0376:仙道の決意
仙道、香の二人は静岡が封鎖されているため、山梨を脱した後、長野を経由して道らしい道の無い山道を進んでいた。
「やっぱり、山道は大変ね。このペースでは滋賀県までたどり着くのはかなり遅くなりそうよ。」
「大丈夫ですよ。名古屋まで行けば駅があります。電車を使えば時間を短縮できると…」
と、会話の途中だったが、ここで放送が入り、死者及び禁止エリアの確認のため、しばしの間足を止める。
――良い朝だ、諸君。
ではこれより余が定例の報告を行うとしよう、聞き逃さぬように。
まずは脱落者からお伝えしよう。
「―――
蘇妲己に
竜吉公主。マーダーも脱出派も一人ずつ減ってしまいましたね。」
「ええ。全体の人数も3分の1にまで減っているわ。
さっさと仲間を見つけて合流しないと、殺した参加者の支給品を強奪して装備を固めたマーダーに殺されかねないわね。」
この二人の仲間は一日目を終えた時点で既に全滅した。
今の彼らに放送を聞き、悲嘆に暮れるような人物は洋一を除けばもはや存在しなかった。
放送が終わり、名簿へのチェックが終わると再び行動を始める。
とはいえ、香は足を捻挫していて早く行動する事ができない。何とか岐阜県を越えた頃には放送から1時間が経過していた。
「香さん。大丈夫ですか?まだ名古屋市内に着くまで距離があります。少し休みますか?」
「大丈夫よ。電車がいつ来るのかも分からないし、仙道君に迷惑をかけるわけにもいかないわ。」
仙道は香の体が悲鳴を上げている事に気付いてはいたが、本人の熱意によって、名古屋への行軍続行を決意した。
だが、両者とも殆ど休息をとっていないうえに、ろくに整備もされていない山道を満身創痍の体で通り、
仙道ですら息を切らし、香は足を引きずりながらも、なんとか名古屋にまで到着した。
「やっと着いた…あ、そうだ、電車の到着時刻は…と。午前九時、後1時間ほどか。よかった、間に合ったか。」
そう呟くなり、仙道はプラットホームのベンチに倒れるようにもたれ掛かった。
いくらスポーツマンの仙道でも、こう連続で動き続けていては体力が持たない。電車が来るまでの間、少し座って休んでおくつもりだ。
香も少し眠りはしたが、精神的にも肉体的にも疲れ果てていた。
だが、ここで眠ってしまってはもしかしたらマーダーに襲われるかもしれない。
必死で眠気を堪え、仙道の隣に座る。
(でも、どうやって1時間を潰そうか。う~ん。やっぱり、話でもするしか無いわね。)
「仙道君。まだ起きてる?」
「起きてますよ。何もしないまま死にたくはありませんから。向こうに着くまでは何が何でも目を開けておくつもりです。」
仙道も同じことを考えていた。いくら疲労が溜まっていても、安全地帯に行くまでは眠るわけにはいかない。
ここで寝る事は雪山で寝るのと同じくらい危険だと思っている。
「ねぇ、そろそろ“六芒星の呪縛” を使ってから24時間経つわよね?」
「えぇ、前回使ったのが8時の終わりくらいでしたから、そろそろ復活するはずです。」
「そう。だったら問題ないわ。もし、9時以降に使ったのだったらキケンな電車の旅になりそうだったから。」
(電車がここに来るのは9時。それにマーダーが乗っている可能性もある。
一方でこちらの武器といえば仙道君のカードのみ。それが使えなかったらこっちの負けは確定だったわね。よかった…)
暫くの沈黙…ただ、極度の疲労により、やって来る汽車を待っているだけの無気力状態…
これでは精神まで萎えてしまう。そう思った仙道は何か話題を探す。
「…香さんはどう思っていますか。脱出について。」
「え?どう…って?」
「え、えーと、例えば、首輪を外して元の世界に戻りたい。とか、みんなで主催者を倒して、仇を討ちたいとか。」
(しまった。俺は何を考えてるんだ。香さんに辛い事を思い出させてしまったじゃないか。)
拳で自分の頭を殴りながら恐る恐る香の方を振り向いた。だが、予想に反して彼女の目に涙はなかった。
「私は…ひとりリョウ達のいない世界に帰ったところでしょうがないと思ってるわ。
力の無い私にできることは何も無いのかもしれない。ただ、紙屑のように散っていくのが運命なのかもしれない。
だけど、何か私にできること。どんな小さなことでもいいから何かできることがあるなら、私は、主催者達と戦う。」
(香さんはとても綺麗で、どこか悲しそうな目をしていた。俺は、こんな強くて綺麗な女性を見たことが無い。
もしも、昨日の化け物みたいに香さんに手を出すような奴がいたら、俺はそいつを許さない。徹底的に潰してやる!)
がたんがたん、がたんがたん
名古屋の町に電車がやってきた。丁度日本の中心地のため、上りの方からも電車はやって来ている。
だが、あくまで仙道たちが行くのは琵琶湖。
向こう側の電車の事は考えない。
電車は寸分違わず、ホームに止まり、その後、
ゆっくりと、ドアが開いた―――
【愛知県名古屋市/駅/午前】
【仙道彰@SLAM DUNK】
[状態]:眠気、疲労大、負傷多数(致命傷ではない)、軽度の火傷、太公望から様々な情報を得ている
[装備]:如意棒@DRAGON BALL
[道具]:支給品一式(食料一日分消費)
遊戯王カード@遊戯王
「真紅眼の黒竜」「光の護封剣」「闇の護風壁」「ホーリーエルフの祝福」…二日目の真夜中まで使用不可能
「六芒星の呪縛」
五光石@封神演義、トランシーバー×3(故障のため使用不可)、兵糧丸(3粒)@NARUTO
[思考]:1、何があっても香を守り抜く
2、琵琶湖、四国と巡り、太公望の仲間と接触。太公望からの情報を伝える。
3、追手内洋一を探す。
4、首輪を解除できる人を探す。
5、ゲームから脱出し、仲間とともに主催者を倒す。
【槇村香@CITY HUNTER】
[状態]:眠気、疲労小、右足捻挫、少し走れるほどには回復した、太公望から様々な情報を得ている
[装備]:ウソップパウンド@ONE PIECE
[道具]:荷物一式(食料三人分)、アイアンボールボーガン(大)@ジョジョの奇妙な冒険 (弾切れ)
[思考]:1、琵琶湖、四国と巡り、太公望の仲間と接触。太公望からの情報を伝える。
2、追手内洋一を探す。
3、首輪を解除できる人を探す。
4、ゲームから脱出し、仲間とともに主催者を倒す。
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最終更新:2024年07月13日 07:03