0392:3人の文殊・前編・ポップの不思議な喫茶店



 >中断した箇所から冒険を再開する。

ピッ

再開するとこのデータは消去されます。よろしいですか


 >はい
  いいえ

ピッ

ポップ 午前 大阪 喫茶店1F を再開します。


カランコロンカラン。
長閑な音が喫茶店内に響く。店員に来客を知らせる合図のようだ。
当然、そんな優しげな者はこの世界にはいないのだが。

ポップは、Lに連れられて大阪駅横の喫茶店の中に入った。今までに見た家屋と同様、人の気配は無い。
Lは、何の気兼ねも無くスタスタと窓際のソファー席に陣取った。
「彼らも直ぐに来るでしょうし、先にお席にどうぞ。ええと…」
ポップだ」
「はい、ポップさん」

薦められるまま、Lの斜向かいの席に腰を下ろし、改めてこのLという男を観る。
不健康そうな顔と体に、ぎょろりと光る目。
ソファーの上で三角座りをし、爪を噛みながらこちらを窺うその姿は、どうにも知的には見えない。
(こいつは…天才ってより、なんかモンスターみたいだぜ)
どことなく常人離れした雰囲気が不気味さを醸し出す。

「どうかしましたか?私の顔が何か?」
「あ、いや、悪い、なんでもない。それより、話をする前に聞いておきたいことがあるんだ」
「なんですか?」
失礼極まりない考えを誤魔化しつつ、話を切り出した。

「あの包帯男…志々雄は、お前の知ってる奴なのか?」
志々雄は、短い付き合いとはいえ、一応は同盟を結んだ相手だ。しかし、奴についての情報は皆無に等しい。
そしてLの目を見据える。この男のリアクションの一つ一つも、重要な情報だ。
「彼はあなた方のお仲間なのでは?」
「俺も会ったのはついさっき…岡山から乗り合わせただけだ」

「岡山…やはり…」
Lはガリッと爪を噛む。
「…私も直接会ったのは初めてです。ですが、彼は恐らくはマーダー…
 それも、複数の人物を殺している可能性が高い。
 キン肉マンの言うたけし君、ラーメンマンの他に、
 四国へ向かった私の仲間も、彼に殺されたものと思われます」
感情に乏しいLの顔が僅かに歪む。怒りか、悲しみか。そこまでは分からない。
だが、ということは。

「くそっ!やっぱりウソップの奴が危ねぇ!」
思わず声を荒げてしまった。
しかし、状況は最悪だ。志々雄が凶悪なマーダーならば、やはり共に列車に乗っている2人の身の保障など全く出来ない。
「おい、あんたの仲間…キン肉マンだったか?なんであいつを独りで行かせたんだよ!?確かに強そうな奴だったけどよ…
 志々雄がそんな危険な奴なら、逆に殺されるかもしれねえじゃねぇか!!」

熱く、感情的になる自分とは対照的に、Lはきょとんとこちらを見つめている。
そして、短く呟いた。
ポップさん。あなたは…いい人ですね」
「はぁ!?」
Lの見当違いな意見に肩透かしを喰らう。
「あなたは、この異常な世界でも健やかな精神を保っている。あまつさえ、見ず知らずの他人の心配までしている」
そして意図の見えない賞賛を投げかける。この男は一体何を考えているのか。
「何が言いたいんだ?」
「いえ、あなたに『だけ』になら話してもいいかと思いましてね。
 本来ならもう少し時間をかけてあなたのことを理解すべきなのですが、事態は急を要します。
 私の持つアイテムの事なのですが…」


Lが話したのは、『デスノート』と呼ばれる支給品(の切れ端)のことだった。
参加者の顔と名前さえ判れば問答無用で殺害できる不条理極まりないアイテム。
しかし、それはLの元居た世界に実在する道具らしい。
「今のところ、このアイテムで死亡した参加者はいませんが、贋物と言い切ることも出来ません。
 というより、私は本物だろうと考えています。
 尤も、オリジナルとは制約など多少異なるようですが」

俄かには信じられない話だった。
しかし、不条理だらけのこの世界に、バーンに世界最高の頭脳と言わしめたこの男。
Lが嘘をついている可能性もあるが、嘘にしてはあまりに荒唐無稽だ。
相手の手に乗るようだが、Lの真意を確かめる必要がある。
「…なんで今、俺にそんな話を?」

「いえ、志々雄 真実……
 彼をこのデスノートで殺そうと思うのです。それも、今すぐに。
 それを了承して欲しいと思いましてね」

「なっ!?」
突然にして、衝撃的なLの提案に、言葉を飲む。
Lはこちらを気にすることなく言葉を続ける。
「彼は凶悪なマーダーであり、私達の仲間はいままさに彼に危害を加えられようと――いや、殺されようとしています。
 ですが、今ならまだキン肉マンもあなたの仲間――ウソップさんも生きている可能性が高い。
 キン肉マンが負けるとは私も考えていませんし、
 彼が無事志々雄を倒すことが出来れば、この行為は無駄になります。
 それでも、万が一彼らが殺されることに比べれば格段にマシです。
 そのためにも一刻も早くデスノートを使いたいのですが、納得して頂けますね?」

デスノートで、志々雄を殺す…
確かに、Lの言うことは尤もだ。
今、志々雄を殺さなければ、今列車に乗っている2人と、さらに多くの人間が志々雄の魔の手にかかるかもしれない。
仲間2人の命と。マーダー1人の命。どちらが大切かは火を見るよりも明らかだ。
「よろしいですね?では善は急げ、です」
Lは、ポケットから小さな紙切れを取り出す。
あれがデスノートなのか。
あのちっぽけな紙切れに、俺たちの命が左右されるのか…

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
おもむろに紙切れに名前を書き込もうとするLを、半ば無意識に呼び止めていた。
Lは、明らかに不快そうにこちらを睨む。
「何ですか?まさかポップさんは志々雄の肩を持つのですか?」
「いや、そういうわけじゃないけどよ…」
「では邪魔をしないでください」
「いや、待て…少しだけ考える時間をくれ、ほんの1分でいい!」

なぜLに反対するのか、まだ自分でも分からない。
だが、自分の本能が告げている。
『ここで状況に流されてはいけない』
自分は魔法使い。パーティが熱くなっているときこそ、独り、氷のように冷静でいなきゃいけない。
今、仲間を助けるためにはデスノートを使うべきなのは理屈では分かっている。
だが、それには何か大切なものを見落としている気がする。
仲間の命が懸かっている今だからこそ、冷静にもう一度考えるんだ。
冷静に、自分の直感を突き詰めろ…

Lは、じっとこちらを睨んでいる。
(それにしてもこいつ、何かに似てるんだよな……あ)
そこで気付いた。丸いつぶらな瞳、丸まった体勢が、


なんだかスライムに似ているのだ。

「ぷっ!」
思わず魔封環を吹き出してしまった。我ながら緊張感の無さに呆れてしまう。
「何なんですか?もう満足しましたか?」
スライムが怒った。もう微笑ましいとしか言いようが無い。
だが、より一層不機嫌そうなLには悪いが、おかげで気持ちが切り替えられた。

「いや、悪い、悪い。
 でもな、やっぱりここで俺たちが志々雄を殺すのは良くないぜ。
 …志々雄の為じゃなく、あんたの仲間、キン肉マンの為にはな」

「…どういう意味ですか?」
Lの眉間に困惑の印が浮かぶ。無表情と思っていたが、見慣れれば意外と感情表現が豊かな奴だ。

「俺は今まで、キン肉マンみたいなやつを何人も見てきたんだ。
 仲間のため、自分の意地のためなら、例え敵いっこない相手にでも向かってくような熱血頑固野郎をな。
 ああいう奴にとっては、自分が傷ついたり、それこそ死んじまったりするよりも、自分の『信念』ってやつの方が大事なんだ。
 そういう奴の闘いにちょっかいだしても、恨まれることはあっても喜ばれることはねえよ。
 むしろ、ここで決着をつけられない方が、あいつの為によくねえ。
 晴らせない悔いや無念ってのは、死ぬまで足枷みたいに引きずっちまうものなんだよ」

その意見に、Lは賛同し兼ねる様だ。
「詭弁です。キン肉マンがそんな精神構造であるかどうかも分かりませんし、
 もしそうであっても、人の命がそんな『信念』より重いとは思えません。
 ポップさんの意見はあまりにも非論理的です。
 そもそも、それではウソップさんは見殺しですか?」

「そりゃアンタの価値観だろ?自分と全然違った価値観の奴なんて世界にゴマンといるぜ?
 それに、志々雄を観察できたのはほんの数時間だけだが、いくつか分かったことがある。
 あいつはマーダーでも、目に映った奴を片っ端から殺していくようなやつじゃねぇ。
 相手の力量を見抜く目と、その場の状況を見極める頭をちゃんと持ってやがる。
 ウソップを連れてったのがホントに見届け人としてだけなのかは分からねぇけど、
 少なくとも何らかの目的があってのことだろう。
 それに、志々雄はパピヨンと“大事な約束”をしている。
 そいつらが済むまではウソップは殺されやしねえよ。まったくパピヨンの言うとおりだ」

非論理的か、確かに自分でもそう思う。
だが、ダイは、ハドラーは、アバン先生は、戦友や強敵たちは、
そういうところを貫いたから、あの強さを手にしたのではないか。
その大事な部分を、外野が簡単に汚すべきではないんだ。

意見を全て聞き終えた後、Lは静かに自分の目を見つめ、口を開く。


「…では、それでも志々雄があの2人を殺したとして、あなたはどう責任を取るのですか?」


睨むLの目を見据えて、下っ腹に力を入れる。自分の覚悟を言葉に換える。

「そんときゃあ、俺がずっとあいつらの事を背負っていくさ。俺が死ぬまでな。
 『あいつらは俺のせいで死んだ』って言われても、甘んじて受け止める。
 出来る限りの償いもする。
 できれば仇もとってやりたい。今のキン肉マンと同じだな。
 でも、絶対にあいつらのことを忘れない。
 あいつらの、全部を。
 …仲間の命を背負うってのは、仲間が死ぬ辛さと怖さも背負うってことだ。
 自分も命懸けの覚悟でな。
 責任取ってなにかすりゃ済むモノじゃ無いんだ。
 でも、そうやって俺達は前に進むんだよ。これまでも、これからも」

Lは、何か反論しようとしたようだったが、何も喋らなかった。

「それにな、ああいうバカは仲間の為に命張ってる時は、とんでもなく強くなるんだ。
 大丈夫、キン肉マンは負けやしねぇよ。
 それにウソップもな。
 俺たちは、キン肉マンが勝つ方に賭けて、神様に祈ってりゃいいんだよ。
 …そのデスノートってのは、闘う力の無い、弱い奴を守るために使ってやるべきだと思うぜ?
 キン肉マンみたいな、『正義の味方』には似合わねぇよ」

半ば自分に言い聞かせているような気がした。
出来ることなら自分だってキン肉マンを勝たせてやりたい。
だが、決闘の最中に割り込むのは、キン肉マンの『誇り』ってのを無視することになる。
(もしダイとハドラーの“喧嘩”に俺が横槍いれてたら、アイツ許してくれなかっただろうな…)


ふぅ、とため息をついてLが喋りだした。
「非合理的にも程があります。あなた達はそんな前時代的な精神論でこの殺し合いを乗り切るつもりなのですか?
 あなたはもっと利口な方だと思ったのですが、私の見込み違いのようです」

「んだと!?」
聞き捨てならないセリフだ。だが、こちらに構わずLは続ける。

「全くもって不本意です。これで、あなたの意見を無視すれば、卑怯者の謗りを受けることになり、
 あなたの意見を尊重すれば、仲間を見捨てることになるかもしれない。
 そもそも、理屈に対して感情で、しかも価値観の相違などを持ち出すなど議論の上では反則です。
 一目見ただけのあなたの方が、私よりもキン肉マンのことを把握できたのも気に入りません」

矢継ぎ早に反論、というか悪口を続けながら、Lはノートの切れ端をつまみ上げ、

何も書かずに、再びポケットに仕舞い込んだ。

「…どういうつもりだ?」
「見て分かりませんか?デスノートを使うことは止めにしたんです」
Lは不機嫌そうに答えた。本当に不機嫌そうだ。

「言い忘れましたが、デスノートのルールに、『対象の素顔を知っていなければならない』というのがあります。
 予想ですが、包帯で顔を覆っている志々雄の顔が、素顔として認められる確率は30%といったところでしょう。
 その上でのメリット、デメリットを再考した結果、デスノート使用は不適当と判断しただけです。
 …決してあなたの野蛮な精神論を全肯定したわけではありませんからね」


ノートをしまうと、Lはふくれっ面でプイ、とそっぽを向いた。
案外ただの負けず嫌いなのかもしれない。
「へぇへぇ、よ~く分かりましたよ!」
「しかし、あなたが“見かけによらず”物事をよく観察して、あなたなりに考えて行動していることは分かりました。
 それだけでもよしとしておきます」
一言多い奴だ。
だが、憎まれ口を叩かれるぐらいには打ち解けられたのだろうか?

「それと1つ注意しておきますが!」
今度は真剣な顔で、Lがこちらを向いた。
ちょうどその時。

カランコロンカラン

「待たせたな凡才共!世間話はもう済んだか?
 それでは特別にこの蝶!天才が貴様らの啓蒙活動に尽力してやるとしよう!」
蝶々マスクの変態が店に入ってきた。

「…彼にはデスノートのことはくれぐれも内密に」
「…分かってる。」


 >中断

ピッ

このままスイッチを切ってください。
次に「冒険をする」を選ぶと、この続きからはじまります。
なお、ゲームを再開するときにこのデータは消去されます。





【大阪府・駅舎隣の喫茶店/二日目・午前】

【ポップ@ダイの大冒険】
 [状態]:健康(MP全快)
 [装備]:魔封環@幽遊白書、アバンのしるし@ダイの大冒険
     ウソップ作の仕込み杖、ボロいスカーフ(仲間の証として)
 [道具]:荷物一式×3(食料・水、一日分消費) 、首輪×2、死者への往復葉書@HUNTER×HUNTER
     ゴールドフェザー 3本 シルバーフェザー 2本@ダイの大冒険 
 [思考]1:Lと情報交換。が、内心ではウソップとキン肉マンが心配。
    2:10時に大阪駅にキン肉マンとウソップを迎えに行く。2人にもしものことがあれば…
    3:脱出の鍵を探す。
    4:ダイ・ウソップの仲間との合流
    5:夜になったら死者への往復葉書を使ってマァムに手紙を書く。
    6:フレイザードを早めに倒す
    7:パピヨンはやはりあまり信用していない

【L@DEATHNOTE】
 [状態]:右肩銃創(止血済み)
 [道具]:ナッパの荷物一式の中身(地図など。食料無し、水ペットボトル一本)
     デスノートの切れ端@DEATHNOTE、GIスペルカード『同行』@HUNTER×HUNTER
     雪走@ONE PIECE、斬魄刀@BLEACH、核鉄XLIV(44)@武装練金
 [思考]1:パピヨン、ポップらと情報交換。脱出のための計画を進める。
    2:10時に大阪駅にキン肉マンとウソップを迎えに行く。
    3:現在の仲間たちと信頼関係を築く。
    4:パピヨンを警戒。ポップを信用。
    5:沖縄の存在の確認 。
    6:ゲームの出来るだけ早い中断。

【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:健康、核鉄で常時ヒーリング
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金
     ボロいスカーフ(首輪から監視されていた場合への対策)
 [道具]:荷物一式×4(食糧二食分消費)、首輪×2、ベアークロー(片方)@キン肉マン
 [思考]1:Lと情報交換。利害が一致するようであれば協力。
    2:武藤カズキを生き返らせる。手段は問わない。ただし主催者の思い通りになるのは拒否。
    3:首輪を調べる。爆破実験は迂闊に行うべきではないと思っている(少なくとももっと脱出の為の駒が集まってから)
    4:首輪の解除に役立つ人間またはアイテムを探す。
    5:志々雄を危険視。対策を立てる。自分達が有利な広いフィールド、又は拠点の捜索。
    6:ツリ目の少年の情報を得る。ツリ目の少年は見つけ次第殺す。
    7:ドラゴンボールは信用しない。
    8:他の参加者と必要以上に馴れ合う気はない。

<首輪の調査案 その①>
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.死体の首輪で爆発力を調査(調査トリガー:情報不足のため、脱出の目処がつく/有力な仲間ができるまで保留)
      1.1 死体の首輪が爆発しなかった場合       →  外部から首輪を破壊する(首輪が誘爆するかは不明)

2.項目1の結果を受けて列車の中で、起爆トリガーの調査
      2.1 禁止エリアがトリガーだった場合       →  列車内の調査
      2.2 主催者側の監視がトリガーだった場合     →  予備の首輪の爆破実験を行い、主催者側の視界の調査

3.項目1で破壊した、首輪の破片の分析(パピヨン・ウソップ)

4.「呪い」の調査、及び対処法の考案(ポップ) ⇒ シャナクを使ってみる

5.マホカトールを使用した首輪への外部干渉の断絶(調査トリガー:項目1、項目2を受けて本格解除を前提とした行動)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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388:関西十一人模様 L 393:3人の文殊・後編・七龍珠
388:関西十一人模様 ポップ 393:3人の文殊・後編・七龍珠
388:関西十一人模様 パピヨン 393:3人の文殊・後編・七龍珠

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最終更新:2024年07月15日 15:34