第037話 いま、会いにゆきます ◆lm7HCqPWZc
「だ、誰…?」
背後の茂みがガサガサと揺れる。
晴子が怯えた様子で表情を強張らせた。
茂みは益々大きく揺れている。
そこから突如として人影が現れた。
「ハルコさん!」
「さ、桜木君…!?」
信じられないと言わんばかりに目を丸くする晴子。
その晴子にいつものニヤケ顔で近づく桜木。
「だっーはっはぁー!!この桜木が来たからにはもう大丈夫。ハルコさん、安心してください」
桜木は手を腰に当てて高らかに笑った。
見ると、桜木の服は所々破れ、血が流れ出ている箇所があった。
「桜木君…まさか私のために危険を冒して…」
「この桜木、ハルコさんのためなら例え火の中水の中、どんな所にだって駆けつけて見せますよ」
「桜木君…」
見詰め合う二人。
どちらからともなく寄り添い、そして抱き合った。
「流川なんかよりよっぽど頼りになるのね」
「この天才とあんなキツネとを比べたら、ルカワが不憫ですよ。はっはっは」
「好きよ、桜木君」
晴子はそう言うと恥ずかしそうに桜木の胸に顔を埋めた。
* * * * *
「―――はッ!?」
多少誇張のある願望を夢見て歩いていた
桜木花道は、気付くと海辺の横を走る道路に出ていた。
「イカンイカン、今は余計な事を考えてる暇は無いぞ。早くハルコさんを見つけねば」
自分を戒める桜木。
今は晴子を見つけた時のシミュレートを繰り返すより、肝心の晴子を見つけ出す事が先だ。
「にしても”好きよ、桜木君”か…。いやぁ。へっへっへ」
妄想とはいえ晴子に言われた「好き」という言葉が心地よく耳に残っていて、桜木は照れくさそうに頭を掻いた。
なんとなく自分の胸の辺りに晴子の移り香があるような気がして、思いっきり深呼吸をしてみる。
当たり前何の匂いもしない。だが桜木はそれで十分満足だった。
「しかしとりあえず海に出て来てみたが、いまいち場所が分からん」
もう少し南下すれば左手方向に菅原神社が見える事も、更に南下していけば平瀬村に行き着く事も、地図を正確に読めない桜木は一切知らない。
目印を求めてここまで歩いて来たのに、労力の割には得るものがあまり無かった。
だんだん考えるのが面倒になり、結局はこの天才は己の直感に任せることにした。
「左…いや右…でも左……だぁーもう面倒臭え!こっちでいい!」
直感を信じて桜木は右を選んだ。それは北へ向かう一本道。
「ハルコさーん、今行きますからねぇー!!」
桜木の頭には晴子の事しか無かった。
果たして桜木は晴子に会えるのかどうか…
【D-1/海岸線の道路/1日目・午前2時30分】
【男子14番 桜木花道@SLAM DUNK】
[状態]:健康
[装備]:モップ@SLAM DUNK
[道具]:支給品一式
[思考]:1.北に向かう
2.晴子を探して守る
3.オヤジをぶん殴る
最終更新:2008年02月11日 22:09