「……バトルロワイアル、ねぇ。自分が巻き込まれるなんて、考えもしなかったなあ。」
一人、町の中で愚痴る男……一文字隼人……の姿をした書き手。ちなみにFirstのほうである。
彼が持っている名は◆RIDERjbYCM、そして与えられた二つ名は泰鬼。そのトリップからも分かる通り
ライダーロワNEXTの書き手だ。
まあロワに出るのは二度目だとかそういうのはこの際おいておく事にする。メタ視点とか色々ややこしいし。
「ベルトがあるってことは変身は出来るみたいだね……でも変身が出来ても不安なのが書き手ロワだし……」
自身の脇に放置されたバイクのハンドルを握りながら、誰に言うわけでもなく呟く。そよ風が赤い車体を撫でていった。
このバイクは自分が一文字に支給した、平成ライダーの中でも割とトンでもな部類のバイクだ。しかもどうやら制限が軽めになっているらしい。
……繰り返すが、彼の姿はリメイク版の一文字隼人である。顔だけ見たら別人でしたなんてことは断じて、ない。
「それにしても……なんなんだろう。この違和感は。」
そりゃあ勿論その口調でしょう。一文字はなんかこう、もっとニヒルな感じの口調だし。
そして、何より決定的な違いは。
「確かに僕は書いた中では一文字が多いし、旧のほうは殺しもしたさ。この名前がつけられた後の書き手紹介でも二号の名前をもらったさ。」
一文字の一人称は「俺」であり、「僕」ではない。だがしかし、正味な話それがどうしたといえるのが書き手ロワ。実際もっと凄いのほかにもいるので。
一つ例を挙げれば、今現在沖縄のほうで似たようなキャラの食い違いを抱えた書き手が、「ちゃんぽん」で片付けられているとかなんとか。
……まあ、とにかく彼のこの口調も「ちゃんぽん」で片付けられるわけで。
「ここまで二号がそろってるのに……何で口調だけ東條なのさ!」
そりゃあーた、現時点でトップマーダーのキルマーク2/3をあげてりゃ少しは混じるでしょう?
しかしこの場にはその答えを与えてくれるものは居らず、泰鬼の叫びは夜空に吸い込まれて消えていった。
はぁ、とため息をつく。こんなところで叫んでいるよりも、まずは自分のスタンスを決めるほうがよっぽど利口だ。
(まあこの姿なら対主催だよねえ……さすがに東條の首刈りはやり切れる自信ない、というかやりたくないな、うん。)
スタンス決めを二秒で終え支給品の確認に移る。支給品の一つは今もこうして目の前にある以上、あっても残り二つくらいだろう。
本人的にはリュウガやタイガのデッキが入っていればやり易かったが、それほど旨くいくわけはなく。
やけにふわふわした物があることに気づき、それを付かんでデイパックから手を引き抜いた。そしてその手に握られていたのは、
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「何これ?」
パッと見風船のようでもあるが、仄かに熱を持つ球体。それは重力に逆らうかのように天を向いていた。
特異な形状に見覚えがある方も居られるだろう、改めて説明すると、この物体の名はエナジーボンボンである。
らき☆ロワ、さらに遡ればやろ夫ロワの参加者であるオプーナの頭上で輝いているアレだ。そして中には、膨大なエナジーを秘めている。
元の持ち主であるオプーナはこれを打ち抜かれたことにより異常進化し、やる夫ロワの二強マーダーの一角として君臨した。
そのオプーナを下したでっていうにも強大な力を与えつつその一方で弱点としてのシンボルの役割を持っていた。
また、らき☆ロワにて装備した小早川ゆたかに至っては、何かもう色々凄い事態を引き起こしてぶっちゃけ超ヤバイってレベルじゃげふんげふん。
とにかく、強大な力を得ると共に色々大切なものが崩壊してしまう諸刃の剣でもある物体、それがエナジーボンボンなのだ。
もちろん、彼はそんなことまったく知らない。
咥えてみたり、振り回してみたり、地面に突き刺して水を与えてやったり。取りあえず考え付くことをやってみたが案の定何の変化もない。
幸か不幸か、説明書らしきものは付属していなかった。つまり今のところはただのフワフワした変なボンボンだ。けして雑誌にあらず。
「はずれか……幸いバイクって当たりをつかめたんだし、別にひとつくらいいいかな。」
そう呟きながら次の支給品に手を伸ばしたその時、どこからともなく男の声が聞こえてきた。
――――「頼む、この放送を聞いた者達よ! 知らせてくれ、広く誰もが助かるように!」
「ッ!?」
どこか聞き覚えのある声に泰鬼は振り返った。なぜならばその声の主は仮面ライダー1号の姿をしており、当然その声は。
「本郷猛……ライダーロワじゃない、このタッチはライスピかな。」
一瞬同郷の者に会えたかと喜ぶが、すぐに違うとわかる。ライスピが出ているロワといえば漫画かロボが妥当だろう。
期待外れではあったが、落胆はしていなかった。出身は違うとはいえ同じ仮面ライダー、殺し合いに乗るとは思えないからだ。
それに今の泰鬼は一文字隼人だ。合流できればすぐにでもダブルライダーが結成できる。そうすればもう怖い者など――――
「……いや、初っ端からダブルライダーといえば……」
泰鬼の脳裏に浮かぶのはライダーロワNEXTで起こった出来事。登場話にてダブルライダーが合流した結果、無残にも片方が殺され、後を追うようにもう一人も脱落したのだ。
忘れられるわけがない。ダブルライダーの片方、仮面ライダー2号を殺したのは紛れもない自分自身なのだから。
そしてその事実は、泰鬼の歩みを邪魔する壁となり、恐れとして立ちはだかる。
いくらFirst版とはいえ、他に一文字の姿をした書き手がいなければ自分が当てはまるのは必然。腰のベルトもそう物語っている。
(もしこのまま行けば、殺されるかもしれない。それに、最悪あの仮面ライダーが殺し合いに乗っている可能性もあるよね。)
テレビの中に写っているのは仮面ライダー1号ではあるが、中身はある一人の、誰とも知れぬ書き手なのだ。勢いで向かおうとしたが、どうして殺し合いに乗っていないと言い切れる。
しかし、もし乗っていないとしたら? どんな姿をしていてもこのフィールドに居るのはパロロワ書き手、拡声器のジンクスを知らない訳はない。
このまま放送を続ければ、いずれあの1号は――――死ぬ。何者かによって殺されてしまう。そんなの、見過ごせるわけがない。
どうする。
どうする。
どうする。
君ならどうする。
とデンジマンのEDを脳内再生している場合ではない。
思考が堂々巡りし、地に足が吸い付いたように動かなくなった。行けば自分が死ぬかもしれないし、行かなければ彼が死ぬかもしれない。
どちらもいやだ。しかし、どちらかしか選べない。ただのパロロワ書き手にこんな選択を突きつける現実に、神に、主催者に腹が立ってくる。
――――……「埼玉だ! 旅の扉の一つは埼玉の教会内にある!
教会の悪魔という名の教会型の参加者の内側にだ!」
放送はそのまま続けられる。しかし一つ、たった一つだがとても大きな問題があった。
(……旅の扉……って何?)
旅の扉。次のステージに進むために設けられるFFDQロワのアレだ。
しかし、彼は悲しきかな旅の存在を把握していなかった。だが深く考える余裕はない、体中に渦巻く悩みの所為だ。
握り締めた拳が震える。姿形は憧れるヒーローになっても、中身が変わらなければ意味がない。大切な所で悩んでいてどうする。
そう頭ではわかっていても、足が進まない。どうしても死への恐怖が邪魔をするのだ。
――――……「自ロワのほかの書き手の作品を楽しみにしてはいなかったか?
――――…… 所属外のロワを読み、負けるものかと闘志を燃やしたことはないか?」
ビクン、と体が震える。
書き手である者が、皆誰しも抱いたであろうその感情。もちろん泰鬼の中にもその感情は、確かに息づいていた。
心臓が熱い。その熱い心臓から、全身に燃え滾る血が流れていくのを直で感じる。理由はなぜか、そんなもの、とうに分かっている。。
こんな、こんなにも――――
――――……「そうだ、そういうことだ! 誰かがいなくなる。それはそれだけでそういった可能性が減るということなんだ!
――――…… だからもう一度言おう。死ぬな、殺すな、諦めるな!」
――――こんなにも心を揺さぶる叫びができる書き手が、殺し合いに乗っているわけないじゃないか!
最後の叫びを残してテレビ局は崩壊する。方角は東、このバイクの性能なら二分とかからない距離だ。
即座に荷物を纏めて、カブトエクステンダーのエンジンを入れる。生憎バイクの運転経験はないが、それは一文字のなりきり部分がカバーしてくれるだろう。
一瞬の静寂の後、泰鬼を乗せたカブトエクステンダーは一陣の風になった。
(僕が行くまで、生きててよね……ッ!)
◆
願いは、叶わなかった。
バイクから降りた瞬間崩れ落ちる泰鬼。目の前に広がるのはつい先ほどまでテレビ局だった瓦礫の山だ。
仮にも仮面ライダー、ビルが倒壊していてもどこかにひょっこり……なんて、そんな甘い幻想はどこにも存在しない。
月の光に照らされ、瓦礫の中で煌く――――仮面ライダー1号の、銀の手袋を見てしまっては。
自分の所為だ。もっと早く迷いを断ち切っていたら、あるいは助けられたかもしれない。共に戦い、このロワを終わらせることもできたかもしれない。
限りない後悔が駆け巡る、今度こそ立ち上がれなくなりそうだ。このままここに座って、自己嫌悪に苛まれながら死ぬのが運命だったのだろうか。
「……もう、いいかな……」
背をバイクに預けて空を仰ぎ、まぶし過ぎる電灯に目を瞑る。二、三秒もすれば慣れてきたのか、もうそれも気にならなくなった。
今まで経験した事、特にパロロワに関わる出来事が、色濃く頭を過ぎる。初投下の時、感想を貰えた時、他ロワの作品を読んだ時、自ロワが最終回を迎えた時――――
1284 名前:継ぐのは魂[sage] 投稿日:2009/03/27(金) 21:11:04 ID:0F5LeyzM0
――――……死ぬな、殺すな、諦めるな!
薄れ掛けた意識に、先ほど聞こえた放送がフラッシュバックする。そうだ、さっき迷いを断ち切ったばかりではないか。
会った事もない書き手の叫びに答えるべく、自分はここに来た。死の恐怖を抱えながらそれを押さえつけてまで、だ。
だというのに、彼の目の前でこうして不貞腐れ、全てに嫌気が差し何もかも投げ出すということは……
(このライダーの死を踏み躙る、かぁ。そんな真似、いくら何でも出来る訳ないよね。)
脱力しきっていた体に活を入れ立ち上がり、瓦礫からほんの少し見えている手を握り締めた。死人のように冷たいが、彼から伝わってきた魂は何よりも暖かく、大きかった。
聞こえる訳ないとわかっていてもその口は思いを紡いでいく。我ながらクサい台詞かなと思いつつ、決して止まることはない。
「死なない、殺さない、諦めない……あなたの魂、僕がきっと受け継ぐよ。だから――――」
その手に嵌められた銀色の手袋を、少し躊躇いながら自分の右手に嵌める。
「――――この手袋、少しだけ借り受けます。あなたの魂と共に、もう二度と立ち止まらないように。」
決意を新たに立ち上がった泰鬼の目に、もう、迷いはない。カブトエクステンダーに跨って、埼玉の方向へとバイクを向ける。
ぽふ、ぽふ、ぽふ、ぽふ。
突如聞こえるふかふかした謎の音。それが拍手らしいと気づいたのは、瓦礫の上に座り込む黒猫を見つけてからだった。
「よく一人で這い上がった、流石は正義の使者、仮面ライダーを書く書き手といったところか。」
一際大きな瓦礫に腰掛け、悠長に足を組んでこちらを見下ろす、闇に解けてしまいそうな真っ黒い猫。
二頭身の体、目つきの悪いその顔……ご存知サイボーグクロちゃんのクロだった。
「クロ……アニロワ2ndか動物か……」
「違うな、
ロボロワだ。そこに破壊されている
仮面ライダー零と同じ、な。」
泰鬼の記憶にあるクロちゃんとは似ても似つかない口ぶりに、警戒を強める。対するクロの姿をした書き手は押し殺したような笑みを浮かべる。
「早速仮面ライダーを見つけたと思いやってきたが……零は死んだが、別の仮面ライダーに会えるとは。」
「……さっきも引っかかったんだけど、何で僕がライダーロワの書き手だってわかったの?」
チッチッ、と人差し指を振りながら舌打ちをする姿に、少しばかり馬鹿にされているような感じがしたのは気のせいだろうか。
次の瞬間クロの姿が闇にとけた。と思ったら、カブトエクステンダーの角の上に立っていた。
「早っ……!?」
「さっきの問いの答えだが、何のことはない。俺もライダーロワで書き手をやっているというだけだ。」
顔が驚愕の色に染められるも、すぐに安堵の色が浮かぶ。少し形は違うが自ロワの書き手と合流できたのだ、これ以上心強いことはそうそうない。
共に対主催として戦おう、と口を開く寸前に首筋に銃口が突きつけられた。冷やりとした金属が頭をクールにさせる。
「予め言っておくが、俺の目的は破壊だ。それ以外の何者でもない。」
声から感情が消えたのは、その内容に嘘偽りがない証。彼のスタンスは聞くまでもなくマーダーなのだろう……じゃなかったら首筋にアポロマグナムを押し付けたりするものか。
ごくりと唾を飲む音が泰鬼の喉から聞こえたっきり、両者黙りこくったまま数秒の時が流れる。
堪えかねたように泰鬼が銃口を首筋から退かし、ロボロワ書き手に問いかける。
「拡声器のジンクスを恐れない、文字通り命をかけた放送……あなたも彼の放送聞いたよね。」
「……ああ、確かに聞いたぞ。同郷の書き手の、魂を揺さぶる叫びをな。」
「だったら……!」
「しかし俺の行動指針が変わることはない。俺はただ『正義』を持つ者を破壊するだけだ。」
ああ、このキャラは……というか、この書き手はそういうものなのか、と心の中で思う。一度決めたらちっとやそっとじゃその信念を曲げず、最後まで突き進む。
強いな――――自分は迷ってばっかりだったのになあ、と憧れてしまうのはやはり書き手の性だろうか。
「どうする……今ここで俺と戦うか、それとも逃げて他の者が破壊される様を見ているか?」
勿論逃がすつもりなどない、鎌をかけているだけだ。これで逃げようものならすぐさまその脳天を打ち抜いてくれる。
いつでも対応できるよう二つの銃に手をかける。さあ、早く戦いの意思を見せてく――――
―CAST OFF―
「何!?」
足元がふわりと浮き、小さな体が宙に放たれ、足場にしていたバイクの角が頬を掠めて吹き飛んでいく。
原作でも数回、ロワでは一度も使われていないキャストオフ。あまりの空気っぷりにさしもの彼も反応が遅れたのだ。
もしも今ここにいるのがロボに特化したほうの彼でなく、ライダーロワの彼だったら……間違いなく回避しただろう。
(隙を突いて逃げたか、俺の見込み違いだった…………いや!!)
―PUT ON―
パージした装甲がまるで逆再生のように元の場所へと嵌って、赤い車体を形作る。そしてそこには、先ほどと寸分違わぬ顔でこちらを見る泰鬼がいた。
「逃げなかったか……やはり俺の目に狂いはない!」
「逃がす気なんて最初からなかったくせに……それに逃げたら他の人が危ない、なんて聞かされちゃ逃げられるわけないじゃない。」
二人の視線が交差する。譲れないものを抱えた書き手同士の強い眼光が、火花を散らすように光った。
泰鬼が両腕を右へ向けて伸ばし、弧を描きながら左へ握りこぶしを作った。それは伝説の戦士へと姿を変える合図。
「変……身!」
書きなれたあの言葉、よもや自分が叫ぶとは思っても見なかった。
ベルトの風車が立花レーシングのマークに変わり、一息に飛び上がる。光に体が包まれ、改造人間としての姿に生まれ変わっていく。
軽い音とともに降り立った影の腕には、本来の一文字も持つ赤い力の拳と、今しがた仮面ライダー零から借りた銀の技の拳が存在を主張している。
――――力の2号、仮面ライダー2号。
「いい姿だ……トランスフォーム!」
叫びに呼応して手足が胴体へ引っ込み、変わりに出てきたのは黒い装甲に覆われた人の手足。しっかりと大地を踏みしめ、前を見据える。
クロの顔をした頭部は反転し、無機質な赤い二つ目と半透明のフードが現れた。中に納まっているのは奇怪な体に不釣合いなほど生々しい、人の脳だ。
両の腕に握られるのはこのキャラが愛用していた銃と、ある仮面ライダーの宿敵が持っていた特長的な形状の銃。
――――悪の人造人間、ハカイダー。
「ハカイダーか、道理でクールなわけだね。僕は泰鬼、君は?」
「マスクド、ハカイダー。」
うわ、なんか名前が縁起でもない、と心の中でだけ愚痴を零す。もしかしたらもう愚痴を零せないかもしれないのだから。
ハカイダーショットから一発の弾丸が放たれる。辺りに轟く銃声が――――会戦の合図となった。
【一日目・黎明/東京都・テレビ局跡】
【泰鬼(◆RIDERjbYCM)@ライダーロワNEXT】
【状態】仮面ライダー新2号に変身中
【装備】銀色の手袋(右のみ)、カブトエクステンダー@ライダーロワN
【持物】デイパック、基本支給品、エナジーボンボン@らき☆ロワ、不明支給品0~1
【思考】
基本:殺し合いには乗らない方向で
1:
マスクドハカイダーと戦う。
2:仮面ライダー零の魂を継ぐ。
3:埼玉に行く。
※姿はR一文字、変身後は仮面ライダー新2号、口調は東條悟です。
※カブトエクステンダーは誰でもキャストオフできますが、ガソリン云々の制限はそのままです。
【マスクドハカイダー@ロボロワ】
【状態】正常、ハカイダーの姿
【装備】ハカイダーショット@ロボロワ、アポロマグナム@ロボロワ
【道具】支給品一式、不明支給品0~1
【思考】基本:殲滅
1:泰鬼を破壊する。
2:できるだけ強い奴と戦う。正義の味方ならなお良し。
※クロ@サイボーグクロちゃんと、ハカイダー@人造人間キカイダーの二つの姿を持っています。
口調や声は、クロの時でもハカイダーのものです。
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最終更新:2009年06月12日 22:07