by保育園児(東京都)
10月。暑さも大分和らいで、そろそろ薄着でいるのが厳しい季節だ。
今年で何回目だったろうか?私は旧法務省の赤レンガの建物を見ながら思った。
大学を卒業してからだから4回目ぐらいか・
大学を卒業してから2年、妹のつかさはこの間結婚して子供が生まれたし、
姉2人もそろそろ結婚しそうな感じだ。姉妹4人の中で私だけ進路が定まっていない。
案の定私の受験番号はなかった。そんな気がしていたから、別にショックではなかった。
もう4回目だから慣れたものといえば慣れたものなのかもしれない。まわりは涙を流して
抱き合ってる人、掲示板の自分の番号を写真でとってる人、ため息をつきながら帰っていく人
などさまざまだ。そんな中、私は人ごみの中に懐かしい顔を見かけた。
かがみ「あのー、もしかして岩崎さん・・・?」
みなみ「・・・えっと・・・」
かがみ「高校で先輩だった柊よ、覚えてない?」
みなみ「あ、柊さんですか・・・」
かがみ「岩崎さんも、司法試験を受けたの?」
みなみ「はい、一応・・・」
かがみ「やっぱ難しい試験よねー、岩崎さんはまだ大学生だったわよね?結果はどうだったの?」
彼女は無言で掲示板を指差した。そこには、彼女の受験票に書いてある番号と同じ番号が。
かがみ「へ、あ、あ・・・あああ、す、すごいわねっ!あたしなんて今年も駄目だったわ!岩崎さんは
優秀で羨ましいわ。その年で司法試験に受かれば、後の人生は万々だものね!」
みなみ「別に・・・受かれば終わりじゃなくて、そこが始まりだと思ってますから
それにゆたかと約束したんです。立派な弁護士になるからって・・・」
ゆたか、こなたの従妹で岩崎さんの友達だった娘だ。確か私が大学2年のとき、つまり彼女が高校3年生
のときに病気で亡くなった。こなたが落ち込んでいたようだったから、私も葬式に行ったが、普段おとなしい
という印象しかなかった岩崎さんが、争議会場で別人のように取り乱していたのを覚えている。
みなみ「ゆたかとの約束がやっと果たせました・・・。あの娘のためにも立派な弁護士になりたいんです。
まだまだこれからですけれども」
そういって彼女は微笑んだ。その笑顔はどことなく寂しげだったけれども、今の私には眩しく光って見えた。
彼女と別れた後、駅に向かう私の足取りは自然と速くなった。
私はどれだけ小さい人間なのだろう?岩崎さんが合格して私が落ち続けている理由がよくわかる。弁護士
になれば人生が万々?そんな小さなことしか私は言えないのだろうか?そんなことしか・・・。
自分の小ささに涙が出てきた。今日はお酒を買って帰ろう。一緒に飲む相手もいないけれども、今日ぐらいは
酔いつぶれてもいいはずだ。
最終更新:2007年09月12日 14:00