――風を切り、進む。
駆ける。翔る。疾走する。
びゅんと大気を引き裂きながら、地面すれすれを低空飛行。
目にも留まらぬその速さ。音さえ置き去りにする奇跡の音速。
その身がフェイト・T・ハラオウンの身体であるが故に、可能とされたソニックムーヴ。
神速となった
無常の騎士が、東京の街を疾駆していた。
パピヨンのマスクを落とすことなく、トップスピードを維持し続ける。
目的地はもちろん埼玉だ。先ほど聞き届けた演説に従い、教会にあるという旅の扉を目指している。
千葉からなら一直線に行けたものを、わざわざこの東京を経由しているのは、
たまたま演説があった時に、この東京を散策していたからである。
(逃げた方角からして、この辺りに奴らがいる可能性は高い……)
思い返すのは、自分に手傷を負わせた
コリジョン・ナンバーズと、それを連れ去ったオボロの存在だ。
彼女らには既に顔が知られている。扇動マーダー志望としては避けたい相手。
ついでに太陽が昇ったことで、「XANADO」の力も使用範囲が制限されてしまった。
手にしているのがバルディッシュならまだしも、ここにあるのはただ長いだけの日本刀。
実質戦闘力が半分以下にまで落ちた今、奴らと顔を合わせるのはまずい。
(そしてそれ以上に、気になるものがある)
新たにもう1つの存在を思い出す無常の騎士。
何者かの演説が終了した瞬間、彼方のテレビ塔を刻み落とした巨大な光である。
刃のようなあの光は、さながら無数の龍を思わせる、青い電流のような光が纏わりついていた。
その力の持ち主がいるとするならば、大体この辺りだ。
既に見当はついている。
奴は――
「はぁっ!」
ばっ、と跳躍する。
掛け声と共にツインテールを翻し、視界に映りこんだもの目掛けて飛びかかった。
彼女の目の前にあるのは真紅のバイク。
ビルの陰から飛び出してきた、ワルキューレに向かって横から一直線。
見事な速度をもって、その運転手の背後へと飛び乗る。
「やぁ、無常氏でしたか。やはり貴方もいたのですね」
乗り手はさして動揺もせず、つとめて冷静に対応する。
この無頼の来客相手にも、敵意を見せることなくフレンドリーに。
それもそのはず、この赤いコートを羽織った男にとって、彼女は初対面の相手ではない。
一目でその正体を言い当てた彼もまた――
なのはロワに所属する書き手だ。
そう。
彼こそが、テレビ塔を粉みじんに破壊した、先の一撃を放った張本人だった。
「その口ぶりからすると、やはり先ほどのテレビ塔の崩壊を見て、私の元へと来たようですね」
「当然だ。蒼龍破を使う殺生丸が参加しているロワなど、なのはロワ以外に存在するはずがあるか」
かの大破壊の光景を思い出しながら、無常の騎士が言った。
あの時放たれた攻撃の基本は、プラント自立種の持つエンジェル・アーム。
ナイブズはまだしも、ヴァッシュの登場するロワは複数ある。
原作とは異なる性質として設定されていたアニロワ2ndこそ除外してもいいだろうが、それでも出身ロワを絞り込むことは難しい。
だがここで、そのエンジェル・アームに纏われた雷撃――蒼龍破の存在が幸いした。
元々この蒼龍破という技は、殺生丸の登場する犬夜叉の原作では、登場していなかった必殺技だ。
披露されたのはアニメ版――それも劇場版のみでのお披露目である。
こんな物、たまたま出典元クロスSSで殺生丸が使用していたなのはロワでもなければ、まず間違いなくお目にかかれないマイナー技であろう。
「それをロワで発動させた人間も、貴様を置いて他にはいない」
「そういえば、それもそうでしたか」
くつくつと笑いながら、フィールド破壊の貴公子が返した。
つかみ所のないその態度に、憮然とした表情を浮かべる無常の騎士。
「……それで、わざわざ私と合流する気になった理由は?」
「情報交換といったところか。私の潜り込めそうな集団を探している」
「生憎と、私はそういった事情には疎いものでして。このロワに参加してからも、まだ死体としか会っていませんしね」
「……貴様に期待した私が馬鹿だった……」
マスクの奥の表情が、更に不機嫌そうな色に染まった。
「ステルスなんてちまちまとした立ち回りは、私の趣味には合わないのですよ。
派手にフィールドを破壊して回った方が、よっぽと楽しめるとは思いませんか?」
「ふん、崩落マニアめ」
「ははは……面白い呼び名だ。なかなかに気に入りましたよ」
飄々とした態度に無常の騎士は、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向く。
このフィールド破壊の貴公子が、クロススレで手がけているSSは、ヴァッシュと魔法少女達の交流をウリの1つとしたものだ。
故に現在の状況は、その一コマを喚起させる立ち居地であるはずなのだが、どうにも彼のせいで台無しになってしまっている。
もっとも、仮にフィールド破壊の貴公子がまともな人間だったとしても、
本来のフェイトとは真逆の性格である無常の騎士が、ほのぼのムードを望むはずなどないのだろうが。
「……埼玉に着いたら私は下りるぞ。貴様は私の仕事の邪魔になる」
「おや、埼玉までは一緒にいてくれるのですか?」
「私は交戦した後でそれなりに消耗しているんだ……休息くらいは取らせろ」
「まぁいいでしょう。独りぼっちでいるのも退屈ですし。
せっかくこうして同郷の書き手と会えたんだ……世間話に花を咲かせながら、旅の扉を目指すことにしましょうか」
笑みを浮かべるフィールド破壊の貴公子に、ふぅと1つため息をつく無常の騎士。
今は運転手をさせているが、いつまでも彼と同行しているわけにはいかない。
派手にフィールドを破壊して回る彼と一緒にいては、自分まで危険人物だと思われてしまうからだ。
無常の騎士とて、これから放送まで何もせずに過ごすつもりはない。
ターゲットは埼玉に集まるであろう人間。適当な集団を見つけて潜り込み、思いっきり瓦解させるのが狙い。
この腹の立つ男との同行も、それまでの辛抱だ。
己自身へと言い聞かせながら、赤い視線を行く手へと向けた。
「……そういえば貴様、テレビ塔1つを破壊した割には、随分と黒髪化が進んでいるようだが……?」
「ああ、これですか。いやぁ、実は先ほど、東京ドームを叩き割ったばかりでして」
「………」
【東京都・一日目・早朝】
【無常の騎士◆HlLdWe.oBM@なのはロワ】
【服装】パピヨンマスク@なのはロワ
【状態】疲労(小)、イライラ
【装備】物干し竿@アニロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:殺し合いに優勝する。
1.埼玉までフィールド破壊の貴公子に乗せていってもらう
2.埼玉に着いたら、教会目当ての対主催グループを見つけて潜り込む
3.コリジョン・ナンバーズを殺す
4.基本スタンスは暗殺と扇動マーダー。主に後者を優先
【備考】
※「XANADO」:無常の騎士の持つ異能。暗闇の地形に潜ることができる。
ただし、地形に潜れるのは10秒前後。再度潜るまでにもしばらく間を置かなければならない。
※外見はパピヨン@武装錬金のマスクをつけたフェイト@なのはA'sです
【フィールド破壊の貴公子◆jiPkKgmerY@なのはロワ】
【服装】ヴァッシュのコート、アーカードの帽子
【状態】黒髪化(4割)
【装備】ワルキューレ@
スパロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品、ランダム支給品0~1
【思考】
基本:派手に暴れられるマーダー路線
1.とにかくフィールドを壊して回る。どんなフィールドや施設があるか楽しみ
2.ビッグサイト爆破魔(
むっつりラナルータ)より先に壊す
3.無常の騎士を埼玉まで乗せていく。その後は1人で旅の扉を目指す
【備考】
※外見はアーカード@HELLSINGの帽子を被ったヴァッシュ@トライガンです
※東京ドームは、フィールド破壊の貴公子のエンジェル・アームによってによって両断されました
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最終更新:2009年06月12日 22:08