風を切って走る。誰よりも速く。その向こうに、素晴らしいものがあると信じて。
「また走りこみか? 金剛石殿」
日課になっているランニングの途中、休憩してたら珊瑚に声かけられた。なんでこんなところにいるのか知らないけど。
「んー、そんなとこ……ですわ」
森の中の、ちょっとした原っぱのようなところ。ここはあたしのお気に入り。大きな楠の木の切り株が、ちょうどいい椅子になるし。
「こんなところでまで、無理して言葉遣いを直すこともなかろうに」
珊瑚がくすくすと笑う。
「ちがっ、無理してないもん! ……です!」
ますます笑われて、あたしはふくれる。てか、何しに来たのよこの子は。
「珊瑚、あんたは? こんなところで何してんの?」
もう取り繕うのは諦めて、軽くストレッチしながら珊瑚を見る。
「某か。林の手入れだ」
そういえばいつもの斧もかなり汚れている。もう一仕事してきたみたい。
「林に手入れなんて必要あるの?」
「うむ、そのままにしておくと、弱い者たちは朽ちてしまう。風も通らなくなる。そんな林は苦しそうでな。雲母殿と某で、たまに屋敷の近辺だけは手入れしているのだ」
そういえば、お屋敷の周辺はいつも明るい。森の中なのに、いつも光と風が気持ちいい。
「そうだったんだ……」
この原っぱを吹き抜ける風も、珊瑚たちが手入れしてくれなかったらなくなっちゃうのかな。うん、それは息苦しいかも。
「なんか……ありがと」
「礼を言われるようなことでもないが」
「んー、なんとなく。あたしがお礼言いたいと思ったからいいの」
珊瑚はくすくす笑ってあたしの横に座る。
「ね、珊瑚」
「ん?」
「今度あたしも手伝っていい?」
「いい心がけだ。雲母殿に道具を見繕ってもらおう」
「ん、ありがと」
そのまま二人でしばらくのあいだ、林を抜けてくる風を楽しんだ。
日課になっているランニングの途中、休憩してたら珊瑚に声かけられた。なんでこんなところにいるのか知らないけど。
「んー、そんなとこ……ですわ」
森の中の、ちょっとした原っぱのようなところ。ここはあたしのお気に入り。大きな楠の木の切り株が、ちょうどいい椅子になるし。
「こんなところでまで、無理して言葉遣いを直すこともなかろうに」
珊瑚がくすくすと笑う。
「ちがっ、無理してないもん! ……です!」
ますます笑われて、あたしはふくれる。てか、何しに来たのよこの子は。
「珊瑚、あんたは? こんなところで何してんの?」
もう取り繕うのは諦めて、軽くストレッチしながら珊瑚を見る。
「某か。林の手入れだ」
そういえばいつもの斧もかなり汚れている。もう一仕事してきたみたい。
「林に手入れなんて必要あるの?」
「うむ、そのままにしておくと、弱い者たちは朽ちてしまう。風も通らなくなる。そんな林は苦しそうでな。雲母殿と某で、たまに屋敷の近辺だけは手入れしているのだ」
そういえば、お屋敷の周辺はいつも明るい。森の中なのに、いつも光と風が気持ちいい。
「そうだったんだ……」
この原っぱを吹き抜ける風も、珊瑚たちが手入れしてくれなかったらなくなっちゃうのかな。うん、それは息苦しいかも。
「なんか……ありがと」
「礼を言われるようなことでもないが」
「んー、なんとなく。あたしがお礼言いたいと思ったからいいの」
珊瑚はくすくす笑ってあたしの横に座る。
「ね、珊瑚」
「ん?」
「今度あたしも手伝っていい?」
「いい心がけだ。雲母殿に道具を見繕ってもらおう」
「ん、ありがと」
そのまま二人でしばらくのあいだ、林を抜けてくる風を楽しんだ。
「……」
「? 金剛石殿?」
風が吹き抜ける。
「眠ってしまったか……」
穏やかな日差しと、そよぐ風。
「……いい風だな。ときどき厄介なこともあるが、風はなくてはならない大切なものなのだよ。なあ、金剛石殿」
ときに周りを掻き回し、ときに晴れない霧を吹き飛ばし、さまざまに表情を変える。風のような姉妹の寝顔を、私は優しい気持ちで見つめた。
「? 金剛石殿?」
風が吹き抜ける。
「眠ってしまったか……」
穏やかな日差しと、そよぐ風。
「……いい風だな。ときどき厄介なこともあるが、風はなくてはならない大切なものなのだよ。なあ、金剛石殿」
ときに周りを掻き回し、ときに晴れない霧を吹き飛ばし、さまざまに表情を変える。風のような姉妹の寝顔を、私は優しい気持ちで見つめた。
~数時間後~
「なんで起こしてくれなかったのよ~~!?」
「すまん。某も寝てしまった」
「あーん、暗いよ~~!! 怖いよー!!」
「なんで起こしてくれなかったのよ~~!?」
「すまん。某も寝てしまった」
「あーん、暗いよ~~!! 怖いよー!!」
林のお手入れへ続く
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