオオオォォォォッ!」

 奇術師ヒソカは、上体を反らす。顔面を狙ったナルトの一撃は虚しく空を切る。
別のナルトが下半身に蹴りを見舞うが、上体を反らした勢いで後転したヒソカを追いきれず、足刀はコンクリートの足場を叩く。
ヒソカの軌道に併せ、弾丸のように走りこんだ第三のナルトの首に、小指の先ほどの蝶が舞い込み、
軽い破裂音とともにその延髄を吹き飛ばすと、第三のナルトの姿は煙の如くに霧消する。
全く同じ軌道で、滑り込むが如く走りこんだ第四のナルトは体勢を立て直したヒソカの打撃を受け、たまらず数歩たたらを踏む。
その脇を潜り抜けた第一のナルトの拳はパピヨンの下顎を狙うが、咄嗟に上げた両腕に阻まれ、まともなダメージを与えるには至らなかった。
が、その隙を逃さず、背後から第二のナルトがパピヨンに蹴りかかる!

 パピヨンはその攻撃に反応は出来たものの、先の一撃の反動で出来た硬直のため避けきることができず、被撃。
体勢を崩したところに、第五、第四のナルトが追撃をかけようと飛び出した。
同時に、第四のナルトの身体は何かに引き寄せられるかのように、ヒソカへ向かって吸い込まれていき、頚動脈を切断される!
第四のナルトの姿も、煙の如くに霧消した。
そのまま、ヒソカがパピヨンの姿を見やったときには、既に、第五のナルトはパピヨンの手刀によって貫かれていた。
その姿もまた、塵と消えていく。

「クソッ!なんなんだ、あいつらは!ナルト!」
 跡部は焦る。と、第一のナルトが弾き飛ばされたのか、かなりの勢いで突っ込んできた。
思わず右手で受けると、驚いたことに殆ど衝撃は無く、第一のナルトの姿も掻き消えた。
だが、臆することなく、第二のナルトは再度、敵に向って特攻をかけ――――

――――ダァ――――……ン――――

 凶弾に貫かれ、消失した。




「まったく、あの少年は!
 せっかく僕が変質者に鉄槌を食らわせてやろうというのに射線に入るなんて!やっぱり最近の少年はなってないね!
 公務執行妨害で、死刑が妥当かな。って、もう死刑って決めてたんだっけ。二回死刑ってどういう風に言えばいいのかな。
 極刑?極刑?刑の極みってことで極刑っていうのがいいのかな?」

 中川は内心で臍をかむ。邪魔された!邪魔された!神に愛されているこの僕が!
金髪の子供がわらわらと出てきて、僕の正義が邪魔された!僕の優勝を邪魔された!ゴキブリみたいに沢山出てきて!
余計なことを!余計なことを!まるで先輩みたいだ!ああいう子供が、先輩みたいな傍若無人な大人になるんだ!
先輩みたいに…先輩みたいなのが、あんなに沢山?!殺さないと!殺さないと!
先輩が、沢山、沢山…先輩を沢山殺せる…先輩を…

 狙撃手は、己の凶器に己の狂気を装填する。その顔は、何故か驚喜しているようで。




 その瞬間、確かにその場の全員の注意が逸れた。それは、瞬きをするよりも短い時間。
「今だってばよ!!」
 機を逃さずに、ナルトは地面に己が左手を叩き付ける!

「螺旋丸!!!」

 ナルトの手の平に生み出された、圧縮された暴風のような衝撃で、ビルの屋上に無数の罅割れが走る!
階段から下にいけないのなら、床から下に逃げればいい、と考えた一手。戦闘能力を持たない、跡部を逃がすための策。
だが―――床は今にも崩れそうだが、かろうじて原形を留めている。

「チッキショー!もう少しなのに、床が抜けねぇ!」

「跡部!お前は逃げるってばよ!」
「諦めんな!もう少しだっつーんなら、俺様が最後の一押しをしてやる!」

 吠える跡部が掌を床に叩き付ける。跡部が今、持っている支給品、衝撃貝。その能力を確かめるために。

(説明書がデマじゃねーことを祈ってやるぜ!感謝しな!)

 篭手からとてつもない衝撃が発生し、結果。跡部の右腕は大きくはじかれ、床は耐え切れず大きな穴を穿たれた。
間髪いれず、二人の少年は階下へと逃げ出す。二人の超人はそれを追おうとしたものの。
最後の影分身体、第六、第七のナルトによって足踏みを余儀なくされる。




それを見て。

「あー、器物破損の現行犯。最近の子供たちはキレやすいって聞いていたけど。それにまた子供が増えてる。
 一人見つけたら三十人っていうし、徹底的に掃除しないと駄目だなぁ」

 狙撃手は微妙に残念そうな顔をする。が、まだ気は抜けない。あの変質者共にも、正義の鉄槌を食らわさねば。
この中川が勝ち残る。それが正義だ。なら、それを邪魔する奴らは悪だ。悪は裁かなければならない。
何故なら、自分は警察官なのだから。





【福岡県(市街地)/朝】

【跡部景吾@テニスの王子様】
【状態】右肩が痺れている、襲われたらやり返す覚悟を決めた
【装備】衝撃貝(インパクトダイアル)の仕込まれた篭手@ONE PIECE
【道具】荷物一式(少量の水を消費済み)、アバンのしるし@ダイの大冒険
    フォーク5本、ソーイングセット、ノートとペン、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
【思考】1.とりあえず、安全を確保する。
    2.乾と越前を捜す

【うずまきナルト@NARUTO】
【状態】右上腕に弾丸貫通(応急処置はしたがまだ出血中)、空腹、疲労困憊
【装備】無し
【道具】支給品一式(1日分の食料と水を消費済み)
    ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
    フォーク5本、ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
【思考】1. とりあえず、安全を確保する。
    2.サクラ、シカマルを探す
    3.主催者をやっつける

【中川圭一@こち亀】
 [状態]:左肩を負傷、精神不安定、錯乱気味
 [装備]:スナイパーライフル(残弾13発)
 [道具]:荷物一式 ベアークロー(片方)@キン肉マン
 [思考]:1.金髪の少年(ナルト)の狙撃。新しく現れた少年(跡部)の狙撃。
         蝶々覆面の男(パピヨン)の狙撃。奇術師のような男(ヒソカ)の狙撃。
      2.両津を探して射殺する
      3.優勝する

【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:健康、背中に極軽度の打撲(再生能力のため、直ぐに回復します)
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金(ニアデスハピネス少量消費)
 [道具]:荷物一式(食糧二食分消費)
 [思考]:1.逃げる少年達か、狙撃手から首輪を手に入れる
     2.知り合いとの合流、ヒソカと行動

【ヒソカ@HUNTER×HUNTER】
 [状態]:健康、全身に軽い打撲、裂傷(処置済み)
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式(食糧一食分消費)
 [思考]:1.逃げる少年達か、狙撃手から首輪を手に入れる
     2.剣八を含む強者と戦いたい
     3.知り合いとの合流、パピヨンと行動


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150:少年(15)の受難は続く 跡部景吾 175:Lie!Lie!Lie!
150:少年(15)の受難は続く うずまきナルト 175:Lie!Lie!Lie!
150:少年(15)の受難は続く 中川圭一 175:Lie!Lie!Lie!
150:少年(15)の受難は続く パピヨン 175:Lie!Lie!Lie!
150:少年(15)の受難は続く ヒソカ 175:Lie!Lie!Lie!

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最終更新:2023年12月11日 23:51