くも(雲)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 大気中の水蒸気が冷却、凝結し、微細な水滴や氷片の大集団となって空中に浮游しているもの。形によって巻雲、巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、層積雲、層雲、乱層雲、積雲、積乱雲の一〇種に分類され、高度によって上層雲、中層雲、下層雲に分けられる。 古事記(712)中・歌謡「畝傍山(うねびやま) 昼は久毛(クモ)と居(ゐ) 夕されば 風吹かむとそ 木の葉さやげる」
② ( ①が空にかかっているさまに似ているところから ) ①にたとえていう。
(イ) 一面にひろがって霞んだりたなびいたりしているもの。
夫木和歌抄(1310頃)一九「思ふ人心隔てぬかひもなし桜の雲の八重の遠方(をちかた)〈藤原定家〉」
(ロ) 心の晴れないこと。 金葉和歌集(1124‐27)雑上・五九三「何か思ふ春の嵐に雲晴れてさやけき影は君のみぞ見む〈周防内侍〉」
③ ( 雲の形は常に変化し、定めないところから ) 頼みがたいこと、あてにならないこと、またあとかたのないことにたとえる。→雲を当て
④ ①は高所にあるところからたとえていう。
(イ) きわめて遠い場所や高い場所。また、天、空。
浄瑠璃・曾我五人兄弟(1699頃)兵者揃へ「鈴鹿の鬼神退治の時、雲を攀(よ)ぢたる旗の上」
(ロ) きわめて高い地位、階級。→雲の上人(うえびと) 宇津保物語(970‐999頃)楼上下「かねてより雲かかりけるさくら花むべこそ末の小高かりけれ」
(ハ) 程度が高く、及びもつかないもの。現実を離れたもの。→雲の上
⑤ 死人の魂や火葬の煙を①に見たてていう。また、死人の魂は昇天して「雲隠(くもがく)る」とも「天翔(あまがけ)る」ともいうのに基づく。 日本書紀(720)斉明四年五月・歌謡「今城なる小丘(をむれ)が上に倶謨(クモ)だにも著(しる)くし立たば何か歎かむ」
⑥ 京、大坂から漉(す)き出す紙をいう女房詞。 御湯殿上日記‐長享元年(1487)一〇月一日「ひんかしのとうゐんとのより御こふ、くも一御ふた、文にそひてまいる」
⑦ ①をかたどった模様。 たまきはる(1219)「雲つけたるひとへなど重ねて着たりき」
⑧ 紋所の名。一つ雲、降り雲、三つ重ね雲などがある。
⑨ ( 煙を①に見立てて ) タバコをいう、大工・てきや・盗人仲間の隠語。 新ぱん普請方おどけ替詞(1818‐30頃か)「たばこを、くも」
広辞苑 名詞 (「籠もる」と同語源か)
①空気中の水分が凝結して微細な水滴または氷晶の群となり、高く空に浮いているもの。→ 雲級 (うんきゅう)
万葉集1「三輪山をしかも隠すか―だにも(こころ)あらなも隠さふべしや」
②雲のように一面になびいて見えるもの。 「花の―」
③極めて遠い場所、高い場所。また、高い階級。 「―の上」
④行動・所在が確かでない物事のたとえ。 「―をつかむような話」
⑤心の晴れないことにたとえていう。 新後撰和歌集釈教「暗き夜の迷ひの―の晴れぬれば」
⑥火葬の煙をたとえていう。 新古今和歌集哀傷「あはれ君いかなる野辺の煙にて空しき空の―となりけむ」
⑦紋所の名。浮雲をかたどったもの。
大言海 名詞 (クモ)る義ナリト云フ(かくむ、かこむ。くくもる、くこもる)(クモ)るト云フモ、雲ヲ活用セシメタル語ナリ、沖繩ニテ、くむ、朝鮮ニテ、くらむ〕
(一){空氣中ノ水蒸氣ノ、凝リテ、形ヲナシ、空中ノ 若干 (ソクバク)高キ處ニ、浮ビ漂フモノ。
神代紀、上 三十六 「大蛇所居之上、常有 雲氣 (クモ)
允恭紀、八年二月「吾ガ 夫子 (セコ)ガ、來ベキ(ヨヒ)ナリ、佐瑳ガ()ノ、 區茂 (クモ)ノオコナヒ、 今夜著 (コヨヒシル)シモ」(ささがねノ條ヲ見ヨ)
(二){雲ノ(カタ)ハ、種種ニ見ユルニ因リテ、種種ナル物ニ見立テテ云フ。 「雲ノ峯」雲ノ八重山」雲ノ林」雲ノ波」雲ノ 水脈 (ミヲ)」雲ノ(シガラミ)」雲ノ(マガキ)」雲ノ(トザシ)」雲ノ衣」雲ノ袖」雲ノ(トバリ)」花ノ雲」櫻ノ雲」
(三){死セル(タマ)。魂ハ、昇リテ、 雲隱 (クモガク)る、 天翔 (アマガケ)るト云フニ因リテ云フ。 後撰集、十六、雜、二「思ヒ出デテ、問フ言ノ葉ヲ、誰レ見マシ、身ノ白雲ニ、ナリナマシカバ」
新勅撰集、十八、雜、三、貫之「昨日マデ、會イ見シ人ノ、今日ナキハ、山ノ雲トゾ、タナビキニケル」
新千載集、十九、哀傷「程モナク、雲トナリヌル、君ナレド、昔ノ夢ノ、心地コソスレ」
(四)晴レヌコト。 (サハリ)障礙 新後撰集、九、釋敎「身ヲ去ラヌ、心ノ月ニ、雲晴レテ、イツカ誠ノ、カゲモ見ルベキ」
「心ノ雲」迷ヒノ雲」
(五)定メナキコト。(アト)ナキコト。 謠曲、咸陽宮「思立ツ、(アシタ)ノ雲ノ旅衣」
「雲トナル」雲ヲ(ツカ)ムヤウ」 雲水 (クモミヅ)
(六){ (アメ) (ソラ) 虛空 (コクウ)
靑雲 (アヲクモ)ト云フモ、 蒼天 (アヲゾラ)ナリ。
菅家萬葉集、下「天ノ原、遙遙トノミ、見ユルカナ、雲ノ(ハタテ)モ、色濃カリケリ」
曾丹集「アマタノ言ノ葉ノ中ニ、雲ノ聲ノ 空言 (ソラゴト)見エズ」
「雲ニ飛ブ藥」(其條ヲ見ヨ)

検索用附箋:名詞天文

附箋:名詞 天文

最終更新:2024年11月17日 21:58