バトロワの王子様 ◆j1I31zelYA
+今日の俺様(と愉快な仲間たち)の輝いてた瞬間+
20XX/7/18→XXXX/X/XX(日付不明)
■桜見市ツインタワービルにいたと思ったら、よく分からねぇ場所に拉致されていたぜ。殺し合いをしろって命令されても屈しない俺、輝いてるぜ!
■殺し合いが始まってすぐに、同年代の女子と出会ったぜ。冷静にそいつ、神崎麗美と情報交換する俺。輝いてるぜ!
■マリリンと名乗る金髪の女に襲われた。Neo高坂KING日記の予知通りに、マリリンの攻撃を次々とかわしてやったぜ。俺って輝いてる!
■本気モードになったマリリンから俺を逃がす為に、囮になった麗美。俺ほどじゃねーが輝いてるぜ!
+ + +
とまぁ、もし『今日』が始まってからの出来事を日記につけるとしたら、こんな風に書くのだろう。
片手に『Neo高坂KING』日記を握りしめ、高坂は頭の中で続きのストーリーを組み立てる。
■走る、走る、走る! 麗美との合流を果たす為に、タワーに向かって一直線に駆ける俺。俺って……
さすがに虚しさがまさって来て、中断した。
「いや。悔しいが、麗美の方が輝いてたな……」
敢えて声に出して、認める。
自他共に認めるほど自己顕示欲が強い高坂でも、訂正せずにはいられなかった。
あんな超人中学生に、高坂は勝てるわけがないと絶望しかけた。
そんなマリリン相手に、麗美は正面きって勝負を挑み、高坂を逃がしてみせたのだから。
息がきれてきたので、小走りから早歩きへとペースを落とした。
あれから、どれぐらいの距離を逃げてきたのか。
気になって携帯画面を『日記』からGPSへと切り替える。
高坂王子を示す小さな点は、地図上でH-2からH-3への境界を越えようとしていた。
マリリンの追尾を警戒してわざと住宅街をジグザグに曲がったりしたけれど、
ちゃんと目的地のビルには近づいていた。
「よっしゃ。俺って輝いてるぜ!」と口癖を発して、手ぶらな方の手でガッツポーズ。
けれど、その順調さが逆にうっすら怖くなったりもする。
今が上手く運んでいるからこそ、遠からず未来に不吉なことが起こる気がして。
例えば、ビルに着いたとして、そこで本当に秋瀬たちや麗美と合流できるんだろうか、とか。
再び、携帯の画面をGPSから『日記』に戻す。
最後の予知は、麗美が『追いかけっこ』を初めてから、十数分ほど経過して訪れた。
それ以来、新しい予知は来ていない。
『未来日記を上手く使って、マリリンから距離をあける麗美。俺ほどじゃねーが輝いてるぜっ!』
その予知によると麗美は、あの超スピードで動けるマリリン相手に、追いかけっこで優位に立っているらしい。
未来日記を持っていたとはいえ、ちょっと信じがたかった。
しかしその予知が来たおかげで、マリリンを麗美に任せて逃げる踏ん切りがつく。だからこそ高坂は、振り向かずに駆けだせた。
逆に言うと、それまでの十数分は後ろを振り返りながら、引き返すか迷いながらの逃走だったので、あまり輝いていたとは言えなかった。
(追いかけようにも、視界の暗い中ですぐに建物に駆けこまれてしまい、とうに見失っていた)
しかし、迷って逃げたり戻ったりしてしまったのにも言い分はある。
『強敵から自分を逃がそうと戦っている女を放置して逃げる』というのも、高坂には『輝いていない』行動だったのだから。
自分の命は可愛いけれど、今の高坂は『Neo高坂KING日記』でバージョンアップした、少しは周りの人間も気にかけてやる高坂なのだ。
ただ、それ以降の予知がぷつんと途切れてしまったのに不安もあった。
『Neo高坂KING日記』には、輝いていない未来は予知されない。
つまり、予知が来ないと言うことは、麗美が負けてしまった可能性を意味するのだ。
しかし、未来日記が不調だという現状がある。
いつもならもっと頻繁に表示される『輝いた未来』も、マリリンと戦う決断をするまで未来予知が来なかった。
だから麗美の予知が来ないのも、例えば日記の故障で、あまり遠くにいる奴は予知できないようになったのかもしれない。
日向や秋瀬に関する予知が来ないのも、それなら納得できる。
いつもの『Neo高坂KING日記』なら、かなり離れた場所の予知――例えば、別行動している西島刑事がどんな風に輝いたか――まで察知していたのだから。
「どっちみち、今から引き返してどうにかなることじゃねえしな」
麗美の安否が分からないとはいえ、逃げた判断が間違っていたとは思わない。
輝いている人間が『自分に任せろ』と言ったのだ。
しかも、しっかりと勝算があると考えて、そう言ったのだ。
なら、そういう時は邪魔しない方がいい。
生き残りをかけたサバイバルゲームに少なからず関わって来た、高坂の経験則。
あのゲームで高坂たちに命令をしていた秋瀬或も、麗美と同じく非所有者ながら知略で戦うタイプだった。
雪輝びいきなところがいまいち信用ならないが、その頭脳で考えることにおよそ間違いはない。
浮世ばなれしたヤツだったけれど、常人には見えないものが見抜けるような、頼りになる男だと思っている。
そういう常人離れした人間の考えることに首を突っ込んで、足を引っ張ることはない。
高坂のような『一般人A(麗美曰く)』は、機を見ていい所をかっさらえばいい。
そういう輝き方の方が、きっと美味しい。
気持ちを切り替えて、高坂は前進を再開した。
今、輝くためにすべきことは、早めにビルに到着していることだ。
麗美か、あるいは秋瀬たちが来る前に、ビルの下調べでも済ませておく。
そして彼らが到着した時に、『遅かったな』とドヤ顔で登場し、手柄を立てたと自慢してやるのだ。
男なら、常にかっこよく輝いているべきだと高坂は思っている。
【黎明/H-3/H-2との境界付近】
【高坂王子@未来日記】
[状態]:疲労、軽い打撲とすり傷
[装備]:携帯電話(Neo高坂KING日記)、金属バット
[道具]:基本支給品
基本行動方針:秋瀬たちと合流し、脱出する
1:輝きたい
2:いち早くビルへと向かい、探索して手柄をたてる
[備考]
参戦時期はツインタワービル攻略直前です。
Neo高坂KING日記の予知には、制限がかかっている可能性があります。
最終更新:2012年06月01日 21:55