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「せやったら学校に行くでぇ! テニス部のある学校やったら、ラケットがあるかもしれへんし」
「テニスラケットの有無って、そんなに大事なことなの…?」

遠山金太郎は、すっかり元気になっていた。
いや、元から重苦しい空気の似合わない少年だったけれど、
天野雪輝から“遠山を手伝う”と言質を取ったことで、さらに士気を上げていた。
金太郎の目指す“ハッピーエンドを迎える”為に、2人は歩きだす。
歩きながら話し合うのは、当面の目的地について。
彼らはF-2の橋を渡りきり、会場の東方向へと足を運ぶ。

まずは他の参加者と接触するか、会場の施設を探索すべきだと思う。
それが、神様として願いを叶えることになった雪輝の、最初の提案だった。
情報が不足していることもあったが、何より2人には、ディパックがない。
つまり、仲間を見つけて装備をわけてもらうか、現地調達で補うかする必要がある。
そういうことを話すと、金太郎は「やっぱり神様は頭ええなぁ」といたく感心した。
……別に、神様じゃなくても考え付く発想のはずだけれど。
さらに言えば、雪輝はサバイバルゲームによる逃避行生活を、一度経験している。
記憶は風化している箇所も多いけれど、しっかりと蓄積された経験はその身に染みついている。

GPSが示す現在地は、間もなくFー3にさしかかろうとしている。
もうすぐ彼らは、どの方向に向かうか決断しなければならなかった。
付近にある施設は二つ。
病院か、学校か。
どちらも、現在地からの距離は同じぐらい。
雪輝は、病院の方を推した。
この環境では貴重な、医薬品、治療道具が入手できること。
また、治療目的で訪れる参加者との接触が期待できること。
この二点がメリットとして大きかった。
一方で、金太郎は学校に行きたいと言い出した。
テニスラケットが見つかるかもしれないというのが、その理由。
金太郎の言い分によると、彼はテニスラケットが一本あれば、それで充分に自衛することができるらしい。
ラケット一本で殺し合いを切り抜けられるというのは、誇張表現にしてもおかしな言い方だ。
しかし、学校に行くという選択肢も、それほど悪いものではなかった。
保健室や理科室など、役に立つ道具を調達できそうな場所もそこそこある。
何より、金太郎が探しているという元からの知り合いは、全員中学生だ。
仲間と再会したいなら、日常でなじみある場所から当たるのは、決して的ハズレじゃない。

どちらに向かうか決めかねつつも、雪輝は考える。
分からないことが多すぎる、今回の殺し合いについて。
以前に雪輝が参加した殺し合いでは、12人のほとんどが殺し合いに乗っていた。
しかし、今回の殺し合いは違う。
金太郎のような乗らない人間、あるいは様子見に回る参加者も、相当数はいるはず。
楽観論ではなく、そう期待できる。
今回は全ての参加者が――少なくとも雪輝と金太郎の知り合いは――事情も分からず、拉致されてきたからだ。
デウスが開いた殺し合いでは、デウスやムルムルがあらかじめ所有者と接触し、手始めに未来日記を与えるという下地があった。
だからこそ、『最後の一人は神になる権利が与えられる』と言われて、皆が受け入れた。
けど普通、いきなり『褒美として神様の力をあげます』と言われたって、信じられないだろう。
よしんば叶えたい望みがあったとしても、胡散臭いと疑うはず。

――そこまで考えて、ひとつ気づいた。

「そうだ、遠山。他の参加者と会った時のことなんだけど」
「なんやなんや、天野?」

先だって歩いていた金太郎が戻って来る。

「僕が神様だってことと、僕の事情は、しばらく伏せておきたいんだ」
「なんで? わいには簡単に教えてくれたやろ?」

……まさかあっさり信じるとは思わなかったからだ。
雪輝は苦笑して答える。

「普通、『僕は神様です』って言っても、信じてもらえないと思うよ」

大半の人間は、頭がおかしい人間なんだと受け止めるだろう。
まして、今の雪輝は神様らしい力を封じられ、証明する手段がない。
それに、《神にも等しい力》を与えると説明した主催者の言葉があった。
下手をすれば、主催者の一味かと疑われるかもしれない。

「けど、わいの知ってる連中やったら、きっとわいから話したら信じてくれるで?
それに、ずっと黙っとくわけにもあかんやろ?」

それももっともだった。
雪輝も、打ち明けることに抵抗はない。
後ろ暗いことなら数えきれない過去だけれど、しかし明かしたところで失うものだって何もないのだから。
そもそも、既に金太郎に洗いざらい話している。

「うん……だから、タイミングをみて僕から話すよ。信用のできる人で、必要な時が来たら。
もちろん、遠山の仲間に説明する時は、僕も手伝ってもらいたいけど」

信用できる人間かどうかの見極めは、自分にさせてほしい。
正直、金太郎はお人好しすぎるきらいがあると思っての判断だった。
日記所有者の殺し合いでは裏切りが当たり前だったから、それはそれですごいことだと思うけど。
自分から打ち明けたい、という申し出を雪輝なりの決意と受け取ったのか、金太郎もあっさりと納得する。

「おおっ!さっそく誰か来たみたいやでぇ」

その直後だった。
金太郎が、進行方向から近づいて来る、小さな灯りを見とがめたのは。



あの血が飛び散る修羅場から逃げ出して、一時間はたっただろうか。
息はとうに切れていた。早歩きと小走りを繰り返し、圭一はひたすら直進を続ける。

逃げている。
仲間を見捨てて、逃げている。
事実が罪悪感という形をして、心臓の底の部分でじくじくとわだかまる。
けれど、とそのたびに心が、反論の声をあげる。
あんな常軌を逸した局面で、何ができたというのだ。
あんな化け物じみた連中の前で、とどまり続ける方が危険だった、と。
そうやって理屈づけて罪の意識を鎮めるものの、
けれど“逃げた”という事実は変わらないから、しばらくしてまた良心が疼きだす。
そうやって延々と続く、罪悪感と恐怖の堂々巡り。

“みんなで”生きて帰らなきゃいけないとか、勇気を出すんだとか、
そんな簡単な言葉は、何の解決策にもならなかった。
赤黒く変色した、赤也の皮膚。
狂ったように響きわたる、高笑い。
人の皮が破れて、その下から、鬼か悪魔が出て来たみたいだった、あの圧倒的な恐怖。

堂々巡りを繰り返して、心は疲弊する。
疲弊した心には、だんだんと恐怖が勝りはじめる。

そもそも、切原赤也は危険人物だった。
そのことを隠して接して来て、敵を見つけたとたんに態度を豹変させた。
普通の中学生から、人間離れした殺人鬼へ。
そう、あの水使い相手に、倒れてからも容赦なく高速の打球を打ち込み続ける姿は、殺人鬼のそれにしか見えなかった。
たまたま襲って来た水使いが標的になっただけで、その豹変の矛先は、圭一に向いていたかもしれなかったのだ。
そんな相手を、信用できるわけがない。

だから、赤也は仲間じゃない。
責任を相手に押し付けることで、圭一はようやく堂々巡りから脱出する。
そうだ、信用できないヤツは、仲間じゃない――!

「そこの兄ちゃーん!」

思考の渦にはまっていたから、人がいたことに気づけなかった。
底抜けに明るい声に、呼びとめられるまで。




「前原圭一か……ほな圭ちゃんでええな!」
「ああ、それでいいぜ。友達もそう呼ぶし」
「じゃあ前原……詳しいことは、座って話そうか。元々、どっちに行くか決めるところだったし」
「詳しいこと……そういや、天野たちはディパック持ってないな。何かあったのか?」

初めて、まともな人間に会えた。
遠山金太郎と天野雪輝に対する、圭一の感想はそれだった。

赤也との初対面と違って、ひやりとするような一幕もなかった。
鬼と化す前から赤也がにおわせていた、挑発的な感じもなかった。
強いて言えば、大声で声をかけてきた金太郎に危なっかしさを感じたけれど、
天野雪輝がその不用心さをたしなめたり、金太郎が素直に反省したりするやり取りを見て、ああ、普通なんだと思えた。
普通に警戒して、普通に仲間を増やそうとしている、まともな中学生だった。
彼らも圭一と同じく、皆で生きて帰る為に、仲間を集めようとしているらしかった。
ただ一つ、普通と違うところがあるとすれば、支給されたはずのディパックを、持っていないことだった。
そのことを問いただすと、驚くべき答えが帰って来た。
彼らもまた、殺し合いに乗った参加者に襲われ、ディパックを落としてきたらしい。
しかも、その相手は、天野雪輝の知り合いの少女だという。

「名前は我妻由乃。できれば止めたいんだけど、彼女はとても強いから、下手な相手だと返り討ちになると思う」

そう口にする雪輝の顔は、自分でも自分の言ったことに、現実感を持てていないようだった。
表情に暗い翳りが宿り、追求されることを暗に拒んだように見える。
話題を切り替えようとするように、雪輝の方から尋ねて来た。

「前原は、誰かと会ったの? 誰かから逃げるみたいな走り方だったけど」
「それは……」

安心感から、吐き出しそうになる。
自分の身に降りかかった、異常な戦いのことを。

しかし、喉元までせり上がったところで、言葉は止まった。


(…………どう説明するんだ? あんな、現実的にあり得ないことを)


同行者が、ハリウッド映画に出てくるような、赤い皮膚と白髪の鬼に変身して、
水を生物のように変化させる超能力者を、化物じみた腕力で投石して撃退しました。
そうとしか言いようのない出来事。
こんな荒唐無稽な話を、信じてくれる人がいるだろうか。
圭一が同じことを言われたら、まず信じられない。
確かに、突然に殺し合えと言われたり、ワープで知らない場所に飛ばされたりと、非現実的なイベントを全員が経験したけれど、
だからと言って、《人間が悪魔に変身する》なんていうオカルトを、受け入れてもらえるだろうか。

「いや……ちょっとらしくもなくパニックになっちまってさ。遠山たちに会うまで、誰にも会わなかったよ」

嘘をついた。
少し、心が痛んだ。
あの恐怖は、経験した者にしか分かるまい。
内心で、そう言いわけをする。
話題を変えなければ、と思った。

「……そうだ。俺、友達を探さなきゃと思ってたんだ」

部活動メンバーの特徴を話し、見かけなかったかと確認をとる。
動揺から一時は意識の外にあった、元からの仲間のことを。
答えは2人ともノーだったけれど、話題は知り合いの情報に移ってくれた。
雪輝はもう我妻由乃のことを話しているので、自然と、今度は金太郎の番だという空気になる。

「わいは仲間、5人もおるでぇ。しかも全員、殺し合いに乗らんような奴らや!」

ある意味で不謹慎な発言だけれど、当の雪輝は不快そうな顔をしなかった。
むしろ、得意げに知り合いが多いことを自慢するような言い方に、小さく吹き出している。
どうやら我妻由乃の件は、2人の間で何かの了解を済ませているらしい。

探しているのは他校のテニス部員で、一緒に合宿をやっていた仲間なのだと嬉しそうに説明しながら、金太郎は携帯電話をいじり始めた。
アドレス帳の参加者名簿から、該当の名前を示そうとしている。

「えっと、ア行には2人おったな。『跡部景吾』。氷帝学園っちゅうとこの大将さんや」

大将……部長、ということだろうか。
圭一もつられて、アドレス帳の名前を確認する。

「わいはじかに試合したことないけど、中学生の中ではすごい強いって有名やで。
強いだけあってすごい偉そうやから、見たらすぐ分かると思うわ」

『見たらすぐ分かる』ぐらい偉そうというのは、
もはや『偉そう』じゃなくて『痛そう』なんじゃないか。
ツッコミそうになったのを、圭一はこらえた。

「ほんで、もう一人がコシマエやな。わいと同じ一年生で、合宿の時に一番遊んだんや」
「コシマエって……そんな人、アドレス帳にいたっけ?」
「それに『コシマエ』だとカ行じゃないか?」
「ほら、こいつや!」

圭一たちの突っ込みをスルーして、金太郎が見せた画面には、『越前リョーマ』と書かれていた。
エチゼンをコシマエと読んだらしい。
しかし、当然ながら金太郎は、アドレス帳の『ア行』を呼び出している。
つまり、わざとか。
コシマエ呼びはわざとか。
まぁ、『合宿』というからには、強い選手ばかりが集まるのだろうし、数少ない下級生同士で意気投合したとか、そんな感じだろう。
圭一が想像力でぼんやり補完している間に、金太郎は「カ行にも一人おったで」と説明を続ける。



「『切原赤也』。立海っちゅう学校におる、デビルの兄ちゃんや」



(………………え?)



完全な、不意打ちだった。
雪輝と、金太郎の知り合いの中に赤也がいた可能性。
COOL(冷静)に考えればあり得たはずだったのに、全く思い至らなかった。
無意識で、赤也を“まともじゃない”部類に、金太郎たちを“まともな”部類に分けていたが為に、想像すらしていなかった。

「切れると怖いところがあるけど、味方にしたら頼もしいって白石が言うてたで。
あ、白石って言うんは、うちんとこの部長やけど、人を見る目はあるさかい、大丈夫やで」


この時の金太郎からすれば、切原赤也の『悪魔化』を軽視したつもりはなかった。
金太郎は切原と試合したことはないが、全国大会の決勝戦を観戦するぐらいはしているし、そこで『悪魔化』も目撃している。
けれど、その時の切原は、ダブルスパートナーの柳によって、ある程度コントロールされた状態だった。
悪魔化自体を止めることはできなくとも、悪魔化を制御できる選手、悪魔化した状態の切原を倒せる選手なら、全国級のトッププレイヤーにはそこそこいる。
彼が所属する四天宝寺中学の白石蔵ノ介も、その一人だった。
そもそも切原は『悪魔化』によって、味方に被害を出したことはない。
金太郎は、そういう知識を持っている。加えて、全国級テニスプレイヤーならば、体の色が変わったり、体からオーラを放つぐらいのことはしてもおかしくないと、慣れている。
『悪魔化』は危険ではあったが、しかし脅威ではない。そういう認識にいる。
しかし、前原圭一はもちろん、そんなことを知らない。



(味方にすれば、頼れるだって……?)



そんなはずはないだろう。アイツは……あんな鬼みたいになったんだぞ?
俺の言うことなんて、ちっとも聞かなかったんだぞ?
そんな反論が口をついて出そうになり、


――飲み込んで、しまった。


『誰にも会わなかった』と、嘘をついてしまったから。

(俺は遠山の仲間を見捨てて……そのことを遠山に隠してたことになるのか?)

自分のしたことが、『仲間の仲間を見捨てた行為』だと、気づいてしまったから。

他意があって隠したわけではなかった。
信じてもらえるはずがないと思ったから、黙っていた。
けれど、金太郎はそう思うだろうか。
信じがたい話だが、金太郎からすれば、赤也は『頼れる仲間』らしい。
その仲間が暴走したのを放置して逃走し、しかもその事を、隠していた。
知られるのが怖いから、圭一は隠していた。
そう思われても仕方がない。
そうなったら、金太郎は怒るだろうか。
仲間が殺人に走ろうとするのを止めずに見捨てたと、圭一を糾弾するだろうか。

そして、その時になって、圭一は思い至る。

――こいつらも、赤也みたいに、豹変しない保証はあるのか?

金太郎も雪輝も、確かにまともな人間に見えた。
けれど、赤也だって最初のうちは、善人に見えていたのだ。
ちょっと切れやすいところはあったものの、ひょうきんで、明るい、まともな中学生だった。
それが、水使いの少年の襲撃を契機として、まるで別人になってしまった。
『赤也の仲間』で、『デビルの兄ちゃん』と知っている風に話す金太郎に、
同じ事が起こらないと、言い切れるのだろうか。

飛躍した妄想だとは、否定できなかった。
赤也から逃げていた時に、不安を感じていた。
自分の身にも、別人のような豹変が訪れるのではないかと言う、予感があった。
殺し合いの誘発の為に、自分も悪魔のようにされるのではという、恐怖があった。

それが、形を変えた恐怖となって、圭一の心をむしばみつつあった。
それが起こり得るのは、赤也や自分だけではない、と。
殺し合いの中で出会う全ての参加者に対しても、同じことが起こり得る、と。


楽しそうに他の仲間を紹介する金太郎の声も、もはや圭一には聞こえていなかった。




『できるなら我妻由乃を止めたい』と言った。
言った雪輝本人が、そのことに驚いていた。
そう言った方が信用を得やすいという打算もあったことは、否定しない。
けれど、その言葉を口にした時、胸が痛んだ。
まるで、それが自分の本音でもあったみたいに。
雪輝は、由乃との和解を諦めていたはずだったのに。

それどころか、由乃が『殺し合いに乗った事情』を隠したことに、後ろめたさすら感じた。
まるで、由乃を止められなかった原因の一端として、責任を感じたみたいに。
もはや我妻由乃のことは、どうしようもないはずだったのに。

(僕は、由乃に死んでほしくないと思ってるんだ……)

当たり前と言えば、当たり前のことでもあった。
その姿をひと目みただけで、愛おしさに涙を流したのだ。
ならば『あの』由乃が死ねば、雪輝は悲しむのだろう。
由乃を死なせたくない。
かつての感情を少しだけ取り戻せたような、熱いものが胸を満たした。
けれど、それは曖昧模糊としていて、達成する為の手段さえ見えないほどた。
金太郎の言っていた『天野がどうしたいのか』に答えられるほど、強い意志を成していない。
それはきっと、仮に由乃を殺さずに止められたとしても、意味がないから。
あの一週目から来た由乃を元いた場所に生還させたとしても、彼女は最終的に死んでしまう運命にある。
『あの』由乃と雪輝が共に幸せになれないことは、一万年後から来た自分が身をもって知っている。
そのことが、ただ、むなしかった。

どちらにせよ、一時保留にしたことだ。
感情の揺れを表に出すことはせず、改めて圭一を観察する。
圭一は、何かを隠している。
雪輝は、それを感じ取っていた。
『誰にも会わなかった』と答えた時の泳いでいた視線と、何かのどもとまで出かかったような口の動き。
そして、慌ててすぐ話題を切り替えたこと。
本人は上手く隠せたつもりらしかったが、見抜くことは難しくなかった。
雪輝が以前に経験したサバイバルゲームでは、一時的な同盟と裏切りの繰り返しだった。
まして、ほとんどの所有者が殺しの世界に足を突っ込んでいた前の殺し合いとは違って、前原圭一は一般の中学生である。
由乃ほど洞察力に長けていない雪輝でも、『こいつは既に誰かと会っている』と見抜くことができた。
しかし、隠しごとをしているのはこちらも同じ。
だから、しばらくは様子見とした。
元、神様だという事情を、いつ話すかという機を見計らう必要もあった。

すると、途中で圭一に、明らかな変化が表れた。
わずかながらも顔つきがこわばり、目の焦点が合わなくなった。
『切原赤也』という名前が出た時からだ。

雪輝は一考する。
圭一は『切原赤也』に対して、やましいことがあるのかもしれない。
いっそのこと自分も、最もやましい過去である、『かつて殺し合いに参加した』ことを明かすべきだろうか。
しかし、情報を明かす交換条件としてはあまりにもリスクが高い。
金太郎にも言ったように、信じてもらえないどころか、ともすれば疑いが深まる危険を招く。

圭一の表情をうかがう。
金太郎はおそらく気が付いていないだろう。
しかし、その表情には、かつての、サバイバルゲームにいた時の自分と、似た光があった。
同じ光だったから、分かった。

――目は口ほどにものを言う。

圭一の目には、ごく小さな、しかし見る者が見れば分かる、怯えがあった。
ゆえに雪輝は、迷う。


【早朝/F-3/森】

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
基本行動方針:皆で生きて帰りたい
1:こいつら、信用できるのか…?
2:金太郎、雪輝と同行

【遠山金太郎@テニスの王子様】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:携帯電話
基本:殺し合いはしない
1:仲間が増えて嬉しい
2:病院か学校かに向かう(学校に行きたい)
3:知り合いと合流したい

【天野雪輝@未来日記】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:携帯電話
基本:金太郎に協力する
1:前原に自分の正体を明かすか、どうか……。
2:金太郎と一緒に行動する
3:圭一に多少の警戒
4:病院か学校かに向かう(病院に行きたいが、学校も悪くない)
5:由乃や或、高坂たちについては一旦保留する
6:由乃を死なせたくないが、だからどうするという方針もない

※神になってから1万年後("三週目の世界"の由乃に次元の壁を破壊される前)からの参戦
※神の力、神になってから1万年間の記憶は封印されています



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ネガティブコンディション 遠山金太郎 私が疑心暗鬼なのはどう考えてもお前らテニスプレイヤーが悪い!
ネガティブコンディション 天野雪輝 私が疑心暗鬼なのはどう考えてもお前らテニスプレイヤーが悪い!
\アッカヤ~ン/\みずのなかにいる/ 前原圭一 私が疑心暗鬼なのはどう考えてもお前らテニスプレイヤーが悪い!


最終更新:2012年07月10日 19:57