いさ(不知)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 感動詞 ① よくわからないこと、答えかねることをたずねられた時に、返事をあいまいにするための、さしあたっての応答のことば。さあ。ええと。いやなに。どうだか。 ※万葉(8C後)一一・二七一〇「犬上の鳥籠(とこ)の山なる不知也河(いさやがは)不知(いさ)とを聞こせ吾が名告(の)らすな」
※落窪(10C後)一「何の名ぞ、落窪は、と言へば、女いみじくはづかしくて、いさ、といらふ」
② 肯定しがたく承服しがたいことを言われた時に、相手の発言を否定するための応答のことば。「いさとよ」という形をとることの方が多い。いいえでも。だって。→いさとよ ※源氏(1001‐14頃)若紫「人々、いと、かたはら痛し、と思ひて、あなかま、ときこゆ。いさ、見しかば心地のあしさなぐさみき、と宣ひしかばぞかし」
副詞 ① 下に「知らず」の意の語を伴って用いる。さて(わからない)。どうだか(知らない)。→いさや ※古今(905‐914)春上・四二「人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしのかににほひける〈紀貫之〉」
② 下に否定的な表現を伴って用いる。どうも(…できない)。とても(…しがたい)。どうせ(…したところで)。 ※拾遺(1005‐07頃か)恋二・七〇〇「無名のみたつの市とは騒げどもいさまた人をうる由もなし〈柿本人麻呂〉」
③ 「知らず」の意味を含ませて用いる。さあどうだか知らない。わからない。上代、「に」を伴っても用いた。→いさに ※古今(905‐914)恋三・六三〇「人はいさ我はなき名の惜しければ昔も今も知らずとを言はむ〈在原元方〉」
[語誌](1)本来は相手の発言をさえぎる(一)の①のような応答詞であったのだろうが、否定の気持が発展して(一)の②のような、「いな」に近い応答詞となり、また(二)のような副詞となる。
(2)形のよく似た感動詞に、勧誘などを表わす「いざ」があり、「いさ知らず」などは、好んで使われるうちに「いざ知らず」ともいうようになり、「いさ」は「いざ」に混同されるようになる。
広辞苑 感動詞 相手の質問に対する答がわからないとき、あるいは相手の言うことに否定的な気持で軽く受け流そうとするときの、応答の語。さあ。いやなに。 万葉集11「―とを聞こせわが名()らすな」
副詞 (普通「知らず」を伴って)さあ、どうだろうか。 古今和歌集春「人は―心も知らず」
大言海 副詞 〔倭訓栞、いさ「いなト通ヘリ、否ノ義ナリト云ヘリ」萬葉集、二 十一 不言 (イナ)ト言ハムカモ」古寫本ニ、不知ニ作レリト云フ、同、三 十二 不聽 (イナ)ト云ヘド」(不聽許ノ意)此語ハ、淸音ニテ、(次條ノ (イザ)ト混ズベカラズ)いさ知らず、ト熟語トナルベキ語ナリ、サルニ、常ニ(シカ)言馴レテハ、終ニ下略シテ、いさトノミモ云フ、因リテ、 不知 (イサ)ノ字ヲ、直チニ、いさニ用ヰルニ至レリ、足引の山、ぬばたまの夜ナルヲ、足引の(山ノ) 木閒 (コノマ)、ぬばたまの(夜ノ)月、ト云フガ如シ〕
知らずト云フ語ニ冠ラセテ云フ語。いいや、どう()ャやらノ意ヲ成ス。知らずヲ略シテ、いさトノミモ云ヒテ、ナホ、知らずノ意トナル。
枕草子、七、六十八段、なぞなぞ(アハセ)「いさしらず、サラバ()賴マレソ」
濱松中納言物語、二「姬君ナドヲ、いさしらずト、オボメキタマフベキ御事ニアラジ」
古今集、一、春、上「人ハいさ、心モ知らず、古鄕ハ、花ゾ昔ノ、()ニ匂ヒケル」
神功攝政前紀「答曰、 有無 (アルコトナキコト) 不知 (イサ)焉、遂不且有 一レ 神矣」
萬葉集、十一 三十三 狗上 (イヌガミ)ノ、(近江國、犬上郡) 鳥籠 (トコ)ノ山ナル、 不知也 (イサヤ)(カハ)、(序) 不知 (イサ)トヲ(キコ)セ、吾ガ名()ラスナ」(をハ、力ヲ入レテ云フ辭、知ラズト(ノタマ)ヘ、ノ意ナリ)
落窪物語、一「何ノ名ゾ、落窪、ト云ヘバ、女、イミジウ恥カシクテ、いさト(イラ)フ」
不知

検索用附箋:副詞
検索用附箋:感動詞

附箋:副詞 感動詞

最終更新:2024年05月06日 20:50