Stand up~『立ち向かう者』~



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

--- <早朝> GDS刑務所 1階男子監 大広間 ---

「ジョニィ・ジョースターさん…ですよね?どうやらかなりギリギリのところだったみたいですが、お身体は動かせますか?」
「き…みは……?なぜ………ぼくの、名前を……?」
「外に居る黒い帽子のお嬢さんから貴方が一人で敵と交戦している、助けてやって欲しいと頼まれました。
色々聞きたいことはあるでしょうが、とにかくまずはこのお薬を飲んでください。飲めます?」

そう言って彼女-射命丸文はデイパックの中から青みがかった液体が入った1本の瓶を取り出し、ジョニィに向けて手渡した。
ジョニィが少々不信ながらそれを飲むと先程まで憔悴していた身体が嘘の様に元気になり、体力まで回復した。
尤も身体の傷までが全て完治したわけでなく、万全の状態とまではいかなかったが。
ジョニィはマジックポーションを全て飲み干すと、ゆっくり立ち上がり文に向けて体を向き直し、まずは礼を言った。

「文。ありがとう、助かったよ。蓮子が君に助けを求めてくれたのか。彼女は無事なのか?」
「…正直に申しまして、彼女は今、外で新手に襲われています。あまり無事とは言えない状況です。
蓮子さんは自分が危機に陥っている状況だというのに、自分よりもまず貴方を心配してくれたのですよ?」
「…!?新手だって!?」
「安心して下さい。私の仲間…露伴先生が敵と交戦しております。あの人なら…どうにかしてくれるでしょう(多分)
それよりも、まずはあの敵を何とかする事が先決です」


文が目線を目の前の敵に戻した。
見るとヴァニラ・アイスは壁に激突したダメージで片膝をついている。
すっかり頭が冷えてしまったのか、その冷徹な顔と酷く冷たい瞳を闖入者-射命丸文にゆっくり向けた。

「一人だろうが二人だろうが、私のやる事は変わらない…。全員このヴァニラ・アイスの『暗黒空間』にバラまくだけだ」
「成る程…『ヴァニラ・アイス』さんですか…名前だけは私よりも可愛いですね。
ジョニィさん、この男は『スタンド使い』なのですよね?情報を教えていただけると助かります。
こんな状況でなくとも、『情報』に勝る武器などはいつの時代にも存在しませんから」


実に新聞記者らしいことを言いながら文はジョニィに尋ねる。


「…スタンド名は『クリーム』。奴自身がスタンドの口に入り込むだけで空間から完全に『消える』ことが出来る。
そのうえ奴からは一方的に攻撃する事ができ、触れるだけで物質が『削り』取られる。奴が隠れてる間は攻撃が全く通用しないんだ」
「あやや…聞いて早速後悔しそうな情報ですね。…何か弱点は無いのですか?」
「奴が空間に隠れてる間は奴自身もこちらの姿が見えていない。こっちの姿を確認しようと顔を出した瞬間…
そこを突くしか勝つ方法は無い」
(あるいは僕やジャイロの騎兵の技術による完全な黄金の『回転エネルギー』…だがクソッ!今は不可能だ…)



「外で蓮子が襲われてるのなら、なるべく早くこの敵を片付けなければならない。スピード勝負になる。
文、君はスタンドの事を知っているようだが『スタンド使い』なのか?」
「スピードなら誰にも負けない自信はありますが、私はスタンド使いではありません。が、『風を操る程度の能力』を持っています。
今は葉団扇を持ってないので多少、風圧が落ちますがお役に立てると思いますよ?」


一通りの情報交換を終えた後、ジョニィは納得した顔で『爪』をヴァニラ・アイスに構えた。
文も気持ちを切り替え、腰を落とし腕を相手にかざし戦闘態勢を取る。
ヴァニラ・アイスはゆっくりと立ち上がり、その視線だけで人をも殺せそうな殺気と威圧感を持った瞳で二人を交互に見る。





---三人とも完全に戦闘態勢に入った。






(ジョニィさんはまだ身体の傷が完全には癒えてません。もし飛び道具をお持ちなら無理をなさらず後方から支援してくれると助かります。
私はこうみえて結構武闘派なんですよ?)
(…成る程。ならば言葉に甘えさせてもらうが、説明したとおり奴がスタンドの口に入り込んでる間は近づくだけでも危険だ。
肉弾戦なんて以ての外だぞ?)
(…承知しております。引き際はわきまえておきましょう)


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

ヴァニラ・アイスは憤慨していた。
表面上のツラでは冷静さを取り戻しているように見えるが、その平静を装う仮面の下ではこの状況にグツグツと苛立っている。


(ジョースターめ…ッ!この死にぞこないめがッ!
何故奴は立ち上がってこれる…?あれだけ痛めつけておいて何故逃げようともせずに再びこちらへ立ち向かってこれる…?
この私のスタンドと、DIO様へ歯向かう事の『愚かさ』は充分身に染みた筈…。
それなのに奴は逃げるどころか、今度こそ私を殺してやるという確かな『殺意』まで秘めているように見える…)

(私には分かる。あの瞳には、自分の邪魔をする奴は誰であろうと容赦しないという冷酷なる『漆黒の殺意』が宿っているという事を。
そして寸でのところで鬱陶しい別の『鳥小娘』に邪魔されたッ!
偶然かこれは…!?それともジョースターの『運命』とやらが『強運』を引き寄せたというのかッ!馬鹿馬鹿しいッ!)
(『危険』だ…ッ!あの男をDIO様に会わせるわけにはいかないッ!この場で殺すッ!小娘もだッ!)

結局のところ、ヴァニラ・アイスのやる事は変わらない。
DIO様の『不安』の種は全て摘まなければいけない。まずは目の前のちっぽけな存在を喰い尽すッ!



「---『クリーム』ッ!!!」


ヴァニラ・アイスがスタンド名を叫び、『クリーム』が背後から禍々しい気を纏いながら発現する。
最初に動いたのはヴァニラ・アイス……ではなかったッ!

「ハァーーーーーッ!!!」

迸る勢いで地を蹴り、目にも止まらぬ豪速で文は大気を突き抜け、音を置き去りとする。
その躍動から生じた衝撃波は、側にいたジョニィがバランスを崩し思わず体を屈めたほどだ。
まるで瞬間移動のような猛スピードで文は一瞬にしてヴァニラ・アイスの目前まで一気に距離を詰める事に成功した。




初動を制したのは文だったッ!


(なにィ!?この小娘ッ!速…)
「アヤァッ!!」


文の予想外な動きにヴァニラは完全に虚を突かれる形となり、スタンドによる防御をする暇もなく文の両手から繰り出された凄まじい掌底を鳩尾に喰らってしまう。
(その攻撃の掛け声もどこかで聞いたような)


「!?ガ………ッ!!?」
「そのスタンドの体内とやらに隠れさせるわけにはいきませんッ!悪いですが一気に仕留めさせて貰いますッ!!」

か細い腕の少女とは思えない破壊力をもつ攻撃によってヴァニラの巨体は上空へと浮かされてしまう。
それを追う様にして文もまた翼を駆使して空へと飛び立つッ!


(クッ!スタンドの像は見えなかったッ!今のは素手による単純なスピードと攻撃ッ!何者だコイツ!?)



さしものヴァニラ・アイスでも、この展開は完全に予想出来なかった。
射命丸文は幻想卿において最強クラスの力を持つ『鴉天狗』という種族の齢千を超える少女(?)である。
普段こそはその強力な力をおくびに見せびらす事も無く爪を隠しており、元々争いごとを好まぬ性格だった。
だがこの非人道的な殺し合いの舞台において、手加減をしようものならこちらがやられてしまう。
文は感じた。随分永い時を生きてきたがこの男、ヴァニラ・アイスによる禍々しい『悪のオーラ』は幻想卿でも見たことが無い。





怖い。
自分にこれほどの『敵意』を向けられている事が、どうしようもなく怖い。
本当はこの場からさっさと逃げ出したかった。
本当はこんな見ず知らずの他人である人間の男が死のうと、どうだって良かった。
でも、何故だか逃げちゃいけない気がした。
本当は私だけでも生き残りたいぐらいなのに、何で私はこんなことしてるんだろう?
それでもこの殺し合いは『皆で』生き残る。そのために仲間は必要だ。
ジョニィさんは死なせない。私だって死にたくない。
そして、このヴァニラ・アイスを他の参加者に会わせてしまう訳にはいかない。
コイツは私達が今ここで『止める』ッ!




「ウアアアアアアァァァァーーーーーーーーッ!」
「そうはさせんッ!『クリーム』ッ!この女の脳天に手刀を叩き込めッ!脳髄ぶち撒けさせろッ!」


ヴァニラはこちらへと飛び上がってくる文へ、スタンドの手刀を叩きもうと両腕を上げる。
ヴァニラ・アイスの『クリーム』と言われる能力はスタンドの体内に本体が完全に入り込んでしまえば完全無敵となる。
だが、その一動作には少しばかり時間を要してしまう。
ここまで接近された相手に、ましてや幻想卿最速の鴉天狗相手に後手に回るとスピードBのクリームでは分が悪い。
そのような理由があって、ヴァニラは中々クリームの体内に潜りこむ事が出来ないでいた。



だがッ!この『悪魔のスタンド使い』vs『幻想卿最速の妖怪』という対戦カードにおいてッ!
人間を遥かに凌駕した力を持つ射命丸文が圧倒的に『不利』になる要素がひとつだけあったッ!


「アヤヤァァッッ!!!!」


ド ゴ ォ ッ ! !


やはり『速さ』において、この二打撃目も文に軍配が上がった。
スタンドの腕が振り下ろされる前に文の高速の拳がヴァニラの腹部に入るッ!

「……………ッッ!!!!」

まるで大砲の直撃を受けたような重い一撃に、ヴァニラの肺の中から全ての空気が漏れる。
顔を苦痛に歪ませたヴァニラは常人なら肺に風穴が開くほどのその衝撃を、驚異的な精神力でそれでも耐え切ったッ!


「この…程度か小娘エェェッ!」



崇高なる主君を守る為に日々鍛え続けたその隆々なる筋肉を文の拳は貫けなかったのだッ!

そして次の瞬間ッ!『クリーム』の両腕による手刀が文の脳天に襲い掛かるッ!
まさか今の攻撃を耐え切って反撃してくるとは予想できず、文は更なる追撃を加えようとした両腕を防御に回すしかなかった。
いかにスタンドという未知の力が強力であっても、天狗の防御を破壊するなんてことはあり得ないだろう。
しかも『クリーム』の本来のパワーはB。暗黒空間による攻撃こそ必殺の破壊力を持つが、スタンド自体のパワーは並みの近距離パワー型スタンドと張り合う程度。
本来ならばクリームのこの攻撃が文に致命傷を与える事は考えにくい。




そう、『本来』ならばだ。




「小娘ッ!貴様ただの人間ではないようだが、貴様如きがこの『スタンド』の攻撃を防げるかァーーーッ!!!
スタンド使い『でない』貴様に、この攻撃が防げるのかァーーーーーーーッ!!!???」

「……ッ!?」





---『スタンドはスタンドでしか傷つけられない』

これはつまり、逆を返せば『スタンドの攻撃はスタンドでしか防げない』という事である。
スタンド戦において存在するこの『絶対法則』を文は知らないでいた。
『スタンド』の基本的な事は仲間である岸辺露伴から一通り聞いた彼女だったが、肝心要な情報を聞いていなかった。
何という凡ミスだ。そうと知っていればスタンド使いにここまで迂闊に近寄る事はなかったろう。

スタンドの本気の一撃を防御出来ずにマトモに喰らうという事は、それだけで『死』に繋がる。
スタンド戦とは自分の経験、頭脳、機転を駆使して、いかに相手に一撃ブチ込むかだ。
常に相手の十手先を読み、時には『強運』を味方につけて勝利する。一瞬の油断が命取りとなるのだ。



(あやや…『情報』の不足でこんなしっぺ返しに合うとは、新聞記者失格ですね…。
人間一人助けるために自分は返り討ちになってしまうなんて…。鴉天狗が聞いて呆れちゃいます……。)





(嫌…………死にたくないよぉ…)







「喰らえヴァニラ・アイスッ!『タスクACT2』ッ!!」


ド ン ッ ド ン ッ ド ン ッ ド ン ッ ! ! !





死を覚悟した文と、勝利を確信したヴァニラの耳に飛び込んできたのは、ビリビリした振動を全身に感じさせる咆哮。
ついさっきまで情けなく嗚咽を漏らし、地を転げ回っていたブザマなヒーロー。


ジョニィ・ジョースターの精悍な覚悟で放たれた『黄金の回転』は完璧な『スケール』をもって、文に襲い掛からんとするヴァニラの両腕目がけて合計4発ッ!
黄金に輝くスタンドエネルギーを纏いながら猛スピードで真っ直ぐ突き進むッ!


ジョニィの傍らには先程までの妖精型のヴィジョンではない、マシンのような構造をした桃色のスタンドヴィジョンが現れている。
これがジョニィの『タスクACT2』である。

ヴァニラは目の前の鴉天狗の少女の相手をするのに気を取られ、ジョニィの事は一時的にだが頭から抜けていた。
クリームの腕は文に向かって振り下ろされているッ!爪弾の防御は間に合わないッ!
しかもヴァニラの体は文によって空中に打ち上げられている為、回避行動にも移せないッ!
ジョニィは敵が勝利を確信する瞬間をその『牙』で狙っていたのだッ!牙-タスク-とはよく言ったものだ。


果たしてジョニィの攻撃はヴァニラの両腕に4発着弾ッ!片腕に2発ずつ『風穴』を開けることに成功したッ!



「貴様ッ!ジョニィ・ジョースターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」





ギリギリのところで文に対するクリームの攻撃は中断され、彼女は何とか一命をとりとめた。
文は自分の命が九死に一生を得た事を改めて認識し、そのことに心の底から安堵した。
そして文が次に目撃したものは、『奇妙』な光景であった。
たった今ジョニィが撃ち込んだヴァニラの両腕に開いた4発の弾痕が、その『穴』ごとヴァニラの腕を登っていく。


「こ…これはッ!?奴の撃ち込んだ『弾痕』が、おれの腕を登って…マ、マズイ!狙いは『心臓』かッ!」



 ギ ャ ル ッ !                  ギ ャ ル ッ !

         ギ ャ ル ッ !

                      ギ ャ ル ッ !

   ギ ャ ル ッ !                        ギ ャ ル ッ !




まるで高速で回転する歯車同士が火花を散らしてぶつかり合うかのような、ヴァニラにとっては不吉な音が身体の芯に響き渡る。



「ウオオオオオォォォーーーーーーーッ!!こォれしきィィイイのオオ事ォォオオオ!!」



ヴァニラにはもはや考えている暇は無かった。少しの、ほんの少しの『覚悟』が必要だが、それだけだ。
『あのお方』の事を考えるのだ…彼のことを考えるだけで、ヴァニラは勇気が湧いてくる。




その先の行動は早かった。


ブ チ ン   ブ チ ン ッ !


ヴァニラは右腕から登ってくる2つの弾痕を、そのクリームの強靭な顎の力によって『肉片ごと』噛み千切ったッ!

「ウヌウウウゥゥ…ッッ!」

そしてその肉片を飲み込み、口の中に広がる『暗黒の空間』までそのまま送り込むッ!
間髪入れず、今度は左腕を登ってくる『弾痕』をクリームで肉片ごと噛み千切り、同じように暗黒空間に送るッ!


「ハァァァァーーーー……ッ」

ヴァニラの両の腕には惨たらしく千切られた痕が複数も残り、心臓に風穴を開けられるよりも遥かにマシとはいえ、かなりのダメージを受けてしまった。
その異様な光景を間近で見ていた文は絶好の攻撃のチャンスだという事も忘れ、ヴァニラと共に空中を落下しながら動けないでいた。
恐ろしい男だ。この目の前の男の何がここまでさせるのだろう。
こんな精神力を持った人間が居るなんて…いや、幻想卿の大妖怪にすらここまでの奴はいない。


強大なパワーを持つ天狗の射命丸文は、ただのちっぽけな人間に『恐怖』を抱いていた。






その隙を、ヴァニラは見逃さない。






「ク…ッ!相当の傷を負ったが小娘ッ!まずは貴様の頭をスタンドで粉々に噛み砕いてや…」
「文ァァァァァァァーーーーーーッ!!!そこから離れろォォォォォォーーーーーーーーッッ!!!!」



直後、文の背後からジョニィの怒号が響き、彼女をハッとさせたッ!
文は自らの翼を羽ばたかせ、すぐにジョニィの言うとおりにヴァニラから急いで離れる。
ジョニィとヴァニラ・アイスの視線が直線状に交差した。
ヴァニラの目に映ったものはジョニィとその傍らに浮かぶスタンド『タスク』。




……そして交差した視線の直線上を、こちらへと向かってくる『小さな黒い何か』。



ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル
ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル……



ジョニィへと支給された、王族護衛の戦闘の為の鉄球『レッキング・ボール』(壊れゆく鉄球)が唸り声を上げながらヴァニラに急接近していた。
元々は護衛官『ウェカピポ』の一族が磨き上げた戦闘技術である。
投擲した後に、更なる14個の小さな『衛星』が敵に襲い掛かる!
そしてその衛星にまともにぶつからずとも、少しでも掠ってしまった者には次に『左半身失調』が襲う!
『左半身失調』を受けてしまった者は数十秒間、自分から見て全ての『左側』半分が無くなっている様に見える。
体のバランスを崩し、恐らくまともに立つ事も出来ないだろう。

そしてジョニィはこの王族護衛の為の戦闘技術に、更にツェペリ一族の『黄金回転のエネルギー』を加えていた。
『黄金長方形』のスケールで回転させた鉄球は、その威力が数倍にも膨れ上がるッ!



ところでこの黄金回転の鉄球にしても、タスクACT2にしても、それには先述した前提…『黄金長方形』のスケールが必ず必要である。
ツェペリの黄金回転には、自然への深い観察から芸術家達などが学んだ『本物のスケール』が不可欠なのだ。
しかしこの『石作りの海』内部にはそれがほとんど無い。それ故にジョニィは一度『敗北』しかけた。



だが、あぁ…何という『運命』なのだろうか。
神がいるとして、運命を操作しているとしたら!
これほど計算された『出会い』は無いッ!



『それ』は唐突に、敗北寸前だったジョニィの前にフワリと舞い降りてきた…。
その流麗な黒髪と同じに、非常に美しく生え揃えられた『漆黒』。
自然界のコピーなどでは決してない。
『生命』と『自然』への深い『敬意』を払うべきである、まごうことなき完全なる『黄金長方形』のスケールがそこにあった。







射命丸文。妖怪である彼女の背には千年を生きてきた鴉天狗の象徴でもある『美しき黒衣の翼』が悠然と存在していた。











(やはりッ!ジョースターだったのだッ!真っ先に消すべきはジョースターの血族ッ!DIO様の仰られていた事が『心』で理解できたッ!
ジョースター一族を野放しにしておけば、いずれは必ずDIO様の『災厄』となるッ!殺さなければいけない…ッ!)


ヴァニラは心中で深く『決断』した。
私はここで死ぬわけにはいかない。生きてDIO様の『敵』を一人でも多く狩る。
この『鉄球』の回転は絶対に喰らうわけにはいかないッ!



「クリイイィィィィムッ!!!!!私の身体を包み込めええええェェェェッ!!!!!」



ボロボロのスタンドの両腕は既に鉄球を防御できる力は残っていない。ヴァニラが未だ落下途中の為、攻撃を回避する事も不可能。


その状況で幸か不幸か、ジョニィの鉄球の投擲に巻き込まれないために文がヴァニラの側を離れた。
鉄球がヴァニラに到達するまでにほんの少しの『時間』はある。ヴァニラが暗黒空間に隠れられるチャンスは今しかないッ!

髑髏を象ったクリームがその大きな口をあけてヴァニラの全身を飲み込もうとする。



その刹那!『レッキング・ボール』の『衛星』が本体の鉄球を離れ、その内のいくつかがヴァニラへと向かうッ!
そして、ヴァニラの全身を衛星が『貫いた』ッ!



ド ゴ ォ ! ド ゴ ォ  ド グ シ ャ ア ッ ! !

「………………………………ッッッ!!!!!!!」


全身を数発の衛星が貫いた直後、ヴァニラ・アイスとそのスタンド『クリーム』はこの世界から完全に『消えた』。















「そんな…奴を『あっち側』の空間へと逃がしてしまった……」

「文ァ!ボサッとするな!奴はまだ生きているッ!すぐに風を起こして粉塵を巻き上げるんだッ!」

「…………!」


ジョニィの意図するべき事が理解できたのか、文は直ぐに右腕を天へとかざし、詠唱する。



「逆風『人間禁制の道』ッ!」



文がスペルカードの詠唱を終えた途端、どこからともなく突風が吹き荒れ、あたりを瓦礫の粉塵が舞った。
その粉塵の中に不自然な球状の『軌跡』が見えた。
ヴァニラ・アイスの『クリーム』は空間を移動する時、『障害物』を飲み込みながら出ないと移動できない。
この現象を逆に利用すればクリームの攻撃の軌道を視認する事が可能になるッ!
ジョニィが咄嗟に閃いたこの奇策は、ヴァニラに対しては確かに『有効』であった。

だが、今のクリームの軌跡はあからさまに『不規則』な動きをしていた。上下左右、前へ後ろへ猛スピードで行ったり来たり。
時には地面の下へ。かと思えば天井上まで突き抜けたりと、とにかく軌道する予測の『先』が全く見えないッ!


ジョニィは推察した。
こちらからでは見えないが、恐らくクリームの『中』に潜むヴァニラは『左半身失調』状態に陥り、混乱して滅茶苦茶な動きをしているのだ。
通常、あの『レッキング・ボール』の攻撃を喰らった者は立つ事すら困難でまともな動きが出来ない。
しかしクリームという飛行する球状の『シェルター』内では動きの制御こそ出来ないものの、スタンドの操縦桿を握る事ぐらいは出来るのだろう。
無重力の宇宙空間に放り出されバランスを失った宇宙飛行士の様に、ヴァニラは今自分がどこで何をやっているのかすら分からない。

…だが、そのバラバラで予測不可能な動きが逆にジョニィ達を苦しめる。
最初に声をあげたのは文だった。




「ジョニィさん!ここはいったん退きましょう!アイツは今、完全に私達を見失っています!チャンスは今しかありません!」

「…いや、文。それなら君が先に逃げてくれ。僕はコイツを野放しに出来ない」

「何ですって!?本体が露出していたさっきまでとはわけが違うんですよ!?アイツは恐らく私達の死を確認するまでこっちの空間に出てこないかも…っ!
……か、『敵うわけがないッ』!それに外では露伴先生と蓮子さんが危機に陥っているかもしれないのよッ!?」

「…『敵うわけがない』とか…『出来るわけがない』とか…そんな弱音、僕は今までに腐るほどに聞いてきた。
この敵は『危険』なんだ。僕が今ここで完全に『始末』しなければいけない」

「何を…意味分かんない事言ってるのよ…。ダメよ…死んでしまうわ……。
人間のクセに…死ぬのが怖くないって言うの……?」

「怖い。
自分にこれほどの『殺意』を向けられている事が、どうしようもなく怖い。
本当はこの場からさっさと逃げ出したいさ。
本当はこんな、さっき会ったばかりの赤の他人である君なんて放って逃げ出したいさ。
でも、僕はもう二度と逃げない。
『途中で逃げ出すただのクズ』に戻るなんてまっぴらだ。僕は最後まで行く!!
そしてこの殺し合いは『皆で』生き残るッ!そのために仲間は必要だッ!
キミの事は死なせない。キミの仲間も。蓮子も死なせない。当然ジャイロもだ。
そして、このヴァニラ・アイスを他の参加者に会わせてしまう訳にはいかない。
コイツは僕が今ここで『殺す』ッ!」





射命丸文は、その人間の前から立ち去れないでいた。

長寿を生きた文でさえ、目の前の、たかだか二十年程度しか生きてないひよっこの人間の言葉に立ち尽くすことしか出来なかった。

これが、短い寿命の中でしか生きられない人間の『賛歌』なのか。

人間の魂というのはこうも誇り高いものだったか。







文はジョニィの瞳の奥に燃えさかる冷徹な『漆黒の殺意』の更なる奥に、人間の『黄金の精神』を見出した気がした。

今まで文は心の奥の奥では、人間を『下等なる種族』だと見下していた面もあったと言えるかもしれない。元より天狗とはそういった性質なのだ。


その射命丸文が、人間に対して初めて心の底から『敬意』を表した。
この人はこれからも、ずっと前へと歩き続けていくのだろう。
その途中にどんな障害があったとしても、何度だって砕かれて、そして強くなって立ち上がっていく人なのだ。
…こんな『立ち上がろう』としてる人間を、死なせたくない。

私にも何か出来るだろうか…?


「文。君がいなければ僕はとっくに死んでいたんだ。君には本当に感謝している。だが、ここは危険だ。僕の事はもう大丈夫だから、蓮子を助けに…」

「私も残ります。手伝わせてください。」

「…敵うわけがないとか弱音を吐いてた奴は誰だっけな?」

「あ…あやや///すいません、ありゃウソでした。でも、ジョニィさんには生きて欲しいんです。実は私、新聞記者なんですよ。だから、奴を倒したら絶対インタビュー受けてもらいます!」

「へぇ?まだ若そうなのに凄いじゃないか。…インタビューか、実は僕も昔はよくインタビューを受けてたんだよ」

「ホントですか!?それじゃあ約束ですッ!この戦いが終わったら絶対に受けてもらいますからね!」

「あぁ。約束するよ」


ジョニィと文は二人で軽く笑いあった。
ジョニィのような『立ち向かう者』がこの会場にまだたくさん居るのなら
もしかしたらあの主催達に対抗できる道が見つかるのかもしれない…
文はジョニィに、少しだけ『希望』の光を感じて、



-それはすぐに-









---ガ オ ン ッ !





「!!!ジョニィさんッ!!上ですッ!!」
「…ッ!!??」


希望の光を喰らう『闇』は全てを覆い






---ガ オ ン ッ !





ジョニィ・ジョースターの肉体と共に






-あっけなく、あまりにもあっけなく、この世界から『消えた』-














▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

「感じたぞ………今ッ!確かに感じたッ!ジョースターの血を一人、この世から消してやった『感覚』をこの身に感じたッ!
『倒した』ッ!DIOサマァッ!貴方様の『不安』をまず一人ッ!消し去って御覧に入れましたッ!!」



真っ暗な『闇』の中で、今なお『左半身』を失っているヴァニラ・アイスは手応えを感じていた。
右腕はその肉片を『喰った』せいで力無くブランと垂れ下がり、全身に『つむじ風』と『衛星』から受けたダメージの痕が痛々しく残っている。
普通ならばとても立っていられる状態ではない。(尤も、この暗黒空間で立つも座るも無いのだが)
肉体は既に満身創痍であるにもかかわらず、ヴァニラは顔を狂喜に歪め、確かな勝利の感覚に笑いを止められない。



(…少し冷静にならなければ。どうも私はDIO様の事になると頭に血が上る。悪いクセだ。
まだだ。この殺し合いの場にはジョースターの血統がまだまだ居るハズ。それに外には鳥小娘がまだ居る。
ひとりひとり、順番に順番に、このヴァニラ・アイスの暗黒空間に………………………ん?)



シルシルシルシル……



何だこの音は…?この空間に私の声以外の音などはあり得ないハズだ……
ヴァニラは音のする方向を探してみる。今は左耳の感覚も無いのでよく分からない。



シルシルシルシルシルシルシルシル……



段々と音が大きくなってきた気がする。
それにしても耳障りな音だ…この音、どこかで……………



ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル……



そうだ。つい先ほど聞いたような気がする。
そう…まるで高速で回転する歯車同士が火花を散らしてぶつかり合うかのような、ヴァニラにとっては本当に不吉な音がこの空間に響き渡った。


「こ、これはッ!?まさか、この『音』はッ!そんな筈は…ッ!」


ヴァニラの右半分の顔が一瞬で青ざめ、汗が吹き出る。







    ギ ャ ル ッ !                  ギ ャ ル ッ !

         ギ ャ ル ッ !
 ギ ャ ル ッ !                                ギ ャ ル ッ !
                      ギ ャ ル ッ !

   ギ ャ ル ッ !                        ギ ャ ル ッ !






「おい。どうしたんだ?こっちだぜ。」





その時、はっきりとヴァニラ・アイスの『左耳』に癇に障るような余裕綽綽な声が届いた。
瞬間、ヴァニラは左半身の感覚が戻って来たように感じた。『左半身失調』の持続時間切れである。

しかしそれと同時に、『左腕』を誰かにガッシリと掴まれてる感覚があった。
ヴァニラは失調から復活した自分の左腕を見やる。

そこには信じられないものがあった。いや、『居た』。



「な…なんだとオオォォォーーーーーーーーッ!!??」

「うるさい声を出すなよな。それに何を驚いているんだ?『コレ』はあんたの大切な肉片だろ?」



そこには…そうだ。さっきジョニィが両腕に撃ち込んできた4発の爪弾、その『弾痕』ごとクリームが飲み込んだヴァニラ自身の『肉片』があったッ!
クリームがその暗黒空間に飲み込んだものは何であろうとバラバラに『消滅』する。ヴァニラ自身を除いて…
しかしこの肉片はヴァニラの肉体そのものなのだから、消滅せずに暗黒空間に残っていたままというわけだ。
だが、肉片に残ったこの弾痕の『穴』はどうなのだ?




かつてこんな事があった。フィラデルフィア海岸の列車内でジョニィが大統領に発射した追跡する穴。
その穴を大統領はお得意の能力『D4C』による挟み込みで、『穴ごと』次元の狭間に送ろうとした。

だが『穴』は『穴』。そのもの自体は挟み込んでも別次元には送り込めなかった。
つまり爪弾自体は消滅しても、この『穴』そのものは異次元だろうが暗黒空間だろうが、消し去る事は出来ないのかも知れない…



その穴はさっきジョニィに撃ち込まれたその状態のまま、しぶとく肉片にへばりつき回転を続けていた。
そしてッ!何とその小さな穴の中でバラバラにしてやったハズのジョニィがヴァニラの左腕を掴み、穴の中まで引き入れようとしているではないかッ!
その傍らにはジョニィの更に進化したスタンドが顔を覗かせているッ!



「チュミ   ミ   …………」


「『タスクACT3』ッ!黄金回転の爪弾で『僕自身』を撃つ事で、タスクは更なる段階へと進むッ!
その弾痕は螺旋の回転の究極の『地点』で、無限に渦巻くどんな『点』より小さな小さな最後の『場所』で、僕の肉体を穴の中に巻き込むッ!
僕の肉体とアンタの肉片につけた『穴』を『トンネル』のように繋げたッ!これで『お前の場所』へ到達出来たぞッ!
尤も、この『穴』の外の暗黒空間へ出たら、いくら僕でもやばいけどな」



ジョニィは先刻、ヴァニラの暗黒空間に飲み込まれたわけではないッ!
飲み込まれる寸前、ジョニィは黄金の回転で『自分』を撃ったッ!そしてそのままACT3で作った『穴のトンネル』を通ってヴァニラの肉片につけた『出口』まで到達したッ!


「お前のスタンドの口の中が暗黒空間とやらに繋がってるというのなら、この爪弾の穴の中が僕の暗黒空間と言ったところかな?
左半身が失調していたせいで左腕の異常に気が付かなかったみたいだが、お前はこのまま僕の『暗黒空間』に引き込んで倒すッ!」


ズバッ!ズババッ!ズババババババババババババッ!


穴の中に突っ込まれたヴァニラの左腕が先端から次第に裂け始めるッ!ジョニィはこのままヴァニラの全身ごと引き込むつもりだッ!


「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーッッ!!」
(何だと!?この『回転する穴』は…ジョニィ以外の者が入ったら『どうなるのだ』?まさか…私のクリームと『同じ』…同じなのかッ!)

「ジョニィ!離せ貴様アアァァァーーーーッ!!私の空間から出て行けぇーーーーーーッ!!」
「『綱引き』は好きかヴァニラッ!?僕はこう見えて上半身は結構鍛えてるんだぜッ!お前のそのボロ雑巾の様な左腕ではパワー不足だッ!」


(不覚ッ!このヴァニラ・アイスが何たる醜態ッ!『暗黒空間』に隠れてさえいればクリームに敵うスタンドなど無いと過信した、おれ自身の『驕り』ッ!(当然、DIO様は除くのだ)
さっきのジョースターをこの世から『消してやった』という勝利の感覚も、全ておれの『油断』ッ!奴はあえて自らの体をこの世から物理的に『消した』だけに過ぎんッ!
恥ずべきは全ておれの『覚悟』の無さッ!『死』の覚悟ではないッ!
『生きる』覚悟を持って、おれは何としてもジョースターを滅しなければならないのだッ!
おれは絶対にここで死ぬわけにはいかないッ!生きなければならないッ!絶対にだッ!!!)




「全てはDIO様のためだああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」







▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

--- <早朝> GDS刑務所 1階女子監 廊下 ---

「じゃあ、結局ヴァニラ・アイスを逃がしてしまったのですね…」

「あぁ…。最後の最後、奴の凄まじい『信念』が結果的に僕の更に上を行った。
奴の『左腕』を完全に破壊する事は出来たが、結局のところそれだけだった。…クソッ!」




ジョニィと文は現在、女子監の廊下を並んで歩いていた。
蓮子の事を気にして急いで駆け戻ろうとしたジョニィだが、身体のダメージは軽くは無い。
文から受け取ったポーションを飲んで体力と疲労が回復したとはいえ、その傷までが完治するわけではなかった。
致命傷ではないが未だクリームに『削られた』痕が全身に残るジョニィを気遣って、文が無理させないようにしているのだ。
蓮子を襲ったという謎の『襲撃者』と戦っているらしい露伴の加勢に行く為に、二人は一刻も早く外へ脱出しなければならない。

「何をおっしゃいますかジョニィさん!あんな危険な男の戦力を大幅に削っただけでも大したスクープですよ!
それにジョニィさんは少なくとも蓮子さんと私、既に二人の命を救っているのです!それは間違いの無い真実です!」

「それを言うなら僕だって君に助けられたろ?
最初に僕の危機を救ってくれたし、君の背中の『翼』を見て僕は黄金長方形のスケールで回せたんだ。凄く綺麗な翼をしているけど本物なんだろ、ソレ?」


ジョニィは文の背に生える鴉の様な翼(収納式らしい)をまじまじ見て感嘆している。


「あややぁ…///人に褒められるなんて久しぶりな気がします。自慢の翼なんですよ?コレ」

「ふ~ん、『妖怪』ねぇー。」



文が照れ照れしながら自分の翼を擦っている。
本当に自慢の翼なのだろう。聞いてもいないのに朝のお手入れがどうとか、そろそろ生え変わりの時期がどうとか語りだした。
ジョニィは文の自慢大会を適当に聞き流しつつ、自分の興味を隣の『天狗』から、ある『モノ』へと移した。



(……それにしても、この状況はどう考えるべきなんだ?『コレ』は確かにアメリカへ厳重に保管されているはずだ…)




ジョニィは右手を自分の胸にかざしてみる。このエネルギーの鼓動は間違いなく『入り込んでいる』。
かつて自分も『所持』していたのだから感覚で分かるのだ。いつ体内に入ってきた?




…タイミングとしては恐らく、あのヴァニラ・アイスと暗黒の空間内で対峙し合っていた時だ。

あの場での最後の瞬間、ヴァニラは自らの左腕を『強引』に引き千切り、僕から離れた。
そしてとうとう僕の爪弾の継続時間も切れ、ACT3による穴が閉じてしまった。
僕が『穴』の中から現実の空間に弾き飛ばされた時には、ヴァニラはスタンドを操り既に逃亡していた。
(余談だがこの時、文は地面にへたり込んで大泣きしていた。僕が消滅したと思っていたらしい。ちょっぴり嬉しい)


そしてその時は気付かなかったが、あの暗黒空間内に放置されていたヴァニラのデイパックの中から僕の方へ『既に』ッ!『コレ』が引き寄せられていたのだッ!


ジョニィはかつての大統領との『争奪戦』を思い出す。ほんの最近までの出来事であるが、遠い昔の記憶にも思える。



自分の肉体の『脊髄』と『胴体』部分に、凄まじいエネルギー源をジョニィは感じた。











---ピキンッ---



「-----------------ッ!!!!!!!!!!!」




その時ジョニィは背後で文の、息を呑むような気配を感じた。
考えに集中していたジョニィは、背後で文が蒼白な顔でうずくまっている事に気付くのに少しだけ時間がかかった。



「…………?文?」



                                  TO BE CONTINUED…………

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年12月15日 21:48