0268:魁!!一護白書100%~零割分厘(霊活分離)~





荒地に二人の男が立っている。
何処までも続く荒地。精神世界。
『――――という訳でだ、あんたはどう思う?あいつの【覚悟】について』
片方の男が尋ねる。その印象は全身すべからく白。白い服。
≪――――私は、一護が生き残る為の道を示す。その【覚悟】に偽りが無いのなら、力を貸そう≫
片方の男が答える。その印象は全身すべからく黒。黒い服。
『あいつは自ら力を望んであんたを掴んだのさ。だが、あいつは今のままじゃ戦えねぇ、だから俺が代わりに戦って遣るのさ。
あいつは死なせねえよ、約束だ』
≪・・・いいだろう≫
『おお?随分あっさりだな。まあ良いさ。俺も下手な芝居売った甲斐があるってもんだ』
≪?≫
『いや、こっちの話さ。卍解は使えないんだな?』
≪・・・ああ、あの世界では私が具象化することは出来ない≫
『ま、卍解なんてしたらほんとにあいつの体は壊れちまうけどな。じゃあ、いくぜ』
白い印象を持った男が消える。
黒い印象の男は考える。
≪恐らく、奴は一護を騙して私を握らせたのだろう≫
あちらの世界は見えないが、ここに一護が来ないことからも、それは容易に想像できる。
≪だが―――それでも≫
一護が生き残れる可能性が高まるのは間違いない。
≪一護・・・出来れば、自分の意思で戦って欲しいが・・・生き延びろ。私を恨んでも構わない≫
黒い印象の男は、目を閉じた。



話の時間軸は前後するが。

『ヒャーハッハッハァ!』
木霊するは半面が髑髏仮面に覆われた男の快楽に嗤う声。
「うおおおおおおあああっ!!!」
木魂するは全身に紋様を宿す魔人の激痛に耐える声。
その合声、霊魂すら震える共鳴音を生み出して。
半面髑髏は両の手で跳ね上がり。
紋様魔人は両の足で飛び上がる。
半面髑髏と、紋様魔人が空にて交錯する。
半面髑髏が持つはバッグから取り出した鉛筆二本。
紋様魔人は己の拳で。
魔人の皮を裂き。
髑髏の腕をいなし。
魔人の腹を目掛けて突き。
髑髏の体を投げ飛ばし。
魔人の右眼を狙って片一本を投擲し。
それを左手でしっかと掴む。

互いに致命の傷は負わず、牽制程度の攻撃を交わし合う。
『わかるかぁ、一護!足なんざ関係ねぇ、霊圧きっちり制御すりゃあ!』
半面髑髏は叫び、死神特有の遁走、【瞬歩】を使って超速で紋様魔人の背後に回り。
『斬月が無くてもこの位は・・・!?』
もう一つの鉛筆を紋様魔人に衝きたてようとした瞬間、腹部に三発の拳打が打ち込まれる。
『ごっ・・・・・・』
20m程吹き飛ばされ、しかし空中でバク転することで何とか足で着地する。メギリ、と鈍い音。
「ぐうう、くそっ!調子乗ってんじゃねえぞてめぇ!近づくなっていってんだろうが!俺は今手加減できねえんだよ!」
頭を押さえながら紋様魔人は叫ぶ。

それを聴いて
にたり
と哂う半面髑髏。

『手加減できねえだぁ?それでこんなもんかよ?』
半面髑髏は挑発の言葉をかける。
『ぜんぜん痛くねぇぜぇ?大層な格好してるわりにゃあ実力が伴ってねえんじゃねえかぁ?』
一度ならず、二度までも。
『ハッハッハッハッハァ!もしかしてビビッてんじゃねえのかてめぇ?』
二度ならず、三度までも。

その言葉は。

元不良で元霊界探偵、現妖怪の紋様魔人の。

「・・・・・・あぁ?」

バトル野郎の血に、火をつけた。

無論その血は頭に上り――――

「言ってくれんじゃねえか、てめえ」
紋様魔人、いや完全に闘る気になった男、浦飯幽助は全力で半面髑髏に突貫する。
『おおっ!?』
自分の瞬歩にも引けをとらないスピードで突っ込んできた幽助に驚くも、ぶつかる刹那前に回転して回避する半面髑髏。

ざざざざざざ、とブレーキをかける音は幽助を直視していない半面髑髏にも届き。
『やればできんじゃねえか!』
後ろを向いて言った瞬間―――――


特大の光の塊が眼の前に。


そして耳には特大の爆音が響き―――――

《・・・・・・鬼道か?いや違うな》
咄嗟に瞬歩で回避した(脇腹に軽傷を負ったが)半面髑髏は、先程の攻撃を分析している。
半面髑髏が視線を動かすと、そこには光の弾の軌道に沿って薙ぎ倒された大木が。
《こんな隠し玉があるんじゃ、武器なしじゃ流石にやばいな。ここは煙幕に捲かれてる今の内に逃げるか》
土埃によって擬似的に造られた煙幕の中で半面髑髏は瞬歩で移動しようとして――――――

「苺くーん!大丈夫か!」

気絶していたはずの真中淳平の声。本来守るべき仲間の声。それが聞こえた瞬間。

《莫迦野郎!こっちの居場所が―――》
「真中!ここから離れろ!俺も後から追う!」
黒崎一護は、髑髏の仮面を引き剥がして叫んだ。

煙幕晴れて。
一人その場に残された浦飯幽助。座り込み、彼にしてはかなり長い時間、自分の行為を思い返していた。
(この体どうなってんだ?)
元来の彼の言葉で考える。
体全身を襲う激痛は既に消え、肉体の急激な変化に伴う不安定な精神状態も先程の戦闘、というか挑発による怒りで結果的に幾分和らいでいる。
だがこの紋様は異常だ。見ていて自分でも気持ち悪くなる。
(これ元に戻せるんだろうな?こんな格好で螢子の前に出て行ったら・・・割と平気そうだな、あいつなら)
と、どうでもいい事に意識を逸らしつつ、さっきの連中の事を思い出す。
考えてみれば、半面髑髏と先程大声をあげた奴は、倒れている自分を介抱しようと近づいて来たのではなかったか?
いまいち記憶がはっきりしていないが。
(もしそうなら素直に謝ってもいいんだが・・・あの髑髏野郎はどうも気にいらねえ)
自身の内にある凶暴な魔族の闘争本能とは別に、幽助は半面髑髏に妙な不快感を覚えていた。
「ん?」
ふと見ると、その象徴である仮面が地面に転がっている。
「さっきの奴が落としたのか・・・届けるついでに、ゆっくり話を聞いてみるか」
仮面を拾ってバッグに入れ、「ま、ちまちま考えてんのは性にあわねえ」と結論を出し。
浦飯幽助は真実を知るために一護が向かった方向に歩を進めた。
仮面が消えていくことには全く気づかず。


《おいおい、俺を引っ込めといて何だその様はよ?》
(うるせえ・・・お前なんか俺は呼んでねえし、必要ともしてねえ)
森の中で一つの大木に身を寄せ、俯く一人の少年。だが、その実際は一人と一人。傍らには一つの仮面。
《痛ぇか?痛ぇだろ?てめぇのちんけな覚悟じゃあ痛みは全然とれねえだろ?》
(何が・・・言いたいんだ?)
捨てたはずの仮面を見ながら、心中で問う少年。視界には墓穴を掘る仲間の姿。
《何を躊躇してんだって、言ってんだよ。死にたくねえだろ?こんなとこじゃ、死にたくねえだろ?》
(死にたくは――――ねえさ。でも、お前にも頼りたくねえ)
ひゃははははは、と、自分にしか聞こえない哂い声。
《でもよ、一護。てめえ、このままじゃ死ぬぜ?ここまでは瞬歩も使えたかも知れねえが、もうてめえじゃ無理だ》
(・・・・・・黙れ。俺は、真中を護る。江田島のおっさんも、ルキアも)
事実、少年の足には絶えぬ激痛が在り。なけなしの霊力もほとんど使い切り。
《あの男にそのうち見つかってよぉ、真中って奴ごと殺されるぜぇ?》
(・・・その時は、俺があいつを食い止めるさ)
それでも、その決意に偽りは無く。だが―――――
《おいおい、何言ってんだ?今のてめえがあいつを一瞬でも足止めできると思ってんのか?》
(・・・・・・・・・)
現実は残酷だ。この少年には、一人で敵に近づくことすらできない。護るどころか、足手まとい。
《護る、だぁ?てめえみたいに無力な奴が何言ってんだ?【敵ならば】【殺す】【殺したければ】【斬る】【斬りたければ】【刃】》
(・・・違う、俺は誰も殺したくなんかねぇ。ただ、仲間を護りたいだけだ)
《じゃあ、こうさ。護りたければ、力。力が無ければ、武器。武器も無ければ――――》
(お前は・・・ださねえ)
《出すさ。お前が力を望んだら、お前は無意識に俺を表に出す。何故なら、お前は弱いからな。お前は弱い》
弱い、弱い、弱い、弱いと少年の頭に反響する。悪意が、無限に反響する。
《いくら意地を張っても、殺し合いをしてるってことは、生きたいならいつか誰かを殺さないといけないって事だぜ?
それは多く見積もって98人殺すのも、自分の他の最後の一人を殺すのも何も変わらないんだぜ?
お前はあの真中って奴を最後まで護り続けて、自分は自殺でもするのか?できねえよなぁ》
少年は自分の首輪に意識を移し、答える。
(じゃあ、主催者を倒す。俺一人じゃ無理でも――――)
《ほらな?【主催者を倒す】と来た。【倒す】じゃねえだろ?【殺す】だ。だからてめえは覚悟が足りねえ、って言ってるんだよ》
(・・・・・・)
《覚悟さえすれば、そのうち運は回ってくる。そら、そこのバッグを見てみな》
少年は仲間から「見てて」と放られたバッグに視線を移す。
その距離約1メートル。放られた時のショックで中身が露出していて――――
そこに、一本の特徴の無い刀。

≪一護、何を迷う?≫

心に届く、懐かしい、頼れる男の声。

こちらに背を向けた、長身の黒衣。



皆さんおはようございます真中淳平です。
なにやらものっそい大きな音が聞こえて目が覚めると、鼻血と耳血とあとその他血で息ができないぐらい血が出てました。
あわてて鼻血を止めながら周りを見回すと、もくもく煙が上がっていたので、やばい遂に火事がここまで来たかと焦りましたが、煙の正体は土埃でした。
とりあえず、苺君と助けてあげようとしたのに、いきなり攻撃してきた全身刺青の怖い人を探したけど、
煙と薄暗闇でよく見えなかったので、「苺くーん!大丈夫か!」と叫んでみたところ、なんと苺君はおれにこの場を離れろと言ってきたのです。
ということはおれがいると邪魔になるのだろうと思い、何も言わずに無理して必死に走りました。
どの位走ったでしょうか、県一つ分ぐらいは走ったでしょう。ぜえぜえ言いながら大木に寄りかかり、
薄暗闇の中、あの拳王の人が出てこないかどうか心配で辺りを見回しましたが、ゴツイ人はいませんでした。ありがとう神様!ありがとうおれの女神!
でも空を見上げると、北斗七星は見えないのに何故かその隣の星は見えました。怖いです。
とりあえず休もうと思って腰を下ろすと、何か硬いものがお尻に当たったので、石かと思ったら人でした。
あわてて謝りましたが返事がありません。それもそのはず、彼は死んでいたのです。
反射的に飛び上がってすいませんすいませんと無意味に謝った後、墓を作ってあげることにしました。
弱いおれにはこれくらいのことしかできないと思ったからです。
穴を掘っている途中、彼のバッグが見つかりました。後で必要な物だけ抜いて墓標代わりにしようと思い、とりあえず脇に置いておきました。
作業が70%ぐらい進んだ頃、苺君がボロボロの様子で現れました。
どうやって刺青の男から逃げてきたのか、と聞くと、何故か追ってこなかった、今のうちに逃げるぞと言って、おれを急かしました。
墓を作っていると言うと、手伝ってくれようとしましたが、
あまりにも満身創痍だったので(人のことは言えませんが)、軽く応急措置をして休んでもらいました。おれは作業を急ぎます。
しばらくして、大体墓穴作りが終わって後は彼を埋めるだけになった時、【がさっ】と音がして、30m程先の木の影に――――
あの、刺青の男がいて―――――
男は笑っていて――――
そして、おれは―――――
死を覚悟して―――――
後ろから苺君の気配を感じ――――
振り向きました。最後に、苺君にお礼を言いたくて。
そして、おれは――――――――
最後に、何もわからなくなりました。



≪一護、何を迷う?≫
その声を聞いた俺、黒崎一護の目には、幻覚だろうか、後ろを向いた斬月のおっさんが見えている。
(おっさん・・・俺は・・・)
≪覚悟しろ。以前も言ったはずだ。「護りたいのならば」「死なせない」それは、護りたくない者を殺すという明確な意志が無くては只の虚言だ≫
(・・・俺は、人を殺したくなんかない)
≪だが、自分が死ぬのもいやだろう。
お前の家族、お前の仲間、お前の好敵手。そして、お前の運命。それら全てに背を向けて、お前は死を選ぶのか?≫

その時、真中の近くにあの男の影が見えて。
(・・・お・・・れ・・・は)
≪信じろ。お前は一人で戦っていない。俺がいる≫
無意識に、護る力を求める俺の手が斬魄刀に伸びる。
≪力を求め、俺を掴め!名を叫べ!我が名は―――!≫
刀を掴み――――俺は叫んだ。
「――――斬月!」
刀は一瞬で形を変える。鍔も鞘も無い、巨大で無骨な刀。

そのとき、おっさんが振り向いて。
振り向いたおっさんの貌は――――
俺の顔で。
白黒反転した、俺の目で。
俺を見つめ。
瞬間、仮面が俺の貌に飛びつき。

声が。
おっさんの声ではなく。
俺の、声が、俺の口から。

『――――人違いさ、一護』

意識が途切れかけ。
霊圧を体が勝手に制御して、滑るように動き。
真中に近づき。

振り向いた真中を
真中の体を

真中の腹を

真中の命を

俺の
俺の手が

俺の剣が

俺の力が

――――――――斬り抜いた。



時間軸の歯車はここで合致し。

「い・・・ちごくん?」
血が吹き出る。先程まで彼が流していた血とはまるで違う種類の血が。
肉が飛び散る。ビチャビチャビチャと、地面に抉られた細かい肉片が。
それ以上何も考えられず、真中淳平は地に斃れる。
『ハハハハッ!いいねぇいいねぇ!手に馴染む!斬り心地もいい!斬月さんよ、約束はきっちり守るぜ』
ぶんぶんと斬月を振り、血を払う黒崎一護―――半面髑髏。
『しかし、ちょっとばかり浅かったみてえだな、試し斬りを邪魔するたぁ一護の野郎も中々頑張るじゃねえか。
ま、もうしばらくは出てこれねえだろうがな。』
小さい声でか細く呻く淳平を見ながら、半面髑髏は止めを刺そうと。

刀を振り上げ――


「なにしてやがるっ!」

『―――ああ?』

浦飯幽助に、阻止された。


「てめえ・・・なにやってんだ?そいつはおまえの仲間じゃねえのか?」
幽助は斬月の腹を両手で押さえながら、度し難いような目で半面髑髏を見つめる。
『いやぁ?俺の仲間じゃぁねえさ。 こいつの仲間だ』
自分を親指で指差し、不敵に顔を歪める。
それを見て、幽助は全てを理解した。 自分の持っていたはずの髑髏の仮面がいつの間にかなくなっている。
そしてその仮面は奴の貌に。

――――――憑依型妖怪。

霊界探偵としての活動中、何度か戦った事もある。
それが、恐らくは自分との戦闘のショックで出てきてしまったらしい。
「じゃあ・・・おれがけじめをつけねえとな」
なんとしても憑依している妖怪を倒し、斃れて死に掛けてる奴も死なせない。
それが・・・俺の義務!

「おい――――妖怪。俺は、霊界探偵浦飯幽助だ。テメエを殺す」

決意したらその意志はダイヤモンドより硬く。
人間――――便座上、人間と呼ぼう、浦飯幽助は、即決着をつけるべく、刀ごと半面髑髏を投げ飛ばす。

『ハハッ!さっきとは違うぜ、ウラメシさんよお!』
服を裂いて刀に結び、ぐるぐると振り回しながら半面髑髏が言う。
幽助も跳躍し、妖気を込めた拳を叩き込もうとする。
だが――――振り回していた刀で攻撃してくるとばかり思っていた半面髑髏は。
大木に刀を突き刺し、遠心力を利用して回転し。
拳の行き場をなくした幽助に、一回転したところで刀を離し――――横から、組み付いた。
そして、幽助がとっさに体を捻り、拳が届く範囲に半面髑髏を入れる遥か前に。
半面髑髏は幽助の髪を掴み、引き抜いた。
「・・・っつ・・・!」
声にならない声を上げる幽助。
『ヒャーハッハッハァ!もういっちょう!』
続けて指で目を抉ろうとする半面髑髏。
だが。
「・・・なんてな!」
蹴り飛ばされる。自分が飛んできた方向へ。
空中で敵に動きを奪われる。それは何を招く?

――――狙い撃ち。

「霊丸!」

光の弾は真っ直ぐ飛び・・・半面髑髏の表情を引きつらせ―――

直撃した。

シャハルの鏡に。
胸に仕込んでいたその鏡は、全ての魔法を反射する。だがその効果はこの場合あまり意味を成さない。
霊的な物には、鏡に深く関係する物が多い。だからなのかはしれないが―――

霊丸は、過去に一度鏡に跳ね返されていた。

自分が放った霊丸が自分に迫る。驚愕は一瞬、幽助は即座に霊丸をもう一発放ち、相殺する。
二つの霊丸が混ざり合って誘爆する。
この機を図って半面髑髏は襲い掛かってくるだろう。
身構える幽助。
(・・・?)
舞い上げられた土埃が治まっても、一向に半面髑髏は現れない。
よく見ると・・・半面髑髏は、木の下で膝を突き、血を吐いている。
その木には刀が刺さり、結ばれた着物の一部がゆらゆらと風でなびいている。
立ち上がっても手が届く位置ではない。
(そうか、霊丸の衝撃自体は受け止められなくて―――?)
ふと、半面髑髏と、瀕死の重体の少年の他に、もう一人の人影を見る。死体。あれは――ヒソカ!?
先の放送で呼ばれなかった戦友の死体。状況から考えて、自分を殺した男の仕業とも考えられるが・・・
「おい!その男はてめぇが殺したのか!?」
この半面髑髏は自分の宿主の仲間さえ殺した。ありえない可能性でもない。
『ああ・・・こいつか・・・そうだ』
半面髑髏は鉛筆を取り出し、勢いよくヒソカの頭に突き刺す。禍々しい笑顔で。

「て・・・めえっ!」
地面が爆ぜたかと思うような踏み込みで半面髑髏に接近して―――幽助は―――
立ち止まる。宿主ごと殴ると危ないと判断したからか?
それもあった。
過去形。それが意味するものは・・・
『嘘だよ、莫迦野郎』
幽助の背中から刀が突き出ている。木の上から引きずり降ろされた、異形の刀が。
「ば・・・かな・・・刀に・・・手が届く訳・・・ウギァァァァァァッ!」
その言葉は一瞬で幽助の背後に回った半面髑髏の、心臓を凶刃で捏ね繰り回す行為によって、芝居ではない絶叫に変わる。
『種明かし、するとだな。こういうこった』
半面髑髏は、幽助に、心臓から引き抜いた異形の刀を示す。

異形の刀。

裂かれた着物の一部。

そして―――――

「俺の―――髪?」
足まで届く長髪を、2重3重に結わえ付け。着物の一部に。

『はははははっ!いいねぇ、その貌!ま、もう見れねえんだけどな』

半面髑髏は幽助を蹴り飛ばすと、その場を立ち去ろうとする。

1歩。

2歩。

『おっ・・・と。【覚悟】を忘れるとこだった』

半面髑髏は、芋虫のように呻いている真中淳平のところに戻り、『あばよ、人間』と言い放って・・・
刀を振りかぶったところで。

後ろから、霊気の塊に撃ち抜かれた。


信じられないというような貌で振り向いた半面髑髏の眼に映るのは。立ち上がって指を組み、こちらを見る男。

「へへ・・・最後の一発、効いただろ?」
『なん・・・・・・だ?テメエは?何で心臓を潰されて・・・』
「わからねえ、よ。生きてるもんは―――しょうがねえ。なら、決めたことをやるだけだ」

男は、半面髑髏の足元で呻いている少年と、体を乗っ取られている少年を救おうと、慎重に半面髑髏に近づく。

だが、その行動は半面髑髏が倒れる事によって。

『月―――』

半面髑髏の持つ異形の刀が共に倒れることによって。

『―――牙』

「アガッ・・・」

『天―――』

その刀が呻いていた少年の喉を貫くことによって。

『―――衝』

その刀から黒い衝撃が奔ることによって、全て、零に帰した。



そうして。

その場には、生きている者はいなくなった。


いなくなった。心を取り戻した魔人は血の海に溺れ。

いなくなった。盗賊は元より死んでいて。

いなくなった。死兆の少年は喉を裂かれて。

いなくなった。半面髑髏は仮面を取らぬまま。

そして誰も、いなくなった。


それから。

血が流れ、肉が腐り、骨は突き出し、魂すらも見当たらず。

それでもそこに、放送は流れた。





【栃木県/夕方】

備考:シャハルの鏡@ダイの大冒険、斬魄刀@BLEACH(一護の衣服の一部+幽助の頭髪が結び付けられている。斬月は解除)
   荷物一式3つが放置されています。


【真中淳平@いちご100% 死亡確認】
【黒崎一護@BLEACH 死亡確認】
【浦飯幽助@幽遊白書 死亡確認】
【残り75人】


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250:魁!!一護白書100%~護る力、暴れる力、虚な力~ 真中淳平 死亡
250:魁!!一護白書100%~護る力、暴れる力、虚な力~ 黒崎一護 死亡
250:魁!!一護白書100%~護る力、暴れる力、虚な力~ 浦飯幽助 死亡

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最終更新:2024年05月02日 15:50