0238:魁!!一護100%~火炎交響曲―ReMIX―~





「苺君、大丈夫?」
「あぁ…ワガママ言ってすまねェな…だから、苺じゃねぇって…」

 声の主は、オレンジ色の頭髪の青年と、黒髪の青年。二人が居たのは、東京と埼玉、千葉の県境の更地。
青年、黒崎一護。青年、真中淳平。彼らが居るのは、埼玉と千葉、茨城の県境へと続く道の上。

 あの後、しばし。江田島は未だ戻らず。火勢が強くなったのが、おぼろげに匂いで感じられた頃。なんらかのアクションが必要となった頃。
二人は、避難するのではなく、逆に火元と思われるところへ向かっていった。
それは、一護のたっての希望。誰かを護りたいという、名に込められた、強い意志。

 護りたいものが、ある。それは、二人の共通の意思。護るだけの力が無い真中、護ることのできなかった一護。
護ることができなかった。それが、一護の悔恨の根底。護るだけの力がない。それが、真中のやるせなさの源泉。
共に抱くは、己の無力と不甲斐なさ。そして、今。また、誰かが、傷つけられているかもしれない。

 それは予感。確信は、遥か、遠くから、流れ来る、闘いの狼煙と共に。

 二人の考え。それは、どうにかして、護りたい、護るべき人と合流したい、ということ。
今の自分たちには、誰かを護る力が無い、というのは事実。情けない話だと解っているが、それは現実。

 ―――今の自分たちでは、誰も護れない―――

 ならば、せめて。助けを待つ誰かを、江田島のもとへ送り届けられれば、というのが一護の希望。
その志を無碍には出来ないだけの時間は、既に築きあげられていた。

 分かっている。二人とも。それが、どれだけ無謀なことなのか。
 分かっている。二人とも。それが、どれだけ望みの薄いことなのか。

 それでも、二人は進む。護りたい人が居るから。共に、自分は護られてばかりだと痛感しているから。

「江田島のオッサン、大丈夫か…?!」
「なんでか俺たちより先にいて、名乗りを上げてても驚かない気がするなぁ」
「違ぇねェな…」
「書置きは残してきたし…というより、苺君の方が心配なんだけど…東城と西野とさつきの次ぐらいに…あと、こずえちゃんと、唯と…」
「多いよ!それはその他一般っつうんだよ!!」
「まぁ、冗談は置いといて…少しでもヤバイと思ったら引き返すぜ。流石に、苺君を担いだまま炎に巻かれちまったら逃げられそうにないし」
「すまねェ…っていうか、何度言ったら呼び名を改めんだ、テメェはッ!!!」
「まぁまぁ…悪いけど、俺、苺君と燃えるような関係になるのは、ちょっと…」
「おーい、話が繋がってねーぞー…ヤクでも決めてんのか?」
「でも、苺パンツと共に死ぬってのもロマンチックかもなあ」
「だから!!!俺のパンツは苺パンツじゃねぇ!第一、それはロマンチックとは言わねェ!!!」
「残念…御洒落…もとい、オサレなのはその包帯だけか…」
「人の話を聞けェッ!!つーか、何で言い直したァッ!!」

 二人は進む。真中は一護に肩を貸しつつ、頼りなくよろめきながら。
一護は、痛々しい傷跡を、簡素な布(平八によって引き千切られた一護の上着)で申し訳程度に隠しながら。
二人は進む。その歩みは、まるで這っているようで。その眼差しは、心引き裂かれているようで。

 互いに軽口をたたきながら。折れそうな足を引き摺りながら。折れそうな心を支えながら。二人は進む。
進む先に、目指す人が…護りたい女(ヒト)が…救うことができる存在(ヒト)が。きっと居る、と。
確かに居る、と。そう思って。そう信じて。そう願って。

 二人は進む。確かに進む。這いずるように、喘ぐように。希望に縋り付くかのように。

 …未来に喰らいつくかのように。絶望に引き込まれるかのように。

「でも、苺ってラブコメに出てきそうな名前じゃん。俺はいいと思うけどなぁ」
「あ~、分かった。分かった…もう苺でいい…」
「うー、遅刻遅刻。今学校に向かって全力疾走している俺は空座高校に通うごく一般的な…」
「って、なんで寸劇始めてんだよ!ていうか、なんかいやな予感がプンプンするよ!!」
「…突然、電信柱の陰から出てきた転校生と正面衝突!宙を舞う食パン!」
「って、無視して進めんな!あと、なんだそのありふれたパターンは!!」
「触れ合う指先!絡み合う視線!!熱い吐息…そこに煽りで大きな写植が!!」
「なんでそうなるんだよ!接近早すぎるだろ!!」
「なんと、転校生はヤンキーだった!!…写植は”!?”で決まりだな」
「写植?!って、メンチきってんのかよ!?ていうか、転校生って男かよ?!ていうか、斬新すぎんだろ!!?ラブコメはどこいったんだよ?!」
「お互いに胸倉を掴み合った姿勢で、ヤンキーは呟く…”YA RA NA I KA”」
「だからといってラブコメに戻すなァァァァァァッッッッ!!!!」
「…まさに新機軸!!次の文化祭はこれに決まりかな?」
(畜生ッ…!!突っ込みどころが多すぎる…!!!!)

 進む。進む。二人は進む。互いに軽口をたたきながら。
心に活を入れながら。自分たちはゲームには乗っていないということを、大声で辺りに触れ込みながら。
助けを待っている誰かが、自分たちに気付いてくれるように。
襲っている糞野郎の注意を、少しでも他の犠牲者から逸らしてやれるように。

「これでも俺は未来の大監督だぜ!アカデミー賞ものを撮ってやるよ!!」
「テメェはピンク映画がお似合いだろーが!」
「ピンク映画でアカデミー賞ってのも史上初じゃね?」
「て、否定しねーのかよ!!しろよ!!そんな史上初嫌だよ!!」
「まぁ、このゲームの出来の悪い脚本は、皆でコメディに書き直してやろうぜ…あぁ、俺に東城みたいな脚本の才能があったらなぁ…」
「あぁ、ようやく繋がった。さっきから言ってた、苺パンツの女ってのはその東城って奴か」
「いや、他にも色々」
「ッ!!何でそんなに他人のパンツについて知ってんだよッ!!」

 進む。進む。二人は進む。

 先に待つのは、底すらも見えない地獄の業火。それを知らずに、二人は進む。

 そして。もし、知っていたとしても。それでも、二人は進んで行くだろう。
その足を引き摺りながら。その胸に、消せない炎を纏いながら。底すら見えない、地獄の業火へと。

―――今の自分たちでは、誰も護れない―――

―――それでも―――

―――護りたいヒトは、確かに、在る―――





【埼玉県(県境)/午後】

【真中淳平@いちご100%】
【状態】手首捻挫、中度の疲労
【装備】無し
【道具】無し
【思考】1.炎に対処。危険を感じた場合、一護を連れて避難。
     2.江田島が追ってくるのを待つ。
     3.知り合いとの合流
     4.東京を目指す

【黒崎一護@BLEACH】
【状態】両膝破壊、中度の疲労(名簿に写真がないため、メガネ藍染かオールバック藍染かは知らない)
【装備】シャハルの鏡@ダイの大冒険
【道具】支給品一式
【思考】1.炎に対処。助けを求めている人間が居たら、江田島の所まで連れて行く。
     2.目の前で襲われている奴らがいたら助けたい
     3.朽木ルキアとの合流
     4.東京を目指す


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最終更新:2024年03月24日 06:57