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ある日の喧嘩

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jewelry_maiden

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だれでも歓迎! 編集
  いい感じに恋愛をしている子を見ると、時々思い出す。
  あたしにもそういう時期があったこと。そして、本気で好きになった男のこと。

  無愛想なマスター。
  それがあいつの第一印象。
  でも、見てすぐ分かった。ただ照れているだけだって。
  それをネタに、よく彼をからかってみた。不機嫌そうにして、そっぽを向くあいつの顔を今でも覚えている。
『ほっといてくれ』
  あいつがよく口にしていた言葉。
  言われるとちょっとだけ傷つくけど、そのときの顔がからかってるときと同じ。
  あぁ、やっぱり照れてるんだって、そう思うとおかしくなって。
  だからまたからかってやる。あの顔が見たかったから。

  あいつと、本気で喧嘩したことがある。
  今考えると些細なことなのに、あたしもつい意地になって言い返してしまった。
  あとは自然と火が着いて、大喧嘩にまで発展して……。
  それが最初で最後の喧嘩。物事を冷静に考えられなくなって、あたしはあいつの家を出た。
  ……馬鹿だな、あたし。
  だって、契約を解消せずに家を出たんだから。
  だから分かる。あいつがあたしのこと、待ってるって……。
  お互い、未練ばっかりが残ってしまった。
『ほっといてくれ』
  あのときの、あの言葉。
  あんなの、もう二度と聞きたくない。
「爆ちゃん」
  隣に現れた真ちゃんが、紅茶を手渡してくれる。

「ありがと」
「いいのよ。それより、また?」
「当たり。またなのよぉ」
  付き合いの長い真ちゃんには、隠し事なんて無理。
  だから、あたしの悩みは全て話した。あいつとのことも。
「もう何年かしら」
「7年、ねぇ」
  わずかな沈黙。
「……そろそろ帰ってあげたらどうかしら」
  7年。
  熱を冷ますには、少々長すぎた時間。
  ごめんなさいの一言、それを言うだけの勇気は、すでに出来ている。
  あとは、あいつと面と向かって謝る。ただそれだけ。
「やっぱこの喧嘩、あたしの負けになっちゃうのかしら?」
「いいえ、ドローね。お互い我慢の限界だと思うわ」
「あちゃー、やっぱ真ちゃんには敵わないわぁ」
  ホント、何でもお見通しなんだから。
「それじゃあ、早速明日帰ってみたらどうかしら。いつでもこっちには戻ってきていいから」
  喧嘩をした後、無理を言って居候させてもらった真ちゃんの家。
  いつもきれいに整理されていて、いい香りに包まれた家。
  ……そろそろ、あの狭い部屋が恋しくなってきたかもしれない。
「そうねぇ……じゃあ、そうしようかしら」
  そう、したいから。

          ◆

  いい感じに恋愛をしている子を見ると、時々思い出す。
  あたしにもそういう時期があったこと。そして、本気で好きになった男のこと。
  ……いや、今のあたしはそういう時期だ。他の子と同じ。
「ただいまぁ。久しぶりねぇ」
  せっかく笑顔で言ってあげたのに、あいつは相変わらず無愛想な顔。
  そんな顔じゃなく、ちゃんと笑顔で抱きしめてほしいんだけどな。


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