シャワーだと言って、雨の中ではしゃいでいた子供がいたのは、どこの国だったか。いや、そのときは大人も混じっていたか。ずいぶんと幼稚なことだが、そこは平和そのものだったな。
だが、ここにそんな幼稚な大人はいない。皆が傘を差し、似たような格好をして道を行く。
駅前での雨宿り。この国には梅雨という雨の多い時期があることを、完全に失念していた。
ドレスが水を吸ったおかげで重い。その上スカートの中は湿気が充満して気持ち悪い。
最悪だ。何がとは言わない、すべてが最悪だ。スカートの端から、帽子の端から落ちる水滴が恨めしい。アスファルトに浅い水たまりができるのが恨めしい。この長いスカートを絞ってやろうかとも考えたが、さすがに人前でそれはまずい。金剛石ではあるまいし。
金剛石か……きっとあいつも、外に出ていたら傘など持っていないのだろう。そんなことを考えていたら、不意に隣に駆け込んでくる人影があった。
「はぁ、助かったー……うぅ、びしょびしょぉー」
やたらと明るい声。忘れるはずがない。年の離れた妹の声だった。
「あれぇ、鉄鉱石姉さん?」
……本当は、他人のふりをしたかった。
だが、ここにそんな幼稚な大人はいない。皆が傘を差し、似たような格好をして道を行く。
駅前での雨宿り。この国には梅雨という雨の多い時期があることを、完全に失念していた。
ドレスが水を吸ったおかげで重い。その上スカートの中は湿気が充満して気持ち悪い。
最悪だ。何がとは言わない、すべてが最悪だ。スカートの端から、帽子の端から落ちる水滴が恨めしい。アスファルトに浅い水たまりができるのが恨めしい。この長いスカートを絞ってやろうかとも考えたが、さすがに人前でそれはまずい。金剛石ではあるまいし。
金剛石か……きっとあいつも、外に出ていたら傘など持っていないのだろう。そんなことを考えていたら、不意に隣に駆け込んでくる人影があった。
「はぁ、助かったー……うぅ、びしょびしょぉー」
やたらと明るい声。忘れるはずがない。年の離れた妹の声だった。
「あれぇ、鉄鉱石姉さん?」
……本当は、他人のふりをしたかった。
「姉さんも傘忘れ……たのですね。あたしと一緒ぉ……ですねぇー、あはははは」
「笑うな」
この妹が現れて、同じ過ちを犯したことを恥ずかしく思う。
「でも、こんなにひどいとシャワー……みたいですね。そう考えると楽しいかも」
相変わらずの平和な思考。雨なんてシャワーほど綺麗なものではない。
「相変わらず、口調で詰まるんだな」
「え? えへへ……」
「えへへじゃないだろ。私が言えた口でもないが」
口調か。私も真珠やペリドットに注意を受けたが、結局直らなかったな……またこの妹と同じか。
「それにしてもスカートが重い……ですねぇ。絞っちゃいましょう」
「人前でやるな」
「あ、そっか。じゃあそこのお手洗いでっ」
「もっとわかりやすく言ってやろう。公共の場でやるな!」
黒曜石とはえらい違いだな……まったく。……いや、一瞬でも同じことを考えた私も同類なのか?
「うぅ、じゃあ早く着替えたいですよねぇ。仕方ないから走って帰りましょうっ」
「少しは落ち着け。お前の家までどれぐらいあると思っている」
最低でもここから走って十分以上だろう。数えるほどしか来たことがないからはっきりとは言えないが。
「あう……あぁ、お金があれば傘買えるのになぁ」
金、か。本当は節約のつもりで雨が止むのを待っていたのだが……。
「……仕方ない。買ってくる」
「えっ、姉さんお金持って……るんですかっ」
「先立つものがないと何もできないだろう。とにかくここでおとなしく待っていろ」
「笑うな」
この妹が現れて、同じ過ちを犯したことを恥ずかしく思う。
「でも、こんなにひどいとシャワー……みたいですね。そう考えると楽しいかも」
相変わらずの平和な思考。雨なんてシャワーほど綺麗なものではない。
「相変わらず、口調で詰まるんだな」
「え? えへへ……」
「えへへじゃないだろ。私が言えた口でもないが」
口調か。私も真珠やペリドットに注意を受けたが、結局直らなかったな……またこの妹と同じか。
「それにしてもスカートが重い……ですねぇ。絞っちゃいましょう」
「人前でやるな」
「あ、そっか。じゃあそこのお手洗いでっ」
「もっとわかりやすく言ってやろう。公共の場でやるな!」
黒曜石とはえらい違いだな……まったく。……いや、一瞬でも同じことを考えた私も同類なのか?
「うぅ、じゃあ早く着替えたいですよねぇ。仕方ないから走って帰りましょうっ」
「少しは落ち着け。お前の家までどれぐらいあると思っている」
最低でもここから走って十分以上だろう。数えるほどしか来たことがないからはっきりとは言えないが。
「あう……あぁ、お金があれば傘買えるのになぁ」
金、か。本当は節約のつもりで雨が止むのを待っていたのだが……。
「……仕方ない。買ってくる」
「えっ、姉さんお金持って……るんですかっ」
「先立つものがないと何もできないだろう。とにかくここでおとなしく待っていろ」
二人並んで、一つのビニール傘に入って歩く。
「初めてだ……ですよね、こうして並んで歩くの」
「ああ」
どこか嬉しそうな金剛石。なぜそんなにいい笑顔なんだか。
だがこうして歩くのが初めてなのは確かだ。思ったより身長の高い金剛石に、少し驚いていたりもする。
「今はマスター仕事でいな……いませんから、ゆっくり服も乾かせますよ。かんそうきっていうのもありますから、早いですよ」
「そうか……金剛石、いちいち私の前で言葉を言い直すな。素でかまわない」
「え? そ、それなら……ふぅ、疲れたぁ」
たかが言葉遣いを直すので疲れるとは……まぁ、金剛石らしいか。笑ったり疲れたり、忙しい妹だ。
「あっ、そうだ。確か黒曜石がクッキー焼いてるんだったっ。一緒に食べよ?」
「……はいはい」
雨をシャワーだとはしゃぐことはできない。だが、こういう愉快な妹が見られるのなら、雨の日も悪いものではない。
これで濡れ鼠でなければ……な。
「初めてだ……ですよね、こうして並んで歩くの」
「ああ」
どこか嬉しそうな金剛石。なぜそんなにいい笑顔なんだか。
だがこうして歩くのが初めてなのは確かだ。思ったより身長の高い金剛石に、少し驚いていたりもする。
「今はマスター仕事でいな……いませんから、ゆっくり服も乾かせますよ。かんそうきっていうのもありますから、早いですよ」
「そうか……金剛石、いちいち私の前で言葉を言い直すな。素でかまわない」
「え? そ、それなら……ふぅ、疲れたぁ」
たかが言葉遣いを直すので疲れるとは……まぁ、金剛石らしいか。笑ったり疲れたり、忙しい妹だ。
「あっ、そうだ。確か黒曜石がクッキー焼いてるんだったっ。一緒に食べよ?」
「……はいはい」
雨をシャワーだとはしゃぐことはできない。だが、こういう愉快な妹が見られるのなら、雨の日も悪いものではない。
これで濡れ鼠でなければ……な。