功績があって、その結果として『称号』がある。
これは当然の理だ。
『称号』とは人の『行い』を(多くのものは)称える言葉であり、『行い』なしには『称号』などつける術がなければ、つける理由すらないだろう。
火のないところに煙が立たないように。
イカれた主催者もなしにバトルロワイアルが開催されないように。
誰かが何かを成し遂げた結果として、ご褒美として、時には罰として、『称号』は誰かの生を飾り輝かせるのだ。
だが、ここで注意しなくてはならないことが1つある。
この理が絶対ではあるが、ある特異は状況においてこの理は『逆転』する。
……失礼。『逆転』するというのは語弊があった。
正確には『可逆変化』と化すのだ。
つまり、「行いに基づいて発生した」はずの『称号』が、今度は誰かの行いの手助けをするのだ。
例えば、『拳王』という称号は立ちはだかる敵に恐怖を与え、その宿主を戦わせることなく勝利に導く。
例えば、『反逆者』という称号は、その熱を帯びた精神とともに人々に受け継がれ、その宿主たちを絶望の谷底から飛び立つ翼を与える。
このように。『称号』として与えられた言葉は、時として力となり宿主の『行い』を生み出す。
『行い』が『称号』を生んだプロセスを逆再生するが如く。
そしてその逆再生を生み出す特異な状況が今、ここに発生している。
バトルロワイアルという殺し合いだ。
この状況で、彼が……いや、彼らが与えられた『称号』が生み出すものは……。
◆ ◆ ◆
「……覇ッ!」
突き出した拳は音速を易々と超え、一拍遅れて辺りに広がる衝撃波と破裂音。
「ぱぁん」と心地良さの中に微量に混じった悲しい波長は、まるで音が白旗を揚げて泣き叫んでいるようにも思える。
「なるほど、葉隠覚悟そのものだな」
この殺し合いに召還されたその瞬間に、彼は自分の置かれた状況を完璧に把握した。
妙に明るい『主催者』。
淡々と事務的に殺された『見せしめ』。
そしてこの『首輪』。
間違うはずはない。これは彼が良く知る殺し合い。
バトルロワイアル。或いはプログラム。
彼らはこの殺戮ショーをそう呼んでいた。
そしてその殺し合いに自分が巻き込まれたと知った瞬間、彼が行ったのは「パンチ」。
右の拳を堅く握り、全力で前に突き出したのだ。
それによって、「今の肉体」のスペックを確認した。
これはまず間違いなく葉隠覚悟のものであり、今さっきこの肉体を手に入れたはずの彼自身も何の問題もなくこの力を使いこなしている。
制限がないのには多少の疑問を感じたが……。
そして状況を確認した彼の脳には、更に別の情報がダウンロードされていた。
彼に与えられた名前。ワンキューという。ボイドではなくワンキューだ。
そして彼に与えられた、葉隠覚悟には使えない技の数々。これは彼が今まで生み出してきた物語の名前らしい。
そして最後に、彼に与えられた『称号』。
「【破転】……」
今『ハッテン』と言ったやつ表に出ろ。
誰が
ニコロワのアイドルだ馬鹿者め。
【破転】だ【破転】。それが彼に与えられた『称号』だ。
分かりやすく説明しておくと、書き手紹介の以下の部分の事である。
↓この部分ね
前人未到、220KB超の最終回でロワの大トリを締めくくった最多投下の書き手さん。
(以下略)
そこにしっかりと【破転】と書いてあるのが見えるだろう。
これが彼らに与えられた『称号』である。
『彼ら』と言ったのは、彼と同郷の他の書き手も『称号』を与えられているからだ。
いちいち列挙するのも面倒臭いので、それは各自で勝手に確認したらいいじゃない。
この『称号』は恐らく彼にとって名前以上に重要なものになるだろう。
先述した『称号』が力となる現象によって。
そう彼に与えられた【破転】という称号は、彼の状態欄を華やかに彩るだけの存在ではない。
漫画ロワ書き手に与えられたソレは、いわば『切り札』だ。
敵に追い詰められ、彼が生命の危機に瀕したときにこそ発動できる『切り札』。
その技名が【破転】である。
さて、そんな『切り札』を持った彼が取るべきスタンスは何であろうか?
そんなもの、考える必要はない。
「ここには法など存在しない」
ニヤリと笑う。葉隠覚悟には存在しない表情だ。
「ならば俺がすべき事は決まっている」
何? 「葉隠覚悟は対主催になるに決まっている」だって?
まあそうだろうね。リレーの結果としてならともかく、登場話で何の影響も受ける事もなしに、葉隠覚悟が殺し合いに乗る事はあり得ない。
だから君達は、こんな彼を見てこう言うんだ。
『裏切ったな』……とね。
「そうだ。『裏切り』……」
それでいいんだ。それでいいんだよ。
一体君達は、彼に何を『期待』していたんだ?
彼の魅力は『期待』されていた筋書きを全て『破り』、それ以上の高みに『転じる』ことさ。
泉こなたも、桂ヒナギクも熱血死という大方の予想を裏切り、彼の元でそれ以上に衝撃的な死を演じきった。
君達は彼の『裏切り』を充分に楽しめばいい。
漫画ロワの最後に、誰もいなくなった時の様に。
「『葉隠覚悟は人殺しなどしない!』……。
そんな戯言をほざく奴らの顔が歪んでいくのが楽しみで仕方がない……」
アーカードのように口の端を異様にねじ上げた、いわゆる『平野笑い』を顔に貼り付け、覚悟が笑う。
ほら、また裏切った。
「テンション上がってきたああああああああああああああああああ!!!」
叫ぶと同時に、吐き出される衝撃波。
彼を中心として半球状に広がった破壊の波は、そこに存在していた全ての物質を塵へと返す。
「ふ……ふふふ……ふははははは……。
ふはははははははHAHAHAHAHAHAHAHA!!」
荒れた大地の中心部に響き渡ったのは、葉隠覚悟にはあり得ない笑い方。
ほら、また裏切った。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!」
でも、君達はすでに『それでもいい』と思い始めているはずだ。
『覚悟がこんな笑い方をしてもいいんじゃないか』とね。
そうだ。そうなんだ。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!!」
彼が提示した答えが、あらかじめ用意されていた『正解』と違っていたとしても……。
君達が勝手に用意した『正解』と一致していようが、一致していなかろうが……。
「皆殺しだッ!!!!!!」
どうせ彼の誤答は、『正解』を超えるのだから。
【一日目・深夜/和歌山県】
【【破転】ワンキュー ◆1qmjaShGfE@漫画ロワ】
【状態】健康。テンション上がってきた!!
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】基本:『覚悟は熱血対主催』という予定調和を裏切る為に皆殺し。
1:皆殺しだッ!!!
【備考】
※外見は葉隠覚悟@
覚悟のススメです
※【破転】漫画ロワ書き手に与えられた称号にして、彼らの『切り札』。
追い詰められると使用可能。え? 考えるのが面倒だって? だったら『すげー強いパンチ』とかにすればいいんじゃねーの?
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最終更新:2009年03月23日 20:26