『百人一首』というゲームをやった事はあるかい?
あのゲーム、極めると最初の一文字……その子音だけでどの札かを判断して手を出せるそうだ。
ではここで質問。『百人一首の達人に、シンクウ・ハドーケンはヒットするか』?
……はい、時間切れ。では答え合わせ。って言っても俺なりの解釈なんだけどね。
俺は『絶対に当たる訳がない』と思う。なぜか?それを今から説明しよう。一言で解決するよ、良く聞いてて。
だって彼等は言うんだもん、『シンクウ・ハドーケン!』って、わざわざ。
クギパンチもそう、ティロ・フィナーレもそう。言わなきゃ余裕で当たるのに、相手に『自分はこれからこの技を出すよ』って言うんだもん。
そりゃあ当たらないさ。でも彼等は言わずにはいられない。なんでかね?言わないと技が発動しないのかな?だとすればそれは明らかに『弱点』だよね。
じゃあ、これを前置きとして今回の話を始めようか。言わなくても分かるだろうけど、能力のスイッチ、その話だ。
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やっと絞り出した、質問への回答。
「そうッスか。俺は
東方仗助。仗助で良いッスよ」
それに対して即座に返される自己紹介。リンゴォの正面に位置するその顔は純粋でいながら力強さを感じられる。
自分もかつてはこういう表情が出来たのだろうか、そんなことが脳裏をよぎった瞬間。口からは疑問の言葉が発せられていた。
「何故……何故治療などをした」
仗助はポカンとしている。彼にとっては、というよりも世間一般に、死にそうな人がいたら助けるのが自然。
半開きの口からは、ハァ?と漏れた気がした。それがリンゴォの精神に再び火をつける。
「侮辱するな……俺はなぜ!死ななかったのか!?
なぜ!俺を生かしておいたのかッ!!」
エシディシに『生かされて』、さらになお仗助に『治療をされた』となれば、何が男か。
誇りを失ったリンゴォは男の世界に足を踏み入れる資格はないのかも知れない。だが、その『世界』は確実に存在するのだ。
「戦いに敗れ死ぬ男を生かした屈辱、やり直せと言わんばかりに治療された屈辱……この辱めを背負って生きろというのかッ!
同じ男だが、お前のような奴には一生かかっても『男の世界』は理解できないだろうッ」
半ば怒りにまみれたような左手を腕時計に向ける。何故さっきまで回せなかったのかと聞きたくなるほどあっさりとツマミは回転した。
しかし――スタンドは発動しない。それは彼にとって精神の崩壊を意味していたと言っても良いだろう。
何度も、何度もツマミを捻る。だが全てが徒労。カリカリと、歯車だけが静かに音を立てるだけ。
それならば、それならば――
「スタンドを失い、受けた屈辱を持ったまま生きる事ほど辛い事はない――治療に対し、感謝はしない」
自分の喉元に思いきりナイフを突き立てた。
……筈だった。
ナイフから手のひらに伝わる感触は喉のそれとは違う。骨と筋肉の固さ。
喉から痛みも伝わってこなければ、呼吸も問題なく出来る。となればそれが意味する事は一つ。
目の前にあったのは仗助の腕。己の腕を突き出してナイフの進行を阻止したのだ。
そして――仗助は苦痛に表情を歪めることなく、ナイフが刺さったままの腕で思いきりリンゴォを殴り飛ばす。
●●●
今ブン殴った分は治療してやらねぇ。
いいか、耳の穴カッポジッてよく聞きやがれ。指さして言ってやるからよ――
チ ョ ー シ に 乗 ん な ッ ! !
アンタが『生かされた』ってぇんなら、俺だってそうさ!
最初に俺たちがいた会場、あそこで死んだ三人の中に俺の身内がいた。もしかしたら、会った事無いだけで全員がそうかも知れねぇ。とにかく一人はよく知ってる顔だった。
ってぇ事は、あそこで死んだのは俺だったかも知れねぇ。そう思ったら俺は既に、アンタよりも先に『生かされて』んだ。それでも今前向いてやってんだよ!
ア マ っ た れ て ん じ ゃ ね ぇ ッ ! !
で、さっきから時計いじってるようだが、それがスタンドのスイッチか?発動してねぇじゃねぇか。
なんで発動しないか分かるか?それぁアンタが『弱い』からだよ!
――俺のダチに、何でも削り取っちまうスタンド使いがいる。
だけど、そいつは『右手』でしか削れねぇ。左手でだって、口でだって削りゃあ最強なのに、なんで出来ねぇと思うよ?
アイツが聞いたらブチギレるから絶対に言えねぇが、アイツの精神が弱いからだと思うんだよ俺ぁな。
もっと強い精神なら出来ると思う。だったら成長すりゃあ良い。でもそれがない。自分の限界決めつけてるからアイツは今でも『右手』だけなんだ。
アンタだってそうさ。だいたい、スタンドの発動に時計がいるって方がおかしいぜ。寝起きとかどうするんだ?風呂入る時も腕時計つけたままなのか?
俺なんかいちいちスタンドの名前を叫ばなくても、ちょっと心で思えばそれだけで能力は発動する。スイッチなんかいらねぇし。
アンタだってそうなりゃ良いだろうが!たかだかスタンド出せなくなったくらいで自殺とかバカにしてんのかッ!?
なんつースタンドだか知らねぇが、オラァ!と思って発動できりゃあ無敵のスタンドにだってなれる筈だろうが!スタンドってのはそういうもんだろ!
大体、なぁ~にが男の世界だよ、戦ってカッコよく死ぬのが男なのか?そんなもん、俺の周りで肯定する奴なんざ一人もいねぇぜ。
そして……女にだってそういう誇り高い人もいる。
一人で孤独に闘って、街を守った女。プッツンすると手がつけられねぇけど愛する男のためなら何だってする女もいる。
アンタ、未熟もんなんだよ。スタンド使いとしても、男としても。
ガキの戯言だと言いたきゃそう言えばいい。それでアンタが納得するんならな。
俺はこれから、そうだなぁ――地図の北に向かう。仲間を探してこんなクソッタレなゲームはぶっ潰す!
アンタはどうするんだ?俺はアンタの成長を見届けたい気持ちもあるが、こんなとこで立ち話してても解決しねぇだろうからな。
アンタの心が許すなら俺と一緒に来ればいい。来なけりゃあ……またどっかで会えればいいな。その時はちゃんと名前でリンゴォって呼ぶからよ。
……怒鳴って悪かったな、じゃあ、あばよ。
●●●
ハイ、ここまでー。
続き気になるって?そりゃあ良い。そういうところで終わるもんだろ、話って。
さて、生き延びた事に怒ったリンゴォと、そういう考え方に怒った仗助。
激突した二人の怒り。この場では仗助の方が正しく見える。この場ではね。
うん、仗助の話がハッタリの可能性だってあるから百パーセント正解だとは言えないよ。
だって考えてみろよ、本当に億泰の『ハンド』が『クリーム』になったら、それほど怖い事もないからね。
リンゴォが「ザ・マンダムッ!」とか言って時間戻してみろよ?トンデモない成長だよそれは。
だけど仗助自身も知ってる、エコーズのように進化するスタンドもね。だからあんなこと言ったんだと思うよ。
それじゃ、みんなにも仗助と一緒にリンゴォのスタンドの成長を期待してもらいながら話を終わりにしよう。
そうだ、皆聞いてくれ。
今いち遅れた流行っぽいんではあるんだけどさ~。
一コ「ギャグ」思いついだんだよ――
【E-4 北東部/1日目 深夜】
【東方仗助】
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[スタンド]: 『クレイジー・ダイヤモンド』
[状態]:左前腕にナイフが刺さっている(貫通)、その他は健康、怒り
[装備]:なし
[道具]:
基本支給品、不明支給品1~2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
1.北に向かって仲間を集める
2.リンゴォの今後に期待。だが甘ったれは許さねぇ。
3.承太郎さんと……身内?の二人が死んだ。でも俺は挫けん!
[備考]
- 思考1の「北」は具体的にどこに行くかは決めていません。
【リンゴォ・ロードアゲイン】
[時間軸]:JC8巻、ジャイロが小屋に乗り込んできて、お互い『後に引けなくなった』直後
[スタンド]: 『マンダム』
[状態]:右頬に腫れ、その他は健康、屈辱、怒り(収まってきてる)、軽い放心状態
[装備]:DIOの投げナイフ半ダース(未使用3本、2本折れている、1本は仗助に刺さったまま、計6本)
[道具]:基本支給品、不明支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:(未確定)
1.放心状態で(行き先や立ち回りを)あんまり考えられない
2.俺は仗助の話のように成長できるのか……?
[備考]
精神状態が落ち着けばマンダムが回復する『かも』しれません。
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最終更新:2012年07月19日 22:07