つく(着・附・付・就・即(他動詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 [ 一 ] あるものと他のものとのすきまをなくす。離れない状態にする。
① 接触させる。また、触れそうなほど近づける。
大日経義釈延久承保点(1074)一〇「右手を舒べ右頬に託(ツケ)て、稍し頭を側けて手に就(ツケヨ)」
平家物語(13C前)七「かうべを地につけ、涙をながいて申けるは」
付・着・就・即
② くっついて離れない状態にする。付着させる。とりつける。また、ある物に添える。 日本書紀(720)白雉四年・歌謡「鉗(かなき)都該(ツケ) あが飼ふ駒は 引出(ひきで)せず」
竹取物語(9C末‐10C初)「此たまの枝に文ぞつけたりける」
続俳諧師(1909)〈高浜虚子〉三〇「お昼の弁当にはお肴か肉を附(ツ)けないと機嫌が悪いのさ」
③ よごれ、傷、しるしなどのあとを残す。 枕草子(10C終)七五「ありがたきもの 物語、集など書き写すに、本に墨つけぬ」
源氏物語(1001‐14頃)絵合「いつはりて玉の枝にきずをつけたるをあやまちとなす」
④ 色が残るように塗る。塗りつける。また、薬などを塗る。 落窪物語(10C後)二「おもては白き物つけ化粧したるやうにて白う」
徒然草(1331頃)九六「めなもみといふ草あり。くちばみにさされたる人、かの草をもみて付(つけ)ぬれば、則いゆとなん」
⑤ 書いて残しておく。しるす。書きつける。 万葉集(8C後)二〇・四三六六「常陸さし行かむ雁もがあが恋を記して都祁(ツケ)て妹に知らせむ」
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉八「その用心にゃアめんどうだが日記にかぎるよ。〈略〉考へながら記(ツケ)てをかう」
⑥ 身にまとう。身に帯びる。 万葉集(8C後)三・三三六「しらぬひ筑紫の綿は身に著(つけ)ていまだは着ねどあたたけく見ゆ」
大鏡(12C前)三「正月一日つけさせ給ふべき魚袋のそこなはれたりければ」
⑦ 連歌、俳諧で、前の句にうまく連関させて、句を作り添える。 大和物語(947‐957頃)一二八「わたつみのなかにぞ立てるさを鹿は とて末をつけさするに、秋の山辺やそこに見ゆらむ とぞつけたりける」
⑧ 楽器や声を他と合わせる。合奏、唱和する。 梁塵秘抄口伝集(12C後)一〇「広言、康頼、わが足柄謡ひしにつけしを」
⑨ ( 「みそをつける」の略 ) 失敗する。 浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)一「いけもせぬ声色、置きにしろ。南無三宝又付けた」
[ 二 ] ある人、物事などに従わせる。
① ある人のそばに添わせる。付き添わせる。
竹取物語(9C末‐10C初)「心たしかなるをえらびて小野のふさもりと云人をつけてつかはす」
平家物語(13C前)七「聞ゆる兵共をつけて、兵衛佐の許へつかはす」
② ある人に従い学ばせる。 今鏡(1170)一「二の宮をば、いづれの僧にかつけ奉り侍るべき」
③ 服従させる。また、味方にする。
④ あとを追う。尾行する。 蜻蛉日記(974頃)上「人をつけて見すれば、『町の小路なるそこそこになん、とまり給ひぬ』とて、きたり」
不言不語(1895)〈尾崎紅葉〉二「怪き物などの尾(ツク)るにやと、背後(うしろ)の見らるるに」
⑤ ある時期、場所、状態、物事などに応じさせる。 竹取物語(9C末‐10C初)「風につけて知らぬ国に吹よせられて」
源氏物語(1001‐14頃)初音「所につけ、人のほどにつけつつ、あまねくなつかしくおはしませば」
⑥ ある物事や状態に関連させる。ことよせる。 古今和歌集(905‐914)仮名序「心におもふことを、見るもの、きくものにつけて、いひいだせるなり」
方丈記(1212)「進退やすからず、たちゐにつけて、恐れをののくさま」
[ 三 ] 一方から他方へ、ある気持、力、作用などをはたらかせる。
① ある気持にならせる。また、心や目をそちらへ向ける。
万葉集(8C後)一九・四一六二「うつせみの常無き見れば世の中に情(こころ)都気(ツケ)ずて思ふ日そ多き」
枕草子(10C終)三三「見しらぬは、たれならん、それにやなど思ひやり、目をつけて見おくらるるこそをかしけれ」
徒然草(1331頃)一九四「何としも思はで、心をつけぬ人あり」
② 力、知恵、性質などをもたせる、また、増し加える。 源氏物語(1001‐14頃)末摘花「少しけぢかう今めきたるけをつけばや」
彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉教学十話「イエスかノーかも、好きかきらいかも、卒直にいうクセをつけたがよい」
③ 火を燃え移らせる。また、あかりをともす。 竹取物語(9C末‐10C初)「御文、ふしの薬のつぼならべて、火をつけてもやすべきよし、おほせ給」
俳諧・我春集(1811)「餠も降れかし卅日(つごもり)の空〈一茶〉 灯(ともしび)をいくらも付(つけ)る仮住居〈天外〉」
④ 人に頼んで、先方に伝えたり届けたりしてもらう。ことづける。 竹取物語(9C末‐10C初)「いま金五十両給はるべし。舟の帰らんにつけてたびおくれ」
⑤ ある物事を行なうのをまかせる。 蜻蛉日記(974頃)上「この袈裟のこのかみも、法師にてあれば、いのりなどもつけて、たのもしかりつるを」
⑥ 相手にわたす。 今昔物語集(1120頃か)二九「男をば捕へて検非違使に付けつ」
⑦ 寄付する。また、くじを買う。 歌舞伎・日本月蓋長者(1694)一「して其燈明料は金子でも上げるか、但しは田地を附けるか」
[ 四 ] ある定まった、新しい状態をつくり出す。
① 名前をきめる。
竹取物語(9C末‐10C初)「あきた、なよ竹のかぐや姫とつけつ」
② 値段を決める。また、値ぶみをする。 歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)上「俺も六匁七分迄には付たれば」
③ ある評価・条件などを加える。 「文句をつける」「期限をつける」「条件をつける」
源氏物語(1001‐14頃)帚木「女の、これはしもと難つくまじきはかたくもあるかな」
④ ある形態や要素などを新しく加える。 中華若木詩抄(1520頃)中「ふしをつけて、うたう」
⑤ ある状態に落ち着かせる。 「始末をつける」「おさまりをつける」
談義本・八景聞取法問(1754)一「わるく理屈ばると序病(ぢょやみ)の内に形(かた)を付(ツケ)るが、サア返答は」
安吾巷談(1950)〈坂口安吾〉東京ジャングル探検「お金はお貸しできませんが、勘定の話はつけてあげますから、店の者をつれてきて下さい」
⑥ ある時間を自分のために確保する。客が遊興の約束をしたり、芸娼妓が理由を言って自分の時間をつくったりすることにいう。 洒落本・仕懸文庫(1791)四「あしたアさはり用事をつけて引こもう」
⑦ 舞踊、芝居などで、型や身ぶりなどを演者に教える。振り付ける。 歌舞伎・日月星昼夜織分(1859)「忘れた所はお師匠さんに、側から附けて貰ふがいい」
肉体の悪魔(1946)〈田村泰次郎〉「猿江に演技をつけて貰っている間も」
⑧ 酒をあたためる。また酒などを、飲める状態にして出す。 いさなとり(1891)〈幸田露伴〉三七「お微温(ぬる)うござりまするが、と暖(ツケ)て来る徳利とるや否、猪口へもつがず飲み乾して」
⑨ (茶わんなどに)よそう 破戒(1906)〈島崎藤村〉九「『さあ、先生、つけませう』と丑松は飯櫃を引取って、気(いき)の出るやつを盛り始めた」
[ 五 ] ある地位、場所などに身を置かせる。
① 進めて行ってある場所に至らせる。行きつかせる。
平家物語(13C前)三「此船にのせて、九国の地へつけ給へ」
② 即位させる。 愚管抄(1220)三「天智天皇の御むまごにて施基の皇子の御子にて王大納言とておはしけるを、位にはつけたてまつりたりける」
③ 座を占めさせる。すわらせる。 「席につける」
④ ある役目や任務を負わせる。 「職につける」
⑤ 店を出す意の俗語。 いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉一「お茶を飲んだあと丸万は、セミ(店)をツケ(出さ)なくちゃならないからと言って」
[ 六 ] 補助動詞として用いる。
① 動詞の連用形に付いて、その動作をふだんからし慣れている意を表わす。
落窪物語(10C後)一「親のおはしける時より使ひつけたるわらはの」
虎明本狂言・餠酒(室町末‐近世初)「かやうの所へ出つけぬに依て、はいもういたいてござる」
② 動詞の連用形に付いて、その動作を勢いはげしくする意を表わす。「しかりつける」「なぐりつける」など。
広辞苑 他動詞 ➊二つの物を離れない状態にする。
①ぴったり一緒にする。くっつける。貼る。
竹取物語「この玉の枝に文ぞ―・けたりける」。
万葉集20「わぎもこが―・けし紐が()絶えにけるかも」。
「身頃に袖を―・ける」
付く・附く・着く・就く・即く
②書き入れる。記す。あとを残す。印する。 徒然草「人の語りしままに書き―・けはべるなり」。
「日誌を―・ける」「足跡を―・ける」
③染める。色をうつす。 万葉集17「かきつばた衣にすり―・けますらをのきそひ狩りする月は来にけり」。
日葡辞書「イロヲツクル」
④塗る。こすりつける。 源氏物語末摘花「鼻に紅を―・けて見給ふに」。
日葡辞書「キズニクスリヲツクル」
➋ある物を他の物の後に従わせる。
①服従させる。味方にする。従わせる。
孝徳紀「 任那 (みまなの)国を以て 百済 (くだら)()け賜ふ」
②あとにつづかせる。つづける。 無名抄「君が宿にて君と明かさんと―・けたるを」。
日葡辞書「レンガ(連歌)ヲツクル」
③尾行する。追跡する。あとを追う。 日葡辞書「アトヲツクル、アトヲツケテユク」。
浄瑠璃、淀鯉出世滝徳「今まで西口に―・けてゐましたが、爰へはまだ見えぬか」
④つきそわせる。かしずかせる。 源氏物語花宴「心も空にて思ひ至らぬくまなき良清、惟光を―・けてうかがはせ給ひければ」。
日葡辞書「ヒトニヒトヲツクル」。
「付き添いを―・ける」
⑤従って学ばせる。 「家庭教師に―・ける」
➌ある物を他の物のところまで及びつかせる。
①届かせる。行きつかせる。及ぼす。到着させる。
伊勢物語「あるじ聞き―・けて」。
日葡辞書「フネヲツクル」
②増し加える。添える。 源氏物語末摘花「すこし今めきたるけを―・けばやとぞ、乱れたる心には心もとなく思ひゐたる」。
日本永代蔵5「近代の縁組は相生・形にも構はず、―・けておこす金性の娘を好む事世の習ひとはなりぬ」。
「割増金を―・ける」「はずみを―・ける」
③設ける。 「道を―・ける」「書斎に電話を―・ける」
➍身にまといつける。
①身にまとう。着る。
万葉集3「しらぬひ筑紫の綿は身に―・けて未だは着ねど」。
「首飾りを―・ける」
②わがものとする。 「教養を身に―・ける」「手に職を―・ける」
➎感覚や力を働かす。
①心をむける。
万葉集19「うつせみの常なき見れば世の中に心―・けずて思ふ日そ多き」。
日葡辞書「キ・ココロヲツクル」「メヲツクル」
②燃えうつらせる。発火させる。 伊勢物語「この野はぬす人あなりとて火―・けむとす」。
日葡辞書「イエニヒヲツクル」
③ともす。器具のスイッチを入れる。 源氏物語末摘花「大となぶら消えにけるをともし―・くる人もなし」。
「電灯を―・ける」
➏他にあつらえる。
①ことづける。
伊勢物語「修業者あひたり、京にその人の御もとにとてふみかきて―・く」。
今昔物語集19「己れが兄弟にて侍る僧に―・けて言はしめ侍るなり」
②負わせる。 源氏物語野分「そのほかはつゆ難―・くべうもあらず」。
「なんくせを―・ける」
③呼ぶ。命名する。 源氏物語桐壺「光君といふ名は高麗人のめで聞えて―・け奉りける」。
日葡辞書「ナヲツクル」
④定める。 「値段を―・ける」「見込みをける」
⑤決着に至らせる。まとめる。 「片を―・ける」「話を―・ける」
➐ある位置におかせる。
①即位させる。
平家物語8「抑、臣等が慮りを以て選びて位に―・け奉らん事、用捨私有るに似たり」。
「王位に―・ける」
②すわらせる。 「席に―・ける」
③位置を占めさせる。 「上座に―・ける」
④役を与える。 「局長の地位に―・ける」
➑(他の動詞に付いて)常に…する。なれる。 源氏物語桐壺「亡せ給ひにし御息所の御かたちに似給へる人を三代の宮仕につたはりぬるにえ見奉り―・けぬに」。
日葡辞書「ワザヲシツクル」「フネニノリツケタヒト」。
「使い―・ける」
➒他の動詞に付いて、勢いのはげしい意を表し、あるいは語調を強める。 「叱り―・ける」
➓(主に「…につけて」の形で)応じる。関する。よる。ことよせる。 古今和歌集序「心に思ふことを見るもの聞くものに―・けていひいだせるなり」。
源氏物語桐壺「朝夕の宮仕に―・けても人の心をうごかし」。
「雨風に―・けて子を思う」「それに―・けても金の欲しさよ」「よいに―・け悪いに―・け」
大言海 他動詞 (一){()クヤウニナス。(ヒタ)ト相合ハス。接合セシム。共ニ寄ス。ネバス。 枕草子、八十三段、心もとなきもの「トミノ物縫フニ、クラキヲリ針ニ絲つくる」
萬葉集、廿 三十五 「ナニハヂヲ、行キテクマデト、ワギモコガ、都氣シ紐ガ緖、絕エニケルカモ」
着・附・付・就・卽
(二)添フ。加フ。負ハス。附加 添加 「人ヲ附く」力ヲ附く」勢ヲ附く」惡名ヲ附く」
(三) ()マブス () 「粉ヲ着く」墨ヲ着く」色ヲ着く」オシロイヲ着く」
(四)貼ル。 「藥ヲ貼く」張紙ヲ貼く」
(五)記ス。書キ載ス。記入 「帳面ニ付く」(シルシ)ヲ付く」
(六)(トド)クル。及ボス。(熟語ニ) 「侍チ付く」聞キ付く」
(七)從フ。從屬ス。
(八){コトヅク 古今集、二、春、下「吹ク風ニ、誂ヘつくる、モノナラバ、此一本ヲ、ヨキヨト言ハマシ」
古事記、上 七十一 「附其弟玉依姬、而獻歌」
萬葉集、廿 廿六 「常陸サシ、行カム雁モガ、吾戀ヲ、シルシテ都祁テ、妹ニ知ラセム」
伊勢物語、第九段「宇津ノ山ニ至リテ、云云、修行者ニ遇ヒタリ、云云、京ニ其人ノ許ニトテ文書キテつく」
(九)設ク。施ス。作ル。 「節ヲつく」路ヲつく」
(十)(アト)ヲ迫フ。尾ス。 「つけテ行ク」
(十一) ()。裝フ。 「衣冠ヲ着く」袴ヲ着く」
動詞活用表
未然形 つけ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 つけ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 つく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 つくる も、かも、こと、とき
已然形 つくれ ども
命令形 つけよ

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最終更新:2025年03月16日 18:27