0312:ヴァンパイアハンターはかく語りき





ヤムチャチームと別れた斗貴子とクリリンは名古屋城に到着していた。
二人は夜闇に不気味にライトアップされている名古屋城の前に立つ。

「とりあえず名古屋城に来たけど、これからどうする?」
「まずは周辺の見回りをしよう。ケンシロウが来ているかもしれないし、ゲームに乗った者が潜んでいる可能性もある。
地形の把握もしておきたいところだな。北と南の二手に分かれよう、何かあったら大声を出してくれ」
「OK、わかった。斗貴子さんも気をつけて」
「ケンシロウと会ったら、私のことを伝えてくれ、胸に七つの傷のある男だからすぐにわかると思う。
探し人の少女が死んで自暴自棄になっている可能性も・・・ないな、彼に限って。私じゃあるまいし、な」
「わかった、伝えるよ。お互いあんまり城から離れすぎないように」

斗貴子とクリリンは二手に分かれて名古屋城周辺の散策をすることに決めた。斗貴子は南、クリリンは北へと向かう。
斗貴子は近くにある家、ビル、公園、森などをくまなく調べる。
ふと、その動きが止まった。

「何者だ、姿を現せ」

茂みを凝視しながら言葉を投げかける。
臨戦態勢に入り、すぐにワルサーP38を抜けるように身構える。

「どうやら、見つかってしまったみたいね」

茂みがガサガサ蠢き、中から黒髪の女性が現れた。
その女性は両手を挙げた体勢のまま尋ねる。
「あなたは、ゲームに乗っているのかしら?」

斗貴子は警戒を解かないまま返答する。
「少なくとも私は無闇矢鱈に殺し合うつもりはない、そちらがどうかは知らないが」
「奇遇ね、私も同じよ」
そう言ってリサリサはその手を下ろした。

「つかさ、もう出てきていいわよ」
リサリサは後ろを向きながら呼びかける。斗貴子はまだ完全に安心した訳ではないが、いささか緊張を緩めた。

「・・・これだけ隙を見せても攻撃してこないなんて、本当にゲームには乗っていないみたいね」
「だからさっきそう言ったはずだが?」
「いえ、憂いの為の備えが必要なかったなと、それだけのことよ」
そのとき初めて斗貴子は気がついた、自分の周りに三味線糸が張り巡らされていることに。

「これは・・・!?」
「あなたがこの辺りを調査しているのが見えたから、失礼だけど罠を張らせてもらったわ。
まあ、あなたがゲームに乗っていないならいいわ。攻撃されない限り、私は人間と戦うつもりはない。人間とは、ね」

斗貴子は自分の迂闊さを呪った。全国行脚と戦闘で疲労が溜まっているらしい、休息が必要かもしれない。
そうしている間に、もう一人の女性が現れた。こちらは斗貴子と同年代くらいの少女である。
ただ、その物腰から斗貴子と違って戦えそうには見えない。

「リサリサさん、うまくいきましたか?」
「ええ、問題ないわ。情報交換が出来そうよ」
「情報交換?それは・・・」
「人探し」

リサリサが言うには、彼女達は逸れてしまったマァムという仲間を探しているらしい。
斗貴子は心当たりがなかったので知らないと答えた。
逆にカズキやケンシロウ、ブラボーやダイのことを尋ねたが、リサリサ達も知らないようだった。

「それじゃ、ディオ・ブランドーという男とその配下の機械人間、それに東城綾という女子高生を知らないかしら?」
「いや、そちらも心当たりはないな」
「そう・・・時間を取ったわね、ありがとう」
「・・・ひとつ、伝えておきたい話がある」

斗貴子が話したのはドラゴンボールの話だった。
それを使えば死んだ人間を蘇らせることも可能だということ、それどころかこのゲームをなかったことにできるということ。
その話を聞いたリサリサの第一声は「とても信じられないわ」というものだった。

「確かに俄かには信じられない話だろうが、その話をしてくれた人物はとても嘘をついているようには見えなかった」
「死んだ人を・・・じゃあ真中君も?」
「つかさ、人間は死ぬものよ。生き返ったそれはもはや人間ではないわ」
「だが、このゲームには様々な世界の住人が参加している。世界によっては死者を生き返らせることもできるかもしれない」
「否定はしないわ、でも証拠がない」
「それは認める。だから頭の隅にでも置いておいてくれればいい」

(リサリサさん、本当でしょうか?)
(そんな都合のいい力があるわけないわ。玉を七つ集めればどんな願いでも叶うなんて・・・出来すぎてる。
彼女も証拠を見せられた訳でもないのにそれを信じてることから見て、まともな判断ができなくなってる可能性が高いわ。
ディオ達を始末するのに協力してもらおうと思っていたけど、やめておいたほうがよさそうね)
リサリサと西野は小声で囁き合い、とりあえず二人でマァムを探すことに決めた。

情報交換を終え、目的は済んだとばかりに出発しようとするリサリサ達を斗貴子は呼び止めた。
「すまない、もうひとつだけ。つかささん、だったか?」
「私ですか?何でしょうか」
「君は戦えそうには見えない、リサリサさんは心配いらないだろうが、君は心配だ。
君が杖代わりにしているその棒一本では役に立たないだろう、護身用にこれを持っていくといい」
斗貴子はつかさにワルサーP38を渡す。
「えっ、でも・・・」
「いいんだ、持っていってくれ、これも戦士の務めだ。本当は私自ら守ってあげたいが、やるべき事があるからな。
それにリサリサさんといたほうが安全だろうし、第一その銃はあまり私には必要ない。
私の本来の戦闘スタイルは核鉄を使った・・・そうだ、知らなければいいんだが、核鉄というものを知らないか?」
「核鉄・・・ですか?そういえば流川君の荷物の中にそんなようなものが・・・」

つかさはゴソゴソと荷物を漁り、鉄の塊を引っ張り出す。
「それだ!ちょっと貸してくれないか?」
「いいですよ、どうぞ」
「すまない。これは・・・シリアルナンバーCか、戦士長、お借りします」

斗貴子は核鉄を構える。
「武装錬金!」
核鉄が変化し、斗貴子の脚に装着される。瞬く間に四本のアームが形成される。
「わっ、すごい!」
「へぇ・・・」
つかさとリサリサは感嘆の声をあげる。

「・・・つかささん、悪いがこれを譲ってもらえないだろうか」
「えっ・・・」

つかさはしばし考え込む。核鉄は流川の形見だ、簡単に渡したくはない。
けれども斗貴子は自分に銃を譲ってくれた。断るのは図々しくはないだろうか。
そしてつかさは答えを出した。

「ひとつ、お願いがあります」
「何だ?出来る限りのことはしよう」
「東城綾さん・・・黒髪の、酷い火傷がある女子高生を見つけたら、殺さないで欲しいんです」
「つかさ、彼女はもう元には戻らないわ。あれはもう人外よ」
「ごめんなさいリサリサさん。それでも、私は、もう一度話がしたいんです」
「わかった、最大限努力しよう。ただ、私も死ぬわけにはいかない。
説得できるようなら、拘束できるようならそうしよう。他の仲間にも伝えておく」
「よろしく、お願いします」
「・・・好きにしなさい。ただし斗貴子さん、あなたにひとつ忠告をしておくわ」




「吸血鬼には気をつけなさい」





名古屋城では既にクリリンが待っていた。
「斗貴子さん、遅かったね。こっちは特に異常なし、そっちは?」
「他の参加者と会った。ドラゴンボールのことを話したが、信じては貰えなかったよ」
「ドラゴンボールのことを!?あっちゃあ・・・マズイなあ」
「何がマズイんだ?」
「いいかい?ドラゴンボールってのは望みを叶える玉なんだ。
絶対に悪用しようとする奴が出てくるし、そんな奴等に計画を邪魔されたら面倒臭いことになる。
俺は斗貴子さんを信用したけど、本当はひとりで計画を実行しようとしてたんだぜ?」

「そんな人達には見えなかったがな・・・そうだクリリン君、吸血鬼って知っているか?
どうやらこの辺りにはその吸血鬼がウヨウヨしているらしい、注意が必要だ」
「吸血鬼?それならそんなに怖がることはないさ。俺は一度戦ったことがあるからね。
そのときはそいつ、子供とムササビに負けちまったんだぜ?笑っちまうよなあ」
「君は勝ったのか?」
「・・・・・・・・・・・・コホン、とにかくドラゴンボールのことはあまり言わないほうがいい。
俺達の役割はあくまで人数減らしだ、仲間集めじゃない。ヤムチャさん達の仲間が加われば戦力的にはもう十分だしね。
そいつらも始末しなくちゃ・・・クソッ、この身体がもうちょっとまともに動けば・・・仙豆さえあればなあ」
「待ってくれクリリン君!彼女達はきちんと話せば説得できると思う、他に倒すべき敵もいるはずだ。
それに私達はこの名古屋城でケンシロウやヤムチャ達を待たなければいけない。
サクラさんに治療してもらったが、まだ傷も癒えておらず戦うのは無理だ!」
「ドラゴンボールのことを知られたなら、殺すしかない。斗貴子さんはここで待っててくれ。
大丈夫だよ、悟空とピッコロさえいれば吸血鬼なんか相手にならないんだから。それよりも今は危険な芽を摘み取っておくべきだよ」
「だが、一般人を手に掛けるというのも・・・」
「甘いよ、斗貴子さん。そんなんじゃいつまでたっても終わらない。どうせ全部やり直せるんだ・・・そう、やり直せるんだよ・・・」


クリリンの呟きは、夜の闇に溶けて、消えた。

そしてクリリンは斗貴子が止める間もなく駆け出した。
魔の文字を背負った戦士が走る。
『魔』が闇を駆ける―――――――――





【愛知県/名古屋城周辺/夜中】
【津村斗貴子@武装練金】
 [状態]:軽度の疲労、左肋骨二本破砕(サクラの治療により、痛みは引きました)、核鉄により常時ヒーリング
 [装備]:核鉄C@武装練金、リーダーバッヂ@世紀末リーダー伝たけし!、首さすまた@地獄先生ぬ~べ~
 [道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、ダイの剣@ダイの大冒険、ショットガン、真空の斧@ダイの大冒険、子供用の下着
 [思考]1:ケンシロウと合流。協力を仰ぐ。orクリリンを追う。
    2:零時まで名古屋城で待機、ヤムチャたちの帰りを待つ。その後、兵庫で両津たちと合流。
      ケンシロウが現れない場合は、単身東京タワー南東にある芝公園へ。
     3:綾を発見した場合、可能な限り拘束する。
     4:クリリンの計画に協力。参加者を減らす(ゲームに乗っている者を優先、できれば一般人は殺したくない)。
     5:人を探す(カズキ・ブラボー・ダイの情報を持つ者を優先)。
     6:友情マン、吸血鬼を警戒。

【クリリン@DRAGON BALL】
 [状態]:軽度の疲労、気は少し回復、わき腹・右手中央・左腕・右足全体に軽度の怪我(サクラの治療により、痛みは引きました)
 [装備]:悟飯の道着@DRAGON BALL
 [道具]:荷物一式×3(4食分を消費、月のもの)
 [思考]1:リサリサ、西野を探し出して殺す。見つからなかった場合は名古屋城に戻る。
    2:ケンシロウと合流。協力を仰ぐ。
    3:零時まで名古屋城で待機、ヤムチャたちの帰りを待つ。その後、四国で両津たちと合流。
    4:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
    5:ピッコロを優勝させる。
    6:友情マンを警戒。


【愛知県/夜中】
【西野つかさ@いちご100%】
 [状態]:移動による疲労
 [装備]:ワルサーP38、天候棒(クリマタクト)@ONE PIECE
 [道具]:荷物一式
 [思考]1:マァムと合流
    2:綾と話し合う
    3:生き残る…?

【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]健康
 [装備]三味線糸
 [道具]荷物一式
 [思考]1:マァムと合流
    2:吸血鬼を根絶する
    3:協力者との合流


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296:白夜特急青森行き 西野つかさ 321:少女の選択
296:白夜特急青森行き リサリサ 321:少女の選択
291:あかるいゲーム終了計画 クリリン 321:少女の選択
291:あかるいゲーム終了計画 津村斗貴子 321:少女の選択

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最終更新:2024年05月31日 03:17