0237:リンスレット・ウォーカーの脳内手記
私の名前は
リンスレット・ウォーカー。
自分で言うのもなんだが、美しき女泥棒である。
さて、私がこんなわけのわからない殺人ゲームの舞台に連れてこられて早半日。
私を取り巻く状況は、徐々に悪い方向へと変化してきていた。
今、私の横には深刻な顔で椅子に座る
ブルマ。そして、目の前のベッドには小柄な坊主頭の青年が寝ている。
問題なのがこの青年。
ブルマの知り合いで、名前を
クリリンと言うらしいのだが、この
クリリンが……どうやらゲームに乗ってしまった殺人者らしいのだ。
目の前に殺人者かもしれない人間。
なぜこんな状況になってしまったか説明するには、時間を少し遡る……
時刻は正午過ぎ。
新たな死者を告げる第二放送が流れ、また多くの参加者が死んだことを知った。
幸いにも、トレイン、スヴェン、イヴ、私の知り合いである三人はまだ健在のようだ。
行動を共にする彼女、
ブルマの知り合いも無事。
しかし彼、
アビゲイルは違った。
ガラ……と、放送でその名が呼ばれた瞬間、彼の難しそうな顔がより険しくなった。
私は、彼とガラという人間がどういう間柄かはよく知らない。
別段悲しそうな姿は見せなかったが、それは単に虚勢を張っているのか、それとも対した知り合いではなかったのか。
どちらにしろ、私が訊くべきことではないだろう。
彼がなにも喋らない以上、余計な気を回すのは野暮というものだ。
ただ、放送後の空気がほんのちょっと重くなっただけ。
そして、問題はここから。
――ズドオオォーーーーンッッッ!!!!!!
突如鳴り響いたのは、轟音。
「な、なに!? なんなの今の音!?」
映画かなんかの撮影!?……いや、そんなものじゃないのはわかりきってる。
でも考えたくない。だって、この状況であんな大きな……爆発音としか思えない音が鳴るなんて!
「まさか……」
一言つぶやき、音のした方へ駆け出す
ブルマ。
まさか? まさかってなんなのよ
ブルマ? なんか心当たりあるの!?
「ふむ。どうやら近くで戦闘が起きているようですね。私たちも追いましょう」
マジぃ!?
結果は案の定。
轟音の元に駆けつけてみれば、ボロボロな姿で倒れている男が二人。
一人は小柄な坊主頭。もう一人は大柄な坊主頭。
……ちょっと、どう見ても戦闘しましたよ、はい。ってな感じなんだけど!
「
クリリン君!」
ブルマが叫んだ。
これが、さっきの「まさか」の意味? 倒れていたのは
ブルマの知り合いってことなの?
と、よく見るともう一人いる。倒れる二人の男のそばに、別の男が一人。
倒れる二人見下ろしながら、その視線を……こっちに。こっち!? こっち見たぁ!?
「二人とも、下がって」
男の視線がこちらに向けられると、駆け寄ろうとした
ブルマを遮り、
アビゲイルが私たちの前に出る。
……ねぇ、やばいんじゃない、これ。
倒れる二人のそばに、男が一人。しかもあの男、鎌か槍かよくわからないもの持ってるんですけど……どう見ても武器よね、あれ。
この状況をどんなに希望的に観測したとしても……
倒れている二人――死体。
男――二人を殺した殺人者。
よね、やっぱり!?
そして今度は私たちを見つめて……やばいやばいやばいって!
「我々は先ほどの轟音を聞いて駆けつけたのですが、そちらの二人は死んでいるのですかな?」
殺人者(仮)に話しかけたのは、
アビゲイル。
「ちょ、こんな時になに悠長に質問してるのよ!?」
私はすぐにでも逃げたいのにぃ~!
「こっちのデカイのは死んでいる。こっちのチビはどうやら気絶しているだけみたいだぜ」
その言葉を聞いて、
ブルマの表情が和らいだ。どうやらあの小柄な方が
ブルマの知り合いで間違いないようだ。
「そうですか……では、それはあなたが?」
「いや、違う。俺もあんたらと同じ、さっきの音を聞きつけて、今ここに来たばかりだ」
男は殺害容疑を否定。って、信じられるわけないでしょうが、普通。
「次は俺からも質問させてもらう……あんたらはこのゲームに乗っているのか?」
「はい、と答えたら?」
アビゲイルが即答……へ?
「ちょっと! 今は冗談言ってる場面じゃないでしょ!? 乗ってない、乗ってないわよこんなゲーム!」
私が男に必死に訴えかけるも、
「俺の前に立つようなら……こっちも容赦はしねぇ」
どうやら私の言葉には聴く耳持たず。男は武器を構えてやる気満々。
だぁぁ~! なんてこと言うのよ、このおっさんはぁ!
「ふふふ……いや失礼。少しあなたを試させてもらいました」
「試しただと?」
「ええ。二人とも、安心してください。どうやら彼の言っていることは本当のようです」
アビゲイルが首をぐるんと回してにっこり笑う。な、なんなのよその気持ち悪い笑顔は。
「私たちに戦意はありませんよ。私の名前は
アビゲイル。あなたは?」
まったく! あのおっさんのおかげで寿命が縮んだわよ!
あの男――
伊達臣人は、本当に殺人者ではなかったらしい。
なんでも、男塾ってところ(うわ、汗臭そうっ)の仲間を探して西から東に向かっていたところ、あの轟音を聞いて駆けつけてきたらしい。
ひょっとしたら、仲間が戦っているのかもしれない、と。
要するに、私たちと同じ理由であの場にいたらしいのだけれど、はっきり言ってそれを証明できるものはなにもない。
けれど
アビゲイルは「大丈夫、彼は嘘をついていません」と言う。
一体なにを根拠にそんなことを。男同士でしかわかり得ないものでもあるのだろうか?
お互いに戦う気がないと確認したところで、
アビゲイルが伊達に情報交換を持ちかけた。
状況が状況。私たちが見つけた真っ二つ死体の殺害者が、もしかしたらまだ近隣にいるかもしれない。
情報と味方は大いに越したことはない。
が、彼の口から得られたのは、私にとってはいらない情報だった。
彼は、現在私たちがいる地区……福井県という場所で、私たちが見つけたものとは別にもう一体、死体を見つけたというのだ。
厳密に言えば、死体と呼ぶにも疑わしいような無残な姿だったらしいのだが……
そばに支給品らしきカードが置いてあったらしいので、ほぼゲーム参加者と見て間違いないだろう。
私たちが見つけた死体。伊達が見つけた死体。そして先ほど発見した大坊主の死体。
この福井県だけで死体が三つ。
しかも、胴体真っ二つ、人体粉々、左腕消失と、どれも尋常でない殺され方をしている。
もしこれが全て同一人物の仕業となると……その人間は果てしなく危険な存在。
そして現段階で最も疑わしい人間が……そこにいる。
私たちは、近くの適当な民家に、気絶中の坊主頭の青年を運ぶことにした。
今は、外では
アビゲイルと伊達が大柄坊主頭の死体を埋葬中。中で私と
ブルマが彼を看ている。
私としては、死体を見なくて助かるのだが……この役回りもいいとはいえない。
ブルマの話によると、やはり坊主頭の青年は彼女の知り合いで、名を
クリリンと言うらしい。
クリリン――そう、私たちが出会った少女、
北大路さつきを襲った相手と思わしき人物である。
ブルマは、彼がそんなことをするはずはない、と主張していたが、さすがに条件が一致しすぎている。
北大路さつきの証言――見た目は若く、背は低く、服に『魔』の一文字……加えてそばにあった死体。
これで疑うなと言うほうが無理である。
横で座ってる
ブルマも、なんだか深刻な顔してるし……
「ねぇ、リンス」
「な、なに」
「私ね、さっきは絶対違うって言っちゃったけど……」
「う、うん……(うわっ、なんか嫌な予感)」
「やっぱり、私たちが見つけた死体も、
クリリン君のそばにあった死体も」
「…………(ちょ、ちょっと……なにを言い出す気なのよ)」
「彼が、犯人で間違いないと思ってる」
やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!?
「じゃあ、今この人が目覚めちゃったら、私たち危険じゃない!?」
「私は
クリリン君のことをよく知ってる。少なくとも、こんな殺人ゲームに乗るような人間じゃない」
「でも間違いないんでしょ!?」
「きっと理由があるのよ。なにか……じゃなきゃ、彼がこんなことするはずないもの」
「……!」
ブルマの瞳から、涙が一滴、垂れた。
泣いているわけではないが、涙ぐんでいる。
それもそうか。
自分の知り合いがこんなくだらないゲームに乗って、殺人者に成り下がってしまったのだ。
悲しみは、当たり前。
でも……でもでもでも!
やっぱこの状況はまずいって!
私は、この
クリリンって人のことなんてこれっぽっちも知らないんだからぁ!
目覚めていきなり襲われるなんてことないでしょうね!?
「うっ……」突如聞こえた、聞き慣れぬ呻き声。
へ?
へへ?
……ちょ、
――ベッドに横たわる青年が、ゆっくりと、その身を起こした。
ちょっと待ってよぉぉぉぉぉぉ!!?
【福井県・民家の中/午後~夕方】
【クリリン@DRAGON BALL】
[状態]:疲労困憊、気は空、わき腹・右手中央・右足全体に重傷、精神不安定
[装備]:悟飯の道着@DRAGON BALL
[道具]:なし
[思考]1:状況確認。
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
3:ピッコロを優勝させる。
【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
[状態]健康
[装備]ベレッタM92(残弾数、予備含め32発)
[道具]荷物一式
[思考]1、クリリンを警戒。
2、トレイン達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。
【ブルマ@DRAGON BALL】
[状態]健康
[道具]:荷物一式、ドラゴンレーダー@DRAGON BALL、首輪
[思考]1、クリリンに殺人を止めるよう説得。
2、大きな都市に行って、ドライバーのような物を入手し、首輪を解析・ドラゴンレーダーを改造する。
3、ゲームを脱出。
【福井県・民家の外/午後~夕方】
【アビゲイル@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
[状態]健康、海坊主を埋葬中
[装備]雷神剣@BASTARD!! -暗黒の破壊神-
[道具]荷物一式
[思考]1、D・S達、協力者を探す。
2、首輪を入手して分析したい。
3、ゲームを脱出。
【伊達臣人@魁!!男塾】
[状態]:軽度の火傷、行動に支障無し、海坊主を埋葬中
[装備]:首さすまた@地獄先生ぬ~べ~
[道具]:荷物一式
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】
衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす ×1
漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす ×1
[思考]:1、とりあえず、海坊主の埋葬につき合う。
2、剣桃太郎を倒した者との決闘。
3、男塾の仲間と合流。
4、ゲームに乗る気は無いが邪魔をするヤツとは躊躇なく戦う。
※戸愚呂兄の死体のそばにあったカードは伊達が回収しましたが、死体は放置してあります。
※クリリンの荷物[荷物一式(食料・水、四日分)、ディオスクロイ@BLACK CAT]
排撃貝(リジェクトダイアル)@ONE PIECE、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21((残弾数は不明)
その他の海坊主の荷物[荷物一式(食料・水、九日分)、超神水@DRAGON BALL]は民家の中に置かれています。
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最終更新:2024年04月19日 12:30