【拝啓かがみ様】
こなたはその温かな指で、ぷっくりとした曲線を描くかがみの頬をなぞる。
静寂だけが二人を包み込んでいた。
今は何者にも邪魔をされたくない。
こなたは、かがみのその優雅な体型を、薄桃色の柔肌を覆い隠す衣をはだけさせ、仰向けに寝ていてもそれとわかる胸をあらわにさせた。
【拝啓こなた様】
最後に笑ったのはいつだっただろうか。
今はそれすらも思い出すことができない。
高校生だった私は毎日笑っていたような気がする。
笑うだけじゃない。怒ったり泣いたり、今では想像もつかないほどいろいろな感情があった。
しかし今は、一日中誰とも会話しないことが普通になっている。
機械仕掛けの人形のように、決まった時間に大学へ行き、終ったら家へ帰るといった動作を延々繰り返すだけ。
今の私の姿を見たら、こなたはどう思うのだろう……。
【拝啓かがみ様】
高校を卒業してからも、4人がそろうことはあった。
こなたは文学部へ、つかさは家庭生活学部へ、みゆきは医学部へ、そしてかがみは法学部へ。幸いにも全員都内の大学だった。
しかしそれも最初の1年くらいのことで、後は携帯メールでたまに連絡を取り合う程度。
あの3年間も、夏のソフトクリームが溶け出すように、最初はゆっくりと、そして徐々に加速し、
最後には空になったコーンの名残を惜しむようなべた付きと、バニラの甘い香りだけが手にのこるように甘美な思い出となっていた。
【拝啓こなた様】
壁に貼った写真の私、高校生だったころの私が笑っているのが見える。高校時代は本当に毎日が楽しかった。
楽しすぎた。
一番幸せな時間だった。
あの頃の私が、今の私を見たらどう思うのだろう。
怒るだろうか、悲しむだろうか、それとも嗤うだろうか……。
いや、きっとどれも違う。きっと今の私を私だとは認めないだろう。
認めないで欲しい。この時間が永遠には続かないだろうと知りながらも、永遠であって欲しいと願っていた頃の私には……。
【拝啓かがみ様】
こなたは赤ん坊のように、かがみの乳房に接吻した。
しかしそこにはひんやりとした感触しかなく、こなたは静かに涙を落とす。
涙を伝えるかがみの曲線は、まるで水分を多分に含んだ最上の桃のように思えた。
【拝啓こなた様】
今の私には、かつての私のような輝きはない。
だったら、できるだけあの3年間に近いうちに時をとどめておきたい。
あの夢のような時間を過ごした私を思い出せる間に……。
……そろそろ練炭の煙が私を包み込む。
私、笑ってる?
あの写真のように、こなたが知ってる私のように笑えてる?
ねえ、こな
完
最終更新:2008年11月08日 19:07