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3歳でも5歳でも7歳でもない子供

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  今年も残すところ2ヶ月を切った。まぁ、それとは全然関係ないけど、もうすぐ七五三という行事が来る。……何で3歳と5歳と7歳のお祝いなんてあるんだろう? 俺もやったけど。
「とぉりゃあぁー!」
「おっと」
  いきなりの嵐。俺は体を左に移動する。
「あれっ、あわわぁっ!?」
  嵐が盛大にこけた。
「あたた……マスターっ、避け方ってものがあるでしょぉー!」
「その前に奇襲戦法というのを覚えようよ、やられても困るけど。あと口調に注意」
「えっ、あわわ……マスター、避け方というのがあると思うのですがっ」
  いや、わざわざ口調を直して言われてもねぇ……。
「それよりマスター、どっか行くの……じゃない、どこかへ出かけるのですか?」
「あぁ、別にどこってわけじゃないよ。金剛石以外出かけちゃってるし、とりあえず散歩でもと」
  何でも、黒曜石や雲母といった幼めの宝石乙女たちが集められているらしいが、何なんだろう。
「ねぇ、一緒に行く?」
「はいっ!」
  表情がころころ変わるなあ……ま、それが金剛石のいいところだけど。

  二人で街中を歩く。そういえば、金剛石とこうして歩くのって初めてかもしれないな。
「んーっ、いいトレーニング日和ですねっ、マスター」
「せっかくの休みに修行はちょっと……」
「修行じゃなくてトレーニングですってばー」
  とまぁ、家と変わらぬ会話をしているわけだが。だいたい前は修行って言ってたくせに。
  ……あれ、なんかいい匂いがするな。
「ん? マスター、千歳飴って何ですか?」
「千歳飴?」
  金剛石の指差す先、確かに菓子屋の店頭に貼られた張り紙に書いてある。そうか、このいい匂いはお菓子の匂いか。
「マスター?」
「え? あぁ、名前の通り飴だよ。ただ七五三のお祝いで食べるやつで、なんか神社でお祓いとかしてあるらしいよ。あと長寿の願掛けみたいなモン」
「へぇー。日本独特なん……ですねぇー」
「まぁね。食べてみる? どうせ高いモンでもない……と思うし」
  ぶっちゃけ自分で買ったことないから分からない。
「いいの……じゃない、いいんですか?」
「うん、いいよ。甘い物なら俺も食べられるし」
「それじゃあ、二人で食べましょうかっ」
  近所の公園。秋真っ盛りの、落ち葉だらけのベンチ。落ち葉を押しのけ、俺と金剛石は並んで座っていた。
「長い……」
「あぁ、長いぞ」
  買った直後から、なぜか金剛石はそこばかりに注目している。確かに長いのは分かるが、何もそんなじっくり見なくても……ちなみに値段は400円(2本入り)。想像よりは安かった。何だかんだいって飴は飴か。
  で、千歳飴。先ほどから金剛石は食べる気配がない。
「長い……マスター、なんかチョークみたいですけど、大丈夫ですか?」
「だから飴だっちゅーに。何なら俺が食べてみるか?」
「んー……いやっ、ここはやっぱりあたしが毒味をっ。行きます!」
  いや、毒なんて入ってないと思う。
  そんなツッコミを入れる間もなく、先ほどまで見つめていた白い千歳飴の先端を口に含む金剛石……さっきからなんかエッチな妄想みたいだな、俺。
「んっ、あまーい、おいしー♪」
「そりゃあ飴だから」
  まぁ、さっきまでチョークみたいと思ってたんだから当然の反応か。しかし千歳飴、子供が食べるのが普通なんだと思うけど……。
「マスターも半分どうぞ」

「あぁ、ありがと。金剛石、口に入れたまましゃべらないの」
  白色の千歳飴を受け取る。千歳飴を口にくわえて、こちらに半分を差し出す金剛石の姿。
「……なんか子供みたいだな」
「なっ、こ、これでもあたしはマスターよりも年上おとととっ」
  口からこぼれた千歳飴を慌てて受け止める。反射神経がいいのはさすがだが、やっぱり子供みたいだ。
「あっ、マスター笑わないでくださいよっ! これあげませんよっ?」
「買ったのは俺だろ」
「あっ、横取りーっ!」
  抗議の声を聞き流し、一口……どこか懐かしい甘さが、口に広がる。
「マスターっ!」
  ――油断した。そう思ったときは、すでに遅かった。
「あだっ!」
「やったっ! マスターに1ヒットっ!」
  金剛石の拳が、見事俺の側頭部に命中した。
「いつもなぜか回避されちゃうモンね。今回が初めてだぁー」
「いってぇ……何でそんなことに執念燃やすんだか。あと口調」
「あわわっ……だ、だって、あたしは家事ヘタだし、取り柄といったら腕力なのになぜかマスターには……」
  そりゃあ腕力はあるけどそれを扱う能力の問題が……必ず大声で突貫するし。
「だ、だから絶対マスターより強くなるんです! そうすればマスターの役にも必ず……う、あたし何言ってるんだろ」
  ……聞いてるこちらの方が恥ずかしくなってきた。
「あー……まぁ、金剛石も成長したってことで、な」
  まぁ、結局のところそういうことなんだろう。七五三は成長を祝う行事だし……3歳でも5歳でも7歳でもないけど。じゃあ子供なのだろうか?
「な、なんですかぁ、こっちばかり見ないでくださいよぉ」
  ……子供だな、見た目は。
「なんですかぁー? 笑わないでくださいよ!」
「あぁ、悪い悪い。でも、子供の成長を見守る父親の気分が分かった気がする」
「なっ……マスターのバカッ」
  こうやって拗ねる姿が、やたらと子供っぽい。それがすごく可愛いんだよな。うん、可愛い。
「って、頭撫でないでよっ……むぅー!」

  その後、俺の側頭部にもう一発拳が飛んできたのは、言うまでもない。

「マスターにセクハラされ……ました」
「マスター……」
「なっ、何でそうなる……って、雲母っ! 荒巻振り回さなあぁーっ!」

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