0150:少年(15)の受難は続く ◆z.M0DbQt/Q





――――――――ダァ――――……ン――――……

聞き覚えのある音と共に、右腕に衝撃が走る。
続いて襲った激痛に、ナルトはその場に転がり倒れた。
「……っ……痛ってぇ…………」
忍者であるナルトにとって、怪我の痛みは日常茶飯事のものだ。
だが、この焼け付くような痛みは。
「……すっげぇ痛いってばよ……」
痛み、熱をもつ傷を押さえた左手からは血が零れ、ナルトの服に次々と染みを作っていく。
跡部に言われたように高いビルの上を目指して屋上まで駆け上り、
フェンスの上から海の方角を確かめようとしたその時に、突然衝撃と共に右腕から血が噴き出したのだ。
近くに敵の気配がしないことから、これが長距離……少なくともナルトの視界外からの攻撃なのだと解る。
その上、手裏剣やクナイといったナルトの知っている忍具で攻撃されたのではない。
もっと、目に見えないくらいのスピードで目に見えない何かがナルトの右腕を撃ち抜いたような感じだった。
例えるのなら、火遁の術を小さくして威力を高めたような術。
サクラやシカマルなら何か知ってるかもしれないが、少なくともナルトの知識にはそんな忍術はない。
「一体何なんだってばよ……」
呻き声と共にそう呟いてから、ようやく「もしかしたら」と思い当たる。
「コレ……もしかして銃ってヤツか……?」
だとしたら、半分ほどしか聞いていなかった跡部の銃に関する沢山の脅しも納得が出来る。

――――――――ドスッ

上半身を起こしたナルトの頬を、また何かがかすめ飛んだ。
鈍い音を立ててコンクリートに穴が開く。
「……ッ!!」
本能的に危険を感じ、とっさに貯水タンクの裏に回る。
「どっから攻撃されてんだかわかんねぇってば……」
――――弾丸のスピードは瞬きするより速早え。
今更ながら跡部の言葉を身をもって実感する。
自分の服の裾を裂き、その切れ端で右腕をきつく縛り上げる。
目に見えない攻撃。
敵の居場所は分からない。
しかも跡部によれば『身体のどこを撃たれたって致命傷』らしい。
「どうすりゃいいんだってばよ……」
忍者を生業とする少年は、彼にしては珍しく困り果てることになった。





ライフルの射程距離内に突然現れた少年に、中川圭一は驚きながらも笑みを浮かべた。
中川のいる建物から少し離れた所にあるビルの屋上のフェンスに、金髪の少年がひょっこりと立っているのだ。
キョロキョロと周囲を見回している少年は、中川にはまったく気が付かない。
「僕は警察官だからね。少年犯罪は未然に防がないと」
そう。子供は危険だ。
油断すると今朝のように急に襲われるかもしれない。
ああいう少年達が非行に走り、先輩のようなろくでもない大人になるのだ。
だから早く殺してしまわないと。
「ふふふふふふふふ」
自身から零れる笑いに気付くこともなく、中川は少年に狙いを付けた。
少年の金髪は朝日に反射してとても目立つものだったし、何よりも自分の狙撃の腕はオリンピック選手並みだ。
外すなんてあり得ない。
「ふふふふふふふふ」
よーく狙いを定め確信を持って中川は引き金を引く。

――――ダァ――――……ン――――


「外した?!」
頭部を狙ったはずの弾丸は少年の右腕を貫通し、中川はその事実に驚愕した。
「まさか!」
自分が外すはずがない。
自分の狙撃の腕は絶対のはずだ。
「……そうか」
今朝、黒髪の少年から負わされた左肩の傷。
このひどい傷のせいで左腕に力が入りきらず、わずかに狙いがずれてしまったのだろう。
「まったく……!!」
腹立たしそうに再度スコープを覗き込むと丁度、金髪の少年が上半身を起こすところだった。
「今度こそ!」
まるで的の様に目立つ金髪に再び狙いを付ける。
――――――だが。
「クソッ!」
二度目の弾丸も少年の頭を撃ち抜くことはできなかった。
思っていたよりも左肩の傷は深刻らしい。
そういえば何だか左腕の感覚がなくなってきているような気がする。
もしかしたら神経がやられてしまったのかもしれない。
「全く忌々しいったらないなぁ……先輩を殺す前に子供を皆殺ししたいなぁ」
もちろん最優先は今朝のあの少年だ。
でもその前に。
スコープで確認すると、金髪の少年の姿はもう見当たらなかった。
どこかに隠れたのか。
隠れたとしたら屋上から降りて別の建物に入ったか、もしくはあの貯水タンクの陰か……
「早く出てきなよ……ふふふふふふふふ」
今度は絶対に外さない。
左肩と左腕がこのままな限り獲物を狙っても結局同じ事になる、という簡単な予想をたてる理性すらなくした中川は、
止めどなく笑いながらスコープを覗き続けている。





本日何度目かの銃声に、跡部景吾は体を強張らせた。
(……近ぇな)
今までのどの銃声よりもはっきりと大きい。
建物の陰に回り込み、息を殺して様子を窺う。
(ナルトは無事か?)
上を眺めてみてもナルトの姿は見えない。
あの騒がしい忍者はどこに行ったのだろう。
(まさか撃ち殺されてねぇだろうな)
一抹の不安が脳裏をよぎる。
ナルトのスピードがあればそう簡単に狙撃されることはないと思うが、
先程までの油断しまくっていたナルトの様子は、跡部を安心させるには程遠いものだった。
これが一輝なら、こんなに不安にはならなかっただろうが。
「……確かこのビルだったよな」
今、跡部の目前に立つこのビルの壁を、ナルトは登っていったはずだ。
(念のためだ)
人の心配をしてやるほどお人好しな性格ではないのだが、高い建物の上に行けと指示したのは自分だ。
もしナルトに何かあったら、自分にも少しの責任はあるかもしれない。
そう思い、足音を立てないように注意しながら階段を駆け昇る。
途中でまた、近くで銃声が響いたが、跡部が足を止めたのは一瞬だけだった。
屋上の扉を慎重に開く。
跡部がまず目にしたのは、転々と散らばる血痕だった。
「跡部!!」
名前を呼ばれ振り向いた跡部の耳を弾丸がかすめていく。
「ッ!!」
「こっちだってばよ!」
給水タンクの陰から、ナルトが必死に手招きをする。
素早くそこに転がり込んだ跡部は、状況を悟り舌打ちをした。
「おい。どこから狙撃されてるかわかるか」
「それが全っ然わかんねーってばよ……」
ナルトの情けない声に跡部は再度舌打ちをする。
このビルの屋上は丁度中央に、跡部が登ってきた階段へと続く扉がある。
出入り口はそこだけだ。
今、跡部とナルトが隠れている貯水タンクはその扉の南西に設置されていて、高さはおよそ2メートル。
この陰に入ってから弾丸が飛んでこないということは、狙撃者は貯水タンクを背にした正面である西側にはいないのだろうか。
先程扉を出た途端に狙撃されたことを考えると、
東の方――――しかも、このビルと同じくらいの高さの建物に潜んでいると考えるのが妥当なところか。
(なんとかして階下に降りねぇと)
相手の正確な位置を掴めないこちらが圧倒的に不利だ。
狙撃者が高いところにいるのなら、遮蔽物の多い地上の方が隠れやすい。
「おい、ナルト。どうにかして下に…………テメェ!撃たれたのか?!」
改めてよくナルトを見ると、その右腕にはべっとりと血が滲んでいる布が巻かれている。
先程別れた時にはなかったものだ。
「ちょ、ちょっと油断しただけだってばよ!俺ってば怪我とかには慣れてるしたいしたことないって!」
「テメェは本物の馬鹿だ!撃たれてたいした事ないわけないだろうが!!」
ナルトのやせ我慢に跡部は怒鳴り声を返す。
あれほど注意したにも関わらずやっぱり油断したナルトに、跡部がもう一怒鳴りしようとしたその時。

「確かに普通の人間が撃たれるのはたいした事だろうね」

突然聞こえた声に、跡部とナルトは息を呑んだ。
扉から現れた人物は二人。
形容しがたい妙な全身タイツとマスクを身につけた細身の男と、これまた形容しがたい髪型の、頬に変なマークの入った男。
どこか道化師のような出で立ちの二人の男は、少年達に笑顔を向けた。

「派手に銃声が聞こえたから街に出てきてみれば……早速獲物を発見できるとは」
「ツイてるね★」



――――ただの、人間じゃない。
直感的に跡部はそう思う。
見た目も異常だが、この状況を楽しむような会話と口調が気色悪すぎる。
そして何よりも、今まで感じたことのない程の危険な雰囲気。
跡部の隣にいるナルトも、明らかに警戒した眼差しで二人を睨んでいる。
(チッ……どうするか……)
どこからか銃で狙われ、目の前には危険そうな二人組。
間違いなく絶体絶命、という状況に、跡部は衝撃貝を装着した右手を握りしめた。





【福岡県(市街地)/朝】

【跡部景吾@テニスの王子様】
【状態】健康、襲われたらやり返す覚悟を決めた
【装備】衝撃貝(インパクトダイアル)の仕込まれた篭手@ONE PIECE
【道具】荷物一式(少量の水を消費済み)、アバンのしるし@ダイの大冒険
    フォーク5本、ソーイングセット、ノートとペン、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
【思考】1.現状をどう脱するか考え中
    2.乾と越前を捜す

【うずまきナルト@NARUTO】
【状態】右上腕に弾丸貫通(応急処置はしたがまだ出血中)、空腹
【装備】無し
【道具】支給品一式(1日分の食料と水を消費済み)
    ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
    フォーク5本、ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
【思考】1.目前の二人組(パピヨン、ヒソカ)への対処
    2.サクラ、シカマルを探す
    3.主催者をやっつける

【中川圭一@こち亀】
 [状態]:左肩を負傷、精神不安定、錯乱気味
 [装備]:スナイパーライフル(残弾14発)
 [道具]:荷物一式、ベアークロー(片方)@キン肉マン
 [思考]:1.金髪の少年(ナルト)の狙撃 
      2.両津を探して射殺する
      3.優勝する

【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:健康
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金(ニアデスハピネス少量消費)
 [道具]:荷物一式(食糧二食分消費)
 [思考]:1.目前の少年達から首輪を手に入れる
     2.知り合いとの合流、ヒソカと行動

【ヒソカ@HUNTER×HUNTER】
 [状態]:健康、全身に軽い打撲、裂傷(処置済み)
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式(食糧一食分消費)
 [思考]:1.目前の少年達から首輪を手に入れる
     2.剣八を含む強者と戦いたい
     3.知り合いとの合流、パピヨンと行動


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147:15少年の受難 跡部景吾 155:変相・変奏
147:15少年の受難 うずまきナルト 155:変相・変奏
147:15少年の受難 中川圭一 155:変相・変奏
118:papillon / magicien パピヨン 155:変相・変奏
118:papillon / magicien ヒソカ 155:変相・変奏

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最終更新:2023年12月11日 15:24