0313:混沌体験//~空条承太郎はクールな仲間が欲しい~





『星の白金(スタープラチナ)』。本体、空条承太郎
一瞬の内にピストルの弾丸を掴み取れる精密な動作と、ダイヤモンドすら砕く豪快なパワーの二面性を持つスタンド。
『スティッキィ・フィンガーズ』。本体、ブローノ・ブチャラティ
殴ったものに"ジッパー"をくっつけ、それを開けるとどんな物にでも空間をつくることが出来る。空間を作らずただ開けることもできる。

二つのスタンドは使役者の側に立ち、使役者は十歩分程の間合いをとって睨み合っている。

一歩。一歩。一歩。承太郎が進む。

一歩。一歩。一歩。ブチャラティが進む。

間合いは4歩分、約2m。

「“日本人(Giapponese)”。お前もスタンドを使えるということは」
ブチャラティが言葉を発した瞬間、その眼前にスタープラチナが迫る。
「お喋りはお預けだ。『手早く』決めさせてもらうぜ。雷電が心配なんでな」
(!こいつのスタンド!このスピードッ…)
S・フィンガーズがガードを上げる。
しかし、スタープラチナのパンチは委細構わず―――打ち込まれた。
「オラァ!」
「ッ………!?」
S・フィンガーズでもブチャラティでもなく!地面に!
土埃が上がり、即興の煙幕となり―――二人を覆う。
(来る…カウンターを…!)
「スティッ…「オラァッ!」

ドゴッ!

(………このパワー!)
スタープラチナはパンチ一発でS・フィンガーズを数メートル吹っ飛ばした。
当然ブチャラティも吹き飛ばされ、看板に激突する。

「近距離パワー型…しかも、あの"地中を自由に動ける"男より更に強いッ!」

コロッセオで会ったスタンド使いを思い浮かべながら、今尚煙幕に包まれている承太郎の方向に首を向ける。
静かに土埃を払い、承太郎はその姿を現した。
「ブチャラティ…といったな」
「………」
答えず、ブチャラティは立ち上がる。
「『これ』がてめえのスタンドの能力か?」
自分の腹を指し、問う。その表情は硬い。
ブチャラティは腹に横一線に『ジッパー』が付いている承太郎を見据え、言い放った。 
「さあな。答える義務は無い」

(カウンターを入れ切れなかった。上手くいけば今ので終わっていたんだが…)
表面上は余裕を装っているが、ブチャラティは焦燥していた。
敵はパワーもスピードも自分より上、ボスの『キング・クリムゾン』にも似た謎の能力。
(さて、どうするか………奴に付けたジッパーは不完全)
本来なら体を完全に分断させるはずのS・フィンガーズの攻撃。
だが予想外のパワーとスピードによる拳打によって照準をずらされ、軽く撫でた程度にしか当たらなかった。
あのパンチが一発でなく十発、或いは百発飛んでくるのを想像する―――まず間違いなく自分は"死ぬ"。

(だが、"パンチ"を"喰らわ"ずに近づければッ!勝機は十分ある!)


既に間合いを五歩分程に詰め、帽子に手をやりながら承太郎はブチャラティを見る。
「答える義務が無いって?てめーはゲームに乗っているのかって俺の質問にも答えなかったよな?」
「………」
「都合が悪くなるとだんまりか…やれやれだぜ」
承太郎は何を思ったかいきなり鉛筆と紙を取り出し、書き込み始めた。
「…貴様、何を書き込んでいる?」
「答える義務は無い…が、答えてやるよ。あんたに貸してる"ツケ"さ。必ず払ってもらうが―――忘れっぽいんでね、メモしてるのさ」
なおもカリカリと書き込み続ける承太郎。
『スティッキィ・フィンガーズ!』
ブチャラティはS・フィンガーズに看板を引き抜かせ、スタープラチナに振り下ろす。
スタープラチナは迎撃すべく拳を振るう。
看板と拳が激突する瞬間、看板が拳を避けるかのように二つに分かれる。
「!」
「先程の質問に"答え"よう…これが『スティッキィ・フィンガーズ』の能力だ。そしてお前はもう"負けて"いる」
『ジッパー』が付いた看板はスタープラチナを跨いで地面に刺さる。
そして急速にジッパーを閉じさせてスタープラチナを押し倒し、その動きを封じた。
「おっと!看板を壊したりはしないほうがいい…俺を本体のお前が殴ろうとするのもな。それより一瞬早くこの『ジッパー』を引ききる」

ブチャラティは既に承太郎の懐に入り込み、腹のジッパーに手をかけていた。

「このジッパー…心臓の大きさにも満たないが…あんたを殺すには十分だ。開くのに1秒もかからない…
さあ、答えてもらおうか?何故『第二の質問』で嘘をついた?」

質問は死の警告を持って飛び、承太郎に届く。

「スタープラチナ………」

ブチャラティがジッパーに力を込める。

「………ザワールド」

             ド                 ン               !

スタープラチナがジッパーが閉まりかけている看板を引きちぎる。
承太郎がブチャラティの手をジッパーから離す。
しかしブチャラティは反応すらしない。

――――――時は止まっている。

「やれやれ………大した野郎だ、二度も時を止めさせるとはな」
感心したように言うと、承太郎はスタープラチナを呼び寄せる。

「『殺さずに』『ほどほどに』」


――――――そして時は動き出す。

「ぶちのめすっ!」
動き出したブチャラティに拳を向ける。

「―――やはりボスと同種の"時を認識させない"能力か」
意外にもブチャラティは涼しい顔をしている。
「………ボス?」
承太郎が言い終えないうちにブチャラティは眼前に迫る拳を意にも介せず叫ぶ。
「"こう"なることを読んでいた!故にッ!"対抗策"も練ってある!『スティッキィ・フィンガーズ!』」
地面が裂ける。承太郎の足元から飛び出す異形のスタンド。
「ッ!」
承太郎はバランスを崩し、スタープラチナの拳がブチャラティの顔面に届く一瞬前に逸れる。
脇腹から肩を目指してS・フィンガーズの攻撃は進む。触れた部分をジッパーにしながら。
「言っただろう?お前はもう"負けて"いると…お前のスタンドを封じた後、地面に潜らせておいた。射程圏内ギリギリまでな」
スタープラチナから一歩離れ、ブチャラティは淡々と語る。
「安心しろ。"殺し"はしない。今からやるのは"拷問"だ」

「やれやれ………"諦めた"。あんたすげー"クレバー"だ。一本とられたぜ」
承太郎は諦観たっぷりに呟く。
「………"負け"を認めたなら話は早い」
ブチャラティは三度質問を繰り返そうとする。だが。
「おいおい、勘違いするなよ。"諦めた"ってのは………"無傷で済ますことを諦めた"って事だ!」
既に胸まで上がってきていたジッパーが急に止まる。
「な………貴様ッ………!?」
「『流星指刺(スターフィンガー)』。やりたくなかったんだがな。連続で時を止める事は出来ないからな」
本体と同じく胸までジッパーで分断されたスタープラチナの右手の人差し指と中指が数十cm程伸び、承太郎の肩を貫き、S・フィンガーズの腕を止めていた。
「コンマ一秒の差…そして隙あり、だ」
スタープラチナが右手でS・フィンガーズの首根っこを掴む。
スタープラチナが左手を握る。
「さて、貸しを返してもらおうか。俺の質問を無視すること3回…いや、一回返したか?
それと雷電の分もやっておくか…裁くのはオレのスタンドだッ!」

(こいつ…今度は"ウソ"は言ってない皮膚と汗だ…やるといったらやる…"スゴ味"があるッ!)


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!」


スタープラチナの左拳が高速で稼動する。

「"安心"しな…殺しはしねぇ」

(急所を…外してッ!関節のみを…こいつのスタンドは…"精密動作性"にも優れて…意識が………)

「ガッハァァッ!!」

「そしてこの感触………吸血鬼じゃねえようだな。DIOの部下の残党がいるなんて情報はスピードワゴン財団からもなかったが…」

「DIO………?」

参加者名簿に載っていた名前を聞き、息も絶え絶えに呟くブチャラティ。

「お前が言っていた"ボス"の名前じゃないのか?俺とそいつ以外に時間を止められる奴はいねえ」

承太郎はやや不機嫌そうに言うと、「まあ、そうだったらあの"カズマ"とやらとの約束は守れないが」と続けた。

ブチャラティは激しく息を切らしながら答える。

「ハアッ…ガッハ…違う…"ボス"は…誰にも名前を知られていない…ギャング"の"ボスだ…」

承太郎はその答えに納得したのかどうかよくわからない表情をし、徐々に消えていく"ジッパー"に気付いて言った。

「意識を失いかけているようだな。一つ聞こう。
お前はかなり頭が回るようだが、あの頭の悪そうな"カズマ"を利用しているようには見えなかった………何故だ?」

「………」

ブチャラティは答えず、承太郎はやれやれと首を振る。するとブチャラティは突然語気を強めて話し出した。

「取り消せ…!カズマへの侮辱をッ!この世で最も大切な事は"信頼"だ…ならば、最も忌むべきことは"侮辱"………
"信頼"を"侮辱"する…とは…その人物の名誉だけでなく…その者の人生すら狂わすッ!」

その眼には全身の関節を外され、動くことすら出来ない者のそれとは思えない強烈な光が燈っている。

「………ああ、取り消そう」

「ならば答えようッ!何も知らぬ者を利用することは…!!自分の利益だけのために利用することは…!!吐き気を催すッ!『邪悪』だッ!
故にッ!オレはそれを許さないし、『邪悪』に染まることもよしとはしないッ!」

言い終わった瞬間、ブチャラティは力を使い果たしたようにぐったりと地に伏した。

「………同感だ」

承太郎は手にしていた紙を破り捨て、気絶したブチャラティを肩に担ぐ。

「精神的にはブチャラティ、あんたは俺に勝っていたぞ。熱いようだが精神は"クール"だ」

小声で言って、承太郎は桑原が向かった方向に歩き出した。

同じ世界の異なる時間にいた、本来会うはずのなかった二人の男。
混沌に巻き込まれた二人が持っていたのは紛れもない、黄金の精神。
運命を紡ぐ正義の意思は混ざり合い、混沌の体験を経て二人を繋げた。





【栃木県/夜】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]そこそこ疲労、肩・胸部に打撲、左腕骨折(以上応急処置済み)、肩に貫通傷
[装備]シャハルの鏡@ダイの大冒険
[道具]荷物一式(食料二食分・水少量消費)、双子座の黄金聖衣@聖闘士星矢、らっきょ(二つ消費)@とっても!ラッキーマン
[思考]1:ブチャラティを桑原に送り届ける。話が折り合えば仲間にしてもいいと思っている。
   2:シカマルの亡骸・悟空・仲間にできるような人物(できればクールな奴がいい)・ダイを捜す
   3:主催者を倒す

【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]右腕喪失、全身に無数の裂傷(応急処置済み)、気絶、全身の関節が外れている
[道具]荷物一式、スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考] 1:気絶
   2:首輪解除手段を探す
   3:主催者を倒す

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最終更新:2024年06月08日 22:36