0219:別離
「たけすぃ、ワシはコイツと試合をしてからすぐに後を追う。だからたけすぃは早く本州に行くんだ」
夷腕坊の傍らでストレッチしていたキン肉マンは、
たけしにそう言って諭していた。
「キン肉マン…それはできないさ」
「なんでじゃ?」
「まだキン肉マンとランチを食べてないさ」
「たけすぃ、何を言ってるんだ。今こうしてる間にも」
「何してんだ。早くしろ」
夷腕坊の上で待ちわびる剣八。
「キン肉マン」
笑顔でキン肉マンに促す
たけし。
「たけすぃ、お主…」
話をはぐらかす
たけしの笑顔を見て、彼はすべてを理解した。
一瞬二人の目が合う。コクリと頷く
たけし。キン肉マンは
たけしを一瞥すると、直ぐ様夷腕坊に飛び乗った。
「…すまん」
「30分の辛抱さぁ」
たけしはもう一度にっこり笑うと、二人分のデイパックを肩に掛け傍を離れた。
「小僧、そこは暑いだろ。此処なら割と涼しいぜ」
「お、サンクス。あんたはマジョルカの友達的存在か?」
木陰から呼び掛ける男に
たけしは促されるまま近づいた。彼の名は志々雄。
火傷した肌を覆う包帯は一見するとミイラそのものである。
「よいしょっと、て…うわぁーっ!大丈夫かぁソレ!」
「ん?包帯のことか?」
「いやいや、大ピンチだぞ髪の毛」
「…珍妙な処に気をかける小僧だ」
済し崩しに志々雄と
たけしは会話を始めた。夷腕坊に時々注意を向けながら。
「おい。スグルっつったか」
「皆はワシをキン肉マンと呼ぶがのう…なんじゃ」
思い出したように剣八が話し掛け、それに応じるキン肉マン。
「じゃあキン肉マンよ、俺様が勝てば手前ェの命はねえ。
だが俺様が30分以内に手前ェを斬れなかったらどうなるんだ?」
「コイツ…あっさりワシの勝利を否定しおって…時間切れなら引き分け、痛み分けじゃな」
「そうか…」
「今度はこっちが聞いてもいいかの?」
「なんだ」
「ワシが勝っても命はとらん。さっき言った理由での。
そのかわり…まあ隠していても始まらん、もしワシが勝てば、その時はワシ達の仲間になってほしい。
そして、共に主催者を倒してほしい」
「断る」
「ゲェ、断られても」
「主催者を倒すのは俺だ。それと面白そうな奴がいりゃあ俺は闘る」
そう言うと剣八は刀で肩をトントンと叩く。
瞬間。二人の目が合う。
ニヤリと笑う剣八を見て、キン肉マンは確信した。
「剣八…おぬし、マーダーではないな?ワシと同じ、強い志を持っているように感じる」
「俺は強い奴と戦うのが好きなだけだ。ただそれだけだ…と、長話が過ぎちまったな。そろそろ闘ろうぜ?
たけしが手前ェに心配掛けまいと譲った時間だ。さっさとやっちまおうや」
「剣八…」
慈愛の眼を一瞬、剣八に向けると、キン肉マンは胸を大きく反らし、息を吸い込む。
『これよりキン肉マンvs
更木剣八による試合を行う!!
制限時間は30分!エリアは四方4×4mココ、夷腕坊の上!!ギブアップするか3秒間フォールで決着する!!』
剣八が刀を構える。キン肉マンがファイティングポーズをとる。
『試合…開始!!!!』
どこからともなくゴングの音が響いた――!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「オゥルアッ!!」
「おわぁーっ!!」
一人の男が刀を振るい、一人の男は転げ回る。
「手前ェ逃げてばっかりじゃねえか!!さっきの威勢はどうしたァッ!!」
「アホかー!刀なんぞに斬られたら死んでしまうわい!!」
「当たり前だはははははははははははは!!!!!」
「ぎぇぇェ!」
試合なのかコントなのか。
戦闘狂の剣八と天然のキン肉マンの戦いは開始から15分経過していた。
狂喜乱舞する剣八。七転八倒するキン肉マン。
死神と超人は戦いを純粋に楽しんでいた。
「…煩い」
木陰からボソリ、声がした
「あぁ…うるさいな」
もう一つ、声がした
「志々雄のかあちゃんの鼾」
芝生に腰掛け試合を観戦する志々雄と
たけし。何気なく志々雄は尋ねた。
「………
たけし。お前、行かなくていいのか?」
「ん?何がさ?」
「…敵討ちだ」
たけしが子供であり、彼自身が人の闇を知らないからか。彼らは今迄あった出来事を僅かながらも共有していた。
たけしは志々雄の問い掛けにしばらく俯いていたが、直ぐ様にっこり空を見上げる。
老けた顔をしているが、その瞳は赤ん坊より“潤”粋だった。
「俺は…
ゴン蔵が大好きさぁ。」
ゆっくりと立ち上がり、大きく背伸びする
「~でもキン肉マンも大好きさぁ。ほっとくわけにはいかないさ」
志々雄はあぐらをかいたまま、微笑を浮かべた。
「そうか…俺なら居ても立ってもいられないがな」
奇妙な関係ではある。かたや維新志士。かたや7歳のリーダー。
しかし二人とも、木にもたれ静観していた。まるで父子が戯れるように。
――志々雄は以前から考えていたことがある。
彼の中にある、弱肉強食という名の正義について。
彼の目的は全員殺し生き残ること。ゆくゆくは剣八、ヒソカとパピヨン、剣心を倒し、もとの世界に戻ること。
――つまりこの小僧は、邪魔だ。
愛する由美ですらこの国を手に入れる“正義”のためなら、手に掛けられる覚悟はある。
ならば、この小僧を手に掛けることなど、造作もない――
だがもし、彼を殺るならば、剣八と同等若しくはそれ以上の力をもつ男、キン肉マンが黙ってはいないだろう。
それに、剣八も一本筋の通った男だ。何をするかわかったものではない。
それになにより、15分しか戦えないという最大の弱点がある。
志々雄は思考する。彼がもとの世界に帰るため、最速最良最善の一手を。
数を減らす。敵を一度に多数作らない。そして誰かが持っているであろう最強の武器、無限刃を手に入れる。
そして、長時間戦える場所に行く――
(蝦夷地が封鎖されたなら東北か。そこならこいつらに邪魔されずにこの小僧を殺れる。ククク――)
志々雄は微笑より小さな微笑を含むと、ゆっくりと立ち上がった。
「
たけし、行くぞ」
「え?ウ〇コか?」
「本州だ」
志々雄はそれ以上言わなかった。代わりに
たけしに眼差しを向けた。
たけしはどう思うだろうか?人の闇を知らないこの少年は――
「志々雄――」
開始から25分が経過し、未だ二人の戦法は変わっていなかった。
剣を振るう剣八。転げ回るキン肉マン。
「手前ェ、いい加減に…」
「そうか、そうじゃの。そろそろワシからも攻めようかの。太刀筋も見切ったことじゃし」
「あぁ?」
「ただ逃げ回っているだけだと思っておったか?」
にゃ~、といやらしく笑うキン肉マンを見て、剣八は青ざめた。
(こいつ、こんな顔して妙に戦法気取りやがって。だが関係ねえ! )
「ウォラァッ!!」
剣八がムラサメブレードを振るう。上段、初速は十二分。
しかしキン肉マンは、その詠嘆の振り下ろしに完璧なタイミングで――パンツを下ろした。
「…ここじゃあっ!!真剣おケツ取りぃ!!」
ぱっくり割れた尻に吸い込まれるムラサメブレード。これまた完璧なタイミングで腰を大きく右に振る。
刀は明後日の方向に飛んでいった。
「チィッ!」
剣八は一瞬怯んだものの、頭に裏拳を合わせる。
しかし裏拳は頬をかすめるだけ、一瞬速く懐に入ったキン肉マンにブリッジの体勢をとられる。
跳ね上がる
更木剣八。たちまち天を仰ぐ体勢になる。
「そりゃあ!」
剣八の躰に後れを取った四肢は、キン肉マンの四肢と複雑に絡み合う。
「ロメロ・スペシャル!!」
「グァッ!!…」
空が、蒼いな―――
俺も、青い――
ダァァンッッ!!!!
キン肉マンの背が夷腕坊に叩きつけられる。その衝撃は、すべて更木の関節に届けられた。
「よっしゃあ!見たか、たけすぃ!!」
夷腕坊からの跳ね返りで空中分解する二人。上手く着地したキン肉マンはにこやかに振り返る。
「たけすぃ……?」
【福岡県・街道/日中】
【キン肉スグル@キン肉マン】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(一食分消費)
[思考]:1.更木を倒し仲間にする
2.ゴン蔵の仇を取る
3.仲間を探す(バッファ、ウォーズ、ラーメン、ボンチュー、マミー)
【更木剣八@BLEACH】
[状態]:軽度の疲労、股関節・両肩の軽い炎症、全身に軽度の裂傷
[装備]:なし(ムラサメブレード@BASTARD!! -暗黒の破壊神-は近くの木に刺さっています)
[道具]:荷物一式、サッカーボール@キャプテン翼
[思考]:1:キン肉マンを倒す
2:志々雄、ヒソカらと決着をつける
3:強豪を求め本州へ向かう
【たけし@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]:健康
[装備]:パチンコ@ONE PIECE(鉛星、卵星)、キメラの翼@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式
[思考]:1.ゴン蔵の仇を殺した犯人を倒す。(ただし大体の位置が分かるものの犯人はわかっていない)
2.主催者を倒す
3.仲間を探す(ボンチュー、マミー、バッファ、ウォーズ、ラーメン)
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:全身に軽度の列傷
[装備]:ゴンの釣り竿@HUNTER×HUNTER
[道具]:荷物一式
[思考]:1:長時間戦える東北へ向かう
2:無限刃を手に入れる
3:全員殺し生き残る
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最終更新:2024年03月10日 01:17