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お母さんは心配性

「もしもし、かがみ?」

「あ、お母さん。久しぶり」

「久しぶり、じゃないわよ。引越し以来電話もよこさないで」

「あー……ごめんごめん。ちょっと色々忙しくって」

「全くもう。ねぇ、夏休みになったんだから1度くらい帰ってきたら?」

「……どうしよう、かなあ」

「男の人連れてきたってお父さん怒らないわよ?」

「ちっ違う、そんなんじゃないって」

「うふふ。ならそっちの生活が楽しいのね」

「そんなところかな。つかさは最近どう?」

「頑張ってるわよ。お父さんには隠してるけどいい人できたみたい、ふふ」

「へぇ、そうなんだ……」

「ねぇ、かがみ」

「うん?どうしたの」

「お勉強ははかどってる?」

「それは大丈夫」

「お友達はできた?」

「まあ、それなりに」

「サークル?っていうのには入ったの」

「いや別に……。でもほら、ゼミっていうのがあるからさ」

「そう。お母さんかがみのこと心配だったけど、声聞いたら安心しちゃった」

「あはは」

「じゃあちょっとお金大目に送るから、夏休みをエンジョイしなさい」

「えっ、うん、ありがとう」

「今度はそっちから電話かけてきなさいよ。父さんもかがみの声聞きたいって言ってたわ」

「そっか……、じゃあ」

「そうそう。お野菜沢山送るからちゃんと自炊すること」

「えぇ、面倒臭いなぁ」

「うふふ。それじゃあまたね」

「うん。また」

柊かがみは受話器を戻した。
ディスプレイから漏れる光が部屋をうつして、すぐ消える。
缶ビールとビニール袋の間を抜けてベッドに倒れこむ。
それからしばらく、ぼーっと天井を眺めていた。

楽しい大学生活。
それとは程遠い自分の現状を確認する。
いつから、どうして、なんてことは考えつくした。
考えることすら放棄していたように思える。

今の私は両親に顔向けすることができるのだろうか。
きっと無理だ、無理に決まってる。
泣いて甘えてしまうのが関の山だろう。
だから帰れない、弱い私を知られたくない。

「つかさ、ちょっといいかしら」

「どうしたの?お母さん」

「旅行に行きたい気分にならないかしら」

「えっ、竜二クンと旅行するの許してくれるの?」

「だーめ。大学卒業するまでは我慢しなさい」

「えー……じゃあ何で旅行なんて」

「京都にいってみたいと思わない?」

「京都……あ、お姉ちゃん!」

「そう。夏休み長いんだから1回くらい行けるでしょう」

「うんうん、全然だいじょうぶ」

「かがみも向こうに慣れてる頃だろうから、観光案内でもしてもらいなさい」

「うん、でもお金ないかも……」

「はい。お父さんには内緒のお小遣い」

「えっ?こんなにいいの」

「いいのよ。大目に渡しておくから高校の時の友達も誘うといいわ」

「お母さんありがとう!早速こなちゃんに電話してみる」

「あらあら。うふふ」

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最終更新:2009年10月28日 07:41
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