煙は、彼の歩く速度に置いて行かれ、ユラユラと河の流れに沿って後ろへ流れていく。
俺が生き延びる為にはNo.1になる器の人間が必要だ。
少なくとも、かつて忠誠を誓ったDIOや、俺が二度暗殺に失敗したジョースター一行と同等の力を持ったNo.1が。
「クソッ。」
煙は、彼の苛立ちを体現するかの様に、ユラリと大きく一揺れした。
出逢えたとしても、そいつが俺を本心からNo.2に選ぶとは限らない。
本質がDIOと同じなら、俺はまた利用されるだけ利用され、最後には始末されるんだろう。
きっとこんな状況じゃ無かろうと、No.1を間違えれば結果は同じなはずだ。
No.1たる器、実力、カリスマ、それらを兼ね備えた人間に俺は出逢えるのか?
あの化け物どもの中から、俺を“正しく”利用するNo.1を探し出すなんて俺にできるのか?
今まで俺は、飄々と自由気ままに生きてきた。
だから、No.1なんて誰でも良かった。
危なくなれば逃げれば良かったんだからな。
だが、今回は違う。
間違えれば、待っているのは『死』だ。
煙は、いつの間にか彼の目の前から姿を消していた。
「それにしても何だこの煙草は。
味も何もあったもんじゃねぇな。」
煙草の火は半ばで力尽きたように消えていた。
「シケた煙草だな。
あの爺さんも、もうちょっとマトモな煙草を用意してくれりゃあいいのによ。」
火を点けようと、左手の親指をライターへと運ぶ。
だが、ライターへと左手の親指が到達する事は無かった。
「動……か…………ねぇ……?」
なんで親指が動かねぇんだ?
まさか、スタンド攻撃か?
だとしても、相手は一体どこだ?
瞬間、微弱な風を感じるとともに、彼の両膝は地面へと落ちた。
「……なん……っだ……?」
「次だッ!次行くぜェロッズ達ッ!」
「後ろかッ!」
彼は上半身の力のみを使い、所謂膝立ちの状態で敵の方向へと体を向けた。
彼からは少し離れて、牛柄の服を着た青年が、どことなくDIOと同じ匂いを漂わす青年が立っている。
「出せよ……あんたのスタンドをよォ……」
使えるのは……右手だけだな。
全弾ブチ込んで一気に殺るしかねぇか。
「……てめェ、ブッ殺される覚悟はできてんだろうな……
皇帝ッ!」
銃弾は全て発射された。
ある一発は、一直線に青年の顔面へと進む。
またある一発は、左から、右から、上から、下から、と縦横無尽に青年の元へと向かう。
青年の顔面が穴だらけになり、その場に倒れ込む……
……事は無かった。
銃弾は青年の顔を逸れて、一発、また一発と地面に突き刺さっていく。
「甘いんだよッ!
考えが甘い甘い。
近距離型でも、ロッズでカバーできるように配置しておいた。
……つっまんねぇ敵だなぁ……あんたはよぉ……
ここで殺してやってもいいが……」
クソッ!
俺一人じゃ結局何にもできやしねぇ……
男一人殺すことも……
No.2が哲学だった訳じゃねぇ。
No.2じゃなきゃ何にもできねぇだけじゃねぇか。
……悔しいな
ジョースター一行に負けても何にも悔しくなんて無かったのによぉ……
自分一人でもできるって所をよぉ……見せてやるぜぇ……
「次だッ!
全弾ブッ放せ皇帝ッ!」
皇帝は、一瞬のうちに全ての銃弾を吐き出した。
三部隊と一発に分けた銃弾は青年の元へと向かっていく。
直線を進む部隊、左手に回る部隊、右手に回る部隊。
そして、右手の部隊から一発の銃弾が加速度的に突出し、背後へと回り込む。
配置は完成したぜ。
今すぐ蜂の巣にしてやっから待っててくれよ牛ちゃん。
牛はカウボーイに踊らされる運命なんだよ。
パチンッ
「……チェックメイトだ。」
動くようになってきた左手を高らかに上げ、指を鳴らす。
瞬間、青年に向かって銃弾が一斉に飛び出す。
直線の部隊が地面に刺さり、左右の部隊が第二派として青年の全身へ向かう。
それと同時に、後ろの一発を煙草の煙のようにゆっくりと青年に近づけていく。
左右のタイミングを見計らい、一気に後ろの一発を、頭部目掛け撃ち出す。
左右の部隊が地面に突き刺さるとともに、後ろの銃弾が後頭部に突き刺さる……
……事はまたしても無かった。
「なっ……!」
「だから甘いっつってんだよ!
一回目の攻撃が見られてんだから、対策しねェわけがねェだろォが!
つまんねぇ!
おい、あんた、もう一回俺を殺しに来いよ。
そしたら、リベンジのチャンスをやる。
それまでは……お休みだ……」
あの白い奴……あれがスタンド像か……
また、今度は、体中に風を感じて、彼は意識を失った。
「デイパックはもらっていくぜ。
んじゃ、また会えたらな。」
そう言って、青年は去っていった
夢を見ていた。
あの青年の夢だ。
何度もあいつに殺される夢。
何度も……
何度も……
何度も……
だんだん、自分の死が客観的に見えてくる。
スゥーッと目線が上からになってくる。
見下すような、幽霊のような目線だ。
きっと、DIOはこういう所から物事を見ているんだろう、とか取り留めもない考えを頭に巡らせていた。
それでも、俺は殺される。
殺される……
殺される……
殺される……
そうして繰り返し殺されるうちに、あの青年にDIOが重なる。
青年はDIOと混ざったような声で、こう言うんだ。
「お前に俺は殺せない。」
暗転。
夢の中でも、俺は意識を失った。
消灯ですよー。
どこかでそう聞こえた気がした。
開始早々、デイパック二個目はラッキーだねェ。
あいつ、バカ正直にリベンジしに来たら大爆笑だな。
徐倫達がいたら殺しておこうか。
そんな事を考えながら青年は進む。
「あっ、そうだ。
おい、あんた……消灯ですよー……なんつって。」
【D-2 河べり / 1日目・深夜】
【
ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:気絶 全身の麻痺 敗北感
[装備]:マライアの煙草、ライター
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
1.利用できるNo.1を探す
2.牛柄の青年と決着を付ける
【
リキエル】
[スタンド]:『スカイ・ハイ』
[時間軸]:徐倫達との直接戦闘直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:
基本支給品×2、ランダム支給品2~3(最低でもホル・ホースの分は確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:楽しむ
1.とりあえずゲームの流れに乗る
2.あいつとの再戦楽しみだな
3.徐倫達がいたら倒すか
【備考】
ホル・ホースは『スカイ・ハイ』の攻撃により、気絶しています。
どのくらいで目覚めるかは次の書き手さんにお任せしますが、すぐという事はありません。
ホル・ホースはうつ伏せで倒れています。
一般人や、ぱっと見では死体に見えるかもしれません。
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最終更新:2012年07月19日 22:06