「着物を着たいって?」
それは本当に唐突だった。
「うんっ」
このちびっ子が、突然着物を着たいと言い出すとか。
「お前なぁ、無茶もたいがいにしろよな。いくらすると思ってるんだよ……」
「いくらー? 天河石すじこがいいなぁー」
「なんでやねん」
天河石の頭に軽くチョップ。本気でやると泣くから。
「あうっ。えへへー」
「ったく、誰にボケの仕込みなんてされたんだか……」
「でねー、着物ー」
「だから高いから無理……いや、待てよ」
着物、か。そういえば一人アテがあるよな。
それは本当に唐突だった。
「うんっ」
このちびっ子が、突然着物を着たいと言い出すとか。
「お前なぁ、無茶もたいがいにしろよな。いくらすると思ってるんだよ……」
「いくらー? 天河石すじこがいいなぁー」
「なんでやねん」
天河石の頭に軽くチョップ。本気でやると泣くから。
「あうっ。えへへー」
「ったく、誰にボケの仕込みなんてされたんだか……」
「でねー、着物ー」
「だから高いから無理……いや、待てよ」
着物、か。そういえば一人アテがあるよな。
「今回だけだからな」
「さすが雲母ちゃん、恩に着る」
雲母ちゃんから手渡された紙袋。まぁ、着物だ、とりあえず。ちなみに入手先は雲母ちゃんと面識があるドール好きの女の人。
「……私も着るのが条件。そう言われた」
「え、あぁそうか。じゃあとりあえずうちに行こうか。ちゃんと着付けの先生呼んだから」
「さすが雲母ちゃん、恩に着る」
雲母ちゃんから手渡された紙袋。まぁ、着物だ、とりあえず。ちなみに入手先は雲母ちゃんと面識があるドール好きの女の人。
「……私も着るのが条件。そう言われた」
「え、あぁそうか。じゃあとりあえずうちに行こうか。ちゃんと着付けの先生呼んだから」
「マスター以外の男性とお話するの、初めてなので」
目の前にいる着物姿の少女、別のマスターの下で暮らす漬物石ちゃん。他の子とは違う、和風の宝石乙女だ。殺生石さんだけが着物乙女ではないということだ。普段着が着物なのだから、当然着付けもできるはずだ。
「着物ー♪」
「……借り物だから、汚すな」
「えっと、この子たちの着付けを行えば、いいのですか?」
三者三様の様相。ちなみに珊瑚は所用でいないのが残念だ。着たら一番似合いそうなのに……。
「あのぉ……」
「ん、あぁワリィな。とりあえずその二人をよろしく頼むよ」
「はい」
天河石と雲母ちゃんを引き連れ、居間から隣の部屋へと移動する漬物石ちゃん。部屋を仕切る襖が閉め切られ、ここから先は音声のみに……幼児体型に興味ないけど。
「雲母ちゃーん、これを引っ張るとあーれぇーだよねっ?」
「なんだ、それは」
「漬物石ちゃん、あーれぇーってやってー」
「えっ、ちょ、ちょっとぉ、帯引っ張っちゃ……あーれぇー」
俺は盛大に飲んでいたウーロン茶を吹き出した。何やってるんだ、あいつら。
「天河石ぃ! 大人しく着ろぉ!!」
「ひゃっ、ごめんなさぁーい」
「ご、ごめんなさいっ、私ったらちゃんと真面目に……」
出たっ、漬物石ちゃん得意の自分を追い込む自虐スパイラル!(命名:漬物石のマスター)
「つ、漬物石ちゃんはいいからっ、とにかく二人に着付けを、な?」
「あっ、す、すみませんっ、私ったらいつも……あぁ、いつも直さなきゃいけないって分かってるのに気づいたら……」
「頼むっ、愚痴は後でゆっくり聞くから今は着付けを!」
へぇ、着付けってこんなに大変だったんだ。へぇ……もう二度と着物なんて着せねぇぞ、マジで。
「……ふぅ」
目の前にいる着物姿の少女、別のマスターの下で暮らす漬物石ちゃん。他の子とは違う、和風の宝石乙女だ。殺生石さんだけが着物乙女ではないということだ。普段着が着物なのだから、当然着付けもできるはずだ。
「着物ー♪」
「……借り物だから、汚すな」
「えっと、この子たちの着付けを行えば、いいのですか?」
三者三様の様相。ちなみに珊瑚は所用でいないのが残念だ。着たら一番似合いそうなのに……。
「あのぉ……」
「ん、あぁワリィな。とりあえずその二人をよろしく頼むよ」
「はい」
天河石と雲母ちゃんを引き連れ、居間から隣の部屋へと移動する漬物石ちゃん。部屋を仕切る襖が閉め切られ、ここから先は音声のみに……幼児体型に興味ないけど。
「雲母ちゃーん、これを引っ張るとあーれぇーだよねっ?」
「なんだ、それは」
「漬物石ちゃん、あーれぇーってやってー」
「えっ、ちょ、ちょっとぉ、帯引っ張っちゃ……あーれぇー」
俺は盛大に飲んでいたウーロン茶を吹き出した。何やってるんだ、あいつら。
「天河石ぃ! 大人しく着ろぉ!!」
「ひゃっ、ごめんなさぁーい」
「ご、ごめんなさいっ、私ったらちゃんと真面目に……」
出たっ、漬物石ちゃん得意の自分を追い込む自虐スパイラル!(命名:漬物石のマスター)
「つ、漬物石ちゃんはいいからっ、とにかく二人に着付けを、な?」
「あっ、す、すみませんっ、私ったらいつも……あぁ、いつも直さなきゃいけないって分かってるのに気づいたら……」
「頼むっ、愚痴は後でゆっくり聞くから今は着付けを!」
へぇ、着付けってこんなに大変だったんだ。へぇ……もう二度と着物なんて着せねぇぞ、マジで。
「……ふぅ」
小一時間して、着付け終了。漬物石ちゃんが先に部屋から出てくる。
「お待たせしました」
「あぁ、ご苦労さん。いや、マジで」
「あはは……でも、二人とも可愛く仕上がりましたよ」
「マスタぁー、着物ぉーっ♪」
隣の部屋から颯爽と飛び出したのは天河石……って、突っ込んできた!
「ぐおおぉぉぉっ!!」
鳩尾に天河石の顔面がクリーンヒット。想像以上のダメージに、膝をつく俺……情けねぇ。
「あっ、ごめんなさい……マスタぁー?」
「天河石ぃ、はしゃぐのはいいけどよぉ……おっ?」
痛みの中で見た天河石の姿。それは、鳩尾の痛みを忘れさせるほどのものだった。
普段はツインテールにしている髪を頭頂部にまとめ、あまり見ることのないうなじがよく見える。ふむ、人形だからといえばそれまでだが、綺麗だ。天河石の髪色に合わせた黄色い着物によく似合ってると思う。
「何だよ、思ったより似合ってるじゃん」
「えへへー、ありがとマスタぁー」
先ほど鳩尾に頭突きをかましたのを忘れているのか、無邪気な笑顔をこちらに向けてくる。一発叱ってやろうか……いつしかそんな考えも消えてしまうほどだ。もう二度と着物なんて着せてやらないと思っていたが、これならまぁ我慢しても……。
「おい……」
襖の影から、こちらを覗き込んでくる雲母ちゃん。この子はどんな感じなのか……まだ襖の影になってて分からない。
「あ、あぁ。出てきていいぞ?」
「むぅ……」
「最初は自分のマスターに見て欲しいんだよねっ、雲母ちゃん」
「っ!」
「にゃーっ」
突如目つきを変え、天河石に向かってこぶしを振り乱す。まぁ、俗に言うぽかぽか攻撃という奴だが、外見通りそれほど痛そうには見えない。
それよりも着物姿の雲母ちゃんだ。こちらも髪色に合わせた、薄い紫みたいな色の着物。髪型は変えてないというか、変えるのが大変だから省略したというか。
「お前も見るな」
「え、ちょっ、ちゃんと似合ってるから別に……あだっ!!」
どこから取り出したか、荒巻が俺の頭頂部に叩きつけられた。くそっ、着物一つで鳩尾とか頭とか、何なんだよマジで。
「あのぉ……大丈夫、ですか?」
そしてはしゃいでたり恥ずかしがってたりしてる奴らの中、漬物石ちゃんだけがまともに俺の心配をしてくれた。
「お待たせしました」
「あぁ、ご苦労さん。いや、マジで」
「あはは……でも、二人とも可愛く仕上がりましたよ」
「マスタぁー、着物ぉーっ♪」
隣の部屋から颯爽と飛び出したのは天河石……って、突っ込んできた!
「ぐおおぉぉぉっ!!」
鳩尾に天河石の顔面がクリーンヒット。想像以上のダメージに、膝をつく俺……情けねぇ。
「あっ、ごめんなさい……マスタぁー?」
「天河石ぃ、はしゃぐのはいいけどよぉ……おっ?」
痛みの中で見た天河石の姿。それは、鳩尾の痛みを忘れさせるほどのものだった。
普段はツインテールにしている髪を頭頂部にまとめ、あまり見ることのないうなじがよく見える。ふむ、人形だからといえばそれまでだが、綺麗だ。天河石の髪色に合わせた黄色い着物によく似合ってると思う。
「何だよ、思ったより似合ってるじゃん」
「えへへー、ありがとマスタぁー」
先ほど鳩尾に頭突きをかましたのを忘れているのか、無邪気な笑顔をこちらに向けてくる。一発叱ってやろうか……いつしかそんな考えも消えてしまうほどだ。もう二度と着物なんて着せてやらないと思っていたが、これならまぁ我慢しても……。
「おい……」
襖の影から、こちらを覗き込んでくる雲母ちゃん。この子はどんな感じなのか……まだ襖の影になってて分からない。
「あ、あぁ。出てきていいぞ?」
「むぅ……」
「最初は自分のマスターに見て欲しいんだよねっ、雲母ちゃん」
「っ!」
「にゃーっ」
突如目つきを変え、天河石に向かってこぶしを振り乱す。まぁ、俗に言うぽかぽか攻撃という奴だが、外見通りそれほど痛そうには見えない。
それよりも着物姿の雲母ちゃんだ。こちらも髪色に合わせた、薄い紫みたいな色の着物。髪型は変えてないというか、変えるのが大変だから省略したというか。
「お前も見るな」
「え、ちょっ、ちゃんと似合ってるから別に……あだっ!!」
どこから取り出したか、荒巻が俺の頭頂部に叩きつけられた。くそっ、着物一つで鳩尾とか頭とか、何なんだよマジで。
「あのぉ……大丈夫、ですか?」
そしてはしゃいでたり恥ずかしがってたりしてる奴らの中、漬物石ちゃんだけがまともに俺の心配をしてくれた。
その日の夕方。
「ただいま……おや、珍しい物を着ているな、天河石」
「あっ、おかえりお姉ちゃーん。似合うっ?」
「あぁ、似合っているぞ」
「えへへー。マスタぁー、似合ってるだってぇ」
「あーそうかい……」
結局、雲母ちゃんを家に送ったりとか何だとかで、俺はすっかりボロボロだ。で、俺の状態を見て珊瑚は軽く微笑む。
「ご苦労様。今日の夕食は主の好物にしよう」
「あー、そうしてくれー……」
好物かぁ。何出るかな……エビフライ? それともカレー?
「マスタぁー♪」
そんなことを考えていると、俺の背中に天河石が飛びついてくる。
「おいおい、あんまりはしゃぐとシワつくだろうが」
「あ、そっかぁ。じゃあだっこー」
俺の脚に腰を下ろす天河石。そして笑顔。この体勢だと、やたらと天河石のうなじが目についてしまう。
……はぁ、今日は疲れた。
「天河石ぃ、今度はいつそれ着る?」
「え? んーとねぇー……」
「ただいま……おや、珍しい物を着ているな、天河石」
「あっ、おかえりお姉ちゃーん。似合うっ?」
「あぁ、似合っているぞ」
「えへへー。マスタぁー、似合ってるだってぇ」
「あーそうかい……」
結局、雲母ちゃんを家に送ったりとか何だとかで、俺はすっかりボロボロだ。で、俺の状態を見て珊瑚は軽く微笑む。
「ご苦労様。今日の夕食は主の好物にしよう」
「あー、そうしてくれー……」
好物かぁ。何出るかな……エビフライ? それともカレー?
「マスタぁー♪」
そんなことを考えていると、俺の背中に天河石が飛びついてくる。
「おいおい、あんまりはしゃぐとシワつくだろうが」
「あ、そっかぁ。じゃあだっこー」
俺の脚に腰を下ろす天河石。そして笑顔。この体勢だと、やたらと天河石のうなじが目についてしまう。
……はぁ、今日は疲れた。
「天河石ぃ、今度はいつそれ着る?」
「え? んーとねぇー……」
「よかったですね、マスターに似合ってるって言ってもらえて」
「ん……だけど」
「どうしました?」
「……また、写真撮らないといけない」
「ん……だけど」
「どうしました?」
「……また、写真撮らないといけない」