いね(稲)

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日本国語大辞典 名詞 ① イネ科の一年草。中国西南部からインド東北部の原産と考えられるが、アフリカ説もある。世界各地の水田や畑で栽培される。高さ〇・五~一メートル。茎は根ぎわで多く分枝して株立ちとなり、円柱形で節をもち中空。葉は長さ三〇~六〇センチメートル、幅三~五ミリメートルの線形で、基部は長いさやとなって茎を包む。夏、茎の頂に円錐花序を直立して多数の小花をつける。花は花被がなく六本の雄しべと一本の雌しべから成り、二枚の苞片(ほうへん)(=もみがら)で覆われる。開花は好天日の午前に限られ、昼前のもみがらが少し開く頃に自家受粉し、受粉が終わると雄しべを外に出してまもなく再びもみがらが閉じる。実はもみがらに包まれて熟し、長楕円形となり、皮が種子(=こめ)に密着している。熟果をつけた穂は重みで先端が下垂する。米は飯か粥(かゆ)にたき主食とするほか、酒、みそ、しょうゆの原料や菓子、糊(のり)などに用いる。精米の途中でとれる糠(ぬか)は肥料、飼料やぬかみそ漬けに用い、また、良質の油がとれる。籾(もみ)は詰め物などに、藁(わら)(=茎)は俵、かます、むしろ、なわ、畳の床などを作るのに用いられる。品種、改良種が多く、主として中国の揚子江以南で栽培される長粒で粘り気の少ないインド型と北緯五〇度付近までで栽培される日本型との二大群があり、成熟時期によって早稲(わせ)・中稲(なかて)・晩稲(おくて)に、作付地によって水稲・陸稲に、デンプンの質によって粳(うるち)・糯(もち)に分けられる。元来、水生植物で高温多湿を好み、日本には縄文時代晩期までに中国を経て渡来し、初めは北九州で栽培され、徐々に近畿・東海・関東から東北地方にまで広がったと考えられている。さらに鎌倉時代には本州北端の津軽地方にまで及び、明治以降は北海道でも栽培されるようになった。とみくさたのみたなつものみとしおしねみしねしねいな。《季・秋》 ※万葉(8C後)一四・三四五九「伊禰(イネ)舂(つ)けばかかる我(あ)が手を今夜(こよひ)もか殿の若子(わくご)が取りて歎かむ」
② ①を図案化した紋所。「抱き稲」「対(むか)い稲菱」など。
広辞苑 名詞 イネ科の一年生作物。栽培種は2種。サチバ種は東南アジア起源、現在、世界各地の熱帯・温帯で栽培。グラベリマ種はアフリカ起源、現在はアフリカの一部でわずかに栽培。サチバ種には、(もみ)の丸くて短い日本型(ジャポニカ)、細長いインド型(インディカ)、大粒のジャワ型の3亜種がある。日本への伝来経路は諸説あるが、縄文末期までに渡来したらしい。草丈は、改良種では1メートルを超えない。茎は中空で数個の節がある。葉は長線形で、葉身と葉鞘とから成り互生。夏から秋にかけて出穂する。秋に熟する果実を米といい、食用。日本の農業上、最も重要な作物で、水田に栽培する 水稲 (すいとう)と、畑地に栽培する 陸稲 (りくとう)とがある。成熟の遅速によって 早稲 (わせ) 中稲 (なかて) 晩稲 (おくて)に分け、澱粉の性質によって(うるち)(もち)の2群とする。しね。〈[季]秋〉。 万葉集14「―舂つけば(かか)る吾が手を」
大言海 名詞 (イヒ)()ノ約、 恆山 (クサギ)ヲ鶯 以比禰ト云ヒ、 白英 (ヒヨドリジヤウゴ)(ツグミ) 以比禰ト云フ〕
草ノ名。其實ヲ(コメ)ト云ヒ、我ガ國人ノ、日常食用ノ最トスル穀物ニテ、 瑞穗國 (ミヅホノクニ)ノ精華ナリ。春、種ヲ下シ、夏ニ至リ、苗ヲ分チテ、水田ニ移ス、莖ノ高サ三四尺、葉ハ細ソク長シ、夏季ニ、莖ノ頂ニ花ヲ生ズ、穗ニシテ、長サ七八寸、秋、(ミノ)ル、數十百粒綴リテ、(ノギ)多シ、其()、卽チ、米ナリ。質ニ(ウル)(モチ)(タウボシ)ノ別アリ、又、水稻ト 早稻 (ヲカボ)トアリテ、其熟スルニ、 早稻 (ワセ)(ナカ)() 晚稻 (オクテ)、ノ三等アリ、スベテ、品類極メテ多シ。
神代紀、上 廿 (イネ)
萬葉集、十四 廿 「伊禰()ケバ、(カカ)ル吾ガ手ヲ」
箋注倭名抄、九「稻、以禰」

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附箋:名詞 植物

最終更新:2023年12月06日 21:45