0299:コンタクト





「あらぁん?」

妲己が開けたデイパックの中には支給品の入ったカプセルはなく、
一枚のカードと、説明書のウラを使ったメモが残されていた。

そのメモ―――――Lの残したメモにはこう書かれていた。

『はじめまして、私はLという者です。
ゲーム脱出のために人材が必要です。
あなたがゲームを脱出したいと願うなら、連絡をお願いします』

「・・・Lといえば最初のときに世界最高の頭脳と呼ばれていたコねぇん」

主催者がそう呼ぶ程の者なら少なくともバカではないだろう。
そう、少なくとも先程喰らった少年のように無謀なマネはしないだろう。

何者かがLの名を騙っている可能性も考えられたが、連絡をとるだけなら危険はないし、メリットが思いつかない。
そして何より連絡手段が偽りを許さないだろう。

「『交信』ねぇん・・・」

GIのスペルカード『交信(コンタクト)』 。
他参加者一名と通話できる(最大三分間)。
使用方法はスペル名と相手の名前を呼ぶこと。
いくらLを騙ろうとも、名前が違えば通話が繋がるはずはない。

「それに『ゲーム脱出』ってのも興味あるしぃん」

しかしそこで妲己は考え込む。

現在自分は一人だ。仲間は一人もいない。
女性である自分が一人で連絡すればLはどう思うだろうか。
この殺人ゲームにおいて一人で行動している自分はマーダーだと疑われるのではないか。

実際に人を殺しているし、Lは切れ者である。
騙し通せる自信がないわけではないが、危ない橋は渡らないに越したことはない。
それにLが求める人材も自分一人しかいない。

「それにこの『交信』・・・使えるわぁん。
太公望ちゃんと連絡がとれるわねぇん」

しかし太公望もまた自分を信用していないだろう。
自分一人だけで仲間がいないなら尚更だ。

「どちらにしても仲間が必要ねぇん。信用を得るのってメンドイわぁん。
あせらない、あせらないぃん」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その頃、Lは大阪駅にいた。

第三放送の後、Lはしばらく考え込んだ。

(第二放送の二倍近くの死者、か)

どうやら殺し合いのペースは加速してきているようだ。
趙公明のような存在が他にもいて、暴れまわっているならば納得の数字だ。

(ムーンフェイス・・・あなたの犠牲は無駄にしない)

放送で呼ばれた月顔の男に改めてゲームを終了させることを誓った。

(さて、あちらの月は健在のようだ、流石だな)

夜神月は生き残っているようだった。

放送を聞き終えた後、Lは列車の中に置かれているというナッパのデイパックを探した。
デイパックはすぐに見つかり、Lは支給品を確かめた。

「これは・・・!」

ナッパの支給品はGIスペルカードだった。
その中の一枚『同行』がLの目をひいた。

『同行(アカンパニー)』 。
スペルを使用したプレイヤーを含め、半径20m以内にいる参加者を、
指定した県、もしくは指定した参加者のいる場所へ飛ばす。

(これがあれば九州まで一瞬でいける・・・!)

しかし一つ問題点があった。それは『一度行った県しか行けない』というルールだ。
Lはこのミニチュア日本の九州に行ったことがない。
誰か九州に行ったことのある人物を探さなければならない。

(どちらにせよ戦力は必要だ)

趙公明を思い出す。強力な敵に対抗できる仲間が必要だ。
それに『同行』は多人数を一気に運べる。仲間を運ぶのには好都合。

(仲間探しが必要だな・・・となると、人が集まりそうなのは大阪か。
危険だが仕方がない)

次にLは『交信』のカードに目を向けた。

(これはなかなか難しいカードだ)

一見すると、どこからでも誰とでも連絡がとれる便利なカードに見える。
しかし、
何も知らない人間がいきなり声をかけられたら?
そこに人の姿がなかったら?
それが知らない声だったら?
そこが殺人ゲームの舞台だったら?

奇しくも第三放送の後。親しい者を失った人間の混乱、悲愴は計り知れない。
『交信』を使えば間違いなく混乱、警戒、疑惑に陥り、
まともな情報交換ができないまま制限時間の三分が終了する可能性が高い。

となれば見ず知らずの人間に『交信』を使うことは愚策。
といってもそれは知り合いにもいえること。

生き残っている知り合いの月とミサも自分と同じ一般人だ。
ムーンフェイスや趙公明のような超人ではない。
それが生き残っているということは、自分のように仲間を作っている可能性が高い。
その仲間に騒がれれば同じことだ。

(夜神月ならうまくやるかも知れないが・・・)

そこで、相手が話す準備が出来てから通信をするため、
Lは『交信』とメモを使った仕掛けを設置することにした。

第三放送を聞いて列車に乗る人間は多いはず。
そこにデイパックを置き、その中にメモを入れれば、
必ず誰かが見るはずである。

しかもこの状況で列車に乗るということは、腕に余程の自信がなければ出来ないだろう。
なぜなら、列車は現在最も人が集まりやすいスポットだからである。
つまり、マーダーも集まりやすいということだ。

列車に乗り込んでくる人間は実力者の可能性が高い。
是非とも接触したいところだった。

しかし、この仕掛けも一つの賭けだ。
取った人物が自分の用事に使うかもしれないし、マーダーが取る可能性もある。
カードを通してなら危険はないものの、カードを無駄にすることになる。

(夜神月と連絡をとるべきか、デイパックの仕掛けを設置するべきか・・・)

Lは迷い、そして結論に至った。

(デイパックの仕掛けを置くべきだ。
マーダーが連絡してきても、情報は手に入るし、騙されない自信もある)

月に対する『キラではないか』という思いが不信感となり、
この結論に至らせたのだ。

大阪駅で降りたLは自分が乗っていた下り列車ではなく、
もう向かうことがないだろう関東方面へ向かう上り列車の中にデイパックを置いた。

九州方面に向かう者とはこれから会うかもしれないが、
関東に向かう者とはこの機会を逃せば、もう連絡がつかないだろうとの判断だった。

そして現在、未だ連絡はない。

(まあ、気長に待つとしよう)

そう思い、Lは夜の大阪に消えた。



【愛知県・上り列車の中/夜】
【蘇妲己@封神演義】
 [状態]:少し精神的に消耗、満腹、上機嫌
 [装備]:打神鞭@封神演義、魔甲拳@ダイの大冒険
 [道具]:荷物一式(食料・水三人分から一食消費)、荷物一式(機関車内で入手、支給品はまだ未確認)
     黒い核鉄III@武装練金、ドラゴンキラー@ダイの大冒険、黒の章&霊界テレビ@幽遊白書
     千年パズル(ピース状態)@遊戯王、GIスペルカード『交信』@HUNTER×HUNTER
 [思考]1.仲間と武器を集める
    2.仲間が集まったらLか太公望と連絡をとる
    3.本性発覚を防ぎたいが、バレたとしても可能なら説得して協力を求める
    4.ゲームを脱出。可能なら太公望も脱出させるが不可能なら見捨てる


【大阪府・大阪駅周辺/夜】
【L(竜崎)@DEATHNOTE】
[状態]:右肩銃創(止血済み)
[道具]:デスノートの切れ端@DEATHNOTE、GIスペルカード(『同行』・もう一枚は不明)@HUNTER×HUNTER
    コンパス、地図、時計、水(ペットボトル一本)、名簿、筆記用具(ナッパのデイパックから抜いたもの)
[思考]:1・沖縄を目指し、途中で参加者のグループを捜索。合流し、ステルスマーダーが居れば其れを排除
    2・出来るだけ人材とアイテムを引き込む (九州に行ったことがある者優先)
    3・沖縄の存在の確認
    4・ゲームの出来るだけ早い中断


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271:たらい回しの不運 L 328:正論と願望、対立する思い
296:白夜特急青森行き 蘇妲己 319:東京交差点~男と女~

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最終更新:2024年06月16日 17:36