つ(之)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助詞 〘格助〙 体言、または体言に準ずるものを承け、その体言が下の体言に対して修飾の関係に立つことを示す。 ※古事記(712)中「浜都(ツ)千鳥 浜よは行かず」
※万葉(8C後)一八・四〇九六「大伴の遠追(ツ)神祖(かむおや)の奥津城はしるく標(しめ)立て人の知るべく」
※更級日記(1059頃)「春ごろ、のどやかなる夕つかた」
[語誌](1)同類の格助詞「の」「が」に比べて用法が狭く、もっぱら連体関係を表示するのみである。その連体関係も、(イ)時間・場所(「夕つ方」「庭つ鳥」)と(ロ)属性(「醜(しこ)つ翁」)の二種類にほぼ限られている。また、「の」「が」が、変遷の過程で主格表示の用法を獲得しながら、現在もなお用いられているのに対して、「つ」は中古以降は複合語の構成要素として認められるにすぎない。現代では「まつげ」(目つ毛)「やつこ」(家つ子)のように一語化したかたちで残る。「つ」の濁音化した形「づ」(「己づから」)および、その音交替形と見られる「だ」(「木(く)だ物」「毛だ物」)はいずれも、語構成要素として用いられるが、これらを含む語は少ない。
(2)次の例によれば濁音化した場合もあったと思われる。「続日本紀‐天平一五年五月・歌謡」の「天豆(ヅ)神 御孫(みま)の命の 取り持ちて」、「十巻本和名抄‐一」の「地神 周易云地神曰祇〈巨支反日本紀私記云久邇豆夜之路〉」など。
広辞苑 助詞 ➊(格助詞)体言と体言を「の」の関係で結ぶ働きをする語。多く場所を示す名詞の後に付き、「」よりも用法が狭い。上代の文献に見え、平安時代には「昼―方」「奥―方」と、複合語の中で見られるだけとなる。 「天―神」「()―毛」「はじめ―(かた)
➋(接続助詞)(文語完了の助動詞「」から)動詞の連用形に付く。動作の並行・継起することを表す。前が撥音のときは「づ」となる。
①(「…つ…つ」の形で)…たり…たり。
太平記6「追つ―返し―同士軍をぞしたりける」。
浄瑠璃、心中天の網島「抜け―隠れ―なされても」。
「組んづほぐれつ」
②(二つの動作・作用が同時に行われる時に、従属的な方の動作・作用に付ける)…ながら。 方丈記「苦しむ時は休め―、まめなれば使ふ」
③…たりなどして。 浄瑠璃、淀鯉出世滝徳「作病起して振つて見―、色々飽かるる工面して」
大言海 天爾遠波 第一類ノ天爾波。名詞ト名詞トノ係屬ヲ示スモノ。意、ニ同ジクシテ、用法古シ。多ク借字シテ、津ト記ス。 神代紀、下「アマサカル、ヒナつメノ、イ渡ラス瀨戶」
「天津風」國津神」內つ國」時つ風」沖つ風」下つ方」晝つ方」
又、濁音ニ用ヰラレタリ。
續紀、十五、天平十五年五月、大御歌「阿麻()可未」
倭名抄、二神靈類「久爾()加三」

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最終更新:2024年05月10日 20:25