しも(下)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 もと、「流れの下流のほう」をいった語か。または、「ひと続きのものの末」をさしていった語か。後には「ものの低い部分」「地位や価値の低いもの」「中心から離れた地域」などの意にもいう。した。⇔上(かみ)
[ 一 ] ひと続きのものの末の方。
① 川の、川口に近いほう。下流。川下。
古今和歌集(905‐914)離別・三九六「あかずしてわかるる涙たきにそふ水まさるとやしもはみゆらん〈兼芸〉」
② 和歌などの後半、または、終わりの部分。また、物語などの後半部分。→下(しも)の句。 天徳四年内裏歌合(960)「右歌のかみしものくのかみに、おなじもじぞあめる」
③ 時の移り変わりを水の流れに見立てて、現在に近い方をいう。 千載和歌集(1187)序「かみ正暦のころほひより、しも文治のいまにいたるまでのやまとうたを、えらびたてまつるべきおほせ事なんありける」
④ 月の下旬。→下(しも)の十日
⑤ ある時点またはある箇所からあとの部分。以下。次。 本百法顕幽抄平安中期点(900頃)「答曰下(しも)は是れ後を生す文なり」
⑥ ( ①の意から ) 川の下流に近い開けた地方。 明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎〉憲法発布と日清戦争「夏祭に下(シモ)(東京前橋等すべて川しもの開化した地方を指す言葉)の方から来た射的の的は」
[ 二 ] 高い部分に対して低い部分。
① 低い所。下部。下方。した
蜻蛉日記(974頃)中「夜うちふけて外(と)の方を見出だしたれば、堂はたかくて、しもは谷と見えたり」
② 体の腰より下の部分。特に、陰部、尻(しり)などをいう。 東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉附録「瘡守(かさもり)稲荷とも云ひ、腫物だとか下(シモ)の方の病に御利益が有る」
③ 袴(はかま)。肩衣(かたぎぬ)を上(かみ)というのに対する。 虎明本狂言・二人袴(室町末‐近世初)「下はあれども上がなひ、いまからかりにやってもおそからふず、それも大事なひ、しも斗きせてやらふ」
④ ⇒しも(下)に居る
⑤ ( 客間、座敷、客席などを上(かみ)というのに対して ) 台所、勝手などの称。
⑥ 大小便。
⑦ 月経。 俚言集覧(1797頃)「下(シモ) 糞を云〈略〉又月水の下と云下を見るなど云り」
⑧ 下品なこと。みだらなこと。しもがかり。 ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉「Gin が利いて来る。血が頭へ上る。話が下(シモ)へ下って来る」
[ 三 ] 価値の低い方。劣っている方。
① 価値、能力などが劣っていること。
古今和歌集(905‐914)仮名序「人丸は赤人がかみにたたむ事かたく、赤人は人まろがしもにたたむことかたくなむありける」
② 官位、身分の低いもの。臣下。人民。した 古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇三「身はしもながら ことの葉を あまつそらまで きこえあげ〈壬生忠岑〉」
③ 雇われている者。召使い。 枕草子(10C終)一〇四「しもなどとりつぎまゐる程、これはたおほやけしう唐(から)めきてをかし」
④ 貴人の座から離れた座席。下座。 大和物語(947‐957頃)一四五「上達部(かむだちめ)、殿上人、みこたちあまたさぶらひたまうければ、しもに遠くさぶらふ」
⑤ 貴人の座から離れた建物や部屋。入口や台所に近い部屋。 宇津保物語(970‐999頃)蔵開下「藤壺(ふぢつぼ)は踏歌のよりはしもにおはしませば、御せうそこも聞き、きみたちも参り給ふ」
[ 四 ] 中心から離れた地方をいう。御所から離れた地。また、都から離れた地方。
① 下京(しもぎょう)のこと。
今昔物語集(1120頃か)二七「今昔、或る人、方違(かたたが)へに下(しもの)辺也ける所に行たりけるに」
② 京都から見て、大坂をさしていう語。 浮世草子・傾城禁短気(1711)五「太夫さまに御目にかかり下(シモ)へ参る段申し上げたれば」
③ 中国・四国・九州などの西国地方。「日葡辞書」「ロドリゲス日本大文典」などでは、とくに九州地方に限定して用いている。 日葡辞書(1603‐04)「Ximo(シモ)〈訳〉下方の部分。また、西のこのあたりの島々、あるいは諸国」
[ 五 ] =しもて(下手)② 虎明本狂言・鈍太郎(室町末‐近世初)「わきざになをり、下京はかみ、上京は下になをる」
広辞苑 名詞 ➊一つづきの事や物の、上部または初めから隔たった部分。「かみ」に対する。
①(空間的に)高い所に対して低い所。
㋐下部。下方。した
源氏物語若紫「ただこのつづらをりの―に」
㋑川の下流。川下。 万葉集2「飛ぶ鳥の 飛鳥 (あすか)の河の上つ瀬に生ふる玉藻は―つ瀬に流れ触らばふ」
㋒身体の腰部より下の部分。特に陰部を指すこともある。 「―半身に火傷を負う」「―の病」
㋓転じて、糞。大小便。また、月経。 俚言集覧「月水の―と云、―を見るなどいへり」。
「―(ごえ)
②(時間的に、または順序で)後の方。終り。末。
㋐近代。現代。
千載和歌集序「上正暦のころほひより、―文治の今に至るまで」
㋑月の下旬。 源順集「長月の―の十日に今二日おきての事なり」
㋒ある期間を二つに分けた後の方。 「―半期」
㋓和歌の終りの方。主に後半の二句。下の句。
➋階級の劣っていること。また、そのような人。
①官位・身分の卑しいもの。
源氏物語帚木「―のきざみといふきはになれば、殊に耳立たずかし」
②年下。年少者。
③(君主・朝廷に対して)臣下。人民。 平家物語3「―として上に逆ふること、あに人臣の礼たらんや」
④(主人・長官などに対して)部下・雇人。 源氏物語玉鬘「この頼もし人なる介、弓矢もちたる人二人、さては―なる者、童など三四人…とぞある」。
浮世草子、御前義経記「わざと―に引下げられ、小童なみの草履をつかみ」。
「―使い」
⑤貴人の座からはなれたところ。下座。 源氏物語空蟬「(ゆか)の―に二人ばかりぞふしたる」
⑥宮中や貴人の家などで女房たちの詰めている(つぼね) 源氏物語帚木「―に湯におりて、只今まゐらむと侍り」
⑦京からはなれた地方。特に西国地方。いなか。地方。 浮世草子、御前義経記「是れをだに見出しなば早速―へ(くだ)るべし」
内裏 (だいり)からはなれたところ。南。 浮世草子、好色産毛「この―よりの伽羅のあぶらや」
大言海 名詞 後本 (シリモト)ノ約略カ、又、(シリ)()ノ略カ〕
(一){(カミ)ニ反シテ、低キ方。シタ
古事記、下 廿三 (允恭)長歌「初瀨ノ川ノ、上ツ瀨ニ、 齋杭 (イグヒ)ヲ打チ、斯毛ツ瀨ニ、眞杭ヲ打チ」
枕草子、四、三十九段「帽額ノしもハ、タダ、少シゾアル」
北山抄、二、八月十五日「辨少納言、起座立小板敷(シモニ)
(二)末。後。次。終リ。 「しもノ句」しもニ記ス」
(三){卑シキコト。劣リタルコト。(人、物、ノ階級ニ) 伊勢物語、八十二段「カミ、ナカ、しも、皆、歌詠ミケリ」
土佐日記、十二月廿四日「在リト在ルカミ、しも、童マデ、醉ヒ()レテ」
(四){君主、朝廷、ナドニ對シテ、臣下、人民。 源、二、帚木(カミ)ハしもニ助ケラレ、しもハ上ニ靡キテ」
「上ニ傚フしも」
(五){奴婢ノ類ノ、卑シク、召仕ハルルモノ。 「しも人」しも(ワラハ)」しも仕ヘ」しも(ヲトコ)

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最終更新:2024年10月20日 22:29