0227:関西クエスト





婦人警官の襲撃から1時間弱は経っただろうか、越前は決死の思いで自転車を漕ぎ続けている。
新八と不本意ながらも別れた地点が大阪と京都の境。
そこから自分は京都へ、新八は大阪を経由し、琵琶湖で合流する予定だ。

走る道は次第に細くなり緑が濃くなる。やがていくつかの分岐に分かれ、選択を迫る。
越前はペダルを漕ぐのをやめ、地図を広げて現在地の確認をした。
その間に、忌まわしい放送が響く。
自分の仲間―――乾、跡部と、新八と、その仲間―――沖田の名は呼ばれていないことに安堵し、
犠牲者の数に苛立ちを抱えながら走り出す。

越前はもはや、放送が真実である事を全く疑っていなかった。
一回目ならまだしも二回目以降の放送で嘘をつくメリットなどないし、
誰がどこで会うかわからない状況なら宣言されたはずの「死者」に出会う可能性も出てしまう。
そんな容易にばれる嘘をついて何になる。殺し合いの起爆剤にするなら見せしめと爆弾付きの首輪だけで充分だ。
先輩の乾なら、おそらくそう考える。そして、新八はまだ探し人が生きていると信じている。

―――琵琶湖で待ってるから!!―――そう言い残し、去っていった新八。
彼の言葉のままに走り続けてしまったが、新八の体力を考えれば後を追うべきだったかもしれない。
実際、自称婦人警官が引き返さなければ、そうするつもりだった。
越前は滅多にしない後悔を何べんも繰り返す。

新八の向かった先。琵琶湖のある滋賀県に行くには大阪、京都を突っ切らなければならない。
疲労し、徒歩以外に交通手段をもたない新八には酷なコース。
まともに進めば、自転車を使う自分の方が遥かに早く湖に到着してしまう。

(無事でいてよ!新八さん・・・)
放送で呼ばれなかったといって安心してはいられない。
この瞬間にも誰かに襲われているかもしれない。見えない分、不安は高まる。

相手が弾切れを起こしたからよかったようなものの、
あのタイミングで撃たれてたら確実に新八は死んでいた。自分も炎の餌食になっていただろう。
躊躇せずに自転車で体当たりするべきだった。しなかったのは、やはり女性だったからである。
そして、あの男(藍染)も同じく、笑顔で人に近づき油断を誘う腹立たしいやり方をした。
そんな奴を信じる価値はあるのか?越前はまだ迷っていた。

あの胡散臭い男(藍染)の話が仮に本当だとして、琵琶湖に集まった人間達が脱出できたとする。
殺し合いとは無縁の大多数の人間は一様に喜ぶだろう。
だけど、帰れたとして
―――監督になんていえばいい・・・?
竜崎の祖母に、なんと言って説明する。
理不尽なゲームに巻き込まれて気がついたら死んでました、とでも―――云うつもりか。
――――安穏と脱出して、それでいいのか?――――
そんな考えが頭をよぎった。

ここから近い明神高速道路を使い自転車でとばせば20分ほどで滋賀に着くが、
危険性を無視してまで選択するような愚挙は犯さない。身をもって体験した新八も同様に使わないだろう。
線路沿いも待ち伏せの可能性がある。もう誰もが考えるようなわかりやすい進路は避け、山道や岩場を。
そして、少しでも新八と合流しやすいように大阪寄りに沿う道を選ぶ。

幸いな事に支給品の自転車(本当は新八のだが)はマウンテンバイク並に頑丈であった。
車体をガタガタ鳴らしながら越前は濃緑の森の中を駆け抜けて――――

ようやく、目的の湖が姿を現した。

大きい。ソレは越前の想像を越えた巨湖であった。
湖沿いに商店が並び、遠目にはホテルやログハウスが見える。
ボートや汽船の類は一切見られず湖面は群青に染まり、そこを悠々と鴨が泳いでいる。

他県から山間を縫って流れ込む河川の水がさらに湖の膨張を促しているように見える。
いったいどこでどう待てばいいのやら。
越前は自転車から降りて、商店の奥で腰を下ろした。さすがに膝が笑っている。
日陰で疲弊した身体を冷やし、喉を鳴らして水を飲んだ。
渇きを潤すには不十分だったが、残りの水量をチェックし蓋を閉める。
水は貴重だ。目の前は水の宝庫だが、絶えず流れる清流と違い、湖は水草や苔の住処となって青黒く、水面に近づいても底が見えない。
そのまま飲水するには抵抗があった。

藍染の言った脱出。こうして現地に着いてみると、彼の思案は見当もつかない。
とりあえず考えられるとしたら―――集めた人間たちで会場にいた主催者を名乗る男たちを倒す。
首輪で命を握られている身にそれができるだろうか。

この広大な水場を利用した作戦?
湖や、湖を囲む山から食料を調達する事も可能だろう。
食料と水を確保した上で持久戦。集団で役を分担すれば数日の滞在は不可能ではないかもしれない。
業を煮やした主催者が降りてきて、そこを皆で総攻撃、とか。

う~~ん?「脱出」とは少し違うような。越前は首の異物を触る。24時間死者が出なければ首輪は爆破される。
そのルールがある限り、いくら食料が確保されようと命は主催者の手に握られたままだ。
結局、首輪の問題に行きつく。堂々巡りだ。
それとも新八の言っていた技術者―――船云々の話ではなく、首輪の解体ができる者―――を求めて、か。
しかし、藍染は人を多く集めろと言っただけで、そういった技術の話は全くしてないし。

ここで無駄な時間を浪費しても仕方ない。大阪に近い湖側に移動しようと、少々の休息も切り上げて越前は自転車を引いた。
食料以外の荷物は増やさない方がいいと判断し、商店の探索は止める。
あとは・・・合流後のことも考えて休息できる場所も探しておく必要がある。

安全で目立たない、見つかりそうにない場所。
汗を拭った越前の目に入ったのは湖畔に並ぶ観光客向けの小さなログハウス。

木を隠すなら森というし、盲点といえば盲点か。





~~~~~~




窓を覗くと、少年と、金髪の女性がいた。
しきりに何か話し合っているようだが、壁に耳を当てても分厚い木材に遮られ越前には全く聞こえない。

観察していてもラチがあかない。
回りくどい事が大嫌いな越前は、2人の会話が(誰かを殺す相談じゃなければいいや)くらいに思いながらドアをノックした。

ドンドンドンドン!!

これから琵琶湖で新八を待つなら、味方は絶対に必要だ。
脱出の可能性があることを伝えるにしても、人数は多いほうが。越前は深めに息を吸う。

「お邪魔しまーす」
金髪の美女は銃を構え、少年は女性を庇うように身構えている。
部屋の空気が緊張に満ちている。
各種の武器が支給されていることは承知しているはずだったが、間近で見る小銃は首輪以上のプレッシャーを感じる。
この女性が短気でないことを祈りながら越前は両手を挙げた。

「・・・子供?後ろを向いて壁に手をつけなさい。ごめんなさい、悪く思わないでね」
思いがけない闖入者に麗子は驚きを隠せない。
物騒なゲームだというのに星矢といいキルアといい、この子供の多さはなんなのだろう。
麗子は銃を星矢に渡し、手早く越前の衣服をチェックする―――走ってきたらしく服は汗で濡れていた。
それから武器を所持していない事を確認し、向かい合って質問を開始した。

「私は秋本・カトリーヌ・麗子。警察官よ。こっちの男の子は・・・」
「星矢だ。よろしくな」
妙に堂々とした態度。だが、星矢の挨拶には答えず、ドアを背にそれ以上は一歩も前に進まない。
いつでも逃げられるポジションを陣取り、イスを勧める麗子の誘いもやんわりと断る。
星矢は不遜な少年の態度に引っかかるものを感じたが、状況が状況であるし、何も言わなかった。
麗子もそれに気付くが、あえて触れない。信用してもらう方が先だと考える。
「貴方の名前は?どこから来たのかしら」

「青学、越前リョーマ。気がついたら兵庫にいて・・・」

越前は立ったまま、これまでの経緯を軽く話した。
 東京に向かうために一般道路を使ったこと。藍染という変な男に絡まれ、支給品を盗まれた事。
 男(火口)、襲ってきた婦人警官のことは伏せ、新八のことも言わなかった。
まだ信頼できない人間にわざわざ全てを話すことはないと考えて。

ところが、語りが藍染のくだり―――『脱出』に入った時、それまで黙って聞いていた星矢が突然、怒りに満ちた声を上げた。

「藍染・・・!!アイツ、そんなことを言いふらしてやがったのか!!」
自分と同世代か、少し上だろうか。星矢の激昂に不穏なものを感じ、越前は聞き返す。
「・・・なに?あいつのこと、知ってるの?」
「知ってるも何も、俺たちはあいつを追ってここまで来たんだよ!あいつは・・・」

「星矢ちゃん、落ち着いて。最後まで聞きましょ。あなた、その男に会ってよく無事だったわね」
「・・・藍染ってそんなに、ヤバイ奴なんすか?」

「アイツは石崎さんを、俺の友達を殺したんだ!!」
星矢が怒りを吐き出すようにテーブルを叩いた。軋みが床に伝わり、木目に拳の跡が残った。

「ふぅん・・・(ヤバイな、泥棒どころのハナシじゃないみたいだね・・・)
 じゃあ、アイツの言った脱出の話も期待しないほうがいいみたいすね」

「ううん、それがそうとも言えないのよね。あの男が脱出に関してなんらかの手段をもってるのは間違いないの。
 ただ、それを餌に人を集めてるのが気になるのよ。
 私たち参加者は国も年代もバラバラの世界から集められてる・・・支給品もそう。
 人によっては不思議な能力を使ったりするわ。あの男は人の命より、その力の秘密を欲しがってた。
 おそらく、人を集める本当の理由はソレでしょうね・・・」
麗子は太公望の言葉を思い出す。

 ―――ならば大阪の北東にある、この琵琶湖という湖に行くがよい。
    あやつはその身を休めながら、街から水を求めてやってくる者たちを襲うつもりだろうからのう

「結局、太公望さんの言った通りになったわね・・・それも噂で人を集めるなんて、ね。
 頭の良い、いえ、呆れた男だわ」
困ったように(実際困っているのだが)麗子がため息をついた。

琵琶湖周辺は広すぎる。人が集まりだせば自分達の手では止めようがない。眉根を寄せて考え込む。
(どうしよう・・・ここから四国は時間がかかるわね。
 太公望さんに伝えたほうがいいと思うけど、その間に人が来たら、藍染にどんな目に遭わされるかわからないわ・・・)

「でも、一応、そいつには脱出の策があるのは確かなんでしょ?
 だったらなんとか捕まえて締め上げちゃえばいいじゃん」
「だから、それはもう俺たちでやったんだよ!・・・すぐ逃げられたけどさ」
(ちくしょう・・・藍染!!できるなら、今すぐこの手で殴ってやりたいぜ・・・!)
星矢はすぐにでも藍染を探し捕まえてやりたい衝動に駆られる。
だが、それはできない。キルアが去った今、戦力はたった2人。
麗子を危険に巻き込むことなどできなかった。

「リョーマちゃん、あの男は人を殺す事なんてなんとも思っていない冷酷な男よ。
 それに私にはよくわからないんだけど、とっても強力な武器を持ってるんですって。
 この人数で迂闊に近づくのは危険なのよ」
麗子は越前に岡山での出来事を話す。男の危険性をわかってもらうために、細かく、丁寧に伝えた。

「・・・そーすか・・・そんなことがあったんすか」
藍染の予想を越えた非道ぶりに越前は驚きを隠せない。
そして、越前は新八がいるであろう―――大阪に向かうことを考える。
(・・・新八さんは今頃どの辺りかな?あと1、2時間はかかるかもしれない・・・)
「お前、まさか、アイツの言ったことを真に受けて他の人たちに言いふらしたんじゃないだろうな?」

(・・・・・・早く教えないとややこしい事になるし、いっそ迎えに行った方が・・・)」
星矢の問いが越前の耳を素通りしていく。
返事をしようともしない越前の態度に、星矢が苛立つ。
「黙ってないで答えろよ!!また犠牲者が増えるかもしれないんだぞ」
星矢が越前の胸倉を掴む、肘がイスに当たり音を立てた。

「うるさいな、大声出さなくったって聞こえてるよ・・・だから少し黙っててよ」
「なんだと!!聞いたのが俺たちだったから良かったようなものの、
 他の何も知らない人間だったら藍染の餌食になってたかもしれないんだぞ!?」
ぐっと言葉に詰まる越前。たしかに迂闊だったのかもしれないが。

「落ち着いて、星矢ちゃん。リョーマちゃん、貴方はいつ頃、藍染に会ったの?」
「・・・今日の午前中っスけど」
「それならそんなに時間は経っていないわけね。リョーマちゃんは誰かにこの話をしたの?」
「俺はしてないっす。今初めて他人に喋りました。
 でも・・・大阪の近くで別れた友達が、この話を本当だと信じているんです」
「そう・・・その子から他の人に伝わる可能性があるわけね」
越前が頷き、星矢はまた慌てだす。
「そんな!!くそっ、どうしてあんな奴の言う事なんか信じるんだよ!」
納得がいかない。何故、あれだけ冷酷な男の言う事を簡単に信じるのか。
脱出さえできればそいつの人間性なんてどうでもいいのか。
声を荒げる星矢を越前は冷ややかな目で見つめる。
「・・・逃がした奴に責められる筋合いはないね」
「―――お前!!」





            「星矢ちゃんもリョーマちゃんも落ち着きなさーい!!!」





お母さんの一喝が窓ガラスを震わせた。星矢も越前も心臓が止まる。
「もう!今はケンカしてる場合じゃないでしょ!」
麗子は(普段、両津を叱るときのように)顔を上気させ、2人の子供を叱りつけた。

「星矢ちゃん。こんな状況で親切に話し掛けられれば誰だって信じるわ。
 こんなゲームから抜けられるんなら、少しくらい怪しくても信じてしまうのが普通なのよ・・・
 どうしようもないの。リョーマちゃんを責めるのはよしなさい」
「でも、麗子さん」

「星矢ちゃんは、藍染のことでこれ以上犠牲者がでるなんて嫌なんでしょう。
 私も嫌だわ。そんなこと。絶対に。
 でもね、リョーマちゃんが私たちに藍染の話を伝えたのは、1人でも多く助けようとしての行為でしょ?
 敵になるか味方になるかもわからない状況で簡単にできることじゃないわ。
 リョーマちゃんのお友達も、きっとそんな想いから行動してる。それは誰にも責められる事じゃないの。
 許せないのは、そんな優しい子達の心を踏みにじって利用しようとした藍染よ」

ね?麗子が微笑む。彼女の言葉からは新八と同じ、暖かいものを感じられた。

「・・・・・・」
越前は思う。彼女の目の下の涙の痕は、おそらく死んだ仲間のために流されたものだ。
突然、銃撃してきた警察官とは違い、この異常な状況下でも自分を見失わない強さと冷静さを保っている。

―――ひょっとしたら、あの警察官は誰かを失い、誰かを殺してしまった反動でおかしくなってしまったのだろうか。
それならば、新八は―――仲間の本当の死に気付いた時、どうなってしまうんだろう。

「星矢ちゃん、すぐ四国へ向かいましょう。まだ噂も広まってない今ならまだ間に合うかもしれないわ。
 一刻も早く太公望さんの元へ行って、そのことを伝えなきゃ。
 リョーマちゃんもよ。少し休んだら私たちと出発しましょ」

「・・・ちょっと待ってよ、俺はいいよ。その友達、こっちに向かってきてるはずだから。
 勝手に移動するわけにはいかないんスよ、ここで合流する予定だし・・・」

「だったら、あなたのお友達を待つわ。もしも人を連れてきたら一緒に逃げればいいし。
 四国にね、太公望さんっていう頼りになる仙人さんがいるの。
 彼なら藍染の計画を止める妙案があるかもしれないわ。
 一度そこに行って作戦を考えましょう」 

「でも麗子さん、俺たちが離れてる間にもしも誰かが琵琶湖に来てしまったら・・・」
星矢は戸惑う。彼の協力が得られれば確かに頼もしい。
だが藍染の本性も知らぬまま、琵琶湖に誘い込まれて餌食になるのをみすみす見捨てる事はできない。
それに藍染のことを抜きにしても誰かがやってくる可能性はあるのだ。

「う~ん・・・そこよねぇ。普通に水を求めてやってくる人もいるでしょうし。
 噂に関してはリョーマちゃんのお友達に話を聞いてから対応しましょ。
 こんなとき携帯電話があれば苦労はしなくていいんだけど、盗られちゃったしね・・・」

麗子の発言で迷っていた越前の覚悟が決まる。行動は早いほうがいい。
「・・・・・・待たなくたっていいすよ。俺が大阪行って探してくるから、2人で行けばいいじゃん」

「ちょ、ちょっと待って!なんでそうなるの、1人でなんて行かせられないわよ」

「なんでって・・・その方が早いし。
 そんでここに戻り次第、来た奴を片っぱしから追い払えばいいんでしょ?
 やったろうじゃん」 

「危険すぎるわ。すれ違いになってしまう可能性だってあるんでしょ」
本当は、気を失っている隙に離れていってしまったキルアも止めたかった。

「大丈夫っス、行きます」
その自信はどこからでてくるのか。言い出したら聞かない強引なタイプ。
強い眼差しは、子供がそのまま大人になったような困った同僚を思い出させる。
(・・・根拠もないのに強がって。本当、男の子って意地っ張りね、両ちゃん)
麗子は長いため息をつき、そして、気分を変えるように首を振り、

「わかったわ・・・気をつけて行ってらっしゃい。だけど絶対に無茶しては駄目よ?
 お友達と無事に帰ってきなさい。約束よ」
―――ウス、越前は帽子をしたまま、麗子に小さくお辞儀した。


(じゃあ、俺たちはこれから四国に行くのか・・・
 俺はいいけど、麗子さん、ちゃんと疲れは取れてるかな・・・クソっ、藍染の奴・・・!!)
星矢は食料の残りや荷物をデイパックに詰める。出発が早くなったことは構わないが、彼女の体力が心配だった。
仲間を失って間もないのに気丈に振舞っている麗子を、また移動の旅に連れ出すのは気が進まなかった。
「麗子さん・・・」
「星矢ちゃん・・・あの子についててあげてくれないかしら?
 私が太公望さんのところへ行ってくるから」

「だ、駄目だよ、麗子さん!何言ってるんだよ!」
(とんでもない!1人でなんて行かせられない、なんでそうなるんだ!?)

「藍染がどこに潜伏しているかわからないのに、リョーマちゃんを1人きりにして出かけるわけには行かないでしょ?
 大丈夫よ。大阪にはキルアちゃんもいるし、3人で協力すれば見つかりっこないわ」
――――トン、麗子の指先が優しく星矢の額に触れた。

「駄目だ!そんなの絶対に駄目だよ!麗子さんを1人にするなんてできないよ!
 どうしても行くってんなら俺が四国に、あ、いや・・・
(馬鹿!それでも結局麗子さんが危ないことに変わりないじゃないか・・・ああ、クソッ!)
 リョーマ!やっぱりお前がここで友達待てよ!隠れてれば安全だ」
振り向いた先に少年はおらず、勢いよくドアが開かれた。
「・・・大阪なんてすぐでしょ。水と体力が残ってるうちに探しときたいんだよ。
 琵琶湖で待つったって広すぎて、この小屋を見つけてくれるとは限らないし。
 それに・・・お人好しすぎて危なっかしいんだよね、あの人。

 デカイ借りもあるしさ」 


(―――ちょっと待てよ、お前はいいかもしれないけど、俺、どうすればいいんだよ・・・)
たった1人で四国に向かうと言い張る麗子。すぐ大阪へ行くと決めたリョーマ。
そして、藍染がどこかに潜んでいるかもしれない琵琶湖。
急に降って湧いた選択肢に困惑する星矢。

「さ、そうと決まれば出発しましょ。星矢ちゃん、リョーマちゃん」
(えええええええ???)

「ちょ・・・麗子さん!」
(麗子さんを止めなきゃ・・・!でも、何て言えば納得するんだろ)
      • 星矢が頭を抱えてグズグズしている間に、2人は荷物を背負って外に出ていってしまった。
星矢は必死に説得の言葉を考える。脳髄フル回転。
今度ばかりは饒舌な太公望が羨ましかった。

「あの・・・・・・麗子さん!」 
思い出したように越前が声を上げた。気が変わったんだな!?・・・と星矢は期待する。

「リョーマ『ちゃん』ての、止めてくれない?」
少年は不本意そうに、少し顔を赤らめて言った。
星矢も不本意そうに、そこだけ同意した。





【初日・滋賀県琵琶湖畔の小屋@日中】

【星矢@聖闘士星矢】
 [状態]健康  
 [装備]なし
 [道具]食料8分の1消費した支給品一式
 [思考]1:麗子を説得したい。
    2:越前の仲間が来たら四国へ行き、太公望達と合流。 藍染の計画を阻止
    3:藍染、ハーデス達を倒す。

【秋本・カトリーヌ・麗子@こち亀】
 [状態]部長、中川の死による精神的ショック(中)
 [装備]サブマシンガン
 [道具]食料8分の1消費した支給品一式
 [思考]1:四国へ行き、太公望達と合流
    2:藍染の計画を阻止
    3:主催者の打倒。

【越前リョーマ@テニスの王子様】
 [状態]少々の疲労、空腹
 [装備]テニスラケット、両さんの自転車@こち亀、線路で拾った石×4
 [道具]荷物一式(半日分の水を消費)
    サービスエリアで失敬した小物(手ぬぐい、マキ○ン、古いロープ
    爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ )
 [思考]1:藍染の行動にムカついている。
    2:新八と琵琶湖で合流(大阪に向かうことを希望)し、藍染の計画を阻止
    3:情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。
    4:仲間(乾、跡部)との合流。

   *越前は竜崎が火口(彼の名は知りません)の手によって殺害された可能性があると思っています。
   *姫路駅付近に埋葬された稲葉響子には気付きませんでした。


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214:安息の時 星矢 273:交錯する想い、光……そして闇
214:安息の時 秋本・カトリーヌ・麗子 273:交錯する想い、光……そして闇
178:試験 越前リョーマ 273:交錯する想い、光……そして闇

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最終更新:2024年03月14日 19:58