辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
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日本国語大辞典 | 名詞 |
もと、「流れの上流のほう」をいった語か。または、「ひと続きのものの初め」をさしていった語か。後には、「土地の高い所」「ある地域で中央に近い所」「人間関係における長上」の意などを示すように転じた。うえ。かん。⇔下(しも)。 [一] ひと続きのものの初め。 ① 川の流れの初めのほう。上流。かわかみ。 |
※平家(13C前)四「馬や人にせかれて、さばかり早き宇治河の水は、かみにぞ湛へたる」 | 上 |
② 時間的に古い方。いにしえ。むかし。上代。 | ※千載(1187)序「かみ正暦のころほひより、下文治の今に至るまでのやまと歌を、撰び奉るべき仰せごとなむありける」 | |||
③ いくつかに区分されたものの初めの部分。冒頭。前の方。「上の句」「上の巻」「上の十日」など。 | ※伊勢物語(10C前)九「かきつばたといふ五文字を句のかみにすゑて旅の心をよめ」 | |||
④ 文章で前に述べた部分。 | ※経済小学家政要旨(1876)〈永峰秀樹訳〉三「吾が上に揚げたる法に従ふて雇人を使はば」 | |||
⑤ 和歌の上の句。 | ※後拾遺(1086)雑・一〇一三・詞書「世の中を何にたとへむといふ古ごとをかみにおきてあまたよみ侍りけるに」 | |||
[二] 位置の高い所。 ① 高い所。うえ。 |
※古事記(712)上「上(かみ)は高天の原を光し、下は葦原の中つ国を光す神、是に有り」 | |||
② 身体の腰から上の部分。また、そこに着けるもの。 | ※名語記(1275)五「肩より、かみ」 | |||
[三] 地位の高い人。長上。目上。おかみ。 ① 天皇をさしていう。 |
※古事記(712)中「吾は兄なれども上(かみ)と為るべからず。是を以ちて汝命上(かみ)と為りて、天の下治らしめせ」 | |||
② 皇后、皇族などをさしていう。 | ※たまきはる(1219)「身の装束、行器(ほかゐ)などまで、みなかみより御沙汰あり」 | |||
③ 将軍をさしていう。 | ※吾妻鏡‐建暦三年(1213)四月二七日「義盛報申云、於 レ 上全不 レ 存 レ 恨、相州所為、傍若無人之間」 | |||
④ 一般に、高位の人。上に立つ人。「なか」「しも」に対していう。 | ※源氏(1001‐14頃)帚木「かみはしもにたすけられ、しもはかみになびきて事ひろきにゆづろふらん」 | |||
⑤ 政府、官庁などに対する尊称。 | ※浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)三熊野「盗賊と云かけ分明ならぬ訴訟、且は上を掠むる越度(おちど)」 | |||
⑥ 主人。主君。 |
※狂言記・角水(1660)「それにござりませう。かみへ申ませう」 ※浮世草子・西鶴織留(1694)六「さる御所にちかふめされし鶯の局と申せし人、〈略〉上(カミ)より御願ひ事ありて、北野の神へ御代参申されての下向に」 |
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⑦ 親分。 | ※仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)下「此男のかみも、ゑひのすけなりけり」 | |||
⑧ 近世以後、人妻に対する軽い敬称。また、茶屋、料理屋などの女主人。おかみさん。 | ※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)一「Cami(カミ)、ヲウエ、カミサマ」 | |||
⑨ 年上の人。また、年上であること。 | ※源氏(1001‐14頃)若菜下「またちいさきななつよりかみのはみな殿上せさせたまふ」 | |||
[四] 皇居の存在する地域、地方、方角。 ① 都。京都。 |
※浮世草子・好色一代男(1682)五「其後は上(カミ)へものぼらぬか」 | |||
② (上方(かみがた)の略) 京阪地方。近畿地方。 | ※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)三「あのをくりと申は、てんよりもふり人のしそんなれば、かみのみやこに、あひかはらず、おくのみやことかしづき申」 | |||
③ 近畿地方の中で、大阪から京都をさしていう。 | ※浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂「佐田の天神前にて上(カミ)から来るかごが、替ではないか、と詞かくれば」 | |||
④ 京都の中で、内裏のある北部をいう。「上京(かみぎょう)」「上賀茂神社」など。また、京都のある基準点より以北をさしていう。 | ※蜻蛉(974頃)上「おなじつごもりに、あるところに、おなじやうにて、まうでけり。ふたはさみづつ、下のに、〈略〉かみのに」 | |||
⑤ 都から離れている地域でも、その内で都に近い所。 | 「上毛野(かみつけの)」「上総(かみつふさ)」 | |||
[五] 程度や等級、場所などが上位であること。 ① 人物や品物がすぐれていること。また、そのさま。 |
※浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)五「此鑓が直打物(ねうちもの)。何(なん)と上(かミ)でござりませうが」 | |||
② 等級などが上位であること。 | ※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉九「お職から上等(カミ)八枚中等(なか)九名が残らず呼出し」 | |||
③ 上位の座席。上座(かみざ)。 | ※栄花(1028‐92頃)若ばえ「母屋は南をかみにし、廂は西をかみにしたり」 | |||
④ (台所、勝手などを下(しも)というのに対して) 客間、座敷、客席などの称。 | ※浮世草子・好色一代男(1682)六「上(カミ)する女に、心をあはせ、小座敷に入て語りぬ」 | |||
[六] (歌舞伎、演劇などで) 「かみて(上手)」の略。→かみのかた(方) | ||||
広辞苑 | 名詞 |
➊「うえ」が本来は表面を意味するのに対して、一続きのものの始原を指す語。↔しも。 ①(空間的に)高い所。 ㋐うえ。 |
伊勢物語「この山の―にありといふ布引の滝、見に上らん」 | 上 |
㋑川の上流。川上。 |
万葉集1「―つ瀬に鵜川を立ち下つ瀬に |
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㋒身体または衣服の、腰または一定の位置より上の部分。 | 「―半身」 | |||
㋓(台所・勝手などに対して)座敷。 | 好色一代女2「―する男、お床は二階へと呼び立つれば」 | |||
②(時間的にまたは順序で)初めの方。 ㋐昔。 |
千載和歌集序「―正暦のころほひより、下文治の今に至るまで」 | |||
㋑月の上旬。 | 「―の十日」 | |||
㋒ある期間をいくつかに分けた最初の方。 | 「―半期」 | |||
㋓和歌の初めの方。主にその前半三句。上の句。 |
後拾遺和歌集雑「世の中を何にたとへむといふふるごとを―に置きて」 | |||
➋身分・地位などが高いこと。また、そのような人。 ①天皇の尊称。おかみ。 |
「―御一人」 | |||
②身分の高い人。 | 源氏物語帚木「―は下に助けられ、下は―になびきて」 | |||
③年上。年長者。 | 源氏物語若菜下「七つより―のは、皆殿上せさせ給ふ」 | |||
④(多く「お」を冠して)政府。朝廷。 | ||||
⑤主君。主人。かしら。長。 | ||||
⑥人の妻の敬称。 | 「お―さん」 | |||
⑦ |
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⑧皇居に近い方。 ㋐京都の町で、北の方。 |
「―京」 | |||
㋑ |
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大言海 | 名詞 |
(一){高キ處。ウヘ( |
宇津保物語、樓上、上 六十五 「かみハ空ヲ響カシ、しもハ地ノ底ヲ搖ガス」 | 上 |
(二){高ク貴キコト。 |
源、二、帚木
九
「かみハ下ニ助ケラレ、下ハかみニ靡キテ」 「上ノ好ム所、下コレニ傚フ」 |
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(三){ |
宇津保物語、俊蔭 八 「木、云云、三分ニワカチテ、かみノ品ハ、云云、中ノ品ハ、云云、しもノ品ハ、云云」(上ノ卷) | |||
(四){天子ノ尊稱。ウヘ。 |
古事記、中(神武)
十四
「 |
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(五) |
吾妻鏡、二十一、建曆三年四月廿七日「和田義盛、 |
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(六)皇居ニ近キ方。 |
「 |
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(七){ |
源、三十四、若菜、下
廿四
「七ツヨリかみノハ、皆、殿上セサセタマフ」 「子ノかみ」(長子) |
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(八){ミナモト。ミナカミ。源 |
伊勢物語、八十七段「瀧ノかみニ、 「川ノ上」 |
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(九) |
千載集、序「かみ正曆ノ頃ホヒヨリ、しも文治ノ今ニ至ルマデ」 「 |
|||
(十) |
浮世風呂(文化、三馬)二編、上「かみデ云フ、コロ煎リ」 「かみヘノボル」 |
検索用附箋:名詞名称