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スーサイドサークル

きつめのホラー表現あり。閲覧注意です。



私は彷徨うように森の中を進んだ。持ち物は、首を吊るためのロープと、睡眠薬と、一枚の写真。
大学ではぼっちになり、弁護士の夢は潰え、友人や妹からも裏切られた今の私には、それだけで十分だ。とにかく早く終わらせよう。
私は、死に場所を求めて深い森の中を早足で歩いた。
と、次の瞬間!
頭の上にぴちゃりと水滴のあたる感触がした。上を見上げると、高い木に吊り下がる人型の物体。ほおのこけた白髪の男の首吊り死体だった。
口から舌が飛び出ている。充血した目は垂れさがり、恨めしそうにこちらを睨んで…。私は叫んだ。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
あの後、めちゃくちゃに歩き回って何とかバス停を発見し、私は生きて自分のアパートまでたどり着くことが出来た。
誰にも発見されぬ様、なるべく樹海の奥を目指していたら、思わぬ先客がいたものだ。しかし、よく富士の樹海から帰れたな…。
あの男…、恐らく首を吊ってからまだ日があまり経っていないのだろう。苦痛に充ちて歪んだ顔が脳裏に浮かぶ。
こんな恐ろしい光景を見た以上は、もう首吊りの自殺など出来ない。死んだ男のあの恐ろしい表情を思い出しては何度も洗面所に駆け込み吐いた。

次の日の夜。
私は、駅のホームに立っている。他の通勤客になるべく迷惑がかからないよう、最終の列車を選んだのは正解だった。
午後11時半過ぎのプラット・ホームは人気がまばらであり、それでも10人以上は列車を待つ人々がいた。飛び込み自殺は本当に嫌な死に方である。第一,他人に大変な迷惑がかかる。
しかし、死ぬほうにしてみれば苦しみは一瞬かつ確実…。「まもなくXX番ホームに列車が参ります」…放送が流れると、私は息を呑んだ。
と、次の瞬間!
私より先に、サラリーマンが飛び込んだ。女子高生が飛び込んだ。お年寄りが飛び込んだ。私が一瞬、飛び込みをたじろいだ瞬間に次々人が飛び込んでいく。私は叫んだ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
凄まじいことになっている。確実に人が目の前で10人以上死んでいる。気が付くと、ホームには私しかいない。さっきまでそばにいた駅員まで飛び込んだようだ。
私は恐怖を感じ、逃げるようにホームを立ち去った。これは奇妙な偶然らしい。どうやら、同じ電車で自殺者が幾つも重なったようだった。私は駅を出て、とぼとぼ自宅へ向かって歩いて帰った。
こんな恐ろしい現場を見た以上は、もう電車への飛び込み自殺など出来ない。凄惨な情景を思い出しては何度も洗面所に駆け込み吐いた。

次の日。
私は、たまたま入った古書店で「自殺簡単マニュアル」という本を見つけて迷わず購入した。
私は早く死にたいのにまだ死ねてない。イヤなものを見続けたせいで、すっかりトラウマだらけだ。こうなったらこの本にある自殺方法を片っ端から試すしかない。
まずはガス自殺だ。いや、まてよ?ガス自殺も結構、人に迷惑な死に方だよな、などと考えながら歩き読みしていると、自分の住むアパートが見えてきた。
と、次の瞬間!
目の前で自分のアパートが爆発し、火の手が上がった。ショックで呆然と立ち尽くすしかない私。その夜、警察で状況を聞かれた後、私は両親に付き添われて実家に帰った。
後から解かった話。消防の調べでは、どうやらアパートの一室でガス漏れがあり、それに気付かずに住民が火をつけた瞬間、ドカン…という事らしい。ガスは怖い。
死者1名、けが人 重症者含め4名。他のアパート住人と私は何の交流もなく、全くの他人ばかりとは言え、本当にご愁傷様…。
こんな恐ろしい事故に遭遇した以上は、もうガス自殺など出来ない。爆発の衝撃に吹き飛ばされてバラバラに吹き飛んだ黒こげ人間の姿を想像しては何度も洗面所に駆け込み吐いた。

私が死のうとすると、私より先に人が目の前で死ぬ。そして死のうとしている私は生き残っている…。
もう死に方など何でもいい。とにかく早くラクになろう。私は何か確実で手っ取り早く済むよい死に方はないものかと、無造作に自殺マニュアルのページをめくった。
ふと、ぱらりと一枚の写真が足元に落ちた。私はしゃがみ込み、写真を手に取る。自然と涙が零れ落ちた。なぜ本の中にこんな写真が挟まっていたのだろう。
本当に空気読めないわね…。私が死ねないのはきっと、あんたのせいなのよ。
「もう友達には戻れないのかな…それでも、それでも私は…私はね……」
こなたの事を思えば、もう自殺など出来ない…。思い起こせばすぐにあの幸せだった青春の日々の記憶が鮮やかに蘇り、何だかとても泣けてきた。

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最終更新:2008年11月08日 19:11
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