―かがみん…かがみん…
「こなた!」
またこなたの夢を見た
私の汗に濡れた顔はいつものように現実を見せ付ける
衣服やコンビニ弁当で散乱した部屋、辺りはまだ暗く、ゴキブリが出ても判らな
い
いや、ゴキブリ程度なら音で判るか
友達との会話も殆ど皆無
盗み聞きの地獄耳だけは発達しただろうか
よもや私がここまでの孤独を感じるとは思わなかった
私はこなた達以外の人間に気を許してはいない
つまり、人間不信
寧ろ自分が人間である事にさえ怠惰を覚え始め、窓の外に飛び回る小鳥をよく眼
で追いかけるようになっていた
大学に入学した時は自分は勝ち組だと優越感に浸っていたが、その優越感も長く
は続かず高校のように自然と友達が出来ず、自分が輪からはみ出すようになり、
とうとうその各輪が固定されても私はずっと誰とも友達になれない日々が続いて
いた
話し掛ければ大抵友達になれるのは大学でやっていくための公式
私はその公式を使って友達を作る解答を見出だす事が出来なかった
結局、自分は負け組だった
そう認識した途端、後は野となれ山となれ、全てがどうでもよくなった
私はまだ真っ暗な部屋の布団の上にむくりと起き上がった状態で、まだ高鳴る心
臓の鼓動を落ち着かせてから、再び寝転がる
その瞬間、部屋に閃光が走り真っ白な空間が生まれた
私は跳び起きて辺りを見回すと、頂点にかけてジグザグの帽子を被った老婆が現
れた
「誰…ですか?」
「私は魔」
「そういうオカルトは無しですからね」
「いや、本物本物」
「…何をしてくれるんですか」
「3つの願いを叶えます」
老婆は顔を近づけて言う
「あんた、名前は?」
「正直、名乗りたくないです。こんな夢まで見ることになるとはね…」
「いいから名前」
「柊かがみ!」
「それでは柊かがみ。お前に3つの願いを叶えてしんぜよう」
「じゃあ、試しにこなたに会わせてよ。今すぐ」
「判った。ヒデブバデブブー」
「うわっ!」
突然白い空間にこなたが飛び込んで来た
「か、かがみんどうしたのこれ!」
「あら!判んないのよ私にも!」
「え?なんだそれ!?」
「とりあえず久しぶり、こなた」
「あぁ、うん…久しぶり…」
「友達とか…できた?」
「あぁ、うん。できたよ。オタクだけど」
こなたは身体は私よりも小さい癖に、心は大らからしい
「かがみんは出来てないの?」
「え、あぁ…いや。まあ、出来てるわよ」
「まさか私とか言うんじゃないだろうね」
「ギク!」
その瞬間、こなたがポンと消えた
「あ!ちょっとこなた!?」
「何スルーしてんだよせっかく叶えてやったのに!えー、2番目の願いは…」
「あんた!!勝手に消すんじゃないわよ!」
「いや…だって」
「だってもくそもない!」
「あぁ…若かりし昭和に戻りたいもんだね。今昭和の香りが」
「わかったわかった。あんたが魔女だってことは判ったわ。
じゃあ、今度は別荘建ててよ。ここから大学結構遠いのよね。まあ正直歩くのも
面倒臭いから余計行く気無くすんだけど」
老婆は再び呪文と杖を振る
すると地面がぐらりと揺らいだ
「さ、これで大学に糞近くなったわよ」
老婆は不適な笑みを浮かべながら言う
白い空間に隙間が出来て窓を覗くと、校門前の横断歩道の手前に建っていた
「すごいわねー!」
「どんなもんよ」
「でもまあ、これで本当にあんたが魔女だってことは判ったわ」
「光栄です」
「これが私の本当の願いよ」
「何かね」
「私はもう人間であることが嫌になったわ。あの社交性0のこなたでさえ友達が
出来てるくらいだし。私にはもう友達なんか出来ないし学校行くのも欝だし、い
っそ私を鳥に変えてくれる?」
「は?」
「だから、もう人間でいることに飽きた訳。私には一人が似合うってことよ」
「いいの?」
「何で」
「ぼっち脱出したいんならまだ判るけどね。何で敢えてのようにぼっちになりた
いのさ」
「私にはぼっちが一番似合うからよ。第一ぼっちでいる事に既に快感を覚えてい
る。もう人間という重荷に決別したいのよ」
「人間であることから逃げるわけね」
「私は野性に生きるわ。人目を気にすることなくね」
「判った。もう人間には戻れないからね」
そうして魔女が呪文を唱えると、たちまち私は鳥になった
鳥になった私は、既に東から昇りつつある太陽へ人間だった頃の思い出を振り返
りながらアパートの柵から飛び立った
いい気持ちねー
やっぱり人間やめてよかった
これからは自由気ままに一人で生きてくわ
しかしお腹空いたわね
何か獲物を…あれ?
しまった…
どうやって捕ればいいか判らない…
(終)
最終更新:2008年08月09日 21:25