オボロ、『お約束』は忘れない

金と銀の髪が幾度も交差する。
金の少女の獲物は通常のそれと比べ遥かに長い刀。
銀の少女の獲物は雷の力を秘めた槍。
どちらもその体格には似合わぬ長物を軽々と振い相手の命を刈り取らんと駆ける。

現在劣勢なのは銀の少女、コリジョン・ナンバーズ
闇に忍び攻撃を仕掛けてくる相手に対抗する術がなくその体に傷を増やしていく。
深夜の市街地において、闇を移動する無常の騎士に死角はない。
かろうじて身をかわし続けてはいるが、その刃がコリジョンの体を傷つける回数は少しずつ増えていっている。

「この程度とは、リリカルクラッシャーの名が泣くな!」
「ちぃ!」

開戦時の左肩への一撃以来、初となる直撃コースの攻撃を防御障壁を張り防ぐ。
すぐさま反撃しようとはするが、雷神の槍を振るうよりも早く再び闇へと溶け込まれてしまう。
この一面に広がる闇をどうにかしない限り無常の騎士へ攻撃が届くことはない。
今二人の周囲に灯りはない。すでに近くの街灯は破壊されていた、支給品のライトをつけた程度では焼け石に水だ。

闇、どこまでも広がっていく闇。
コリジョンが、ロワの書き手達が幾度となくキャラ達へと見せてきた絶望の闇が彼女を覆い尽くす。
彼女は闇に翻弄され、無常の騎士はその闇を味方につけている、どちらが勝つかは明確だ。

「ならば、IS――」
「やらせん!」

コリジョンが動くよりも早く無常の騎士の一撃が決まった。
張られた防御障壁ごと吹き飛ばし、ビルの壁へと叩きつける。

(まいったな、これでは姉が壊される……割とシャレにならん)

一か所に止まるのは危険だ、闇に包まれている街を走りながら対抗策を模索する。
コリジョンにとって何より問題なのは壊すための材料がないこと。
版権キャラならば、原作の人間関係などを使って登場話から精神的に追い詰めることは可能だ。
だがここは書き手ロワ、相手の素性がわからないのではその手は使えない。
現状彼女が持っている無常の騎士の情報は、なのはロワの書き手ということとその戦闘方法程度、心を壊すとかそういう以前の問題である。

(ええい、いつまでもできないことに拘るわけにもいかんか!)

再度闇から迫る刃をかわして槍を構える。
闇に紛れ攻撃を逃れるというならば、紛れる闇を消してしまえばいい。
真上から振り下ろされた刀を受け止め、雷神の槍に秘められた力を、天より降り注ぐ雷撃を開放する。

「ぐぁぁぁぁぁぁ!」
「デイン……リリカル的にはサンダーレイジと言うべきかな?」

回避しようにも雷撃によって闇は照らされ、無常の騎士の逃げ場はない。
追撃のためデイパックを探るコリジョンを雷に撃たれながら睨みつけ……同じようににやりと笑い返す。

「プラズマ……」
「な、その状態で――!?」
「スマッシャァァァァァ!!」

至近距離からの魔力砲撃。
直撃こそ避けたが、コリジョンはその衝撃に吹き飛ばされ地を這わされる。

「雷は、フェイトの専売特許だということを忘れてもらっては困る……少々、聞いたがな」
「その台詞はいいな、エリオが嘆き悲しみそうだ……姉としたことが油断した」

軽口を叩きながらも立ち上がろうとするが、その足元はおぼつかない。
無常の騎士も息は切らせているが、しっかりと物干し竿を構えて隙を見せていない。
最初の奇襲が今になって効いてきたのだ、肩の怪我が彼女の体力と集中力を削ぎ取り続けている。

「勝敗は決した……動かなければ、苦しまないように仕留めよう」
「ここまで痛めつけておきながら、今更それを言うか」

その言葉を一蹴し、再び雷神の槍を構えなおす。
彼女にとってフェイトの姿をしている無常の騎士は『壊す』対象だ、
そんな相手の言葉に従い、その心を一瞬でも落ち着かせる選択などありはしない。
無常の騎士は一つ息を吐き、刀を振りかぶり――

「待ちやがれぇ!」
「「――!?」」

二人が激突する寸前、その間に一人の男が割り込んだ。
双方を静止するように、丁度二人の中心で両手を広げる。
コリジョンと無常の騎士は、突然の乱入に反射的に動きを止めようとし――

ぺたり

未成熟な、膨らみなど微塵も感じられないその胸に掌が収まった。

「……あ」
「なっ――!」
「っ――!?」


コリジョン・ナンバーズはサイクロン号に乗り無言のまま走り続ける。
その後ろに乗っている男、アークザラットのトッシュの姿をしたRPGロワの書き手である◆Rd1trDrhhU、剣客オボロの方へは視線を向けようともしない。

「いい加減機嫌直してくれよ、あれは事故だ」
「別に怒ってなどいない。助けてもらったことは事実だしな」

冷たく言い放たれた言葉は冷たい、やはり怒りを感じているとしか思えなかった。
オボロはついため息を吐く。

衝撃の乱入の直後――
無常の騎士が思わず攻撃を忘れ、オボロの手を払った瞬間、コリジョンは用意していた仕掛けを起動させた。
その結果出来た隙に、オボロの首根っこを掴んで共にサイクロン号で逃走を図ったのだ。
そろそろ東京に入った頃だろう。

「別に、本当に感謝はしているさ。あのままではよくて相討ちだったからな」
「そいつぁ良かった」
「で? お前はこれからどうするんだ、場合によっては姉が繋いでやってもいい」

コリジョンの問いに、オボロはしばしの間悩みこむ。

「実は、まだ決めてねぇ。さっきはトッシュの姿だったし、考えるより先に体が動いちまった」
「なるほど、考える間もなくセクハラに走ったと」
「やっぱまだ怒ってんだろ!?」
「冗談だ……ふむ、そういうことなら恩もあることだ、姉がお前の行動方針を繋いでやろう」
「いまいち言葉の意味が繋がってねぇ気がするんだが」
「トッシュの癖に細かいことを気にする奴だな」

不機嫌な表情になりながらも話に付きあってくれているコリジョンに、オボロは素直に感謝する。
ロワにおいてキャラ立ちというものは重要なものだ、例えば二人のうちどちらか一方を殺せるタイミングだとしたら、大抵はキャラが薄い方が殺される。
加えて言うなら単独の話でキャラを印象付けるというのも中々に難しい。

「俺が書いた作品は、対主催よりでもマーダーよりでもねぇ、方針を揺らす事が多い」
「ほう……確かにそういった葛藤はロワならではだし、おいしいな」
「ああ、だが困ったことにいきなり自分で揺れるわけにもいかねぇ、それじゃあただの芯の弱いだけのキャラだ……いや、そういったキャラもいいけどよ」
「ふむ、すぐ揺れるキャラは落としやすくていいが、あまりふらふらしていては逆に死にやすいものだからな。
 しかし、何も作品だけで決めることもないだろう? お前自身の意思はどうなんだ」

言われてオボロは再び考え込む。
共にRPGロワを書いている仲間達は守りたい、スローペースな中を頑張って書き続けている同士なのだ。
だからといって、単純に対主催に行くというのも芸がない、ロワを盛り上げるとしたらやはりマーダーだ、魔王やシャドウといったキャラ達の魅力を彼はよく知っている。

「……あーくそ! 決まらねぇ!」

オボロは頭を抱えるが、そこでコリジョンが肩を震わせ笑っていることに気づいた。

「おいこら! 繋ぐとか言っといて何笑ってやがんだ!」
「ああ、すまん。なに、いい感じに揺れているじゃないかと思ってな」
「うっ……!?」

対主催かマーダーかを悩む。
なるほど、確かにこれ以上なく自分は揺れている。この目の前の少女にまんまと一杯喰わされたというわけだ。

「そう怖い顔で睨むな。どうだ、何なら姉と共に行かないか。ロワを繋いで回るというのも中々いいものだぞ」
「……ちっ、わかったよ。これも縁だ、対主催でもマーダーでもないコンビってのもいいかもしれねぇしな」

オボロが了解すると同時に、突然サイクロン号が止められる。

「協力、感謝する……早速で悪いんだが……一つ、頼まれてほしい……」
「おい?」
「運転を……姉は、しばらく……体力が……」
「お前!? 限界だったのかよ!?」

降りることすらできずにオボロの体にもたれかかるようにコリジョンは気を失う。
肩の傷を初め、あちこちにある刀傷やプラズマスマッシャーを喰らったダメージは大きかったのだ。
オボロは慌ててその小さな体を抱き止め、近くに病院がないかどうかを探し始める。

「ちぃ! 同盟組んだ途端にぶっ倒れやがんな! 手間のかかる!」

【東京都-東部/1日目-黎明】

【コリジョン・ナンバーズ@ロボロワ
【装備】サイクロン号@ロボロワ
【所持品】支給品一式、雷神の槍@DQロワ、不明支給品0~1
【状態】左肩に裂傷、全身にダメージ(大)、気絶
【思考・行動】
 1.…………
 2.いるのならば◆o.lVkW7N.A氏の運命を繋ぐ
 3.全てのものを繋ぐ
 4.なのはキャラになっている者は――壊す
【備考】
 ※外見はチンク@リリカルなのはStS
 ※繋ぐ物の優先順位は命>その他

【剣客オボロ@RPGロワ】
【装備】無し
【所持品】支給品一式、不明支給品1~3
【状態】健康
【思考・行動】
 1.病院を探す
 2.コリジョン・ナンバーズと共に繋いでいく
 3.俺自身の考えねぇ……
【備考】
 ※外見はトッシュ@アークザラッド


「く……やってくれる……!」

腕を抑えながら、無常の騎士は近くにあった建物の一室に隠れて休憩を取っていた。
オボロが乱入してきた直後、突然自分の周囲が爆発しそれによって大きくはないもののダメージを負うこととなった。
暗闇の中、はっきりとは見えなかったがあれは画鋲だ。
チンクのISであるランブルデトネイターで爆弾に変えたものを自分の周囲にばらまいていたのだろう。
恐らくはプラズマスマッシャーを撃つ直前……自分の詰めの甘さに舌打ちをする。

「リリカルクラッシャーは伊達ではない、ということか……だが、次は負けん」

最も、次に出会う時は直接対峙するかどうかは別の話だが。

今回直接戦ったのはあくまでイレギュラー。
自分の本分は扇動にこそありだ、自ら止めを刺さなくともやりようなどいくらでもある。

「まずは、入りやすそうな参加者を探さなくてはな……」

【千葉県/1日目-黎明】

【無常の騎士◆HlLdWe.oBM@なのはロワ】
【服装】パピヨンマスク@なのはロワ
【状態】健康
【装備】物干し竿@アニロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品、ランダム支給品0~2
【思考】
 基本:殺し合いに優勝する。
 1.コリジョン・ナンバーズを殺す
 2.基本スタンスは暗殺と扇動マーダー。主に後者を優先
【備考】
 ※「XANADO」:無常の騎士の持つ異能。暗闇の地形に潜ることができる。
  ただし、地形に潜れるのは10秒前後。再度潜るまでにもしばらく間を置かなければならない。
 ※外見はパピヨン@武装錬金のマスクをつけたフェイト@なのはA'sです

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THE ASASSIN コリジョン・ナンバーズ 絶対運命交差点
剣客オボロ 絶対運命交差点
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最終更新:2009年05月29日 19:28
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