「つかさ、おはよう」
ドアを開けると、まだ眠っているつかさに声をかけた。
彼女は深い眠りから目を覚ます様子もなく、かといって私もそれを予期していたので、特段それ以上声をかけることもしなかった。
「つかさ、今日はケロロ軍曹のDVD借りてきたよ。つかさ、好きだったもんね。今日は一緒に見よっか」
つかさは相変わらず眠ったままだ。
「そうそう、今日電話で、こなたがね…」
つかさは相変わらず眠っている。
「それでね、みゆきが…」
つかさは、眠っている。
「それでね、くさくってね…う、うぅ…うわああああああああ、つかさああ!お願いだから、お願いだから目を開けてよおっ・・・!!」
私の声に気づいた両親と姉達が私をつかさから引き離すまで、私は彼女の名前を呼び続け、泣き続けた。この数ヶ月、何度と無く、毎日のように繰り返してきた、私の贖罪の儀式。こんな日々を繰り返したところで、つかさが返ってくることはない。
そう、つかさはもう目を覚ますことはないのだ。
頚椎損傷による植物状態。
私のかわいい妹、大切な家族であるつかさをこんな姿にしたのは、他でもない無い、私なのだ。その現実に、私の精神はいとも簡単に崩壊させられた。
ぎりぎりの状態でなんとか合格した大学も、もうほとんど行っていない。
大学の友人はいなくなり、最初は支えになってくれたこなたやみゆきも、メンタルをやられた私が毎日電話するものだから最近はあまり電話に出てくれなくなった。
家族も、私のことが手に負えなくなってきたようだ。施設に入れる話をしているのを、偶然耳にしてしまった。
姉になだめられ、医者に処方された安定剤を注射される。
薬が効いてくるまで数分。それまでの時間、私は、私の犯した罪を思い返し、悔やみ、自己を追い詰め、苦しめることに一種の救いを求めている自己を嫌悪する。
私は、妹の顔面にサーブをぶつけたあの日のことを思い返しながら、行き場の無い感情に蝕まれた心の闇の中で、眠りについた。
最終更新:2008年11月27日 19:56