かほ(顔)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 目、口、鼻などのある、頭部の前面。つらおもて ※伊勢物語(10C前)九九「女のかほの下簾(したすだれ)よりほのかに見えければ」 顔・貌
② (比喩的に用いて) 物の表面。また、一部分だけが外に見えているもの。→顔を出す。 ※新井本竹取(9C末‐10C初)「ある人の『月のかほ見るは忌むこと』と制しけれども」
③ ①の状態、様子。
(イ) かおかたちかおだち。容貌。
※万葉(8C後)一四・三四一一「多胡(たご)の嶺に寄せ綱延(は)へて寄すれどもあにくやしづしその可抱(カホ)良きに」
(ロ) 表情。顔つき。顔いろ。 ※竹取(9C末‐10C初)「大臣是を見給て顔は草の葉の色にて居給へり」
※徒然草(1331頃)二三六「物しりぬべき顔したる神官を呼びて」
(ハ) (比喩的に用いて) 様子。態度。 ※古今(905‐914)恋五・七五六「あひにあひて物思ふころの我袖にやどる月さへぬるるかほなる〈伊勢〉」
④ 成員としての人。列座する予定の人。かおぶれ ※評判記・剥野老(1662)吉川大彌「かほ中のしなとやさだめん心の色のあさからぬこといはんかたなし」
⑤ (①は人を見分けられる目立つ部分であるところから) 人によく知られていることや社会上の体面。
(イ) ある人や物を代表する一面。また、なにかにとって代表的な人や事柄。
※新版大東京案内(1929)〈今和次郎〉享楽の東京「歌舞伎座は、なんといっても東京の数ある劇場の顔である」
(ロ) 人によく知られていることによって得られた信用や評判。 ※雑俳・折句大全(1803)「木戸は顔にて通り空腹(ひだ)るい」
(ハ) 体面。面目。名誉。 ※日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉四「馬鹿らしきほど職人の顔(体面)を重んじたる割合に」
(ニ) 一定の地域や仲間の間で勢力や名望のある人。顔役。 ※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉下「職工といったって〈略〉それくらゐの顔(カホ)になれば」
⑥ (数字の5を人の顔に見たてたものか) 「五」の数をいう符丁。
接尾辞 そのような表情、または、そのような様子である意を表わす。この場合、多く「がお」となる。 ※枕(10C終)一〇四「御けしきいとしたりがほなり」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「草むらの虫の声々もよほしかほなるも、いと立ち離れにくき草のもと也」
[語誌](1)上代には、容貌の意でのみ用いられ、顔面の意を表わす語としては、オモテが用いられた。中古になると、カオが、顔面の意をも表わすようになり、オモテと交替した。一方、同じ頃、上代に、頬の意で用いられていたツラも顔面の意で用いられるようになり、貴族はカオ、庶民はツラを用いたと思われる。しかし、中世以降、カオの一般語化に伴い、一般語カオ、卑罵語ツラという対立に変化し、現代に至っている。
(2)(二)の接尾語としての用法は、容貌を表わすカオから生まれたものであるが、鳥や虫の鳴き声、時雨の様子などを擬人化して表わす形容語としても用いられた。
広辞苑 名詞 ①目・鼻・口がある、頭部の前面。つら。また比喩的に、これに形が似た、物の面にもいう。 万葉集9「―()きによりてそ妹はたはれてありける」。
竹取物語「月の―見るは忌むこと」。
「―を洗う」「―を曇らせる」「いい―をする」
顔・貌
②他人に対する影響力のある人。また、その力。知名度。 「彼はこの業界では―だ」
③その集団の代表的な人物。 「日本の―」
④面目。体面。 「―を潰す」
⑤成員としての個々の人。 「―ぶれ」「―がそろう」
⑥(多くは接尾語的に)心・つもりの反映としての、顔の様子。 源氏物語若菜上「ふと心得―にも何かはいらへ聞えさせむ」。
「我が物―」「したり―」
⑦(比喩的に用いて)様子。 「大都会の―」
大言海 名詞 前條ノ (カホ)ノ轉、身體ノ表示ニハ、顏ガ第一ナレバ、移レルナリ、(朝鮮語ニ、鼻ヲかほト云フトゾ)人ヲ表示スルニ、顏ぞろひト云フ、是レナリ〕
(一){顏ノ前面ノ、眉、目、鼻、口ノアル處。オモオモテツラ
字鏡 廿六 「美婦、 加保與支 (カホヨキ)女」
倭名抄、三「顏、眉目閒也、加保」
(二){物ノ(オモテ)表面 竹取物語「月ノかほ見ルハ忌ムコトト、制シケレドモ」
(三)人ヲ表示スルニ云フ語。 「顏ガ揃ウ」 顏觸 (カホブレ) 顏寄 (カホヨセ)
(四)ミエホマレ面目 「顏ガ立ツ」顏ガツブルル」顏役」
(五){其(フリ) 顏色 (カホツキ)ヲスルコト。オモモチ。(熟語ニノミ用ヰラル) 「ソ知ラヌ顏」シタリ顏」物識リ顏」 主顏 (アルジガホ)」心得顏」

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最終更新:2024年05月08日 20:15