438:選んだ未来(シナリオ)



私がまだ人間の女の子で、中学生だったある日のこと。
全てが始まったのは、日のあたる屋上だった。

――やっぱさー、石の巨人はこれくらいデカくねーとな!

彼の語る『夢』を聞いたその日から、私の世界は一変した。

――真中くん、設定だとそこまで大きくないんだけど……

――いや! 絶対ビル一個分はねーと! そんでもってすべての砂を飲みこむかのように生まれてくるんだ。

私が書いていた小説に、命を吹き込んでくれた。

――そのシーン、実現できたらカッコイイだろうね。

教室の隅にいた、目立たない、地味な中学生でしかなかった私に、人生で初めての『夢』を見せてくれた。

――できるさ! 映画の中には不可能なんてないんだから!!

彼と私は、同じ夢を見た。
ぼんやりとした孤独の底から、私を連れだしてくれたのは、真中淳平という男の子だった。


★   ★   ★


「DIO」
暗闇の中に、二つの死体が転がる。
それを目にして、どれぐらい経っただろう。
「DIO、DIO」
呼びかけても、返事があるはずがないことは明らかだ。
何故なら、その吸血鬼には首から上がない。
耳も口も、頭が丸ごとなくなっている。
「DIO……」
それなのに、死体に呼びかけるのを、止められない私がいる。
「命令して、くださいよ……」
それは、あってはならない光景だった。
あるはずもないと思っていた――違う、予感はしていたけれど、信じたくなかった現実だった。
「優勝するって、言ったじゃないですか」
信じていないはずなのに、心が痛い。
胸は穴が空いたように息苦しくて、そこから血が流れ出していくように寒々しい。
その喪失感に、本当は分かっているのだと思い知らされる。
「西野さんを生き返らせてくれるって、言ったじゃないですか」
禁止エリアの向こう。二つの死体。
DIOが失われたなど、受け入れたくはなかった。
計画が壊れかけていることなど、受け入れたくなかった。
唯一無二の、頼れる支配者がもういない。
このままでは、西野さんを蘇生させてもらえない。
DIOでさえ敗北したのに、私一人の力で戦い続けなければならない。
そこまで受け入れて、私の考えは完全に立ち止まった。

――私、一人の力で?

闇の中、座り込んだまま、壊れた両足を見下ろす。
どうしよう。

――このDIOの傍にいれば、何も恐れるものはない。 西野つかさも、きっと蘇ることができるさ、なぁ……
たった一人の同族だったDIOは喪われた。

――"吸血鬼"を生かしたままにしておくことは出来ないわ。
人間をやめた挙句、殺人ゲームに乗った。

――死んだ人を追いかけて自分も死ぬなんて、馬鹿げてる!
友達だった女の子との絆は、自ら切り捨てた。

両足は壊れて、動かない。
DIOのような“異能の強さ”も、西野つかさのような“心の強さ”もない。
もう、後戻りはできない。
陽の下には出られない。
手を伸ばしてくれる人は、どこにもいない。



ずっと、忘れていた。
私は、独りだ――



いつからだろう。
こんなに恐ろしい事実を、忘れていたのは。
少なくとも、DIOと共にいた時は、眩しい夢と安心に満たされていた。
DIOと出会えたことで、西野さんを生還させて、真中くんと2人きりになるという夢が確かなものになった。
そこには温もりとはまた違うのだろうけど、深い安心があった。
でも、DIOに出会う前だって、こんなに寂しいと思ったことはなかった。
真中くんの死を知った時は、本当に、言葉にできないくらいの悲しみを味わったはずだ。
でも、死んで真中くんに会いに行こうと思うことができた。
吸血鬼になっても、この世界に真中くんがいると思うだけで、嬉しくなることができた。
そう、真中くんと共にいる限り、孤独なんて感じるはずがなかった。
そうだ。
本当の意味で、『独り』じゃなくなったのは、ずっと前、真中くんと出会ってからだ。
真中くんに出会う前の私。
クラスメイトからは「地味」で「ダサい」というマイナスの評価が定説で、自分でもそう思っていた私。
仲の良い親友を一人も作れずに、昼休みは一人きりで空想にふけっていた私。
受験勉強や、そういうコンプレックスから逃れたくて、現実逃避として小説を描いていた私。
そんな私を見つけて、私の描いた物語を読んで、私を陽の当たる屋上へと連れだしたのは、他でもない彼だった。

――驚いた! おまえってスゴイんだな。

私の物語を、認めてくれた真中くん。

――ほら! 伝説の魔法使いが砂漠から巨人を誕生させただろ!?
――最初は下から上へと巨人を囲むようにカメラを回そう。大きさを伝えるために。

こんな感情が私の中にあったんだと、初めて知った。

――そして最後に真上から全体を撮るんだ。周りを飛んでる翼竜の視点で。

真中くんと一緒にいる。
それだけで、全てが満たされていた。

――な? 見えるだろ? 東城。

DIOは、その“圧倒的な力”で私に夢を見せてくれたけれど、

――うん。見える気がする…

ただ、そばにいるだけで、夢を見ることができたのは、
ふたり一緒になら何だってできると、
そんな気持ちにさせてくれたのは、
そんな男の子は、
後にも先にも真中くんだけだ。
そう、この先もずっと――


「――ダメ!」


声が出た。
マッチの火に消えないでと叫ぶ、マッチ売りの少女のように、幼い悲鳴が口から出た。
「それは……ダメ」
この先の、真中くんのいない未来。
眼の前に揺らめいた独りぼっちの未来を、必死に否定する。
このままでは、どこにも行けない。
このままでは、真中くんに届かない。
私はずっと独りのままだ。
夜の中。
行く場所もない。帰る場所もない。
誰とも繋がっていない。
人間を止めた、友達も殺した、ただの化け物。

真中くんの元に行けないのなら、私は永久に独りだ。

ああ、
孤独とは、なんて耐えがたく、
そして、素晴らしいんだろう。
おかげで、どんなに絶望的でも、
どんなに、傷だらけになっても、
歩みを止めるわけに、いかなくなった。

「優勝……するんだ」

諦めるもんか。
絶対に、絶対に、諦めるもんか。
「私は……最後の一人になる」
孤独より恐ろしいものが、この世にあるはずがない。
「絶対に優勝する! 優勝して西野さんを生き返らせる!」
そして、真中くんと一緒の未来を手に入れる。
そうしなければ、全てを失ったままだ。


★   ★   ★


再び力を取り戻した身体を引きずって、DIOを待っていた場所まで這い戻った。
バラバラに倒壊した小屋の周囲を探り、支給品を、全てかき集める。
瓦礫を這い回ったことで、赤黒く汚れた足がさらに埃で汚れたけれど、全然気にならなかった。
「……ふぅ」
収集した戦利品を、並べる。
倒壊した小屋の周囲を這い回って手に入れたのは、DIOの支給品と、DIOがケンシロウの骸から奪い取った奇妙な鎧。
そして、DIOを倒した――認めたくないが、倒した――男が持っていた、発火する刀。
すぐに役立ちそうなものはないけれど、こんな世界では何がどこで役に立つか分からない。
拾えるものは拾っておいて損はない、はずだ。
「さて、と」
一息ついて、私は思考にふける。
目を閉じる。
心が、冷えていた。
さっきまで放心していたのが嘘みたいに、冷静になることができた。
ここから、私が勝ち残っていく上で必要なことは何か。
それを考えなくてはならない。
まず、何よりも両足を治療することが必要だ。
目を開けて、ズタズタになった両足を見つめる。
死体を解剖する医者のように客観的に、私は足を観察できている。
おそらく、神経が傷つけられているのだろう。動かそうとしてもほとんど動かない。
特に、右足の損傷は深刻だ。白い骨がむき出しになっている。吸血するだけでは、きっと回復しきれない。
腕を取り換えたときのように、足を片方、調達しなければならない。
“足”を手に入れる為の手段は二つ。
生きている参加者を襲って奪うか、転がっている死体から回収するか。
この世界で、私が確認した死体は七つ。もちろん、私の見てない所でもっと大勢死んでいるはずだけど、
どこにあるとも分からない死体を探してあてもなく這い回るのは得策じゃない。
その七つは、私が殺した赤鼻の男、腕を貰ったマァムという女性、私が死なせた西野さん、DIOから離反したマミー、ケンシロウ、
そしてDIOとアビゲイル
DIOとアビゲイルの亡骸は、禁止エリアの中にある。
森の中だから正確な県境は分からないけど、さっき数メートルの距離に這い寄っても首輪は爆発しなかった。
だから、死体があるのは県境ぎりぎりの位置。
けど、手を伸ばして届くような近さじゃない。
かといってこの身ごと三重県に入って回収すれば、それこそ首輪が爆発してDIOと同じ末路を迎えてしまう。
赤鼻の男とケンシロウは、血を吸われてミイラになったから“足”としては使えない。
マァムの死体から腕を持ってきたのはウォーズマンだから、私には場所が分からない。
西野さんの死体は放置していったから、ケンシロウが埋葬してしまっただろう。
ならば、使える死体はマミーのものだけ。しかし、それにしたって、愛知県と長野県の境にある。ずいぶん遠い。
この足で岐阜県まで向かうのだってリスクが大きすぎる。
途中で強い参加者に襲われても、逃げることができない。
反撃したくても、上手く飛びかかることすら困難だ。
考えあぐねて、顔を上げる。
すると、そこには倒壊したロッジがあった。

なんだ、簡単なことじゃないか。

手を伸ばして届かないなら、棒を使って取る。猿でも思いつく発想だ。
立派なロッジだった廃材の山から、できるだけ原型を保った木材を見つけ出す。
一番長くて丈夫そうな断片を、片手で引っこ抜いた。
ロッジを支える柱だったらしい太く長い丸太は、死体を拾う“手”として使うには不格好で重すぎる。
でも吸血鬼の腕力があれば、楽々と持てる。
死体を転がして回収するには、申し分ない長さだ。
勢い余って死体が損壊することはあるかもしれないけど、足さえ無事なら用は足りる。
男性の足ならサイズが不釣り合いだろうけれど、他に足が無い以上どうにか間に合わせるしかない。


次に、足を確保できて、その上で優勝する為に、どうしたらいいか。
DIOでさえ死んでしまったこのゲームを、どう攻略していくか。
緊密な小説のシナリオを考えるように、策を練らなければならない。
必要なのは、実現する説得力のあるシナリオだ。
DIOという強い味方を失った私は、言うなれば“魔法の巨人”を失った、あの小説の主人公。
“巨人”を失った主人公は、どうやって戦えばいいのか。
恋しい人の元へと帰る為に、どうやって生き残ればいいのか。
「そうね。これが、小説のプロットなら」
考えてみたが、ひとつしか思い浮かばない。
……“戦力”だけで生き抜くことができないなら、“策略”を駆使するしかない。
時代小説でも戦記ファンタジーでも、武力のない登場人物が使う常套手段だ。
権力者や強い強い魔法使いなどに取り入って、信用を得て、時には有用な情報を提供し、時には嘘を教えて扇動し、上手く立ちまわる。
これが小説なら、私はきっと主人公にそうさせる。
ゲームに乗っている参加者と手を結び、協力して他の参加者を狩る。
あるいは、ゲームに乗っていない振りをしてお人好しの参加者に助けを求め、機を見て寝首をかく。
後者の方法を、誇り高いDIOは選ばなかった。
私もDIOには、そんな小細工など要らない圧倒的な力があると思っていた。
しかし、現実はそうではなかった。
彼を侮辱するつもりは無いけど、アビゲイルを無理に追いかけてトドメを刺そうとした、誇り高さ故の失策が、この結果を生んでいる。
DIOよりも力のない私が、残りの参加者に正面から挑んで殺し尽くすのは、どう考えても無理がある。
それに、戦力のことを抜きにしても、遠からず問題が発生する。
それは、夜明け。
日光を少しでも浴びたらどうなるのか。それは、右腕という代償を払って知った。
二日目のように、都合のよい雨を期待するわけにもいかない。
日除けのアジトを見つけたとしても、破壊されて日光に晒されない保障はない。
なら、私が休んでいる間に、見張りをしてくれるお人好しを探す。もしくは、利用し合える殺人者を探す。
「そうね……夜明けのこともあるし、引き返そうかな」
愛知まで引き返せば、初日にDIOが身をひそめていた廃屋がある。
琵琶湖の“狩り”でアジトとして使うはずだったロッジは、このとおり壊れてしまった。
何より、不慣れな地形では、日光を完全に遮断できる建物や洞穴を探すのにも時間がかかるだろう。
愛知県近辺の地形なら、DIOと共に陽射しを避けつつ移動していたおかげで熟知している。
隠れた場所から不意打ちを仕掛ける人間にも、対応しやすいだろう。
DIOを失って慎重に動く必要も出てきた。先程かかってしまったようなトラップが、この先にも仕掛けられていないとも限らない。
決めた。
一度、東へと引き返す。
そして、道中で出会った参加者は、できるだけ利用する。
この点、寝首をかかれる心配もなく日中を過ごせる点では、“お人よし”の方が利用しやすい。
「それでも、問題はあるかな……」
吸血鬼になってから、私は何人かの参加者に出会い、危険視されている。
“乗っていないお人好し”を利用しようと近づいたところで、
彼らがリサリサやケンシロウたちから私の危険性を聞いていたら、厄介なことになる。
でも、付け込む余地はあるはずだ。
リサリサという女性は、私が“吸血鬼”だと知った時点で、殺すべき対象だと認識した。
しかし逆に言えば、リサリサから私のことを聞いている参加者も、「吸血鬼だから危険」程度の認識しか持っていないのではないか。
ゲームに乗る気はない、あなた達を襲ったりしないと必死に訴えれば、迷いを持たせる余地はあるかもしれない。
そこは、私の演技力にかかっている。
グロテスクな外見をしているとはいえ、一見すると無力そうな女子高生だ。
演技だって、映研での経験のおかげでそれなりに自信はある。
ただ、ケンシロウに会った人物がいれば、その手段も通用しないだろう。
何せ、友達の西野さんすら殺したことを知られている(そう言えば、たまねぎ頭の少年がいつの間にかいなくなっていた)。
それにリサリサのように、何らかの“吸血鬼対策”を持った参加者が他にいる可能性もゼロじゃない。
とはいえ、相手が集団なら、一人が私を警戒しても、もう一人の同情を引くといった手段が取れる。
それを利用して、集団の瓦解を生む余地もある。
ただし、逆に大きすぎる集団に入り込むのも考えものだ。
見張りの目がそれだけ多くなり、迂闊な行動が取りづらい。
ある程度の速さを持つ参加者が何人かいれば、一人を襲っている間に囲まれてしまうこともある。
最悪、一対多数になることを考えれば、入り込めるグループは二人か、多くても三人。もちろん、集団の総合力や内訳にもよるけれど。
そう、利用できる参加者はとことん利用すべきだけれど、接触する参加者は慎重に選ばないといけない。

私にできるだろうか。
いや、慎重にはなっても、弱気になってはだめだ。
「できるかどうかじゃない。やるんだ」

幸い、私には夜でも働く視力と、双眼鏡がある。
先手を取ることは可能だろう。
たとえ乗っている相手に先手を取られたとしても、上手く交渉に持ちこめる余地はある。
今の私なら、自分の価値を証明できる。
触れただけでコンクリートの壁を破壊し、指を突き刺して相手の精気を吸い取るという、分かりやすい“力”がある。
実戦の経験こそほとんどないが、簡単に証明できる能力があれば、アピール次第で魅力的に見せられると思う。
力自体は、持っている。あとは、私の駆け引きでどこまで運べるかだ。
DIOのように理想的な同盟関係を期待してはいけない。それも分かる。
DIOは、同族である私に優しくしてくれた。吸血鬼としての在り方も教えてくれた。
そして何よりDIOには、蘇生させたい存在がいなかった。
しかし、これから手を組む相手には、いるかもしれない。
大切な人を生き返らせるという密かな目的を、隠していない保障はない。
いくら“最終的に私自身は死んでもいい”計画だとしても、同盟相手を簡単に信用して、優勝させてやるわけにはいかない。
やはり、私が優勝して西野さんの蘇生を願うのが最善だ。

「うん」
色々考えたけれど、おおよその方針はまとまったと思う。
あとは、その場の状況に応じて、私がどれだけ動けるかだ。


★   ★   ★


どさりと、重たい落下音と共に死体を置いた。

死体の下から木材を引き抜いて、その場に捨てた。
無事に拾えた二つの死体を前にして、私は安堵の息を吐く。
ひとつは、首の無いDIO。そしてもうひとつは、DIOを殺した男。
さて、この二つの死体のどちらかから足を頂くとして、別の死体からは“食事”をさせてもらうことになる。
右足以外にも、負傷はある。這って移動したことで、ずいぶん血も流してしまった。
“足”だけではなく、“血液”も必要だ。
そして、ミイラになった足はもう使えないから、血を吸った死体とは別の方を“足”に使うことになる。
どちらを“足”にしてどちらを“晩ご飯”にするか、ちょっとの間、考える。
アビゲイルの死体は傷だらけだけれど、首のないDIOよりは血液が残っているだろう。
つまり私は、ここでDIOの死体から足をもぎ取ることになるわけだ。

――DIO。私は、貴方に一生付いて行きます。
――ククク……当たり前じゃあないかAYA。このDIOの傍にいれば、何も恐れるものはない。
   西野つかさも、きっと蘇ることができるさ

大丈夫。
大丈夫、恩人の死体だとしても、私は真中くんの為に利用することができる。
ただ、少しだけ、浸っていただけ。
少しだけ、哀惜を抱いただけ。

私は、首のないDIOに一礼した。
「DIO、本当にお世話になりました。そして、ごめんなさい」
月並みな言葉しか思い浮かばなかった。
けれど、DIOに飾り立てた言葉は不要だとも思える。
誇り高いDIOの無念は、私が何を口にしても報われるものではないだろう。
ましてや、今からそのDIOを、死体とはいえ傷つけようとしているのだ。
けど、それでも――
「私は、私の夢の為に、あなたの死を汚します」
それでも、私はDIOを忘れないだろう。
そして私は、ただひとつ残された『夢』を宣言する。

「私は、真中くんが欲しいから」

そして私は、DIOの死体の解体を始めた。




★   ★   ★


――むかしむかし、ある王国に、一人の青年がいました。
魔法使いによって創られた石の巨人を従えて、祖国の為に戦う優しい青年です。
青年は、二人の少女から想いを寄せられていました。
一人は、国一番の美しさを誇る、無邪気で明るいお姫さま。
一人は、青年と共に同じ夢を語り合った、控えめで大人しい織物屋の娘。
その物語は、結末を迎える前に書き手が殺戮の舞台に招待されてしまったので、
青年が二人のどちらを選んだのかは分かりません。


――とある世界の、とある日本に、一人の少年がいました。
優柔不断で頼りないところもありますが、映画監督という夢にまっすぐ進む、芯の一本通った少年です。
少年は、二人の少女から想いを寄せられていました。
一人は、少年と初めて恋人になった、明るく誰からも愛される少女。
一人は、少年の映画の原作を描く夢を持っていた、引っ込み思案な文学少女。
少年は、殺戮の舞台に招待されて死んでしまったので、
少年が二人のどちらを選んだのかは分かりません。


――とある世界の、とあるミニ日本に、一人の吸血姫がいました。
“吐き気を催す邪悪”と称された吸血鬼に従い、夢の為に無辜の人々を殺戮することも厭わない、まっすぐ過ぎる吸血姫です。
彼女には、一つの道しかありませんでした。
孤独を抱いたまま、その孤独から抜け出す為に、最愛の人を目指し進み続けるという道。
彼女は、その道を進まない限り、永遠に独りきりだと知ってしまったので、
その一つの道を選ぶ他はありません。



【滋賀県/滋賀県と三重県の県境/二日目夜中】

【東城綾@いちご100%】
[状態]:吸血鬼化、波紋を受けたため半身がドロドロに溶けた、マァムの腕をつけている
    右足に深い裂傷、左足に軽い裂傷、上手く歩けない
[装備]:双眼鏡、ワルサーP38(残弾少)
[道具]:荷物一式×9(5食分と果物を少し消費)、天候棒(クリマタクト)@ONE PIECE
    無限刃@るろうに剣心、フェニックスの聖衣(半壊)@聖闘士星矢
[思考]:1:優勝して、西野つかさを蘇生させてもらいその後自殺する。
    2:DIOの死体から足を貰い、アビゲイルの血を吸う。
    3:拠点の確保も兼ねて、名古屋方面に引き返す。
    4:利用できそうな参加者はとことん利用する(多人数の集団はなるべく避ける)。
    5:真中くんと2人で――

※滋賀県中央部の林に落ちている六芒星の呪縛@遊戯王には気づきませんでした。
※瓦礫の中に埋もれた排撃貝@ONE PIECEには気づきませんでした。

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最終更新:2024年08月04日 14:01