たった一つのきっかけが、人生に大きな影響を与える事がある。
俺も、そんなたった一つのきっかけから、人生に大きな影響を受けてしまった。本当に些細な事だ。
納得行かない……そんな些細な事で、俺はこの先ストレス地獄を耐え抜かなければならないなんて。
「希望の朝だーっ。という訳で、起きなさいよー」
……今日は休日。俺は夜勤明け。希望の朝より安らかな眠りを……。
俺も、そんなたった一つのきっかけから、人生に大きな影響を受けてしまった。本当に些細な事だ。
納得行かない……そんな些細な事で、俺はこの先ストレス地獄を耐え抜かなければならないなんて。
「希望の朝だーっ。という訳で、起きなさいよー」
……今日は休日。俺は夜勤明け。希望の朝より安らかな眠りを……。
レッドベリル。
宝石の名前らしいが、あいにく宝石と無縁の俺は全然全くどんな宝石かさっぱりだ。
で、俺の目の前にいるのは宝石ではなく、全身赤ずくめの女の子。彼女の名前がレッドベリル。ちなみに職業は宝石乙女。なんのこっちゃ?
「昨日の残り。手抜き。栄養が偏りがち」
「やかましい。いらないなら食うな」
「別にいらないなんて言ってないでしょ」
宝石乙女というのは、現行で20以上あるという生きた人形のシリーズらしい。
それが人間をミーディアムだかマスターだか、とにかくそういう契約を交わして人間と生活しているとか。
……20以上ある中で、俺はハズレでも引いたのだろうか。
目の前にいる……俺はベリルと呼んでいるが、こいつは実に素直じゃない。乙女というより小娘というか何というか……一言多いし。
……あれ、嫌味を言おうと思っても一言多い以外思い浮かばない。くそっ、それ以外はれっきとした乙女って訳か。
「マスター、食べないの?」
「ん……いや、食うぞ、うん」
いつの間にか食べ始めているベリルを見て、俺もひとまず説明の多い脳内愚痴をやめて箸を進める。
「ねぇマスター、今日用事は?」
「別に何もねぇなぁ……」
「ふーん、暇人なんだ。趣味の一つでも持ってみたら?」
「うるせぇよ。食い扶持増えて余計な事に金かけられないんだよ」
「いつも安い材料なのに?」
「節約と言え、節約と」
「はーい」
ったく、余計な事ばかり言いやがって……。
「じゃあ、今日暇なんだったらあたしの相手してよぉー」
「相手? 相手って、何の?」
「それを考えるのは男の役目。エスコートって言葉、知ってる?」
誘ってきたのはそっちじゃねぇか……ちくしょう。
「で、どうするの? あたしは別に何だっていいけど」
「何だっていいってなぁ……元々やることなんて考えてないし」
「暇人」
「うるさい」
「はぁ、仕方ないなぁ。引きこもり予備軍のマスターのために、今回はあたしが考えてあげる」
「いい加減にしないとキレちゃうぞ?」
宝石の名前らしいが、あいにく宝石と無縁の俺は全然全くどんな宝石かさっぱりだ。
で、俺の目の前にいるのは宝石ではなく、全身赤ずくめの女の子。彼女の名前がレッドベリル。ちなみに職業は宝石乙女。なんのこっちゃ?
「昨日の残り。手抜き。栄養が偏りがち」
「やかましい。いらないなら食うな」
「別にいらないなんて言ってないでしょ」
宝石乙女というのは、現行で20以上あるという生きた人形のシリーズらしい。
それが人間をミーディアムだかマスターだか、とにかくそういう契約を交わして人間と生活しているとか。
……20以上ある中で、俺はハズレでも引いたのだろうか。
目の前にいる……俺はベリルと呼んでいるが、こいつは実に素直じゃない。乙女というより小娘というか何というか……一言多いし。
……あれ、嫌味を言おうと思っても一言多い以外思い浮かばない。くそっ、それ以外はれっきとした乙女って訳か。
「マスター、食べないの?」
「ん……いや、食うぞ、うん」
いつの間にか食べ始めているベリルを見て、俺もひとまず説明の多い脳内愚痴をやめて箸を進める。
「ねぇマスター、今日用事は?」
「別に何もねぇなぁ……」
「ふーん、暇人なんだ。趣味の一つでも持ってみたら?」
「うるせぇよ。食い扶持増えて余計な事に金かけられないんだよ」
「いつも安い材料なのに?」
「節約と言え、節約と」
「はーい」
ったく、余計な事ばかり言いやがって……。
「じゃあ、今日暇なんだったらあたしの相手してよぉー」
「相手? 相手って、何の?」
「それを考えるのは男の役目。エスコートって言葉、知ってる?」
誘ってきたのはそっちじゃねぇか……ちくしょう。
「で、どうするの? あたしは別に何だっていいけど」
「何だっていいってなぁ……元々やることなんて考えてないし」
「暇人」
「うるさい」
「はぁ、仕方ないなぁ。引きこもり予備軍のマスターのために、今回はあたしが考えてあげる」
「いい加減にしないとキレちゃうぞ?」
「なぁベリル、お前どこへ行く気なんだ?」
「その呼び方はダメって言ってるでしょぉ。ちゃんとレッドベリルって呼んでよ」
「だって長いんだもん」
そんな会話をしながら、二人で住宅街を歩く。
自分が考えるとか偉そうに言っていた割に、思いついたのは結局ただの散歩ということだろうか。
それにしても……休日の午前中、グリコンダーが終わった頃だが、こんな住宅街はずいぶんと静かなモンだ。ちなみにベリルが何故かこの番組を毎週見ている。
「レッドベリルはベリルの変種であって同じじゃないんだから……って、聞いてるマスター?」
「はいはい。もう耳タコですよ」
「だったらちゃんと覚えてよ……ふん」
そっぽを向いて拗ねるベリル。時々こんな仕草も見せる辺り、可愛げがわずかに残っているということだ。
でも可愛げよりも普段の毒舌モードの方が強くてもう……とにかく、この仕草に騙されて惚れてはいけない。ストレス地獄に落ちる。
「名前もちゃんと覚えられないなんて……」
「だったら呼びやすい愛称を……って、危ねっ!」
横目でベリルを見ると、前方不注意のこいつは電柱目がけて真っ直ぐ直進。
とっさに俺の腕が出る。
「え、何……ひゃうっ」
「お前なぁ、前見て歩かないと怪我するぞ」
「え……あ、うん……」
とっさに俺の方に引き寄せたためか、勢い余ってベリルは俺の腹部にしがみつく形になってしまった。
それが照れくさいのだろうか、顔がわずかに赤い。全身赤いから気にならないけど。
「か、感謝だけはしておくから……離してよ、もぉ……」
「はいはい」
こちらとしては仕返しとしてもう少しこのままでいたいが、さすがに世間体もまずい。これくらいで解放しておく。
「ふぅ。まったく、どうしてあたしをこんな危ない方に立たせるのよ?」
「車やらの埃が飛ぶから内側歩かせるのが紳士の礼儀とか言ったのは、どこのどいつだよ?」
「む……う、うるさいなぁ。マスターがもう少し外側歩けばいいでしょぉ」
俺のふくらはぎに軽い蹴りを入れる。痛くもかゆくもないので気にしない。
「お前の近くにいないと、今みたいな事になったら何も出来ないだろうが。前方不注意の人形を一人で歩かせられるかって」
「むぅー、そういう言い方はないでしょっ」
「いつもの仕返しだ。それにお前が壊れたりしたら、作った奴に申し訳ないだろうが。俺も、お前も」
こいつは俺の所有物ではない。いくら偶然の出会いとか、雪崩方式での契約とはいえ、俺はこいつを預かっているのだ。
確かにこいつはむかつくし、どうなってもいいとは思う。だがそれで本当にどうにかなったら、こちらの胸中が重苦しくてやってられない。それに何故か悔しいのだ。そうなった場合、自分が誰かに負けたような気がして。
……そういう訳だ、俺の手がとっさに出たのは。
「う……そうだけど……へ、変なところで紳士ぶらないでよっ」
「ほう、紳士っぽく見えたか。ははは」
「うっ、べべ、別にそういう事じゃなくてぇー……もぉ、バカッ」
再びそっぽを向こうとするが、先ほどの二の舞は食わんと慌てて前を向くベリル。
普段は毒舌家だが……こうみるとなかなか面白い奴だと思う。
ま、いつも我慢してるんだから時々はこんな仕返しのチャンスもあっていいだろうな。
「何にやけてるのよぉー」
「おぉ、わりぃわりぃ。よし、今日は気分いいから何か奢ってやるよ。800円以内で」
「なーんかケチくさいなぁ……まぁいいや。その厚意、受けてあげる」
「はいはい。じゃあお前、何食いたい?」
「じゃあ……アイスクリームっ」
先ほどまでの拗ね顔はどこへ行ったのか。
うちの穀潰しで生意気で、そしてちょっとおかしな小娘が、笑顔をこちらに向けていた。
でも、明日からまたストレス溜まっていく生活か……あーあ。
「そうと決まったら早く行こうよっ。この前他の子が教えてくれたお店があるの」
普段からこれだけ素直ならいいのに……まぁ、こういう時ぐらい素直になるって事で、我慢してやるか。
はぁ、ホントここはストレス社会だよ、まったく……。
「その呼び方はダメって言ってるでしょぉ。ちゃんとレッドベリルって呼んでよ」
「だって長いんだもん」
そんな会話をしながら、二人で住宅街を歩く。
自分が考えるとか偉そうに言っていた割に、思いついたのは結局ただの散歩ということだろうか。
それにしても……休日の午前中、グリコンダーが終わった頃だが、こんな住宅街はずいぶんと静かなモンだ。ちなみにベリルが何故かこの番組を毎週見ている。
「レッドベリルはベリルの変種であって同じじゃないんだから……って、聞いてるマスター?」
「はいはい。もう耳タコですよ」
「だったらちゃんと覚えてよ……ふん」
そっぽを向いて拗ねるベリル。時々こんな仕草も見せる辺り、可愛げがわずかに残っているということだ。
でも可愛げよりも普段の毒舌モードの方が強くてもう……とにかく、この仕草に騙されて惚れてはいけない。ストレス地獄に落ちる。
「名前もちゃんと覚えられないなんて……」
「だったら呼びやすい愛称を……って、危ねっ!」
横目でベリルを見ると、前方不注意のこいつは電柱目がけて真っ直ぐ直進。
とっさに俺の腕が出る。
「え、何……ひゃうっ」
「お前なぁ、前見て歩かないと怪我するぞ」
「え……あ、うん……」
とっさに俺の方に引き寄せたためか、勢い余ってベリルは俺の腹部にしがみつく形になってしまった。
それが照れくさいのだろうか、顔がわずかに赤い。全身赤いから気にならないけど。
「か、感謝だけはしておくから……離してよ、もぉ……」
「はいはい」
こちらとしては仕返しとしてもう少しこのままでいたいが、さすがに世間体もまずい。これくらいで解放しておく。
「ふぅ。まったく、どうしてあたしをこんな危ない方に立たせるのよ?」
「車やらの埃が飛ぶから内側歩かせるのが紳士の礼儀とか言ったのは、どこのどいつだよ?」
「む……う、うるさいなぁ。マスターがもう少し外側歩けばいいでしょぉ」
俺のふくらはぎに軽い蹴りを入れる。痛くもかゆくもないので気にしない。
「お前の近くにいないと、今みたいな事になったら何も出来ないだろうが。前方不注意の人形を一人で歩かせられるかって」
「むぅー、そういう言い方はないでしょっ」
「いつもの仕返しだ。それにお前が壊れたりしたら、作った奴に申し訳ないだろうが。俺も、お前も」
こいつは俺の所有物ではない。いくら偶然の出会いとか、雪崩方式での契約とはいえ、俺はこいつを預かっているのだ。
確かにこいつはむかつくし、どうなってもいいとは思う。だがそれで本当にどうにかなったら、こちらの胸中が重苦しくてやってられない。それに何故か悔しいのだ。そうなった場合、自分が誰かに負けたような気がして。
……そういう訳だ、俺の手がとっさに出たのは。
「う……そうだけど……へ、変なところで紳士ぶらないでよっ」
「ほう、紳士っぽく見えたか。ははは」
「うっ、べべ、別にそういう事じゃなくてぇー……もぉ、バカッ」
再びそっぽを向こうとするが、先ほどの二の舞は食わんと慌てて前を向くベリル。
普段は毒舌家だが……こうみるとなかなか面白い奴だと思う。
ま、いつも我慢してるんだから時々はこんな仕返しのチャンスもあっていいだろうな。
「何にやけてるのよぉー」
「おぉ、わりぃわりぃ。よし、今日は気分いいから何か奢ってやるよ。800円以内で」
「なーんかケチくさいなぁ……まぁいいや。その厚意、受けてあげる」
「はいはい。じゃあお前、何食いたい?」
「じゃあ……アイスクリームっ」
先ほどまでの拗ね顔はどこへ行ったのか。
うちの穀潰しで生意気で、そしてちょっとおかしな小娘が、笑顔をこちらに向けていた。
でも、明日からまたストレス溜まっていく生活か……あーあ。
「そうと決まったら早く行こうよっ。この前他の子が教えてくれたお店があるの」
普段からこれだけ素直ならいいのに……まぁ、こういう時ぐらい素直になるって事で、我慢してやるか。
はぁ、ホントここはストレス社会だよ、まったく……。