辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
---|---|---|---|---|
日本国語大辞典 | 助詞 |
[1] 〘間投助〙 [一] 文末にあって活用語の連体形または体言を受け、詠嘆をこめて確認する。 |
※古事記(712)上・歌謡「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣袁(ヲ)」 ※源氏(1001‐14頃)真木柱「いとかうきはぎはしうとしも思はで、たゆめられたる妬さを」 |
|
[二] 文中用法。 ① 意志・希望・命令の文中にあって連用の文節を受け、指示強調する。 |
※万葉(8C後)三・三四九「生(いける)者遂にも死ぬるものにあれば今(こ)の世なる間は楽(たのしく)乎(ヲ)あらな」 ※古今(905‐914)恋三・六三〇「人はいさ我はなき名のをしければ昔も今もしらずとをいはむ〈在原元方〉」 |
|||
② 情意の対象を詠嘆的に指示する。→補注(1)(ハ)。 | ※万葉(8C後)一・二一「紫草(むらさき)のにほへる妹乎(ヲ)憎くあらば人妻ゆゑに吾れ恋ひめやも」 | |||
③ 「…を…み」の形で対象を提示する。…が…なので。→補注(1)(ハ)。 | ※古事記(712)下・歌謡「梯立の 倉梯山袁(ヲ) 嶮(さが)しみと 岩懸きかねて 我が手取らすも」 | |||
[2] 〘格助〙 ① 働きかけの対象となる物や事柄を表わす。 (イ) 状態を変化させる動作の対象となる物や事柄を表わす。 |
※古事記(712)上・歌謡「太刀が緒も いまだ解かずて 襲(おすひ)遠(ヲ)も いまだ解かねば」 ※徒然草(1331頃)六〇「よきいもがしらを選びて、ことに多く食て、万の病をいやしけり」 ※好人物の夫婦(1917)〈志賀直哉〉「細君は〈略〉、糸を断り、針を針差しに差して仕事を片付け始めた」 |
|||
(ロ) 第一の対象を第二の対象に取り付けたり、そこから取り除いたりする動作の、第一の対象となる物を表わす。 |
※万葉(8C後)一七・三九一〇「珠に貫く楝(あふち)乎(ヲ)家に植ゑたらば山霍公鳥(ほととぎす)離(か)れず来むかも」 ※平家(13C前)二「解脱幢相の法衣をぬぎ捨て、忽に甲冑をよろひ、弓箭を帯しましまさん事」 ※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)日光「髪を剃て墨染にさまをかえ」 |
|||
(ハ) 空間的な位置を変化させる動作の対象となる物を表わす。 |
※万葉(8C後)一六・三八四八「あらき田の鹿猪田(ししだ)の稲乎(ヲ)倉に上げてあなひねひねし吾が恋ふらくは」 ※源氏(1001‐14頃)葵「御硯の箱を御帳の内にさし入れておはしにけり」 |
|||
(ニ) 接触の対象となる物を表わす。 |
※万葉(8C後)一四・三四五九「稲つけばかかる我が手乎(ヲ)今夜(こよひ)もか殿の若子が取りて嘆かむ」 ※俳諧・炭俵(1694)下「盆の月ねたかと門をたたきけり〈野坡〉」 |
|||
(ホ) ある動作によって作り出される物を表わす。 |
※万葉(8C後)一・三八「高殿乎(ヲ) 高知りまして 登り立ち 国見をせせば たたなにはる 青垣山」 ※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)出羽三山「此国の鍛冶、霊水を撰て、爰に潔斎して剣を打(うち)」 |
|||
(ヘ) 表現したり感じたりすることによって出現する抽象物を表わす。 |
※万葉(8C後)一八・四〇九四「遠き代にかかりしこと乎(ヲ)朕(わ)が御世に顕はしてあれば」 ※徒然草(1331頃)六七「若かりける時、常に百首の歌をよみて」 |
|||
② 働きかけの対象となる人を表わす。 (イ) 物理的な状態の変化や空間的な位置の変化を引き起こす動作の対象となる人を表わす。 |
※万葉(8C後)五・八九一「一世にはふたたび見えぬ父母袁(ヲ)置きてや長く吾(あ)が別れなむ」 ※浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)二「彼娘の親、〈略〉、彼子を取かへし」 |
|||
(ロ) 心理的な状態の変化を引き起こす動作の対象となる人を表わす。 |
※万葉(8C後)四・七四〇「言のみを後も逢はむとねもころにわれ乎(ヲ)頼めて逢はざらむかも」 ※徒然草(1331頃)一二九「人をくるしめ、物をしへたくる事」 |
|||
(ハ) 社会的な状態の変化を引き起こす動作の対象となる人を表わす。 |
※万葉(8C後)四・四九四「吾妹子乎(ヲ)相知らしめし人をこそ恋のまされば恨めしみ思へ」 ※平家(13C前)二「次男宗盛大納言の右大将にておはしけるをこえさせて、徳大寺を左大将にぞなされける」 |
|||
(ニ) 呼びかけや誘いかけの対象となる人を表わす。 |
※万葉(8C後)一八・四〇九四「しかれども 吾が大君の 諸人(もろひと)乎(ヲ) 誘ひたまひ よきことを 始めたまひて」 ※浮世草子・好色一代男(1682)一「袖垣のまばらなるかたより、女をよび懸」 |
|||
③ 所有の対象や所有関係の変更の対象を表わす。 (イ) 授受・貸借の対象を表わす。 |
※万葉(8C後)一四・三四七二「人妻とあぜかそを言はむしからばか隣の衣乎(ヲ)借りて着なはも」 ※平家(13C前)三「此疵治しつべし。但五十斤の金をあたへば治せんといふ」 |
|||
(ロ) 入手の対象や手放す対象を表わす。 |
※万葉(8C後)七・一一四五「妹がため貝乎(ヲ)拾ふと茅渟(ちぬ)の海に濡れにし袖は干せど乾かず」 ※俳諧・冬の日(1684)「烹る事をゆるしてはぜを放ける〈杜国〉 声よき念仏藪をへだつる〈荷兮〉」 |
|||
④ ある意図のもとに行なわれる動作の対象を表わす。 (イ) ある人・場所に接近しようとする態度で行なわれる動作の対象を表わす。 |
※竹取(9C末‐10C初)「かぐや姫を必逢はんまうけして」 ※土左(935頃)承平四年一二月二七日「大津より浦戸をさしてこぎいづ」 ※金の棺(1947)〈網野菊〉「けい子は〈略〉彼等の新居を訪れたことがある」 |
|||
(ロ) ある人・場所・物事から離れようとする態度で行なわれる動作の対象を表わす。 |
※万葉(8C後)二〇・四三四八「たらちねの母乎(ヲ)別れてまことわれ旅の仮廬(かりほ)に安く寝むかも」 ※源氏(1001‐14頃)明石「つひに后の御諫めを背きて、ゆるされ給ふべき定め出で来ぬ」 ※金閣寺(1956)〈三島由紀夫〉三「木の株を除(よ)けながら登った」 |
|||
(ハ) ある物を、相手に提示しようとする動作の対象を表わす。 |
※万葉(8C後)五・八一三「斎ひたまひし 真珠なす 二つの石乎(ヲ) 世の人に 示したまひて」 ※浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)一「就夫(それにつき)上書に、一作者と、くだんの小判を出せば、さてもかる口なる御事と、見てまはせば」 |
|||
(ニ) ある人や物を他の働きかけから守ろうとする動作の対象を表わす。 |
※源氏(1001‐14頃)東屋「今はわが姫君を、思ふやうにて見奉らばや、と、明け暮れまもりて、撫でかしづくこと限りなし」 ※灰色の月(1946)〈志賀直哉〉「若者は自分の荷を庇(かば)ふやうにして」 |
|||
(ホ) 問いただしたり、調べたりする動作の対象を表わす。 |
※古事記(712)下・歌謡「大坂に 遇ふや嬢子(をとめ)袁(ヲ) 道問へば 直(ただ)には告(の)らず 当芸麻道(たぎまち)を告る」 ※風船(1955)〈大仏次郎〉父親「新しく売り出した会社の製品の批評を聞いたり、売れ行きの様子を調べるのが目的であった」 |
|||
(ヘ) ある物事を描写・表現しようとする動作の対象を表わす。 |
※源氏(1001‐14頃)絵合「年の内の節会どものおもしろく興あるを、昔の上手どものとりどりにかけるに、延喜の御手づから、事の心かかせ給へるに」 ※俳諧・続猿蓑(1698)下「かつは展重陽のためしなきにしもあらねば、なを秋菊を詠じて人々をすすめられける事になりぬ」 |
|||
(ト) 崇拝する気持で行なわれる動作の対象を表わす。 |
※万葉(8C後)六・九二〇「天地の 神乎(ヲ)ぞ祈る かしこかれども」 ※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)黒羽「そこにまねかれて、行者堂を拝す」 |
|||
(チ) ある特定の態度で行なわれる動作の対象を表わす。 |
※万葉(8C後)一・一三「古も しかにあれこそ うつせみも 妻乎(ヲ) 争ふらしき」 ※平家(13C前)三「保元平治よりこのかた、度々の朝敵をたひらげて、勧賞身にあまり」 ※少年(1911)〈谷崎潤一郎〉「毎日のやうに年下の子供をいぢめて居る名代の餓鬼大将だから」 |
|||
⑤ 認知活動や言語活動の対象やその内容を表わす。 (イ) 視覚・聴覚・嗅覚など感性的な知覚活動の対象を表わす。 |
※万葉(8C後)一九・四一八〇「さ夜中に 鳴く霍公鳥(ほととぎす) 初声(はつこゑ)乎(ヲ) 聞けばなつかし」 ※古今(905‐914)夏・一三九「さつきまつ花たちばなのかをかげば昔の人の袖のかぞする〈よみ人しらず〉」 ※芋粥(1916)〈芥川龍之介〉「彼は飲んでしまった後の椀をしげしげと眺めながら」 |
|||
(ロ) 抽象的な認識の思考活動の対象やその内容を表わす。 |
※万葉(8C後)九・一八〇七「遠き代に ありけること乎(ヲ) 昨日しも 見けむがごとも 思ほゆるかも」 ※平家(13C前)一「天下のみだれむ事をさとらずして、民間の愁(うれふ)る所をしらざっしかば」 |
|||
(ハ) 発見の対象やその内容を表わす。 | ※源氏(1001‐14頃)胡蝶「兵部卿宮の、ほどなく焦られがましきわび言どもをかき集めたまへる御文を御覧じつけて、こまやかに笑ひ給ふ」 | |||
(ニ) 話す・聞く・書く・読むなどの言語活動の対象やその内容を表わす。 |
※万葉(8C後)一・一「しきなべて われこそ座(ま)せ われこそば 告らめ 家乎(ヲ)も名雄(を)も」 ※徒然草(1331頃)六〇「いもがしら〈略〉大きなる鉢にうづだかく盛りて膝元に置きつつ、食ひながら文をも読みけり」 ※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)市振「年老たるおのこの声も交て物語するをきけば」 |
|||
⑥ 物事に対するある態度や活動の対象、またその内容を表わす。 (イ) 感情や評価の対象を表わす。 |
※万葉(8C後)四・七二一「あしひきの山にしをれば風流(みやび)なみ我がするわざ乎(ヲ)とがめたまふな」 ※方丈記(1212)「富める家のとなりに居るものは、朝夕すぼき姿を恥ぢて」 ※走れメロス(1940)〈太宰治〉「私は王の卑劣を憎んだ」 |
|||
(ロ) 希望の対象を表わす。→補注(2)(ロ)。 |
※徒然草(1331頃)二三八「紫の朱うばふことを悪むと云文を御覧ぜられたき事ありて」 ※どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)四「くはんねんをなしたくは」 ※帰郷(1948)〈大仏次郎〉孔雀「ほんたうに自分で画を描きたくなってゐるのを知って」 |
|||
(ハ) 意志的行為や要求的行為の対象となる内容を表わす。 |
※万葉(8C後)四・五四八「今夜(こよひ)の早く明けなばすべをなみ秋の百夜(ももよ)乎(ヲ)願ひつるかも」 ※平家(13C前)一「いかにもして平家をほろぼし、本望をとげむ」 |
|||
(ニ) 経験する物事の内容を表わす。 |
※万葉(8C後)九・一七八七「布留の里に 紐解かず 丸寝乎(ヲ)すれば 吾が着たる 衣はなれぬ」 ※徒然草(1331頃)六九「恨しく我をば煮て、からき目を見するものかな」 |
|||
(ホ) (下の動詞と同意の体言をのせて) 動作・作用の内容を表わす。 |
※万葉(8C後)一四・三四一四「伊香保ろの八尺(やさか)の堰塞(ゐで)に立つ虹(のじ)の顕はろまでもさ寝乎(ヲ)さ寝てば」 ※源氏(1001‐14頃)柏木「そこはかとなく物を心細く思て、ねをのみ時々泣き給」 |
|||
⑦ 移動動作が成り立つ空間的な状況や周りの状況を表わす。 (イ) 移動動作が行なわれる範囲を表わす。 |
※万葉(8C後)一七・三九四四「をみなへし咲きたる野辺乎(ヲ)行きめぐり君を思ひ出たもとほり来ぬ」 ※方丈記(1212)「羽なければ空をも飛ぶべからず」 ※草枕(1906)〈夏目漱石〉一「山路を登りながら、かう考へた」 |
|||
(ロ) 通過する場所を表わす。 |
※古事記(712)中・歌謡「新治 筑波袁(ヲ)過ぎて 幾夜か寝つる」 ※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)尿前の関「関守にあやしめられて、漸として関をこす」 |
|||
(ハ) 出発する場所を表わす。 |
※万葉(8C後)一五・三六八八「大和乎(ヲ)も 遠く離(さか)りて 石(いは)が根の 荒き島根に 宿りする君」 ※平家(13C前)四「七日、福原をいでさせ給ふに」 |
|||
(ニ) 動作が行なわれる周りの状況を表わす。 | ※万葉(8C後)八・八四六「霞立つ長き春日乎(ヲ)かざせれどいやなつかしき梅の花かも」 | |||
⑧ 動作が行なわれる時間を表わす。 |
※万葉(8C後)一〇・二一三九「ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく幾夜乎(ヲ)経てかおのが名を告る」 ※読本・雨月物語(1776)浅茅が宿「寺院遠ければ贈号を求むる方もなくて、五とせを過し侍るなり」 ※秋(1920)〈芥川龍之介〉二「大阪やその近郊の遊覧地へ気散じな一日を暮しに行った」 |
|||
⑨ 主体の変化がどんな側面で起こるかを表わす。→補注(2)(ハ)。 | ※天草本伊曾保(1593)獅子と鼠の事「ネズミワ アマノ inochiuo (イノチヲ)タスカッテ」 | |||
[3] 〘接助〙 活用語の連体形を受けて句と句を接続する。逆接的な関係での接続が最も多いが、順接の場合もあり、また因果関係のない場合もある。→補注(3)(イ)。 |
※源氏(1001‐14頃)桐壺「おのづからかろき方にも見えしを、この御子生まれ給ひて後はいと心ことにおもほしおきてたれば」 ※今昔(1120頃か)五「羸(つか)れ極(こう)じて我が命も可絶きを〈略〉山野に罷出たらむ間、此の子共を師子に預け師子に預奉らむ」 ※徒然草(1331頃)一八「孫晨は冬月に衾なくて、藁一束ありけるを、夕にはこれにふし、朝にはをさめけり」 ※日葡辞書(1603‐04)「ソナタエ mairǒzuruuo (マイラウズルヲ)」 |
|||
[補注](1)(間投助詞について) (イ)語源については「否も諾(を)も欲しきまにまに赦(ゆる)すべき皃(かたち)は見ゆや我れも依りなむ」〔万葉‐三七九六〕のような感動詞「を」から出たものといわれる。ただし間投助詞「を」は格助詞「を」から派生したものとする説もある。(ロ)鎌倉時代以後、間投助詞の用法は文語化したらしく、和歌を除いてほとんど見られなくなる。(ハ)(一)(二)②および③の用法の場合、「を」によって主格が表示されていると考えて、格助詞とする説もある。格助詞であるとすれば、(一)(二)②の用法は(二)⑥(イ)の感情的態度を表わす用法であるということになる。なお、原因・理由を表わす「[名詞]を…み」の形と並んで、「を」のない「[名詞]…み」の形も奈良時代からある。→み。 (2)(格助詞について) (イ)(二)の用法は、感動の対象を提示する(一)の用法から転じたものとするのが通説である。用例を見ても詠嘆的気分の強いものがあり、(一)(二)いずれの用法とも決しがたい場合がある。(ロ)(二)⑥(ロ)の用法は(一)(二)②の用法と本質的に大きく異なるものではないが、間投助詞が口語として用いられなくなった時代には、格助詞の一用法として意識されたものと思われる。なお、「…を…したい」という言い方と並んで「…が…たい」という言い方もある。→が。(ハ)(二)⑨は自動詞に「を」が用いられたものであるが、述語の表わす変化が主語のどういう属性についてのものであるかを明らかにするものなので、格助詞と考えた。ただし、主格を表わすものと見ることもできる。br;(3)(接続助詞について) (イ)(三)の用法は活用語の連体形を受けた格助詞「を」からの派生といわれるが、間投助詞「を」からの派生も考えなければならない。「今こそは我鳥にあらめ 後は 汝鳥にあらむ遠(ヲ) 命は な死せ給ひそ」〔古事記‐上・歌謡〕のような「を」は間投助詞であるが、そこには逆説的な意味をもって下に続く趣が感じられる。このようなところからも接続助詞化したと考えられる。(ロ)接続助詞としての成立期に関して、奈良時代からすでに用いられていたとする説、鎌倉時代以後用いられるようになったとする説がある。(一)(二)(三)それぞれの間には、形式・意味いずれの面からも明らかな境界が引けないため、同一例に対する解釈の揺れることが多いが、接続助詞と指摘される平安時代以前の例は、ほとんどすべて間投助詞あるいは格助詞としても解し得るものである。(ハ)接続助詞としての用法の中には「白露の色は一つをいかにして秋の木の葉をちぢにそむらん〈藤原敏行〉」〔古今‐秋下〕、「忘れては打ち歎かるる夕べかな我のみしりて過ぐる月日を〈式子内親王〉」〔新古今‐恋一〕のように体言を受けるものもある、とする説があるが、これらはやはり間投助詞とすべきか。 |
||||
広辞苑 | 助詞 |
➊(間投助詞)種々の語を受け、その語を確かに肯定し、承認する意を示す。主に奈良・平安時代に行われた。 ①自己の願望・意志、他への希求・命令などを表現する文中で、連用修飾語に付いて強調する。 |
古事記下「迎へ―ゆかむ待つには待たじ」。 万葉集3「この世なる間は楽しく―あらな」。 万葉集9「 古今和歌集恋「恋しくは 古今和歌集秋「立ちとまり見て―渡らむもみぢばは雨と降るとも水はまさらじ」 |
|
②文末で文の内容を確認する。多く、強い詠嘆の余情が含まれる。「ものを」の形が多い。 |
古事記上「あなにやしえをとこ―」。 万葉集1「草枕旅ゆく君と知らませば岸の埴生ににほはさまし―」。 万葉集12「あしひきの山より出づる月待つと人には言ひて妹待つ我―」。 万葉集17「かからむとかねて知りせば 閑吟集「人買舟は沖を漕ぐ、とても売らるる身―、ただ静かに漕げよ船頭殿」。 「そんなに欲しかったならあげたもの―」 |
|||
③文中で下の「…み」という表現と呼応して、「…が…ので」の意を表す。 |
万葉集1「山―繁み入りても取らず」。 古今和歌集雑「笹の葉に降り積む雪のうれ―重み」 |
|||
➋(格助詞)体言またはそれに準ずるものを受ける。 ①対象を示す。現代語では、他動的意味の動詞と対応して目的格的な働きをするが、奈良・平安時代には、自動的意味の動詞や形容詞の前でも使われた。心情・可能の対象を示す「を」は、古くは「が」が一般的であったが、現代語では「人を好き」「故郷を恋しい」「字を書ける」など、「を」も広く使われる。 |
万葉集1「紫の匂へる妹―にくくあらば人妻故に我恋ひめやも」。 古今和歌集序「花―めで、鳥―うらやみ、霞―あはれび、露―かなしぶ」。 古今和歌集秋「女郎花多かる野辺に宿りせばあやなくあだの名―や立ちなむ」。 源氏物語玉鬘「うるさきたはぶれごと言ひかかり給ふ―煩はしきに」。 栄華物語月宴「碁・双六うたせ、偏―つがせ」 |
|||
②そこから離れる所・人を示す。 |
万葉集15「はしけやし家―離れて」。 万葉集20「たらちねの母―別れて」 |
|||
③動作の移動する場所、持続する時間を示す。 |
万葉集5「霞立つ長き春日―かざせれどいやなつかしき梅の花かも」。 土佐日記「宇多の松原―行き過ぐ」。 「空―飛ぶ」「道―急ぐ」「一日―歩き続ける」 |
|||
④動詞と同じ意味を表す体言に付き、全体で一種の慣用句をつくる。 |
土佐日記「まして女は船底に頭をつき当ててね―のみぞ泣く」。 源氏物語明石「昼は一日 「夢―夢見る」 |
|||
➌(接続助詞)多く、活用する語の連体形を受け、次に続く動作・感情の原因・理由などを示す。順接・逆接を決める機能はなく、そのいずれにも用いる。 ①下の句に対する順接条件を表す。…のだから。…ので。 |
源氏物語桐壺「若宮のいと覚束なく露けき中に過し給ふも心苦しう思さるる―とく参り給へ」。 徒然草「藁一束ありける―夕には是にふし、朝にはをさめけり」 |
|||
②逆接関係を表す。…のに。口語では多く「ものを」「ところを」などの形をとる。 |
古今和歌集夏「夏の夜はまだ宵ながらあけぬる―雲のいづこに月やどるらむ」。 古今和歌集秋「白露の色は一つ―いかにして秋の木の葉を 発心集「僧ありけり。本は清かりける―、年半たけて後、 「折角でき上がったもの―、こわされてしまった」「お忙しいところ―おいでいただき恐縮です」 |
|||
大言海 | 天爾遠波 | (一)第一類ノ天爾波。事ヲ處分スル意ノモノ。下ハ、必ズ他動ノ動詞ニ接ス。 |
古事記、上
三十八
「少女ノ、 「書を讀ム」字を記ス」飯を食フ」 |
|
(二)又、下、自動ノ動詞ニ接シテ、よりノ如キ意ヲナスモノ。 |
萬葉集、廿
三十四
長歌「イヤ遠ニ、國 「家を離ル」國を去ル」人を別ル」世を |
|||
(三)又、動作ノ行ハルル地位ヲ示ス意ノモノ。亦、下、自動ノ動詞ニ接ス。 |
古事記、下(仁德)
六
「靑丹ヨシ、奈良 「路を行ク」門を過グ」家を繞ル」 |
検索用附箋:助詞
附箋:助詞