0377:暗雲に包まれし世界
『 ……ではまた六時間後。
皆さんのご武運を、心よりお祈りしていますよ。 』
嘘だろ。
何がショックかって、アイツの名前が呼ばれたことだよ。
別にアイツが死のうが生き残ろうが俺には関係ねぇ。
でも、心のどこかで絶対に生き残ると思ってたんだ。
俺はアイツの強さを知ってるから。
『リーダー』はいけ好かねぇけど、アイツは強かったから。
だからアイツが死ぬなんて信じられなかったんだ。
まただ。
また
DIOが俺に話しかけてきやがった。
ムカツク。コイツがなんか喋るごとにカチンとくる。
できることなら同じ部屋なんかには居たくねぇ。同じ空気も吸いたくねぇ。
「フフフ……隠しても分かるぞ。知り合いが死んだのだろう? 『
たけし』。放送で呼ばれた名に、おまえは確かに反応した」
「…………」
「『
たけし』というのはよほど親しい友人だったのか?
今のおまえの瞳、まるで『旅行に行く際、友人に預けたインコを死なされた愛鳥家』のようだぞ」
……やっぱコイツの言動は何度聞いてもムカツクな。
ワケわかんねぇところとかマジにムカツク。
放送終了後、ほどなくしてウォーズマンが帰還した。
「ご苦労ウォーズマン……そうか、手に入ったのは腕だけか。これだけでは半身の治癒には至らないが……まあいいだろう」
手土産は
DIOが指定したとおりの女の両腕。昨日喰らった女格闘家のものらしい。
新拠点の候補については琵琶湖付近の小屋が挙げられた。
が、まだ移動はしない。午前中に、『追手』がやって来ないとも限らないからだ。
「これでいいかなAYA? 女性の腕にしては少しばかり筋肉が発達しているようだが……
それとも、せっかくなら『
西野つかさ』の腕がよかったか?」
「いえ、無駄な気遣いは無用よ
DIO。私には、これで十分……」
どこか悲しげな瞳を落としながら、AYAはウォーズマンから両腕を受け取った。
これが新たな自分の右腕となる。なんだか変な気分だった。
右腕をなくし、吸血鬼になり、こんなにも簡単にまた右腕が手に入る――
つくづくこの世界は異常なのだと思える。
(感謝してよね……西野さん。あなたみたいな普通の人間は、こんなところにいちゃいけない。
あなたは死んで、あとで生き返る。私はあっちの世界で真中くんと一緒。これが、お互いにとって一番の幸せなの)
放送で確かに呼ばれたその名に、AYAは少なからず心を痛めていた。
吸血鬼になったとはいえ、ヒトの心を全て失ってしまったわけではなかったから。
吸血鬼とは、実に恐ろしいものだ。
失くした右腕をいとも容易く取り戻し、他人から命を奪う忌まわしき存在。
反吐が出る。
なんじゃそら。
マミーは、吸血鬼が嫌いだった。
DIOもAYAも、おかしな力を使う奴はみんな。
「
マミー、人間は何のために生きるのか考えたことはあるかね?」
「『人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる』 。
名声を手に入れたり人を支配したり、金儲けをするのも安心するためだ。
結婚したり友人を作ったりするのも安心するためだ。
人のために役立つだとか愛と平和のためにだとか、全て自分を安心させるためだ。
安心を求めることこそ人間の目的だ」
「そこでだ……私に仕えてみないか? 私に仕えるだけで他の全ての安心が簡単に手に入るぞ」
「…………」
「今のおまえのように死を覚悟してまで私に挑戦することの方が不安ではないかね?
おまえは優れた人間だ……意地など張らず、私に永遠に仕えてみないか? 永遠の安心感を与えてやろう」
――こいつ、とうとう本性現しやがった。
「――安心なんて、クソくらえさ」
――要するに、俺を利用したいんだろう? だから俺を殺さず、あんな回りくどい方法取ってきやがった。
――そして今度は正攻法で誘ってきやがった。誰が乗るかっつーの。バーカ。
「ククク……そう言うと思ったよ、
マミー。なに、気にしないでくれ。気まぐれで言ってみたまでさ……」
――どうだか。
マミーはつくづく
DIOが嫌いだった。
こんな奴、とっとと殺してしまいたい。だがまだ機会は訪れない。
マミーは辛抱強い方ではなかったが、軽率な行動が死を招くことくらいは心得ている。
今はまだ――その時ではない。
「吸血鬼がスゲーってのは、アンタに会ってよく分かったよ。簡単に傷を修復したり、他人から血を吸ったりする……マジでバケモンだ」
「分かっているじゃないか
マミー。人間にはない『魅力』があるだろう? なんなら、おまえもなってみるか? 吸血鬼に」
「だがな」
マミーは
DIOが嫌いだ。
だから馴れ合うこともしない。
どうせいつかは殺し殺される関係。
「俺は……『悪魔』に勝ったことがあるぜ」
嘘ではない。
たけしや
ボンチューと共に赴いた魔界での激闘――
マミーは既に、人外の敵を葬ってきた経験を持っている。
だから
DIOや吸血鬼に恐れることなどなにもない。
いつか必ず殺す。
この信念は、
たけしが死んでも揺るがない。
「…………おもしろい!」
DIOは嘲笑ではなく、純粋な笑みをこぼした。
マミー。やはり殺すには惜しい。
スタンド使いではないが、スタンド使いにも負けぬ『気高き精神』を持っている。
DIOを恐れぬその精神。その牙は誰に向けられるのだろうか。
「それはそうと
DIO……これからまた日が照らし出すけど、私たちはどうするの?」
心配そうにAYAが尋ねる。
時刻は既に六時を回った。吸血鬼が嫌う太陽はとうに顔を出し、これからの活動を制限することだろう。
「そうだな……参考までにAYA、君は昨日の日中、どうやって過ごしていたのだね?」
「私はずっと洞窟に隠れていたわ」
「賢明だな。太陽は我々にとって忌むべき存在……だがこの二日目は、その太陽も幅を利かせてはいられぬようだ」
「どういうこと?」
首を傾げるAYAに、
DIOはフフフと笑みをこぼした。
「『雨』さ。主催者が言っていただろう? 『天候が安定しない』と。
私の予測では、午前中の天気かなり荒れる……それこそ『雲で太陽が隠れるほどに』な」
そう。太陽さえ隠れてしまえば、夜であろうと昼であろうと関係ない。
「しかし危険じゃないかしら。主催者が嘘をついているとも限らないし、その雨もいつ急に止むか分からないわ」
「その通りだAYA。個人の勝手な決め付けに、完璧に身を委ねてはならない。
動くのはあくまで『午前中』。それも付近を散歩する程度だ。
……なーに問題はないさ。『雨は必ず降る』。その時こそ……再び我々の時間が到来するのさ」
小屋の外では、既に暗雲が立ち込めていた。
間もなく、夜にも近い闇が訪れる。
太陽を隠し、吸血鬼を歓迎する闇が。
午前中という限られた時間。
その短い時間に訪れるであろう激闘の予感を信じ――
DIOは震えた。
(追って来いケンシロウ。この
DIOは逃げも隠れもしないぞ)
果たせなかった決着は、もうすぐつく。
今度は万全の態勢で迎えてやろう。
DIOと、
DIOのスタンド『世界』が――
【愛知県と長野県の境・山中の廃屋/朝】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:忍具セット(手裏剣×7)@NARUTO
[道具]:荷物一式(食料の果物を少し消費)
[思考]:1.太陽が隠れる午前中を利用し、『狩り』を行う。
(活動範囲は隣県程度まで。雨が止んだら帰還。ケンシロウが来たら迎え撃つ)
2.綾、ウォーズマン、マミーを利用する。
【東城綾@いちご100%】
[状態]:吸血鬼化、波紋を受けたため半身がドロドロに溶けた、ちょっとブルー
[装備]:特になし
[道具]:荷物一式×3、ワルサーP38、天候棒(クリマタクト)@ONE PIECE
[思考]:1.DIOと共に行動。
2.DIOを優勝させ、西野つかさを蘇生させてもらう。
3.DIOに協力する。
4.真中くんと二人で………
【マミー@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]:極度の怒り
[装備]:フリーザ軍戦闘スーツ@DRAGON BALL、手裏剣@NARUTO
[道具]:荷物一式(食料と水、一食分消費)
[思考]:1 DIOを殺す。それまでは絶対に死なない。
2 強者に君臨するため、もっと強くなる。
3 誰が相手でも殺られる前に殺る。
4 誰が相手でももう絶対にビビらない。
【ウォーズマン@キン肉マン】
[状態]:精神不安定、体力微消耗
[装備]:燃焼砲@ONE PIECE
[道具]:荷物一式(マァムの物)
[思考]:1.DIOに対する恐怖/氷の精神 *
2.DIOに従う。
* 氷の精神には極小だが亀裂が入っています。
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最終更新:2024年07月14日 05:21