しか(牡鹿)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① ( 古く、「女鹿(めか)」に対し雄じかを「夫鹿(せか)」と呼び、それが変化したものという ) シカ科に属する哺乳類の総称。体はほっそりとし、四肢が細長く、尾は短い。ふつう雄の頭部には樹枝状の枝角があり、毎年基部から落ちる。森林や草原にすみ、木や草の葉・地衣などを食べる。ニホンジカ・トナカイ・ジャコウジカ・キョン・キバノロ・ノロなどの種類がある。日本では特にニホンジカをさしていう。かせぎかのしし。かかしし。《 季語・秋 》 日本書紀(720)仁徳三八年七月(前田本訓)「其(かの)苞苴は何の物そ。対へて言はく、牡鹿(シカ)なり。問ひたまはく、何処(いつこ)の鹿(シカ)そ」 鹿
② ( 揚代が一六匁のとき、四四十六の「四四」を「しし(鹿)」にこじつけ、「鹿恋(かこい)」の字を当てることがあるところから ) 上方で太夫・天神につぐ遊女の階級、「囲(かこい)」の異称。 浮世草子・好色二代男(1684)五「我を見しらぬ鹿(シカ)にこがれ」
③ 独活(うど)の生長して葉の伸び出たもの。鹿がこれを食うと角が落ちると俗にいう。 歌謡・閑吟集(1518)「なをつまば、さはにねぜりや、みねにいたどり、しかのたちかくれ」
[語誌]( 1 )①は古代からの食用狩猟獣で、猪と共に肉を意味する「しし」の語で呼ばれた。猪と区別して「かのしし」と呼び、また「かせぎ」ともいう。これらに共通する「か」が、鹿を意味する基本的な語のようだが、「しか」と「か」の関係は明らかではない。
( 2 )上代の文献からしばしば登場するが、特に和歌では秋の交尾期の牡の声が情趣あるものとされ、「万葉集」以来萩、紅葉等の景物とも組み合わされて多く詠まれた。鹿猟の一種「照射(ともし)」も平安後期以降、夏の景物として和歌の題材となった。なお、藤原氏の氏神である春日社が、神の使いとして尊重したことも、鹿と日本文化とを関係深いものとした。
広辞苑 名詞 (「めか(女鹿)」に対し牡鹿をいうとも)
①ウシ目(偶蹄類)シカ科のニホンジカ。体長一・五メートルほどだが、北のものほど大きい。角は牡のみにあり、成長したものでは四〇センチメートルほど、毎年生えかわる。アジア東部に広く分布し、日本では北海道から沖縄まで生息するが、いくつかの亜種、または種に分けることもある。夏は褐色の地に白斑があるが、冬は一様に灰褐色となる。草食。神の使いとされ、神社に飼われることもある。秋、牝鹿を呼ぶ牡鹿の声は、詩歌に多く詠まれる。なお、シカ科の哺乳類には約四〇種があり、アフリカ以外の世界各地に分布、オーストラリアや、ニュー-ジーランドには移入されている。ししかせぎかのしし。〈[季]秋〉。
常陸風土記「葦原の―は、其の味(くさ)れるごとし」 鹿
(かこい)女郎のこと。揚代が一六文であったから 四四 (しし)と呼び、「鹿」の字を当てたものという。 色道大鏡「太夫を松として、天神を梅とし、囲を―とせり」
独活 (うど)の生長して、葉の伸び出たもの。鹿がこれを食うと角が落ちると言われていた。 閑吟集「葉をつまば、沢にねぜりや、峰にいたどり、―のたちかくれ」
④「はなしか(咄家)」の略。落語家。
大言海 名詞 夫鹿 (セカ)ノ轉、 女鹿 (メカ)ニ對ス、かせぎト云フモ、 鹿夫 (カセ)(ギミ)ナリト云フ、一說ニ、其(ツノ)(カセ)()ニ似タレバ名トスト云フ。せうが、めうがト、同趣(か、をしか、さをしか、見合ハスベシ)〕
獸ノ名、本名、 鹿 ()ナリ、しかト云フハ、古クハ()ノ名ニテ、()ヲめかト云ヘリ、後世ハ牝、牡ニ通ジテ、しかト云フ。山ニ棲ム、牡ハ形、馬ヨリ小サク、犬ヨリ大ナリ、背ノ毛色、赤クシテ、黃ヲ帶ビ、小サク白キ斑アリテ、美シ、四時ニ、毛色ヲ變フ、雙角アリテ、枝、多ク、年年、夏ニ落チテ、再ビ生ズ、上齒ナシ。牝ハ、形、牡ヨリ小サク、角ナク、斑ナクシテ、白毛、雜リテ、上齒アリ。角、皮、皆、用、多ク、肉モ食フベシ。カセギカノシシ
仁德紀、三十八年七月「自兔餓野、有鹿鳴、云云、當是夕而鹿不鳴、其何由焉、云云、天皇令膳夫以問曰、其苞苴何物也、對言、 牡鹿 (シカ)也」
萬葉集、十 四十 「ナニ 牡鹿 (シカ)ノ、ワビ鳴キスナル、(ケダ)シクモ、秋野ノ萩ヤ、(シゲ)ク散ルラシ」
同、四 十四 「夏野行ク、 小牡鹿 (ヲシカ)ノ角ノ、ツカノ()モ、妹ガ心ヲ、忘レテ思ヘヤ」
同、十 三十九 「コノ頃ノ、秋ノ朝ケニ、霧ガクレ、(ツマ)ヨブ 雄鹿 (シカ)ノ、音ノハルケサ」
同、同 三十四 「奧山ニ、住ムテフ 男鹿 (シカ)ノ、 初夜 (ヨヒ)サラズ、妻トフ萩ノ、散ラマク惜シモ」
歌ニ()ムハ、鳴ク聲ヲ()デテノ事ニテ、スベテ皆、牡鹿ノ事ヲ云ヘリ。(牝鹿ハ、鳴カズ)
萬葉集、八 四十八 「宇陀ノ野ノ、秋萩シヌギ、鳴ク鹿モ、妻ニ戀フラク、我レニハマサジ」
同卷 四十九 「秋ノ野ヲ、朝ユク鹿ノ、跡モナク、思ヒシ君ニ、アヘル今夜カ」
同、十二 廿八 紫草 (ムラサキ)ヲ、草トワケワケ、伏ス鹿ノ、野ハ異ニシテ、心ハ同ジ」
同、八 三十一 (ユフ)サレバ、小倉ノ山ニ、鳴ク鹿ノ、今夜ハ鳴カズ、イネニケラシモ」
同卷 三十八 「秋萩ノ、散リノマガヒニ、呼ビタテテ、鳴クナル鹿ノ、音ノハルケサ」
三十九 「フナハリノ、猪飼ノ山ニ、伏ス鹿ノ、(ツマ)呼ブ音ヲ、聞クガトモシサ」
牡鹿

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最終更新:2024年10月05日 17:09