ぼくらのメジャースプーン  ◆j1I31zelYA



陽が、沈む。

ずいぶんと弱々しくなってしまった光に西側から照らされて、しかし地の色はむしろ鮮やかさを増したかのようだった。
ある程度の高さがある建物ならば、その景色を一望できる。
そこには斜陽に染められた荒野があり、雑木林があり、道路があり。
道路にそって視線を追いかければ、地図の西側で目立っている『タワー』の外観が飛びこんでくる。
そしてその景色の先に――

屋上へと開放された鉄扉をくぐり、綾波レイはそれらを視界におさめた。
見知らぬ土地。初めて見た景色。
同じ郊外でも、あの血の色と錆の色をしていた境界線上の場所――電車が地面に突き刺さった旧市街地よりはずっと、見ていて美しかった。
『三人』で見ていた時だったら、他の二人からはよくある郊外の景色だという感想を得られたのかもしれないが、今、屋上にいる綾波は一人きりだ。
ゆっくりと、鉄柵のめぐらされた屋上の縁へと歩いていく。そして『その景色の先』を見る。

オレンジ色の夕陽があり、茜色の雲が浮かぶ。
にじむように燃えながら、太陽が今にも落ちていくのは、西の海。

一度だけ、微かに見えた青い海は、昼間とまた違った色合いを見せていた。
夕陽を飲もうとしている水平線の彼方からこがね色を帯びた白い光が一直線に海面を割り、きらきらと陸地へ続く光の道をつくる。
その光が届かない道の左右は暗く陰っていて、ともすれば何も無い青灰色の砂地にさえ見えてしまう。
しかし波がわずかに動くことで生じるに揺らぎには点描をしたように細かな色合いが混じっていて、そこがとても透明度の高い水だということが分かった。
それが日が高いところにある時はとても鮮やかに青かったということも、感覚で理解させる。

知っている海と、色が違う。それだけのことだ。
それだけのことに、いつまで見ていても飽きないかもしれないと、価値を見出している自分がいた。

――青い海が、気に入ったんだっけ

天野雪輝がランニングの疲れを回復させるための、貴重な休憩時間。
その時間を利用して、夜になってしまう前の海を見てきたらと言ったのは越前リョーマだった。
もう青い海が見られる時間ではないかもしれないけど、それでも赤い海よりはきれいだろうから、と。
当の彼はあいにくと車椅子の上だったので、階段を登るには手間も時間もかかりすぎると下階で待っているけれど。

気晴らしをさせるために、綾波が見たがりそうなものを考えてくれたのだろうか。

ツインタワーではちっぽけな海しか見られなかった綾波は、傍目には残念がっているようだったらしい。
あの後で、越前に海に行ったことがあるのかどうかを聞くと、ぽつりぽつりと話してくれた。
幼い頃に住んでいたロサンゼルスの家は海が近かったので、よく着衣のまま飛びこんでは泳いでいたことだとか。
チームメイトといっしょに出かけた合宿では、房総半島の海で一日遊んだことだとか。
それを聞いた高坂が無駄に張り合うかのように、俺だって海水浴には何度も行ってるだとか、臨海学校もあるのだとか話し始めた。

今さらに思い出して、嘘つき、と呟く。
俺には何も無いと言っていたのに、高坂も綾波が知らないことを、たくさん知っていたんじゃないか、と。
あの話をしていた時は、綾波も『そういう人間らしさ』に近づけるだろうか、と意識していた。
そっち側に行った方が、もっとぽかぽかする何者かになれて、良くなっていけそうだったから。



「でも、もういない」



今はもう、『がんばらなきゃ』と思っていた理由は。
がんばった姿を見せたかった少年は、もういない。
彼の失われた世界に帰ったところで、大人たちは『三人目のアヤナミレイ』を生み出してどうにかやっていることだろう。
代わりのいない綾波レイは、もう、どこにいてもいなくてもいい綾波レイになってしまった。

何も、できなかった?

そう言葉にすると、否定してくれた人たちがいた。
綾波が動いたことで良い結果になって、ありがとうと感謝の言葉をくれた人たちのこと。
屋上へと送り出される前にも、その最たる少年から言われた。
何もしていないのに休めないと頑なになった綾波に対して、そんなことはないと。
高坂と一緒にいた時も、神崎麗美との時も、さっき天野雪輝と話した時も、悲しいことや悔しいことにどう向き合うか分からなかった時も。
綾波がいつでも崩れそうになるのを止めてくれたから、『そっか』と気づくことができたと、たどたどしい言葉で伝えられた。
綾波にさえ分かるほど恥ずかしそうにしながらも言ったのは、彼にとって慣れない褒め言葉を使うよりも、
自らの過ちや助けてくれたことを認めずにスルーしておく方が恥ずべきことだったからだろう。
だが。

それが真実だとすれば、とてつもないことだ。
エヴァに乗っていない自分なのに、人間として足りないものだらけなのに、求められた。
しかし。
そう、自覚した瞬間に。
ぞわりと身の震えが、身体を貫いた。
両腕で身をかき抱くようにして、屋上のタイルを見下ろす。
少しは成長していた証のはずなのに。『ぽかぽか』すべきことのはずなのに。
こんなのは、知らない。

知らなかった。
碇シンジを失った時は、これ以上の喪失など有り得ないと思っていた。
しかし、高坂王子が死んでしまったことで得たのは、碇シンジのそれとは別の喪失だった。

「無理……私は、越前くんみたいに、強くなれない」

今なら、理解できたのかもしれない。
エヴァに乗ることを怯えていたころの碇シンジが、何を恐れていたのか。
己のことを弱くて臆病だと、自嘲していた理由が。
出会うということは、いずれ別れるということだ。
大切なぬくもりを手に入れたそばから失って。
しかも、彼らが命を落とした原因のひとつが、自分にあって。
きっと、これからも手に入れては失うことが、ずっと続いていく。

足元にぐらぐらとおぼつかなさを感じて。
屋上にひとつ、置かれていたベンチに腰を下ろした。
日没の景色が真正面にあった。
太陽のオレンジ色が、優しかった。
数十人の死体が転がっている場所だとは、思えないぐらいに。

この夕焼けを、まだ生きている他の誰かも見ているのだろうか。
今まさにこの時に、綾波レイの知っている誰かは、越前リョーマの知っている誰かは、この夕陽を見ているのだろうか。
だとすれば、それはなんだか不思議で、とても特別なことのように感じられて。
だから綾波は、もうしばらくこの景色をじっと見ていることにした。

世界は、燃えていた。

呆れるほど、綺麗だった。




屋上へ上る階段とエレベーターが見えて、視界を右に向ければ非常口も見えるような廊下の曲がり角。
そこに自販機のそばにあったベンチを持ってくると、外敵への警戒も兼ねて秋瀬或と越前が腰掛けていた。
雪輝はまだ戻っていない。
待っている二人は、どこか疲れた顔をしている。
特にだるそうにベンチに座っている越前は、綾波が階段から降りて近寄ってきたことにも気づかない様子だった。
不在にしている間に、疲れるようなことでもあったのだろうか。

「――のど、かわいた」
「飲み物、買ってきましょうか?」

声をかけると、驚いた以上に焦った風な感じで、越前が慌ててこちらを向いた。

「べつにいいっス……それより、海、どうだった?」

首を横に振る。
動転するあまり、とっさに首をそうしてしまった。そんな風な挙動だった。

「暗くなりかけてたけど、ちゃんと見られた」
「そう」
「いいものが見られた。ありがとう」
「べつに」

お礼を言うと、そっけなく顔をそむけたものだから、結果的に秋瀬と見つめ合うような形になる。
ああ、この反応はいつもどおりだと、違和感を解消した。
実は屋上にあがる前に、彼の言ったことが鼻についたから言い合いをしてしまったのだけれど。
もう引きずっていないようだったから、安心する。

「わたし、販売機のところで休んでくるから」

そう言いおいて、またその場を離れた。
廊下の端の方へと歩いていく途中で、枝のように分岐した細い通路へと折れる。
自動販売機は、入院患者用の浴室へと続く扉のそばにあった。
売店のレジから持ってきた小銭でジュースを買い、飲みながら扉の横で待つ。
ここを開けて戻ってくる人物にも、用事があった。

ほどなくしてリハビリ室から拝借したジャージの上下を着た天野雪輝(それまでの服は汗だくになっていて使えなかった)が、さっぱりした顔つきで姿を現した。
ドアを開けた真横に綾波がいるのを見てけげんそうな顔をする。

「……なんで綾波さんが一人で待ってたの?」
「聞きたいことがあったから」
「みんなの前で話すのじゃ駄目なの? 僕とふたりっきりで話してたりしたら『雪輝日記』を持ってる由乃にばれるよ。
今の由乃が嫉妬するかは分からないけど、どっちみち仲が良いとか誤解されたら、狙われやすくなると思う」

なるほど、そういうことも起こり得るのか、と聞かされて納得した。
しかし、聞きたいことはふたりきり――特に秋瀬のいない時の方が、話しやすいことだ。
それに、綾波にとってその危険はピンとこない。

「それは構わないわ。この中で私が優先して狙われるなら、三人が狙われる確率は下がるかもしれないから」

その理由を、分かりやすく説明したつもりだったのだが。

「そういう考え方は、やめなよ」

ほとんど反射的といっていい早さで、否定を受けた。

「そういうの、女の子の側は守ろうとしてるつもりかもしれないけどさ。
男の側が浮かばれないのを二度も見せられるのは……ちょっと嫌だな」

『二度も』という天野の言い方が引っかかり――すぐに、我妻由乃のことを思い出した。
彼と彼女は、『どちらが自分を犠牲にして好きな人を生かすのか』で喧嘩をして、今に至っている。

「あなたも、そう言うのね」

呟くと、天野はけげんそうな顔をした。
碇シンジは、『綾波レイともう一人の少女を守ってほしい』と言い残した。
綾波レイが無茶をするようでは、その想いが浮かばれないと菊地善人が言った。

「私には、『私を守ること』を望んだって言われても……意味が難しいのに」

考えようとすると、第6使徒を倒した後に『そんな悲しいこと言うなよ』と言っていた碇シンジを思い出して、胸が苦しくなる。
本当に理解して飲み込んでしまえば、そこが張り裂けてしまいそうで。

「言葉通りの意味だと思うけど。その人に守ろうとされたのが、そんなに意外だったの?」
「好きになってもらえるところより、そうじゃないところの方が多いから」

足りないところだらけだった。
綾波レイは、さっき初めて本当に『怖い』ということを知ったばかりなのに。
みんなはとっくの昔にその怖いものを知っていて、克服したり、覚悟をしたり、もう失くさないなどと強いことを言っていて。
その強さには、ちっともついて行けそうにない。

「『自分から見た自分』なんて、そんなものだよ。
ぼくも、最初はぜんぜん分からなかった。由乃はぼくのどこを好きになったんだろうって」

座る場所がなかったので、二人は壁に背中を預けた。

「私の目には、あなたも普通の人に見えるけど」
「ぼくなんて、良いところが無いどころか失敗ばかりだったよ。学校では日記がなきゃ負け組だったし、由乃の足も引っ張ってばかりだったし」

もしかして、天野雪輝と自分は似ているのかもしれないと思った。
以前に高坂と越前が、似ているのかもしれないと思ったように。
どっちにしても、話が我妻由乃へと向いたのは都合がよかった。
本来の聞きたかったことを尋ねる。

「聞きたいことだけど……我妻さんがいちばん大事なのに、私たちと仲良くしてていいの?」
「どういう意味なの?」

天野雪輝は、我妻由乃という少女のために動いている。
その少女は殺し合いに乗っていて、秋瀬や越前や綾波も含めた全員を皆殺しにしようとしている。
ならば、

「私たちと死に別れた時に、辛くなるかもしれないのに」

その女性が遠山金太郎を殺したように、また天野雪輝の身近な人間を殺してしまうことは、ありえることだ。

越前は強くて鈍いから、受け入れると決めてからは、『天野たちの方こそが正気を失って何かしでかす可能性』を見ていないようだったけれど。
だからこそ綾波が、気をつけておかなければいけない。
ここにいる者に情を移しているような天野の真意は、どこにあるのか。

「遠山が死んだ時は、正直思ったよ。
また僕のせいで、できたばかりの友達が死んだんだなって」

似ているところを、もうひとつ見つけた。
はじめから友達を作ろうとしなければ、我妻由乃だけで満足していれば。
前のサバイバルゲームでの友人たちや、この世界での遠山金太郎を死なせることもなかったのだろうか、と。
そんな風に悔やんでいたとすれば、綾波にはその気持ちがわかる。

「遠山がまだ生きてた時も、思ってたんだ。謝っても許されないことをしてきたんだなって。
みんなは僕のことを思ってくれたのに、僕は由乃のことしか見ていなくて、
最後には皆を殺したんだから……皆からしたら、堪らないだろうなって。
それなのに、皆は僕のことを許すんだ。友達だって言うんだ。
絶交にしてくれた方がマシなのに、僕を一人にしないんだ」

天野は壁にもたれて、天井の方を見ていた。
越前に『許せるのか』と迫ったときのような、笑みの仮面はもうなかった。

「でも、僕はさっき『思い出せてよかった』と思った。
辛いことばっかりなのに、それでも思い出したかった。
その気持ちは、本当だと思うから」

とてもさっぱりとした、顔をしていた。

「だから、ひとつだけ決めた。
これからぼくの『願い』で誰かが犠牲になるとしても、それは昔みたいに
『じゃあ他にどうすればよかったの』って言い訳しながらじゃない。
責任は責任として、それでも譲れないものがあるから押し通しに行くんだ。
だから、みんなのことも友達だって思ってる。
お前なんかにそう呼ぶ資格はないって言われても、訂正してやらない」

直後に顔をしかめて、「あ、別にコシマエとはまだ友達になったわけじゃないから」と付け加えた。
この人はもう吹っ切ったのだと、そう伝わった。

己はどうなのだろうか、と省みる。
出会ってよかったのか、出会わなければよかったのか。
ただひとつ言えるとしたら、かつての神崎麗美のように、『自分を置いて死んだあの人が悪い』で終わらせるのは、悲しいということだった。
だから、飲み込むのが怖くても、知っていかなければならない。
彼が死んでしまったことと、彼を殺した少年について。
だから、『今後ともよろしく』を続けることにした。
碇シンジが『綾波レイには生きていてほしい』と願っていたとしたら。
彼を守りたかったのなら、その意思も守るべきなのだろう。
守ろうとしたのは、命令されたからではなく、自分で決めたことなのだから。
ただ。
それでも。

『今後ともよろしく』が終わる時が来たら。
どちらかを、生かすとしたら。
浮かばれない選択だったとしても、綾波レイは自分が生きることを選べない。

生きることに不器用な自分よりも。
一人では生きていけない自分よりも。
生きていても、どうしたらいいか分からない自分よりも。
未だに、芽生え始めた『熱』の正体が分からない自分よりも。

生きてやりたいことがある彼の方が。
こちらに手を伸ばして、ともに歩いてくれた彼の方が。
たくさん持っていて、色々なことを教えてくれた彼の方が。
碇シンジの『ぽかぽか』とは違うけれど、それでも不思議な『熱』を与えてくれた彼の方が。

出会わなければよかった。
もしかしたら、出会えてよかった。



「…………私、越前くんに死んでほしくない」


【少女少年2】


天野雪輝のシャワーを浴びたいという申し出を、秋瀬或は快く許可した。
放送の前後というどの参加者も慎重になる時間帯ではあったし、
何よりグラウンド百週を経て疲労根培にあたる彼が汗を流すことさえ許されないのはあまりにも理不尽だし、
そもそも、これから恋する相手に会いに行こうという予定である。
汗だくの上にほぼ一日シャワーを浴びていない身体で向かわせるほど、秋瀬或は非紳士的ではない。

それに、天野雪輝が同席していない間にも、会話をしておきたい相手はいる。
例えば、すぐ隣で車椅子に座って、カセットプレイヤーに似た小型機器から音楽を聴いている少年だとか。
細いイヤホンを耳にあて、むっつりとした視線を階段の上へと向けている。
さきほど綾波が屋上へと向かってから、そうなった。

「何?」

こちらを観察する視線に気づいたらしく、音楽を止めてイヤホンを外した。

「いや……音楽が好きなのかな、と思って」
「そんなに。Jポップなら聴くけど」
「確か遺品だったよね、それ」

ずばり指摘すると、むっつりした顔にさらに苦味が加わった。

「綾波さんに返すつもりだった、けど……タイミング逃した」
「喧嘩でもしたのかい?」

さらに、ずばり。

「なんで……」
「さっきまで団結ムードだった君たちが、離れ際に会話をしてからぎこちなくなった。
戻ってきた君は彼女の大切な人の遺品だったものを取り出していて、扱い始めた。
探偵じゃなくても、チームを組んだ人たちがこんなことを始めたら気にするだろうね」

チームを組んだ人たち、を強調すると、さらに苦い顔。

「喧嘩は、してない……って言うか、喧嘩ふっかけて、買ってくれる人なら苦労しない」

関係ないじゃん、でバッサリ話を終わらせにかかるかと予想したが、そうはならなかった。

「つまり、相手に対して不満があるけれど取り合ってもらえない……ということかな?」
「…………あんた、探偵じゃなくて家政婦じゃないの」
「これから命を預ける同盟に亀裂があるなら心許ないからね。
それに、女性の扱いに関しては君より自信があるつもりだよ」

果たして帰国子女にも家政婦イコールデバガメという連想ができるのだろうか、それはともかく。
秋瀬の言葉の後半を聞いて、越前の目が興味を示すように動いた。

「だから、喧嘩とかじゃなくて」

まだ出会ってから時間はたっていないが、ここまでのやり取りから彼のプライドが高いことは分かる。
それなのに、弱音の一端でもこぼすということは。



「綾波さんが『明日の昼まで生きて海を見られるか分からないしね』って言った」



そのことに衝撃を受けているということだ。
この際にと他人の参考意見だろうとも、取り入れようとするぐらいには。

「俺が、綾波さんが死ぬわけないじゃんって言ったら、『俺には分からない』んだって。
俺は綾波さんや雪輝さんや神崎さんやバロウ・エシャロットみたいな人とも違うから、分からないんだって。そう言われた」

越前を理解していくためにも、秋瀬は整理する。
雪輝と出会ってから病院に向かうまでの行動や、その後の会話での気持ちの切り替えようを見た限り、彼は基本的に終わったことを引きずらない性格だ。
さらに言えば、雪輝に対しての遠慮のない話し方からは、人とぶつかり合うことを恐れる性分だとも思えない。むしろ好んでいるようにも見える。
だとすれば。

彼が誰かと諍いを起こして落ちこむとしたら、それは。

「神崎さんの時みたいに、言い方が悪かったんスよ。
碇さんも高坂さんも死んだのに、『死ぬわけない』とか言ったんだから。
だから綾波さんも俺が分かってないって言っただけで、それで終わり。
喧嘩じゃなかった。喧嘩売って、挑発して、どうにかなるものじゃないし」

自分が失言をしたせいで相手に距離を置かれたことをはっきり自覚していて、
なおかつ、そんな自分のことをどう改めたらいいか分からないケースではないか。

――越前君には、きっと分からないわ。
――私と越前君では、やっぱり違うもの。
――私とも、天野君達とも、神崎さんとも、あの敵になる人とも、違うもの。

言葉を復元してみるなら、およそそんなことを言われたのではないかと推測する。

「君は本気で、『これ以上死ぬことなんて有り得ない』と思ってるのかい?」

前提として、尋ねてみた。
単に仲直りの手伝いがしたかっただけではない。
彼にはまだ『殺し合いの中で何をしたいのか』と恒例のことを聞いていないし。
手塚や真田の遺言に殉じるならば、彼は『柱』になろうという人物だ。
自分たちの協力者となり得るだけならば、まさに猫の手だろうと借りたい状況だけれど、
これから雪輝たちを率いる立場を目指すのなら、その行動方針は確かめなければならない。

「……かもしれない、とか考えないようにしてる」

膝の上の音楽プレーヤーをぎゅっと握りしめて、越前は答える。
淡々と。

「テニスするなら……テニス以外でもそうだと思うけど、試合してる時に『勝てないかもしれない』とか考えてするものじゃないでしょ。
ちょっとでもそんなこと思ったら、絶対にプレーに影響する。動きを鈍らせる。
戦ってる時は、なくすことなんて考えちゃいけない」
「正論だね」

一言で評価すると、相手はむっとしたように顔を上げた。
意地を張る子どものような顔。

「それが悪いんスか?」
「いや、正しいよ。ちなみにその正論だけど、勝てなかった時はどうするつもりだい?」
「諦めない。次はなくさないようにすることだけ考える」
「なら、全てを奪われた後はどうするつもりだい? 負けっぱなしで終わりたくないから、奪っていった相手でも攻撃する?」
「何が言いたいんスか」

反発してくる言葉には、しかし呻くような湿っぽさがあった。
彼もまた、内心では気づき始めているのだろうと察する。
ここまでゲームが進行した現状に至るまで、それなりの修羅場は経験してきたはずなのだから。

「確かに君と僕たち――少なくとも、僕や雪輝君たちとの在り方は違っているよ」

まっすぐな瞳に視線を合わせ、対峙する。
なるほど。
協力者になってくれたこと自体は有難い。
命を助けてくれたことには心から有難いし、まず雪輝を受け入れてくれたことだけでも万感の感謝を尽くしたいほどだ。
だがそれはそれとして、
足りない。まだ、若いし青い。

「僕がかつて出会った日記所有者の中にも、『自分が勝つことだけを想定して突撃する』タイプの人はいた。
でもその人の場合は、過酷な環境を生きてきて、負けることが死に直結するような生活をしてきたからそうなったんだ。守るものも失うものも自分の命だけだったしね。
あるいは、『誰も死なせない』と主張するような理想家なのかとも思ったけど、それも違うね。
君は僕らみたいに困った人を助けてくれたけど、正義の味方になりたいわけじゃないだろう?」

こくり、と頷きがあった。
平和な世界なら、これでも良かったのかもしれない、とは思う。
行くぞと声をかけて皆が付いていくような、誰もがいっしょに高みを目指してくれるような、ストイックなスポーツマンばかりの世界だったら。
すでに彼は、ひとかどの『柱』になれるぐらいの資格は満たしていたのかもしれない。
だが、この世界は違う。

「君はきっと、本当に芯からスポーツマンなんだよ。
優勝賞品が欲しくて戦ってきたわけじゃない。ただ、勝つための戦いだ」

たとえば1つだけ願いを叶えてもらえるとして、『全国大会で優勝させてください』なんて願ったりはしないだろう。
実力で手に入れたものではない勝利など、虚しいだけなのだから。
だから彼に、夢はあっても願いは無い。

「裏を返せば、誰かに叶えてもらう類の望みには慣れていない。
もっと言えば、『大切なものを、自分にはどうしようもできない理不尽によって奪われるかもしれない』恐怖なんて、すっかり想像の外だった。それだけのことだよ」

『神から与えられた意味などに価値はない』と真田が言っていたことを、思い出す。
そして、全てを放棄することを選んだ、神崎麗美の目を思い出す。
神崎麗美が、越前に対して怒りを顕にしたという話も、思い出す。

「それって、命懸けで使徒と戦わされるとか、神様を決める殺し合いをやらされるとか?」
「雪輝君たちに当てはめればそうなるだろうけど……そうだね、実感できるように例え話にしようか」

真田に秋瀬自身のことを問い詰められた時には、言い返せなかった。
その意趣返しというわけではないが、言葉に詰まってもらうのも、いい勉強になるはずだ。

「もし、君が急に難病にかかって、テニスができない体になったらどうする?
それが、どんなに治療しても努力しても、絶対に治らないものだったら、どうする?」

それでも、君は強くあれますか?
まっすぐだった両目が、急に視覚を失ったかのように凍りついた。
唾を飲もうとするように喉を動かしても、口が渇いていてごくりという音さえ出ない。

「絶対……っスか? 手術しても、リハビリしても?」
「その反応は、心当たりでもあるのかな?
どんなに努力しても這い上がれない。戻りたくて血を吐くようにがんばったけど無理だった。誰が何をしても救えない。
君のいる世界だって、そういうことは起こり得たはずだ。君もそうならなかったとは言えないよ」

本人の選択によるものでもなく、過失によるものではなく。
世界を恨みたくなるような理不尽の果てに、生きがいとなるものを奪われる。
そんなのは、どうしようもない。
歯がゆそうな顔が、そんな答えを雄弁に映し出したタイミングで、さらに問う。

「もし、願いを何でも1つ叶えてくれると言われたら、すがりつくんじゃないか?
――そういう時に、『願い』が生まれるんだよ」
「だから、殺し合いに乗ったって言いたいの? 部長を殺したアイツも、我妻由乃さんも?」

言葉による重圧を押しのけようとするように、声が高く跳ねた。
カセットプレイヤーを握り締める手の力が、さらに強くなる。
その額を、運動によるものではない汗の雫が滑る。
しかし、続く言葉は落ち着いていた。

「だったら俺は、そっちになんか行かない。
テニスができなくなるなんて、ヤダ。でも、そのために人は殺さない」

言い切った。
その落ち着きが、それが虚勢などでは有り得ないことを証明している。
しかし、秋瀬には少し気に入らなかった。
かつての雪輝が願いのために選んだのは、『そっち』側だった。
その結果として犯したのは大量殺人の上に、願いは叶わず死んだ者は生き返らないという報われない結末だ。
それは覆されない大罪だが、当時の雪輝が被ってきた理不尽を知っている秋瀬には、『雪輝だけが悪かった』とも言い切れない。
だいいち、大罪であろうとも雪輝が精一杯に悩んで、気を張って、殺し合いゲームに勝ち残るという決断をしたこと自体は尊いと思っている。
間違える方が絶対的に悪いかのように、『なんか』呼ばわりされるのは愉快ではない。

「いつか、潰れる時がくるよ。生きていけなくなるかもしれない。
生きていく上で必要不可欠なものを失って、その後の一生を過ごすんだから」
「そうかもしれない。でも、……今度は、行かない」

今度は、と言う時だけ、その顔が辛そうに歪んだ。
一度は、踏み外そうとした時――それが、神崎麗美を殺しかけた時だということは、推測がつく。
秋瀬は、さらに追求することを選択した。
越前が『なんでこの人はこんなに突っかかるのだろう』と言いたげに眉をひそめているが、とことん言ってしまうことにする。

「君にとっては、自分の幸せよりも他人の命の方が重いから?
それとも、それが君にとっての正義なのかな?」
「そんなんじゃないよ」

そう否定した後で、さらに何か言おうとした。
しかし、言葉にならなかったのか、「そんなんじゃないよ」とまた繰り返す。

「なら、人を殺した手でラケットを握りたくないからかい?
人を殺して叶える夢なんて夢じゃないと、そう思う?」
「……だから、そんなんじゃないって」

べつに選ばなかった者を貶めようとするほど、秋瀬は気が短くないし子どもじみてもいない。
ただ、ここで示してほしい。
『そちら側』に行くことを間違いだというのなら。
どうして間違いだと断じて、どのように異なる考え者と相対していくのか。

「他に考えられるとしたら、チームメイトが悲しむといった理由かな。
仲間の意思を無碍にしたら、仲間たちが許さないと思うのかい」

越前が答えるのに、少しだけ時間がかかった。

「それもあるけど、そんなんじゃないよ」

きっぱりと、
不機嫌さを含んだ無表情から言い放たれたのは、肯定であり否定。

「どういう意味かな?」

我妻をはじめとする殺人者達から、そして我妻による『被害者』達からも『柱』として雪輝の前に立つというのなら、
その正しさを、どう行使するつもりなのか。
ラケットさえ持たなければただの傲慢な少年に過ぎない彼に問いかけて、答えを待つ。

「……本当はあれこれ考えて動くのって苦手なんスよ」

その言葉が皮切りだった。

感情を抑えるように淡々と答えていた言葉から、ふっつりと『力』のようなものが抜けた。
理性だとか思考だとかの制御を手放すように、軽くなった。

「でも殺し合いをどうにかすることにして、『柱』になるって決めたから。
だからちゃんと考えなきゃいけないって思うようになった」

いきなり、違和感が生まれた。
答えになっていない、だけではない。饒舌になっているだけでもない。
言葉が、滑らかに流れ出した。
ずっと前から用意していた言葉が、とうとう口をついたように。

「それが、神崎さんを殺しかけてから、余計ややこしくなった。
神崎さんにも、今言われたのと似たようなこと言われたから。
『人を殺さなきゃ生きていけないようなヤツは、生きる価値もないのか』って。
綾波さんがいてくれなかったら、俺はYesって答えるとこだった」

違うと、気づいた。
本当に『いきなり』のことだったのだろうか。
そもそも、さっきまでの彼は本当に『落ち着いて』いたのか。
本当に冷静だったら、いやいやでも素直に相槌を打ったりしないのではないか。
さっき天野雪輝と話していた時のように、相手の神経を逆なでするような言葉でまぜっ返していたのではないか。
いつもの彼ならば、そういう余裕があったのではないか。

予感する。
いつもは深く考えるよりも心に従って、言葉を尽くすよりも行動で示してきた少年がいたとして。
安易にそれができない状況で、どれが正しいのか考えて、ずっと抱えこんできたとしたら。
しかも、肝心の一番に倒したい神様はどことも知らない観客席にいて、溜め込んできたとしたら。
いったいそれは、どれぐらいの総量になっているのだろう。

音楽プレイヤーを丁寧にディパックの中にしまいながら、越前は言った。



「秋瀬さん、俺、ぜんっぜん正しくなんかないよ」



泣いていない。

遠山金太郎の凄惨な遺体に遭遇した時は、涙を必死に堪えていたらしいのに。
死んでいった仲間のことを話した時は、綾波レイの手を握って泣いていたのに。
現在の『積もりに積もっていたらしき何か』をぶちまけようとする越前リョーマは、ちっとも泣いていなかった。

「どういうことかな」

それでも秋瀬は、その地雷を踏まずにはいられなかった。
誰か(雪輝かもしれない)に踏ませてしまう前に自分が踏んでおいた方がいいというとっさの判断と。
これ以上、崩さずに積もらせておくのが恐ろしいという直感で。
言葉を促すと。




積もっていた何かが、どっと決壊した。



「ただ、普通にテニスを好きでいたいだけだよ。
人を殺して叶えるなんて夢じゃないとか死んでもいいとか、そんなこと思ってなかったし。
ってゆーか俺、べつに人の夢が何だろうと興味ないっスよ。
神崎さんに怒ったのも跡部さんが関わってたからだし、そうじゃなきゃもっと他人事だった。
他人にそれは間違ってるとか押し付けるのも、押し付けられるのも嫌いだし、正義の味方とか興味ない。
コートでタバコ吸ったりテニスを舐めてる奴はキライだけど、それだけ。
俺、そんなお節介じゃないから、むしろ冷めてるぐらいだし。皆が俺のことを性格悪いって言うけど、自覚あるし。
そりゃ、たまにいいことだってしたよ。目の前で弱いものいじめしてる奴らがいたらムカつくし。そいつらを懲らしめるぐらい普通だったし。
いじめてる奴をいじめるのが楽しかったし。べつに、人助けをしたいとか思ってなかったし。
自分のしてることが人から見て正しいかとか、あんまり考えたことなかった。
でも、それで人から感謝されたりもしたから、そういうのも悪くないかと思ってた。
正しくなんかないよ。神崎さんの時も天野さんの時も正しいのか考えて、分からないなりに考えて、結局自分がムカつかない方を選んだだけだよ。
本当は変な理屈ばっかりで頭おかしくなりそうだったんだから」

叫ぶでもなく、ただ静かな静かな言葉で。
濁流のように、『泣いていない泣き言』が吐き出されていく。
『悪い人間』を自称していく。

思った。
皆が守るべき、弱者のための正義を貫くのが正義の味方だとしたら、
自分のわがままのために正義を貫く人間は、悪人になるのだろうか。

思った。
願いに狂い、それ以外の全てを犠牲にする者を『狂人』と呼ぶのなら。
願いに狂わない、しかし狂人から見ると悪い者は『悪人』と呼ばれるのだろうか。

「俺だって、『そっち側』を選んで楽になれるなら選びたかったよ。
もう絶対にテニスができなくなるなんて、嫌だよ。絶対に地獄だよ。
それぐらい分かるよ。神崎さんも、バロウって奴も、楽しいことぜんぶ忘れたみたいな顔してたから。
べつに、嬉しくて部長や跡部さんのこと背負ったわけじゃないよ。勝手に死んでバカじゃないのって思ったに決まってるじゃん。
神崎さんだってそうだよ。謝って許してもらえたからって安心して死んでどうすんだよ。
俺、アンタに『負けた』ままだったのに。俺も何か返さなきゃいけなかったのに。
でも、死んだ人だって、辛かったはずだから。
遠山だって、あんな風に斬られて、痛かったはずだし、苦しかったし、我慢したに決まってるから。
そういうのを上から見下ろして、嗤ってる奴らがいるんだよ。
一生懸命我慢して、頑張ってるのを上から目線で『無駄な努力だった』って言われてるみたいで。
そんな神様がいるって思ったらすごく気持ち悪かった。許せなかった。
こんなに誰かを許せないと思ったの、初めてだった。だから、背負うことにした。
それが見てて殺意湧くって言われて、間違ってるって言われて、そういうこともあるのかって思ったけど、モヤモヤした。
俺だって、自分が死ぬこと考えたら怖い。神崎さんに脅されて、正直怖かった。
自分より強そうにしてるからって、苦しくなさそうとか楽してるとか勘違いしないでよ。
強く見えるからって、分からないからって仲間はずれにするなよ。

……明日には、もう死んでるかもしれないとか、言うなよ!!」

全てを吐き出しつくすような声が途切れたと同時に、越前の息も切れた。
長い長いラリーを終えた後のように、すーと息を吸い。
はー、と息を吐く。

天井を見上げ、浮かぶ表情は、全てを吐き出し尽くした疲労と、
言いたいことをいって、少しはすっきりしたかのような脱力と、
『言ってしまった』とでも言いたげな、羞恥のにじんだ後悔の色。

「それなら、君はどうして『柱』なんてものを目指そうとしたんだい?」

これ以上の質問を重ねることは酷かもしれないのに、それでも聞かずにはいられなかった。
なぜなら彼は、ここまで泣き言を言っておきながら。
それでも、『柱になるなんて無理だ』とか『俺はただの中学生なのに』という類の言葉を、決して口にしなかったのだ。

「勝ちたい……」

死者たちの遺言で押し付けられたのではなく、自分の意思で選んだことだとでも言うように。
自分が選んだのだから、押し付けられた呪いではないと信じているように。

「人を蹴落として、自分だけ『願い』を叶えて最後に嗤うんじゃない。
汗流して頑張ってきたことが、『無駄な努力だった』って嗤われるのが嫌だ。
一人だけで勝つんじゃない。そういう勝ち方がしたい」

やり方が良くなかったみたいだけど、と付け加えた。

逆ギレされるとは予想外だったな、と内心で反省する。
雪輝にグラウンド百週という無茶振りをさせた意趣返しに、本当ならもっときつい言葉を言うつもりだったのに。
秋瀬が口にしたのは、もっと甘い言葉だった。

「べつに今までのやり方を変えろと言ってるわけじゃないよ。
死を覚悟することと、死を起こさせないという気持ちで戦うことは矛盾しない。
大切なのは、最悪が起こらないなんて『油断』をせずにいこうってことじゃないかな」

そう言うと、越前が目を丸くした。

「アンタ……知ってたの?」
「何を?」
「知らないなら、別にいい」

ふい、と顔をそむけられる。
しかし、さんざん愚痴をこぼし終えた後だからなのか、喋り方には調子が戻っていた。

「無駄だったなんてことは無いよ」

そして、その中身には秋瀬或と共通している部分もあった。
だから、話しておくことにする。

「僕にも、自分のしてきたことを意味がないとリセットされたことがあったんだ。
ここに来るまでは思い出せなかったんだけど、雪輝くんから『世界が二週している』ことを知らされて、少しずつ記憶が蘇ってきた」
「リセット?」
「うん、このままだと破滅する不幸な人たちがいて、僕は依頼を受けた探偵としてその人たちを救けたんだ。
でも神様の手先がそれをなかったことにして、また元の不幸だった状態に戻されてしまった」

それは、少しずつ思い出してきた、たった数日の“逆説の日々(パラドックス)”だった。
一週目の世界とも二週目の世界とも異なる、なかったことにされた世界。

「でも、ぼくはリセットされる前の日々が無意味だったとは思ってないよ。
彼等は確かにあそこにいたし、事件が解決した後は笑っていたんだから。
たとえ消されてしまった笑顔でも、笑顔は笑顔だ。
人にどう言われようと、価値が変わるものじゃない」

意味が分かっているのかいないのか。
ふーんと相槌をうち、越前は背もたれにより深く身体を預けた。

「のど、かわいた……」
「飲み物、買ってきましょうか?」

真横から声をかけられ、その肩がびくんと上下する。
綾波レイが戻ってきたことに、越前はその時まで気がついていないようだった。
ぎこちなく言葉を交わして、また送り出す。

「見たところ彼女の方は、気まずさを覚えたりはしていないようだけど」
「綾波さん的には、当たり前のこと言ったつもりなんじゃないの?」

その『当たり前のこと』が、越前にとっては積もりに積もっていたものを吐き出す最後のひと押しになったわけだが。

「ずいぶん溜め込んでいたようだけど、彼女には打ち明けなかったんだね」

そこが気になった。
リハビリ室でのやり取りを見る限り、二人はずいぶんと打ち解けている様子だったのに。
越前の性格からして簡単に弱音を吐くわけがないことは分かるが、それでも泣いているところを見せるぐらいには、気を許していたのに。

「今の綾波さんに、当たれるわけないじゃん」

綾波が去っていった方向を見ていた越前が、くるりと顔を向けた。

「だって……」

『だって』から続く感情をすべて訴えるように、眼に力のようなものがある。

だって。
だって。
だって!

「だって綾波さん、碇さんが死んでから、一度も笑ってない」

なるほど、と理解するしかなかった。
『分からない』と言われて拒絶されたようになっていた理由も。

「さっきの『そっち側』に行く行かないの話だけど……綾波さんは、違うよ」

少しの沈黙をおいて、越前は調子を取り戻すように深く呼吸すると、そう言った。

「綾波さんは、碇さんを取り戻すために殺し合いに乗ったわけじゃないし」
「それはごめん。僕としては『誰もが君のように負けん気だけで生きていけるわけじゃない』という意味も含めたつもりだったから」

言い返せないのか、越前が言葉をひっこめて軽く唇を噛む。

「でも、綾波さんは生きてるよ。バロウ以外は、誰も傷つけてない」

そんな角度から、反論は返ってきた。

「自分のことにも自信無さそうなのに、自分にできることを探そうとしてる。
秋瀬さんが言うみたいな辛いことも遭ったけど、そこで終わりにしてない」

越前は帽子のツバを傾けて、その表情を隠した。

「ずいぶん、評価してるようだね」
「……何回も、助けてくれたから。
他人のこともあんまり関心ないように見えるけど、一緒にいるといつも優しかったし。
俺、ああいう風に素直に優しくするのってできなかったから。
『ぽかぽかする』ってどういうことなのか、なんとなく分かった」

そんな綾波に、パートナーとしてどうしたらいいか分からない。
それはきっと、悔しいはずだ。

「綾波さんが一緒なら、もっと上にいけそうな気がする。
でも、綾波さんにとってはそうじゃないのかもしれない」

越前は、さらに帽子を傾けた。
それはもう、帽子を深くかぶるのを通り越して顔の正面に帽子があるようなずり落ち方で、その顔はすっかり帽子で隠れてしまった。

今までで一番、力ない声で。

「綾波さんと、いっしょにいたい……」



【少女少年3】


そして、二人が二人の元に戻ってきて.
彼等は四人になった。

「跡部景吾君が残した首輪の図面から分かったこととして、首輪には盗聴器が仕掛けられている。まず、これを大前提としよう」

仕切るのは、秋瀬或だった。
ある程度の情報交換は雪輝がランニングをした時に済ませていたし、休憩から話し合いへと移行する切り替えも、スムーズなものだ。

ただし、一名を除いて。

「うん、それはいいんだけど……コシマエはどうかしたの?」

その約一名は、一同から背中を向けて座っていた。
話しかけても無言だった。
表情を確認すれば、どう見ても『しろめ』とか『しんださかなのめ』にあたる状態。
何か深刻な悩みでも抱えているのかと思ったが……どうも惚けているというか、それとも違う空気だった。
その理由を秋瀬或は知っていたから、答える。

「自分の言った青臭いセリフが、よりによって主催者に一言一句筒抜けだったのがショックだったらしいよ」

実際、さっきは『なんでそれをさっきの話をする前に言ってくれなかったんだ』という顔で睨まれた。
限りなく殺意に近い何かがあったのでヒヤリとした。
それから筆舌に尽くしがたい表情をした後、背中を向けて固まり、現状に至る。

「でも、盗聴されているなら、この会話は大丈夫?」

綾波が首輪を指差して、話題を切り替えた。
首輪で命を握られているとすれば、それは当然の懸念だろう。
しかし、

「その心配はいらないよ。
主催者は脱出派の首輪を爆発させるために、盗聴器を仕掛けたわけじゃ無さそうだから」

綾波と雪輝が、その意味をつかみかねた顔をする。

「雪輝君。未来日記のサバイバルゲームでは、日記所有者が盗聴されていたかな?」
「ううん、ムルムルならそんなことしなくても…………あ、そうか」

雪輝の顔に、すぐ納得が宿った。
神の領域にいたムルムルは、下界の好きな場所を好きな時に、テレビでも見るように映し出していた。
以前のサバイバルゲームでも、盗聴器など仕掛けるまでもなく、全ての所有者の動きを見ていた。
秋瀬或にも“逆説の日々(パラドックス)”の記憶がよみがえってきた今となっては見た覚えがあることだ。

「そう、本気で参加者を監視するつもりなら、ムルムルがいる時点でずっと確実な方法がある。
それに、もうひとつ。『新たな神』とムルムルたちだけで殺し合いを運営しているなら、盗聴器をしかける必要はない」
「つまり人間の『大人』が――11thみたいな勢力が、殺し合いに協力してるってことだね」

雪輝の理解は早かった。
さすが、サバイバルゲームの経験を全て覚えているだけのことはある。

「そうなるだろうね。『新たな神』の正体にもよるだろうけど、神の眷属が盗聴器を用意するとは思えない。現時点で疑わしいのは何週目かの11thだけれど」
「監視することが目的でないなら、盗聴をしているのは、なぜ?」
「可能性が高いのは、記録をするためかな。人間も使う音声機器なら、録音しての持ち運びも用意だからね。
ちなみにセグウェイで探索している時に調べてみたけど、会場内に監視カメラを仕掛けたような痕跡は見当たらなかったよ」
「秋瀬くん、そこまで調べてたの……?」

驚く雪輝に、たまたまだよ、と否定する。

「ちょっと会場に違和感を覚えたからね。ついでに気がついたんだ」
「違和感?」

首を傾げる綾波を見て、雪輝へと尋ねる。

「雪輝君は、この場所に何か感じなかったかい?」
「おかしいと言えば、ツインタワービルや桜見市タワーがあったことだけど。
それから、建物に入った時に……電気もガスも水道も普通に使えたのは、おかしいと思った。
この地図には自家発電するような発電所とか無さそうだし……どこから引いてるのかなって」

「そう。綾波さんもツインタワーにいたときのことを話してくれたよね。
レストレランでは食事が調理済みのまま用意されていたし、売り場には開店しているかのように商品が並んでいた。
ちょっとしたマリー・セレスト号状態だね」

綾波のほうはマリー・セレスト号事件を知らないらしい顔をしていたが、結論とは関係がないので先にそちらを言ってしまう。

「まだ推測の段階だけれど……この会場は、仮想空間のようなものじゃないかと思う」

「「え……」」と二人は驚きの声を出した。

いきなり『仮想空間』などという言葉を出したのだから、突飛には違いないだろう。
だが、秋瀬の聞いた話では実例がある。

「この会場で最初に雪輝君とあった時に、聞かせてくれたよね。
前のサバイバルゲームで、我妻由乃とどう決着をつけたのか。
その時、君は不思議な世界に閉じ込められたという話をしてくれた」

雪輝が、思い出すように遠い目をした。
そこは、天野雪輝の望みがすべて叶えられた世界だった。
『我妻由乃だけが存在しない』という設定のもとに、すべての感覚が現実感を伴って存在していた。

「その世界は幻覚のようなものらしいから一概には括れないけれどね。
……でも、『神』の力があれば一から新しい世界を創るぐらいはできるんじゃないのかな」
「できると思う」

今は力を失っているけれど、おぼろげな一万年の記憶では、ムルムルから新世界を創るように促されていた。

「セグウェイで色々な場所を見て回ったけれど――この会場には『この土地の名前』を示すものが一切なかった。
道路標識や公共施設に地名は書かれているけど、ある時は富山県にある町の名前だったかと思えば、ある時は兵庫県、またある時は東京都西部の町、桜見市で見かける地名もある――といった様子だったね。
このあたりは『図書館』に郷土資料を探しに行ったという菊地君たちからも話を聞きたいところなんだけれど。
つまりほとんどの建造物が、元からあったものではなく、どこかを再現して組み合わせて創られたような格好になっている。
それだけじゃなく、電気やガス、レストランや売店の商品なんかの生活空間もすべて再現されていた。
この会場は下手なテーマパークどころの広さじゃない。
仮に国家規模の予算を持った組織だったとしても『ただ再現するためにそれだけの金を使ってたまるか』と辟易するだろうね。
つまりここは、人力ではなく神の力によって一から創造されたと考えた方が自然だ」

さすがに長々と話しすぎたと、秋瀬は一区切りおいた。
沈黙が続く間に、聞き手たちは秋瀬が言ったことを頭の中に浸透させていく。
そして、それぞれの感想を言った。

「私には『神の力』がよく分からないから、なんとも言えない」
「でも、その説が正しいとしたら、納得できることがあるよ」

そう声をあげたのは、雪輝だった。

「最初に、この場所に連れてこられたときのことだった。
変な壁から説明を受けて、一瞬でこの場所に移動させられて……遠山はワープでもしたみたいだって言ってた。
でも、あれはワープとはまた違っていたと思う。なんだか、眠っていたところから『目を覚ました』みたいな感じだった。
今なら思い出せるけど……あの感じは、因果律大聖堂に意識を飛ばしていた時と似ていたと思う」

なるほど、と秋瀬も思い出す。
一瞬で景色が変わった――というよりも、瞑想から目覚めて、どこかに行っていた意識が肉体に戻ってきたような、あの感覚を。

「僕たちの身体は最初からこの会場に運ばれていて、意識だけを『あの場所』へと運ばれた状態で説明を聞かされた。
そういうことじゃないかと思う。あの場所は、因果律大聖堂みたいなものでさ」
「つまり、僕たちを拉致してこの場所に運んでくることは容易だったにも関わらず、ルールの説明会だけは意識だけの場所で行いたかった。
『主催者のいる拠点』と『会場』は、物理的な距離だけでない『何か』で仕切られているのではないか。そういうことだね」

頷いた雪輝は、知っているのだろう。
世界と世界を分かつ、本来ならば見えないはずの境界線を。
三週目の世界でゲームの決着をしてから二週目に戻された時に、おそらくは何度も時空の壁を越えようとしたのだから。

「じゃあ、ATフィールドが会場を囲っているのは?」

綾波がそう尋ねた。

「発生源までは分からないが……この世界の『時空の壁』を破壊されないための障壁、じゃないかな」

秋瀬は天井を見上げる。
しかし、視線の先にあるのは建物の天井ではない。
この会場と、神の座を阻むその『壁』の天井だった。

物的証拠はないけれど、この仮設そのものに矛盾はない、と前置きして。

「仮説が正しければ、『壁』さえ打開すれば、神の座まではすぐそこだ」

言い放ったのと、同時だった。
4人分の携帯電話が、一斉にコール音を鳴らす。

午後六時。
ぴったり、第3回放送の時間に到達した。




『赤外線通信が完了しました』という文字が、それぞれのディスプレイに表示された。
この画面操作をそれぞれが三度繰り返せば、4人分の携帯電話がアドレスを交換しあったことになる。

学生の日常では当たり前に行われているアドレス交換だけれど、この場においては『生き延びる確率をあげるため』という目的の元に行われる行為だった。

「じゃあ連絡手段も確保できたことだし、問題のメールについて話そうか」

携帯を握りしめた全員の顔が、その言葉で引き締まった。
雪輝と綾波が、メールを受信した己の携帯を見つめる。
放送のコール音と同時に送られてきた『天使メール』なる文書は、杉浦綾乃という少女がデパートで相馬光子と御手洗清志に襲われているというものだった。

「このメールを送ったのが杉浦綾乃さん本人だという証拠はないけれど、
『御手洗清志はおそらく殺し合いに乗っている』という情報なら浦飯君からも確認しているし、
『御手洗清志と相馬光子は行動を共にしている』こともレーダーで分かっていた。まずはある程度の信憑性があると見て進めるよ」

ちなみに雪輝に送られてきたメールをすかさずチェックしたのは秋瀬であり、雪輝自身はまだそのメールの本文を読んですらいない。
杉浦綾乃の居場所を雪輝が目にしてしまえば、雪輝に関わる予知をする『雪輝日記』が反応して、我妻由乃にその場所を把握されてしまうためだ。
雪輝のいる場所で会話する上でも、その場所を突き止められないように『デパート』の名前は極力出さないようにしている。

「おそらく、菊地善人君とはまだ合流できていないようだね。
合流した後に襲撃されたとすれば、救援メッセージは彼ら三人の連名で送信するはずだ。その方が情報の信頼度を上げられる」

どちらかと言えば越前と綾波の二人に対して、秋瀬は言った。
二人とも無表情であるはずなのに、どちらも同じく『助けに行きたい』と顔に出ている。
越前にいたっては(さすがに放送を聞いてから気持ちを切り替えた)、『もう問題ありません』とアピールするように車椅子から立っていた。
彼等にとって一度は友好的に接触した人物であり、しかもそれは碇シンジと行動をともにしていた少女であり、彼の最期に立ち会ったうちの一人でもある。
まして、菊地善人が『杉浦や植木をつれて合流する』と言って別れた後にこのようなメールが届いた時点で、彼等を心配させるには十分だと言えた。

しかし、安易に『では急いで助けに行きましょう』というわけにもいかない。

「ぼくらの行動は『雪輝日記』を通して我妻さんにも知られている。
我妻さんがぼくらの後を追って戦闘の現場にやってくる可能性は高い」

却って敵を増やしてしまうリスク……最悪、乱戦になったところを我妻由乃の襲撃で一網打尽にされる危険は十分にあった。

「こっちは車があるし、由乃が追いつくまでには時間がかかるんじゃないのかな?」
「さっきの戦闘からしばらく時間が立っているし、移動時間はアテにならないと思う。
売店に充電器がなかったから、レーダーもまだ使えないしね」

こちらのレーダーが機能せず『雪輝日記』が動いている現状では、未だ我妻由乃の側に主導権があることも否めない。
放送前の戦闘では、諸条件が重なって『退いた方が賢明かもしれない』と思わせることができたからこそ、撤退させることができたに過ぎない。

「ただし、杉浦さんとは直接の接点がない雪輝君にメールが来た時点で、このメールが無作為に送信されている可能性は高い。
我妻さんの元にも、同じ内容のメールが届いている可能性だってあるだろうね」
「そうなったら、由乃は僕らを後回しにして杉浦さんたちのところに向かうかもしれないよ。
複数の参加者が乱戦してる場所なんて、由乃にとってはたくさん殺せる好機だろうから」
「我妻さんがそっちに行くなら、俺らも行かないと最悪のパターンじゃないっスか?
杉浦さんたちは今戦ってる人と我妻さんの両方に襲われることになるし、俺らは我妻さんと会えない上に仲間を見捨てることになるし」
「そう言えば、秋瀬君には浦飯さんっていう協力者がいたんだよね? その人に助力を頼めないかな」
「でも、タイミングよく合流できるかしら」
「白井黒子が実は常磐愛で、今は大人しくなってその人といっしょにいるのもなんか胡散臭いっスけどね」

判断材料は出揃ったが、有効な一手を打つための持ち駒は乏しい。
議論することでそれがはっきりと表出して、全員が厳しい顔をする。

「もう、どうするのか秋瀬さんが決めていいんじゃない?」

ふいに、越前が言った。
綾波と雪輝が、驚いた顔を越前に向ける。
ちらりと綾波レイを見てから、気持ちを固めたように頷く。

「この中で一番重傷のアンタに決めてもらった方が、こっちも気を遣わなくて済むし。
俺たちだと、我妻さんならどうするとか知らないし。
天野さんが決めたら『雪輝日記』とかいうのですぐバレるみたいじゃないっスか」
「それはそうかもしれないけど……」

作戦会議を仕切っている秋瀬が決定をするのは、自然な流れだろう。
しかし、綾波と越前の視点では、そうもいかないはずだ。彼等は杉浦綾乃を助けに行きたいはずなのだから。
秋瀬一人に判断を任せてしまえば、『杉浦綾乃の救助』よりも『天野雪輝を危険から遠ざけること』を優先するだろうことは、誰の想像にも難くない。

「僕に預けてしまっていいのかい?」
「『任せる』。この中だと秋瀬さんが一番作戦立てるのうまそうだから。
それに、『油断せずに行こう』ってアンタが言ったんじゃん。
『行く』なら主語は一人称の『I』でいいけど、『行こう』なら『We』ってことになるよ」

何かの思い出でもあったのだろうか。
任せるという部分を聞いて、綾波が「高坂くん」と呟き、納得したように頷いた。
そして後半の部分は遠回しな言い方だったが、伝わるのは秋瀬或を一蓮托生のくくりに入れていることだった。
もしかして皆が納得するような案を出せないから、丸投げしたんじゃないか、という疑惑はあったにせよ。
任されたのならば、探偵は信頼が第一だ。
正式な『契約成立』と認めるにはまだまだ程遠いけれど。

「わかった――その依頼を受けよう」


【G-4病院/一日目・夜】

【天野雪輝@未来日記】
[状態]:中学生
[装備]:運動服(ジャージ一式)@現地調達、スぺツナズナイフ@現実 、シグザウエルP226(残弾4)、 天野雪輝のダーツ(残り7本)@未来日記
[道具]:携帯電話、学校で調達したもの(詳しくは不明)
基本:由乃と星を観に行く
0:秋瀬の決定を待つ。
1:やりなおす。0(チャラ)からではなく、1から。

[備考]
神になってから1万年後("三週目の世界"の由乃に次元の壁を破壊される前)からの参戦
神の力、神になってから1万年間の記憶は封印されています
神になるまでの記憶を、全て思い出しました。
秋瀬或が契約した『The rader』の内容を確認しました。
秋瀬或、綾波レイ、越前リョーマとアドレス交換をしました。

【秋瀬或@未来日記】
[状態]:右手首から先、喪失(止血)、貧血(大)
[装備]:The rader@未来日記、携帯電話(レーダー機能付き、電池切れ)@現実、セグウェイ@テニスの王子様、マクアフティル@とある科学の超電磁砲、リアルテニスボール@現実
[道具]:基本支給品一式、インサイトによる首輪内部の見取り図(秋瀬或の考察を記した紙も追加)@現地調達、火炎放射器(燃料残り7回分)@現実、クレスタ@GTO
壊れたNeo高坂KING日記@未来日記、『未来日記計画』に関する資料@現地調達
基本行動方針:この世界の謎を解く。天野雪輝を幸福にする。
0:メールへの対応を決定する。
1:天野雪輝の『我妻由乃と星を見に行く』という願いをかなえる
[備考]
参戦時期は『本人の認識している限りでは』47話でデウスに謁見し、死人が生き返るかを尋ねた直後です。
『The rader』の予知は、よほどのことがない限り他者に明かすつもりはありません
『The rader』の予知が放送後に当たっていたかどうか、内容が変動するかどうかは、次以降の書き手さんに任せます。
天野雪輝、綾波レイ、越前リョーマとアドレス交換をしました。(レーダー機能付き携帯電話ではなく、The raderを契約した携帯電話のアドレスです)

【越前リョーマ@テニスの王子様】
[状態]:疲労(中)、全身打撲 、右腕に亀裂骨折(手当済み)、“雷”の反動による炎症(ある程度回復)
[装備]:青学ジャージ(半袖)、テニスラケット@現地調達
リアルテニスボール(ポケットに2個)@現実、車椅子@現地調達
[道具]:基本支給品一式(携帯電話に撮影画像)×2、不明支給品0~1、リアルテニスボール(残り3個)@現実
S-DAT@ヱヴァンゲリオン新劇場版、、太い木の棒@現地調達、ひしゃげた金属バット@現実
基本行動方針:神サマに勝ってみせる。殺し合いに乗る人間には絶対に負けない。
0:秋瀬の決定を待つ。
1:休んだら、菊地と合流。天野たちにはできる範囲で協力
2:バロウ・エシャロットには次こそ勝つ。
3:切原は探す。

[備考]
秋瀬或、天野雪輝、綾波レイとアドレス交換をしました

【綾波レイ@エヴァンゲリオン新劇場版】
[状態]:傷心
[装備]:白いブラウス@現地調達、 第壱中学校の制服(スカートのみ)
由乃の日本刀@未来日記、ベレッタM92(残弾13)
[道具]:基本支給品一式、第壱中学校の制服(びしょ濡れ)、心音爆弾@未来日記 、隠魔鬼のマント@幽遊白書
基本行動方針:知りたい
0:秋瀬の決定を待つ
1:休んだら、菊地と合流。天野たちにはできる範囲で協力
2:落ち着いたら、碇君の話を聞きたい。色々と考えたい
3:いざという時は、躊躇わない
[備考]
参戦時期は、少なくとも碇親子との「食事会」を計画している間。
碇シンジの最後の言葉を知りました。
秋瀬或、天野雪輝、越前リョーマとアドレス交換をしました。



Back:eternal reality(自分だけのものではない現実) 投下順 Next:ガーネット
Back:解答:割り切れない。ならば――。(前) 時系列順 Next:ガーネット

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最終更新:2021年09月09日 20:14